今回は最近株価がかなり上昇している通信株よりNTT、KDDI、ソフトバンク3社が先日発表した本決算の内容を、事前に公表されていた四季報のコンセンサス予想と比較していきます。
個人的に通信株はKDDIを200株、ソフトバンクを800株保有しており、NTTは今後購入を検討していますので、通信株の現状と今後を踏まえ今の株価でも高配当株として投資可能か検証していきたいと思います。
通信業界の現状
それではまず通信業界の現状ですが、2020年の秋に菅総理による携帯料金値下げ圧力を受け通信会社の株価は大きく下がりました。
その後、各社は携帯料金の値下げプランを発表し、2021年9月に菅総理が退陣した事で株価は戻りつつありましたが、携帯料金値下げの影響が業績に出始めた昨年後半以降は再び弱い展開が続きました。
2022年に入ると通信料金の落ち込みをその他の成長領域部門でカバー出来始めた事や全体相場の軟調、ロシアのウクライナ侵攻などをきっかけにディフェンシブ銘柄としての強さを発揮してNTTとKDDIの株価は右肩上がりの状況が続いています。
通信会社の通信料収入については値下げによる収益減のほか、国内市場は飽和状態で今後の飛躍的な成長が見込めない為、各社とも通信部門以外での収益確立を目指すようになっています。
最終利益会社予想とコンセンサス予想
銘柄 | コード | 会社予想(億円) | コンセンサス予想(億円) | |
NTT | 9432 | 11000 | 11292 | |
KDDI | 9433 | 6550 | 6644 | |
ソフトバンク | 9434 | 5000 | 5155 |
そんな通信株の最終利益について、決算発表前の会社予想と四季報コンセンサス予想を表にまとめていますが、3社ともコンセンサスが会社予想を上回っています。
通信会社の業績は、携帯料金値下げの影響が出始めていますが通信部門以外での収益が伸びており会社予想は3社とも増益見込みですが、コンセンサスはその会社予想を更に上回っています。
この辺りの状況を踏まえ実際の決算がどうだったのか個別に見ていきたいと思います。
NTT
まずはNTTですが5月12日に本決算を発表しており、最終利益は1兆1810億円で2649億円の増益、配当は従来予想通り年間115円となっています。
今期予測は最終利益が1兆1900億円と90億円の増益、配当は5円増配の年間120円見込みで発表しています。
業績好調の要因は、企業のデジタル変革の取り組みが急速に広がり、国内外でITサービスの需要が増えたことや、テレワークの拡大で家庭向けのインターネットサービスの契約が増えた為としています。
配当推移
銘柄名 | NTT |
2015年 | 45 |
2016年 | 55 |
2017年 | 60 |
2018年 | 75 |
2019年 | 90 |
2020年 | 95 |
2021年 | 105 |
2022年 | 115 |
2023年月期(会社予想) | 120 |
2015年からの配当推移をみていきますが、減配はもちろん据え置きの年すらなく順調に増配傾向です。
NTTの配当方針は、株主還元の充実は当社にとって最も重要な経営課題の一つとし継続的な増配の実施を基本的な考え方としています。
また、EPSは2023年度に370円の目標を掲げており、今後も利益成長に向けて取り組む方針です。ちなみに今期のEPSは現状336円ですので、まだまだ伸びしろがありそうです。
株価推移

株価は菅ショックで2127円まで売られましたが、その後は右肩上がりの状況です。去年夏頃に少し停滞した時期はありましたが、今年に入ってからは上昇ペースに勢いが付いており、直近では3900円台前後での動きです。
KDDI
続いてはKDDIの本決算ですが、最終利益は6724億円と210 億円の増益、配当は従来予想通り年間125円となっています。
今期の最終利益は6880億円と156億円の増益、配当は10円増配の年間135円で発表しています。
業績好調の要因はモバイル通信収入においては携帯料金値下げの影響はありましたが、ライフデザイン領域やNEXTコア事業などの成長領域が利益成長を牽引した為としています。
配当推移
銘柄名 | KDDI |
2015年 | 56 |
2016年 | 70 |
2017年 | 85 |
2018年 | 90 |
2019年 | 105 |
2020年 | 115 |
2021年 | 120 |
2022年 | 125 |
2023年月期(会社予想) | 135 |
配当はKDDIも減配はもちろん、据え置きの年もなく順調に増配傾向です。
KDDIの配当方針は、配当性向40%超と利益成長に伴うEPS成長の相乗効果により、今後も持続的な増配を目指す方針としています。
株価推移

株価は菅ショックで2604円まで売られ後は上下を繰り返しながら値を戻しています。携帯料金値下げの影響が出始めた去年後半に売られるタイミングはありましたが、今年に入ると上昇ペースは加速しており、直近では4500円付近での動きになっています。
ソフトバンク
最後にソフトバンクの本決算ですが、最終利益は5175億円と263億円の増益、配当は従来予想通り年間86円となっています。
今期の最終利益は5300億円と125億円の増益ですが、配当は据え置きの年間86円のままです。
業績好調の要因は、通信料金値上げの影響を法人やヤフー、LINEでカバー出来た為としています。
配当推移
2019年 | 37.5(期末のみ) |
2020年 | 85 |
2021年 | 86 |
2022年 | 86 |
2023年月期(会社予想) | 86 |
ソフトバンクは上場が2018年の為、2019年からの配当推移をまとめていますが、ここ数年はほぼ横ばいの動きです。
ソフトバンクの配当方針は、2021年3月期から2023年3月期においては、親会社の所有者に帰属する純利益に対する総還元性向85%程度を目安に、安定的かつ継続的に1株当たりの配当を実施する方針です。
株価推移

株価は菅ショックで1158円まで売られましたが、その後は順調に値を戻し1年後の2021年9月には1600円を超える水準まで上昇しました。
しかし、携帯料金値下げの影響が業績に出始めた去年後半からは親会社のソフトバンクとの絡みもあり売られだし、直近では1400円台後半での動きになっています。
通信3社最終利益(億円)推移比較
銘柄名 | NTT | KDDI | ソフトバンク |
2018年3月期 | 8978 | 5725 | 4007 |
2019年3月期 | 8545 | 6176 | 4307 |
2020年3月期 | 8553 | 6397 | 4731 |
2021年3月期 | 9161 | 6514 | 4912 |
2022年3月期 | 11810 | 6724 | 5175 |
2023年3月期(会社予想) | 11900 | 6880 | 5300 |
通信3銘柄の最終利益を比較していきますが、3社とも順調です。
各社とも前期は携帯料金値下げの影響がどの程度業績に出るのか懸念されていましたが、結果としては3社とも増益での最終着地になりました。
携帯料金値下げの影響は3社ともありましたが、他の分野で値下げの影響をカバー出来ている状況です。
通信3社最終利益コンセンサス予想比較
銘柄 | コード | 決算発表日 | 最終利益(億円) | 会社予想(億円) | コンセンサス予想(億円) | |
NTT | 9432 | 5月12日 | 11810 | 11000 | 11292 | |
KDDI | 9433 | 5月13日 | 6724 | 6550 | 6644 | |
ソフトバンク | 9434 | 5月11日 | 5175 | 5000 | 5155 |
冒頭で触れた通信3社の最終着地を事前の会社予想、コンセンサス予想と比較していきます。
3社とも会社予想よりもコンセンサスの方が高い予想になっていましたが、結果としては3社とも、そのコンセンサスさえも上回る最終着地と非常に力強い決算になっています。
配当推移比較
銘柄名 | NTT | KDDI | ソフトバンク |
2015年 | 45 | 56 | ‐ |
2016年 | 55 | 70 | ‐ |
2017年 | 60 | 85 | ‐ |
2018年 | 75 | 90 | ‐ |
2019年 | 90 | 105 | 37.5(期末のみ) |
2020年 | 95 | 115 | 85 |
2021年 | 105 | 120 | 86 |
2022年 | 115 | 125 | 86 |
2023年月期(会社予想) | 120 | 135 | 86 |
通信3社の配当推移を比較していきますが、配当に関しては明暗が分かれています。
NTT、KDDIの配当は据え置きの年すらなく順調に増配していますが、ソフトバンクの配当は横ばいが続いている状況です。
しかし、ソフトバンクの配当性向は80%付近と元から高水準で推移しており、配当利回りも5%後半でNTT、KDDIの3%付近と比較するとかなり高いですので、この辺りの判断が通信株へ投資する際の1つのポイントにはなります。
指標比較(2022年6月3日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
NTT | 9432 | 3907 | 11.6 | 1.67 | 120 | 3.07 | 35.7 |
KDDI | 9433 | 4489 | 14.4 | 1.98 | 135 | 3.01 | 43.2 |
ソフトバンク | 9434 | 1475 | 13.1 | 4.14 | 86 | 5.83 | 76.3 |
通信3社の株価等指標を比較していきますが、大きな違いは先程もお伝えした配当利回りでNTTとKDDIは継続して増配を行ってはいますが、最近の株価上昇を受けて配当利回りは3%前後まで低下しています。
一方ソフトバンクの配当は据え置きが続いていますが、株価は停滞している為、配当利回りは5%後半の水準です。
また、最近の株価上昇を受けて3社ともPERやPBRは割安と言える水準では無くなっています。
株主優待
KDDIは株主優待もあり、保有株式数に応じた「au PAY マーケット商品カタログギフト」が貰え、また保有期間が5年を超えるとグレードがアップしますので、中長期の高配当銘柄としても最適です。
保有年数/保有株数 | 100株~999株 | 1000株以上 |
5年未満 | 3000円相当 | 5000円相当 |
5年以上 | 5000円相当 | 1万円相当 |
最近は株主への公平な利益還元の流れが強まっており優待を廃止する企業も多かったですので、KDDIの優待も心配されていましたが、今回の決算で廃止や改悪の発表はありませんでしたので、とりあえずは一安心といったところです。
通信会社の投資判断
今までの点をもとに通信3社の投資判断を検証していきます。
3社とも懸念されていた通信料金値下げの影響をDX関連や決済サービスなど他の事業でカバー出来ており、今回の決算も非常に良い内容でした。
今後も様々な場面でデジタルへの変革は進んでいくと思いますので、携帯会社にとどまらない通信会社の今後は非常に期待できる部分が大きいかと思います。
しかし、個別で見るとNTT、KDDIの直近株価はかなりのペースで上昇している事も事実かと思います。
株価上昇の要因は好調な決算や今後への期待だけでなく、ロシアのウクライナ侵攻などを受けてディフェンシブ銘柄として買われている部分もあるかと思います。
通信3社の業績は今後も順調に伸びて行く可能性が高いかと思いますが、今後の株価も単純に右肩上がりで上昇するかは分かりません。
株価が停滞しているソフトバンクも高い配当性向や株価が親会社ソフトバンクグループの影響を受けてしまうので、突如株価が大きく上下する可能性もあります。
という事で通信株については現在KDDIを200株、ソフトバンクを800株保有しており、NTTの購入を検討していましたが、以上の点を踏まえ一旦様子見でいこうかなと思っています。
NTT、KDDIについては現在の株価上昇ペースが落ち着くまで、ソフトバンクについては今後株価が急落する場面があれば狙っていこうくらいの気持ちで待ち構えたいと思います。
通信3社の本決算はYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。





コメント