今回は通信大手3社の2022年3月期第2四半期決算内容を検証し通信会社の投資判断を検討していきます。
大手通信3社の現状
通信会社は昨年以降コロナの影響も受けず業績は順調に推移していましたが、昨年9月の携帯料金引き下げをめぐる、いわゆる菅ショック時に大きな影響を受け3社とも大きく値を下げました。
その後ご存じのように各社とも値下げプランを発表しましたが、株価についてはその後の堅調な相場展開もあり戻してきているところです。
業績推移(2022年3月期第1四半期迄)
銘柄名 | NTT | KDDI | ソフトバンク |
2018年3月期 | 8978 | 5725 | 4007 |
2019年3月期 | 8545 | 6176 | 4307 |
2020年3月期 | 8553 | 6397 | 4731 |
2021年3月期 | 9161 | 6514 | 4912 |
2022年3月期(会社予想) | 10850 | 6550 | 5000 |
こちらに3大通信会社の2022年3月期第1四半期迄の決算をまとめています。
携帯料金値下げの影響が心配されていましたが、各社とも携帯料金に頼らない事業構築が進んでおり3社とも今期の最終利益は増益見込みとなっています。
配当推移(2022年3月期第1四半期決算迄)
銘柄名 | NTT | KDDI | ソフトバンク |
2015年 | 45 | 56 | ‐ |
2016年 | 55 | 70 | ‐ |
2017年 | 60 | 85 | ‐ |
2018年 | 75 | 90 | ‐ |
2019年 | 90 | 105 | 37.5(期末のみ) |
2020年 | 95 | 115 | 85 |
2021年 | 105 | 120 | 86 |
2022年(会社予想) | 110 | 125 | 86 |
配当については、ソフトバンク以外は増配です。
NTTとKDDIは安定して増配を行っており株主還元意識の強さを感じます。
ソフトバンクについては元々配当利回り、配当性向が2社と比較しても高い為、現状維持の配当でも十分高配当株の水準です。
3大通信会社の2022年3月期第2四半期決算内容
それではここからは3大通信会社が先日発表した決算を個別に検証していきます。
NTT

- 上期業績は対前年増収・増益で当期利益は過去最高を更新
- 通信料金の落ち込みは他の分野でカバーし収益・利益ともに想定より好調に推移としていますが、通期の業績や配当に変更無し
- 自己株式の消却(消却前の発行済株式総数に対する7.15%)を発表
KDDI

- 上期業績は携帯料金値下げの影響は想定内も純利益は前期比で減益
- 携帯料金の減益を成長領域(ライフデザイン、ビジネスセグメント)でカバーし通期予測に変更はなし
- 特にauPAY等の決済・金融取扱高や金融事業の営業利益が伸びている状況
ソフトバンク

- 上期業績は通信料金値下げ影響の一方で法人とヤフー・LINEが順調に増益も全体では減益
- PayPay決済手数料有料化による影響は軽微(解約率0.1%)
- 上期業績は減益だが、最高益の通期計画に対し順調に推移しているとの事
決算発表前後の株価
各銘柄の決算発表前後の株価は明暗が分かれています。
NTTは決算発表翌日は前日比で60円位高くなる場面もありましたが、終値は13円安とマイナスで終わっています。しかしその翌日には堅調な日経平均に連られるように値を上げ年初来高値を更新しています。自己株式の消却がポジティブサプライズとして受け止められている感じです。
KDDIの株価は決算発表前から売られており、決算発表を受けて更に値を下げています。
ソフトバンクの株価は決算に向けて順調に推移していましたが、決算発表翌日に約5%安と大きく売られました。
期待が高かった分、減益や増配、自社株買い等のサプライズが無かった点が嫌気された感じかもしれません。
通信大手3社の2022年3月期第2四半期決算の業績、株価推移
ここからは2022年第2四半期決算の業績、株価等データを比較検証していきます。
通期業績
銘柄名 | NTT | KDDI | ソフトバンク |
2018年3月期 | 8978 | 5725 | 4007 |
2019年3月期 | 8545 | 6176 | 4307 |
2020年3月期 | 8553 | 6397 | 4731 |
2021年3月期 | 9161 | 6514 | 4912 |
2022年3月期(会社予想) | 10850 | 6550 | 5000 |
2022年3月期上期業績
銘柄名 | NTT | KDDI | ソフトバンク |
2020年3月期第2四半期 | 5476 | 3475 | 3274 |
2021年3月期第2四半期 | 5415 | 3728 | 3151 |
2022年3月期第2四半期 | 6758 | 3614 | 3072 |
2020年3月期通期進捗率(%) | 63.3 | 54.3 | 69.2 |
2021年3月期通期進捗率(%) | 59.1 | 57.2 | 64.1 |
2022年3月期通期進捗率(%) | 62.3 | 55.2 | 61.4 |
上期業績はNTTが増収増益、KDDIとソフトバンクは増収減益でしたが3社とも通期業績予測に変更はありません。
また上期業績の通期進捗率は3社とも例年並みの水準です。
配当推移
銘柄名 | NTT | KDDI | ソフトバンク |
2015年 | 45 | 56 | ‐ |
2016年 | 55 | 70 | ‐ |
2017年 | 60 | 85 | ‐ |
2018年 | 75 | 90 | ‐ |
2019年 | 90 | 105 | 37.5(期末のみ) |
2020年 | 95 | 115 | 85 |
2021年 | 105 | 120 | 86 |
2022年(会社予想) | 110 | 125 | 86 |
配当についても3社とも従来の予測に変更はありませんでした。
株価等データ
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
NTT | 9432 | 3292 | 10.9 | 1.47 | 110 | 3.34 | 36.3 |
KDDI | 9433 | 3441 | 11.8 | 1.57 | 125 | 3.63 | 42.8 |
ソフトバンク | 9434 | 1539.5 | 14.5 | 4.39 | 86 | 5.59 | 80.9 |
決算を受けての株価下落もありKDDI、ソフトバンクの配当利回りは少し上昇しています。
通信会社の今後
今回の決算を受けて通信株の今後ですが、大手3社はいずれも通信料金値下げの影響を受けておりNTT以外の2社は上期業績減益となっています。
各社とも携帯料金値下げの影響は想定内としており、他の成長領域でカバーしているとしていますが、他の業種では上方修正や増配が目立つ事もあってか少し見劣りする部分はあります。
今後も携帯料金値下げの影響は出てくるものと思われますので、引き続き成長領域への利益構造改革を進めていく事が重要かと思います。
そこでここからは通信大手3社が携帯以外のどの部分に力をいれているかを個別にまとめています。
NTT
- 三菱UFJ 銀行、大阪ガスなど8社とともに、再生可能エネルギーファンド創設に向けた事業運営会社「Zエナジー」を設立
- 「ドコモでんき」提供による電力事業へも参入
- 農産物流通DXによる流通コストやフードロス、温室効果ガス削減へ貢献
KDDI
KDDIは成長領域をライフデザインとビジネスセグメントとしています。
・ライフデザイン領域
auPAYによる決済を中心に銀行、クレジット、証券、住宅ローン等の金融間連携を強化し成長中
・ビジネスセグメント
NEXTコア事業(DX)が成長中との事でIoTのトップランナーとして電力やガス向けのスマートメーターやセキュリティ部門で回線が拡大中
ソフトバンク
- 法人のソリューション分野やヤフー・LINE事業の物販eコマースの取り扱い高が成長中スマホ決済サービス「PayPay」は登録者が4300万人を超え、決済回数、決済取り扱い高共に大きく成長中
以上の様に各社とも携帯以外の分野での収益拡大を目指し、その実績が出始めている事も分かるかと思います。
通信3社の投資判断
今回は通信大手3社の2022年3月期第2四半期決算の内容を中心に通信大手3社の投資判断を検証しました。
業績については通信料金値下げの影響が出始めていますが、各社とも通信料金以外の分野でカバーしていく展開になっています。
元々安定傾向の通信会社が新たな分野でも業績を伸ばしていける構造改革が、今後も進んでいけば将来的に楽しみだと思います。
個人的にも現在保有していないNTTや保有しているKDDI、ソフトバンクの買い増しについても株価が下がる場面があれば狙っていきたいと考えています。
まとめ
通信大手の第2四半期の決算内容を踏まえての投資判断についてはYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。





コメント