今回は先日2022年3月期の第3四半期決算が発表された通信大手KDDIとソフトバンク2社の決算内容を中心に2銘柄の現状と今後を比較検証していきます。
通信業界の現状
それではまず通信業界の現状ですが、菅総理による携帯料金値下げ圧力を受け通信会社の株価は大きく下がりました。その後、各社は携帯料金の値下げプランを発表し、菅総理も退陣した事で株価は戻りつつありましたが、携帯料金値下げの影響が業績に出始めた昨年後半以降は再び弱い展開が続いています。
通信会社の通信料収入については、値下げによる収益減のほか、国内市場は飽和状態である為、各社とも通信部門以外での収益確立を目指すようになっています。
今回はそんな通信会社より現在私が保有しているKDDIとソフトバンク2社の第3四半期決算の内容を中心に業績や今後の展開を比較検証していきます。
KDDIの直近決算
まずKDDIは、1月28日に2022年3月期第3四半期決算を発表しています。
KDDIの第3四半期までの最終利益は5542億円と前年同期比で55億円の増益となっています。
通期業績予想、配当予想に変更は無く、年間配当は125円の予定です。
業績好調の要因は、モバイル通信収入においては携帯料金値下げの影響はありましたが、楽天モバイルなどに通信回線を貸して得られるローミング収入でカバー出来た事や成長領域の順調な進捗が要因としています。
また、自社株買いの取得枠500億円の拡大も発表しています。
配当推移
銘柄名 | KDDI |
2015年 | 56 |
2016年 | 70 |
2017年 | 85 |
2018年 | 90 |
2019年 | 105 |
2020年 | 115 |
2021年 | 120 |
2022年(会社予想) | 125 |
KDDIの2015年からの配当推移をまとめていますが順調に増配傾向です。
KDDIの配当方針は、配当性向40%超と利益成長に伴うEPS (1株あたり利益) 成長の相乗効果により、今後も持続的な増配を目指す方針としています。
株価推移

KDDIの株価はコロナショックで2700円を割れる水準まで売られ、その後は値を戻しましたが、菅総理誕生により携帯料金値下げ圧力がかかり再び2600円付近まで売られました。
その後は上下を繰り返しながら戻しましたが、携帯料金値下げの影響が業績に出始めた去年後半より弱い動きが続いています。直近では今回の決算を受けて上昇し3700円台での動きになっています。
ソフトバンク直近決算
ソフトバンクの決算ですが2月3日に2022年3月期第3四半期決算を発表しています。
ソフトバンクの第3四半期までの最終利益は4208億円と前年同期比で129億円の減益となっています。
減益の主な要因は通信料金値下げの影響や出前館の減損41億円の影響としています。
出前館の減損は、子会社であるZホールディングスが保有する㈱出前館の株価推移に鑑み、同社に係る持分法簿価を回収可能価額まで減額した結果との事です。
しかし最高益を目指す通期計画は順調に進捗としており、通期業績予想、配当予想に変更は無く、年間配当は86円の予定です。
配当推移
銘柄名 | ソフトバンク |
2015年 | ‐ |
2016年 | ‐ |
2017年 | ‐ |
2018年 | ‐ |
2019年 | 37.5(期末のみ) |
2020年 | 85 |
2021年 | 86 |
2022年(会社予想) | 86 |
ソフトバンクは上場が2018年の為、2019年からの配当推移をまとめていますが、ここ数年はほぼ横ばいの動きです。
ソフトバンクの配当方針は、中長期的に企業価値を高めるとともに株主の皆さまに利益を還元していくことを重要な経営課題の一つとして位置付けており、ソフトバンクグループおよびその投資先との協働により、少ない資金で投資効率の高い事業展開を行えるため、高い株主還元と成長投資の両立が可能としています。
具体的な数値としては、2021年3月期から2023年3月期においては、親会社の所有者に帰属する純利益に対する総還元性向85%程度を目安に、安定的かつ継続的に1株当たりの配当を実施する方針です。
株価推移

ソフトバンクの株価は菅総理による携帯料金値下げ圧力を受けた2020年9月に1150円付近まで売られましたが、その後は順調に値を戻し1年後の去年9月には1600円を超える水準まで買われました。しかしKDDI同様携帯料金値下げの影響が業績に出始めた去年後半から親会社のソフトバンクとの絡みもあり売られだし、直近では1400円台の動きになっています。
業績推移比較
ここからは、KDDIとソフトバンクの2018年からの最終利益と2020年からの第3四半期時点最終利益を比較検証していきます。
第3四半期時点最終利益(億円)
銘柄名 | KDDI | ソフトバンク |
2020年3月期第3四半期 | 5308 | 4366 |
2021年3月期第3四半期 | 5487 | 4337 |
2022年3月期第3四半期 | 5542 | 4208 |
2020年3月期通期進捗率(%) | 82.9 | 92.2 |
2021年3月期通期進捗率(%) | 84.2 | 88.2 |
2022年3月期通期進捗率(%) | 84.6 | 84.1 |
通期最終利益(億円)
銘柄名 | KDDI | ソフトバンク |
2018年3月期 | 5725 | 4007 |
2019年3月期 | 6176 | 4307 |
2020年3月期 | 6397 | 4731 |
2021年3月期 | 6514 | 4912 |
2022年3月期(会社予想) | 6550 | 5000 |
通期最終利益は2銘柄とも順調に増加傾向です。また通信会社は第4四半期の業績が他の四半期に比べて落ちる傾向がありますので、両銘柄とも通期進捗率は80%台と高めですが例年並みの数値となっています。
配当推移比較
銘柄名 | KDDI | ソフトバンク |
2015年 | 56 | ‐ |
2016年 | 70 | ‐ |
2017年 | 85 | ‐ |
2018年 | 90 | ‐ |
2019年 | 105 | 37.5(期末のみ) |
2020年 | 115 | 85 |
2021年 | 120 | 86 |
2022年(会社予想) | 125 | 86 |
KDDIとソフトバンクの配当推移を比較していきますが、配当に関しては極端な推移になっています。KDDIは2002年度から19期連続の増配を継続中と順調に増配しています。
ソフトバンクの配当は横ばいが続いていますが、配当性向は方針通り85%付近で推移しており、配当利回りも5%後半と高水準を維持しています。
指標比較(2022年2月10日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
KDDI | 9433 | 3769 | 12.94 | 1.71 | 125 | 3.32 | 42.4 |
ソフトバンク | 9434 | 1451.5 | 13.64 | 4.36 | 86 | 5.92 | 80.9 |
KDDIとソフトバンクの株価等指標を比較していきますが、2銘柄の大きな違いは配当利回りです。KDDIが3%前半なのに対してソフトバンクは6%近い利回りです。しかし、配当性向はソフトバンクが80%を超えているのに対して、KDDIは40%台となっています。
通信会社は業績が景気に左右されにくく安定傾向の銘柄ですが、2銘柄の配当に対するスタンスは大きく違う為、銘柄を選ぶ際の大きなポイントになるところです。
株主優待
KDDIは株主優待もあり、保有株式数に応じた「au PAY マーケット商品カタログギフト」が貰えます。
保有年数/保有株数 | 100株~999株 | 1000株以上 |
5年未満 | 3000円相当 | 5000円相当 |
5年以上 | 5000円相当 | 1万円相当 |
また保有期間が5年を超えるとグレードがアップしますので、中長期の高配当銘柄としても最適です。
私はまだ3000円相当のカタログしか貰った事はありませんが、それでも食品を中心にかなり豪華なカタログでした。
KDDI、ソフトバンクの通信以外の強化分野
冒頭に触れた様に通信各社は携帯料金値下げの影響や国内市場の飽和状態もあり、通信料金に頼らない収益構造を確立中です。そこでここからはKDDIとソフトバンクが通信以外のどの分野に力を入れているかを比較していきます。
KDDIは成長領域をライフデザインとビジネスセグメントとしており、ライフデザイン領域ではauPAYによる決済を中心に銀行、クレジット、証券、住宅ローン等の金融間連携を強化し大きく成長中です
ビジネスセグメントではNEXTコア事業(DX)が成長中との事で、具体的にはテレワークなどのコーポレートDXやIoTのトップランナーとして電力やガス向けのスマートメーターやセキュリティ部門で回線が拡大中との事です。
ソフトバンクは、法人のソリューション分野やヤフー・LINE事業の物販eコマースの取り扱い高が成長中としており、スマホ決済サービス「PayPay」についても登録者が4500万人を超え、決済回数、決済取り扱い高共に大きく成長中との事です。
投資判断
今までの点を踏まえKDDIとソフトバンク2社の投資判断ですが、2銘柄共企業規模や業績、今後の方針を含め中長期の高配当銘柄として購入を検討出来る銘柄だと思います。
しかし同じ通信会社でもこの2銘柄の違いは抑えておく必要があります。
KDDIは安定的に継続して増配を続けており業績も右肩上がりです。配当性向も40%前半と滅茶苦茶低い訳ではありませんが、業績好調により1株あたり利益も上昇しますので、業績を伸ばしつつ増配を続け、配当性向は現状維持という理想の展開です。
ソフトバンクも業績は右肩上がりですが、配当は横ばいが続いており配当性向も80%台と高水準です。
しかし、ソフトバンクの配当利回りは6%前後とKDDIの約2倍の水準である為、KDDIの株主優待を考慮しても高配当株銘柄にとってこの差は大きな違いです。
ソフトバンクの配当性向は既に高水準で、今後業績が落ちた時やまだ方針として示されていない2024年以降の配当額は気になるところです。
ただ配当金の大半は親会社のソフトバンクへ入る点を考慮すると配当額が大きく減配となる可能性は低そうな気もしますが、こればっかりは分かりません。
どちらにしても5Gを始め今後の通信業界は更に発展していく事は間違いないでしょうから、今回は触れていない最大手のNTTを含め高配当株として狙いたい業種です。
KDDIとソフトバンクの検証動画はYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧下さい。





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