今回は先週200株買い増しをした石油元売り会社のENEOSについて検証してみます。
通常原油価格が上昇すると石油元売り会社の株価も上がるのですが、ロシアのウクライナ侵攻で高騰した原油価格を受けてもENEOSの株価はそれ程上昇していません。
という事で今回はENEOSの直近決算の内容や株価の推移、そして購入までの経緯についてまとめていきます。
ENEOSの現状
それでは本題ですが、まずENEOSの現状を簡単にまとめていきます。
ENEOSは原油を精製し石油製品として販売する石油元売り会社ですが、石油元売り銘柄の業績はその時の原油価格によって在庫で持っている石油の価格も増減し、ガソリン等の石油製品の利益も変わってくる為、 石油元売り会社の業績は原油の価格に大きく左右されます。
ENEOSの業績も2020年3月期は、年明け以降のコロナ禍によるガソリン需要の減少に加え原油価格の下落で1879億円の大きな赤字になっています。
今期は資源価格の上昇などにより石油、天然ガスや金属セグメントが大幅増益となり業績も好調な状況です。
原油先物価格

先程触れた様にENEOSの業績は原油価格の値動きに大きく左右される為、ENEOSの業績を検証する前に原油価格の動きを確認しておきます。
2019年頃からじわじわと値を上げていましたが、2020年春のコロナショックでまさかのマイナスというありえない価格を付けた後は少しずつ回復しています。
最近はコロナからの経済回復で需要が高まった事やロシアのウクライナ侵攻により原油価格も大きく上昇し100ドルを超えて推移しています。
ENEOS直近決算
ここからはENEOSが2月に発表した第3四半期決算の内容を検証していきます。
第3四半期時点の最終利益は、3318億円と前年同期比で2648億円の増益となっていますが、通期最終予測2800億円、年間配当22円ともに従来予想に変更はありません。
業績好調の要因は、資源価格の上昇などにより石油・天然ガスセグメントが大幅増益となった事やカセロネス銅鉱山の減損反転、資源価格の上昇、先端素材の増販などにより金属セグメントが大幅増益となった為としています。
株価推移

ENEOSの株価はコロナショック時に300円台前半まで売られましたが、その後は値を戻し、2021年は原油価格の上昇もあり500円を超える場面がありました。
今年も原油価格は上昇し、直近ではロシアのウクライナ侵攻で原油価格は去年の高値を大きく超えていますが、株価は450円前後の動きとなっています。
業績推移
ENEOSの2018年からの最終利益推移と2020年からの第3四半期時点の最終利益を見ていきますが、増減の激しい展開が続いています。
第3四半期時点最終利益(億円)
銘柄名 | ENEOS |
2020年3月期第3四半期 | 1245 |
2021年3月期第3四半期 | 670 |
2022年3月期第3四半期 | 3313 |
2020年3月期通期進捗率(%) | ‐ |
2021年3月期通期進捗率(%) | 58.8 |
2022年3月期通期進捗率(%) | 118.3 |
最終利益推移(億円)
銘柄名 | ENEOS |
2018年3月期 | 3619 |
2019年3月期 | 3223 |
2020年3月期 | -1879 |
2021年3月期 | 1139 |
2022年3月期(会社予想) | 2800 |
ENEOSの業績は原油価格に大きく左右される為、原油価格の上下によって最終利益も増減を繰り返しています。
また、今期最終利益の通期進捗率は第3四半期時点で100%を超えていますが、第4四半期の資源価格変動リスクなどを勘案し通期予測は据え置きとしているとの事です。
配当推移
銘柄名 | ENEOS |
2015年 | 16 |
2016年 | 16 |
2017年 | 16 |
2018年 | 19 |
2019年 | 21 |
2020年 | 22 |
2021年 | 22 |
2022年(会社予想) | 22 |
ENEOSの2015年からの配当推移を見ていきますが、ここ数年は横ばいが続いています。
ENEOSの配当方針は、株主への利益還元が経営上の重要課題であるとの認識のもと、中期的な連結業績の推移および見通しを反映した利益還元の実施を基本としながら、安定的な配当の継続に努めるとしています。
具体的な数値としては、中期経営計画(2022年度迄)中は、現状を下回らない配当水準とし、また3カ年累計在庫影響を除き当期利益の50%以上とする方針です。
ENEOSの株価等指標(2022年3月11日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
ENEOS | 5020 | 451.6 | 5.18 | 0.55 | 22 | 4.87 | 25.22 |
ENEOSの株価は最近の原油高でもそこまで上昇していない為、配当利回りは5%前後の水準です。また、今期業績は好調ですので、PERは約5倍、PBRで約0.5倍と市場平均と比較して割安な数値です。
ENEOSの今後
ENEOSはグループとして2040年までの長期ビジョンを発表しています。
アジアを代表するエネルギー・素材企業として事業構造の変革による価値を創造すると掲げていますが、1番大きな項目は低炭素、循環型社会への貢献でしょう。
ガソリンの国内需要は人口減少やハイブリット車の普及で年に数%ずつ減少しており、今後も電気自動車の普及等で回復は見込めそうにありません。
また、2022年1月に取得が完了した国内有数の再生可能エネルギー事業者であるジャパン・リニューアブル・エナジーを通じて日本を代表する再生可能エネルギー事業者への飛躍を目指すとしています。
ENEOSの投資判断
以上の点を踏まえENEOSの投資判断ですが、石油に依存しない収益構造に変革が必要な事は明らかです。
ENEOSの決算書を見ていると在庫影響を除きという言葉がよく出てきます。これは冒頭で触れた様に、原油価格に業績が大きく左右させられてしまうからですが、本来ならばなるべく原油価格を業績には反映させたくないはずです。
実際第3四半期の業績は資源価格の上昇を受けてかなり好調な数字でしたが、通期業績や年間配当は変更していません。同じ様に資源価格の上昇などで今期の業績が急回復し、配当も急増している商社株や海運株と比較すると物足りなく感じる部分はありますが、好意的に捉えると一時的な原油価格の上下には影響を受けないという会社姿勢の様なものも感じます。
この辺りが最近の原油価格上昇を受けても株価が上昇しない1つの要因の様な気はしますが、裏を返せば石油に依存しない収益構造への変革が徐々に進んでいると考える事もできると思います。
もちろん石油からの脱却はそう簡単には進まないでしょうし、時間の掛かる問題だとは思いまずが、最近のENEOSを見ていてそんな事を感じました。
世界的な脱炭素の流れもあり、日本でも2030年代に新車販売で電動車100%を実現すると表明しています。
この目標が期限通りに達成出来るかは不透明ですが、世界的に同様の流れですので将来的にガソリン車はこの世から無くなる可能性が高いです。
当然ガソリンの需要は減りますのでガソリンスタンドの存在も気になるところです。
しかし、ガソリンは使用しなくなったとしても代替エネルギーは必要になると思いますし、実際ENEOSは水素や再生可能エネルギー、天然ガスを使用した石油に代わるエネルギーの開発に力を入れています。
以上の様な点を考慮すると石油元売り会社としてのENEOSの将来には不安がありますがエネルギー会社としての将来性には期待できる部分も大きいと思います。
最近の動きは原油価格上昇を受けても株価は上がらず、もどかしい部分もありますが、長期的に考えた場合、石油に依存しない収益構造が構築され始めていると好意的に捉え、株価が安い場面はチャンスと思い買い増ししました。
ENEOSの検証はYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。






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