今回は増配と株主優待の廃止が同時に発表されたJTの本決算内容を中心にJTの現状や今後を踏まえてJTの投資判断を検証していきたいと思います。
JTの現状
それでは本題ですが、まずJTの現状を簡単にまとめていきます。
JTは2013年頃より増配を繰り返し高配当株としてのイメージが強くなった事もあり株価は上昇を続け、2015年から2016年にかけて4000円を超えました。
しかし、メイン事業は時代に逆行するたばこ事業の為、業績は低迷し、減配の恐れも嫌気され始めた2017年以降は株価も下落傾向で、ついに2021年2月発表の本決算で大規模なリストラと共に上場後初の減配を発表しました。
今期の業績については海外たばこ事業の好調に加え円安のプラス要因もあり回復傾向で、株価も一時期に比べ上昇してきています。
JT2021年12月期本決算
ここからはJTが今週2月14日に発表した本決算の内容を検証していきます。
JTの本決算ですが、最終利益は3384億円と前年から282億円の増益になっています。
2021年の年間配当は従来予想通りの140円で変更はありません。
2022年の予測は最終利益3560億円と前期より176億円の増益、配当は10円増の年間150円へ増配となっています。
業績好調の要因は、過去最高の販売数量を記録した海外たばこ事業が大きく貢献した事により、当初計画を大きく上回る実績だった点や日本市場で発売した加熱式たばこPloom Xの着実なシェア伸長としています。
JTは第3四半期時点の通期進捗率が100%を超えていた為、更なる上方修正や増配の期待もありましたが、第4四半期は予定しているリストラ費などの調整が入ったせいか赤字となり、配当も予想通りの140円となっています。
株主優待廃止
またJTは2004年から実施していた株主優待制度の廃止を発表しています。
理由については、株主の皆様への公平な利益還元のあり方という観点から慎重に検討を重ねました結果、配当等による利益還元に集約する為としています。
株主優待は機関投資家にとってメリットは少なく、また優待品の海外発送も行っていない為、国内の個人投資家が受ける利益が大きすぎるとの観点で不公平さを問題視する部分もあり、優待を廃止する企業も最近は増えています。
しかし、今回の優待廃止は発表通り配当等へ利益還元を集約するとの事ですので、そこまでネガティブに捉える必要は無いかなという感想です。
そして今年の年末権利分までは優待が貰えるとの事ですので、私はまだ1回もJTの優待は貰った事がありませんので、最初で最後の優待を来年まで楽しみにしたいと思います。
株価推移

JTの株価は数年まで売られ続けており、コロナショック後の2020年7月に1800円を割れる水準まで売られ、その後は全体の戻りと同様に株価は2000円台を回復しました。
しかし、去年2月の本決算で減配と大規模リストラを発表し、再び1900円を割れる水準まで売られましたが、その後は海外たばこ事業の好調を背景に業績も持ち直し株価も上昇しています。
直近の株価は株主優待廃止の影響もあってか、今回の決算を受けて翌日は売られましたが、その後は戻す展開となっています。
業績推移
銘柄名 | JT |
2019年12月期 | 3481 |
2020年12月期 | 3102 |
2021年12月期 | 3384 |
2022年12月期(会社予想) | 3560 |
JTの2019年からの業績推移を検証していきますが、2020年に大きく落ち込んだ後は回復傾向です。2022年の予測として売上は前期より減収見込みですが、日本市場におけるたばこ事業運営体制の見直しなどで最終利益は増益見込みとなっています。
配当推移
年 | 配当推移 | 配当性向 |
2015年 | 118 | 38.62 |
2016年 | 130 | 54.36 |
2017年 | 140 | 62.07 |
2018年 | 150 | 67.33 |
2019年 | 154 | 77.79 |
2020年 | 154 | 88.04 |
2021年 | 140 | 73.33 |
2022年(会社予想) | 150 | 74.77 |
JTの2015年からの配当推移と配当性向をまとめています。
2019年までは順調に増配傾向でしたが、業績低迷でも増配を継続した事で配当性向の高さが懸念されていました。
そして2021年上場後初の減配を発表しています。しかし、この2021年の減配も当初は年間配当130円へ24円の減配で発表されていましたので、その後の増額で減配幅は小さくなっています。
JTの配当方針は、強固な財務基盤を維持しつつ、中長期の利益成長を実現することにより株主還元の向上を目指すとし、具体的な数値としては配当性向75%を目安にしています。
株主優待制度
冒頭で触れた様にJTの株主優待は廃止になりますが2022年末の権利確定分まではもらえますので、一応内容を表にまとめています。
100株以上を、 1年以上継続保有している株主に対し12月31日現在の株式保有数に応じ、以下相当額のJTグループ会社等の商品を贈呈しています。
保有株数 | 自社商品 |
100株~200株未満 | 2500円相当 |
200株~1000株未満 | 4500円相当 |
1000株~2000株未満 | 7000円相当 |
2000株以上 | 13500円相当 |
JTの株価等指標(2022年2月18日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
JT | 2914 | 2344 | 11.7 | 1.48 | 150 | 6.40 | 74.77 |
JTの配当利回りは今回の増配で6%半ばの水準まで上昇していますが、配当性向は方針通り75%付近の水準です。
今期の業績が予定通り進捗し、配当もこの水準を維持出来ればかなりの高配当銘柄となります。
JTの今後
JTの今後ですが、2024年までの経営計画を発表しており、コロナ禍によりもたらされた消費者行動の変化や変異株の出現等による世界的な経済活動の停滞リスク等により、 今後の見通しは引き続き不透明であるものの、たばこ事業を中心として引き続き利益成長を目指すとしています。
たばこ事業では、HTS(加熱式たばこ)とCombustibles(燃焼性たばこ)を最重要カテゴリとし、経営資源を集中的に投資し中長期的に持続的な利益成長を目指す方針です。
燃焼性たばこは、今後10年間は最大のカテゴリであり続ける見通しとし、RRP(喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある製品)においては、加熱式たばこが持続的な利益成長をもたらすポテンシャルの最も高いカテゴリとしています。
また、医薬事業や加工食品事業については、JTグループの利益成長を補完と位置付け、医薬事業では、次世代戦略品の研究開発及び各製品の価値最大化を目指し、加工食品事業では質の高いトップライン獲得による持続的利益成長を目指す方針です。
JTの投資判断
今回の決算を受けてJTの投資判断ですが、まず1番話題となったのは株主優待制度の廃止でしょう。決算が発表された2月14日の夜はネットでも話題になり賛否が分かれていました。
個人的にも翌日以降の株価を含めどの様に評価して良いか難しい部分がありました。
こういう時の判断は市場に任せるのが1番ですので決算発表後の株価をみていきます。
決算発表翌日の株価は35円程度安くなりましたが、翌日以降は値を戻し、昨日の終値では決算発表前の株価とほぼ同じ水準で終わっています。この事から考えますと株主優待制度の廃止は、少し予想外ではありましたが、冷静に考えるとそこまで大きなネガティブサプライズではないかなといったところでしょうか。
また今後については、たばこ事業を中心として引き続き利益成長を目指す為、経営資源を集中的に投資するとしています。
国内の喫煙者人口の減少や世界的なESG投資の流れなども関係無く、今後もたばこ事業へ注力する方針は頼もしくあり、少し不安でもあります。
しかし、業績については海外たばこ事業の好調を中心に今期も順調な予測になっており、配当も10円増配と減配前の水準に戻る予測になっています。
今後の1番の注目点は、業績が予測通りに推移するかになると思いますので引き続きJTの今後を見守りたいと思っています。
JTの本決算検証はYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧下さい。






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