今回は高配当株としても人気の高い医薬品メーカー武田薬品工業の銘柄検証を行います。武田薬品工業が先日発表した2022年3月期決算や今後の見通しを踏まえ高配当銘柄として投資可能か検証していきます。
武田薬品工業とは
武田薬品工業は日本の医薬品企業での売上は第1位で国内最大手の医薬品メーカーです。
自らの企業理念に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業としています。
現在約80の国と地域で医薬品を販売しており、世界中に製造拠点を有するとともに日本および米国に主要な研究拠点を有しています。
武田薬品工業の現状
武田薬品工業の現状ですが2010年頃より業績回復の為、海外企業の買収に力を入れてきました。
そして2019年にアイルランドの製薬大手シャイアーを約6兆円で買収し、日本の製薬会社では初めて売上高世界10位以内となっています。
シャイアーは希少疾患、血液製剤分野で強みを持っていた為、従来注力していたがん治療や消化器系疾患の分野以外での成長が期待されています。
そして現在の売上は消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤(免疫疾患)、オンコロジー(がん)、ニューロサイエンス(神経精神疾患)の5つの主要領域でバランスよくなっていますが、特に消化器系疾患領域の「エンティビオ」や血漿分画製剤領域の免疫グロブリン製剤の売上が伸びている状況です。
また、武田薬品工業は海外への輸出も多い為、最近の円安も業績にはプラス要因となっています。
直近業績
武田薬品工業の2022年3月期最終利益は2300億円と1460億円の減益、配当は従来予想通りの年間180円としています。
今期予測は2920億円と620億円の増益、配当は据え置きの年間180円見込みで発表しています。
前期減益の要因として売上は順調に伸びていますが、営業収益の部分で武田コンシューマーヘルスケアの株式や関連資産の売却、およびその他の非中核資産の譲渡に伴う合計2289億円の譲渡益を前年度に計上した反動や研究開発費増加の為としています。
業績推移
銘柄名 | 武田薬品 |
2018年3月期 | 1868 |
2019年3月期 | 1351 |
2020年3月期 | 442 |
2021年3月期 | 3760 |
2022年3月期 | 2300 |
2023年3月期(会社予想) | 2920 |
武田薬品工業の2018年からの最終利益推移を見ていきますが増減の激しい展開が続いています。
売上は買収の効果もあり増収傾向が続いていますが、最終利益は買収に絡む費用や研究開発費の増加などで安定していない点は懸念材料ではあります。
配当推移
年 | 配当金 | 配当性向(%) |
2015年 | 180 | 赤字 |
2016年 | 180 | 177.4 |
2017年 | 180 | 123.8 |
2018年 | 180 | 75.92 |
2019年 | 180 | 128.0 |
2020年 | 180 | 633.8 |
2021年 | 180 | 74.8 |
2022年 | 180 | 122.4 |
2023年3月期(会社予想) | 180 | 95.1 |
2015年からの配当推移と配当性向をみていきますが、年間配当は毎年180円です。
配当は2009年から180円で変わっておらず、30期以上減配はしていません。
武田薬品工業の株主還元方針は、売上と利益が中期的に伸長していくことを見込んでおり、1株当たり年間配当金180円の確立された配当方針を維持した上、自己株式の取得は適切な場合に取り組むとしています。
配当が180円で安定している点は高配当株としての魅力を感じますが、業績の振れ幅が激しく配当性向が100%を大きく超える年がある点は懸念材料ではあります。
株価推移

株価は2021年後半に期待を集めていた新薬候補の臨床試験を中断すると発表した事や買収前のシャイアーが受領した違約金に関する税務費用の影響額を反映して業績を下方修正した事でコロナショック時の安値に迫る2993円まで売られています。
今年に入ってからは好調な売上などを背景に値を戻し3800円を超える場面もありましたが、直近は3500円台で推移しています。
株価指標
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
武田薬品 | 4502 | 3552 | 18.9 | 0.97 | 180 | 5.07 | 95.1 |
年間配当は180円で変化がないですが、株価は低迷が続いていますので配当利回りは5%前後の水準です。
PER、PBRに割安感はなく、今期の配当性向は現状95%とかなりの高水準です。
武田薬品工業の今後
研究開発における戦略的な投資や中国市場を含む新製品上市など成長ドライバーへ投資する方針です。
また前期好調だった血漿分画製剤事業は今期も10%から20%の売上収益成長を見込める模様。
そして持続的な成長のために高度に差別化されたパイプラインを構築していくとしています。
武田薬品工業の投資判断
今までの内容をもとに武田薬品工業の投資判断ですが、世界を代表する製薬メーカーであり安定した配当と配当利回りの高さは高配当株として魅力を感じます。
また製薬メーカーは、景気の動向に業績が左右されない点も中長期投資の高配当株としてはメリットになります。
しかし、武田薬品工業の業績は度重なる企業買収を繰り返した事で突如買収絡みの費用が発生する事や新薬の治験中止などで業績、株価が大きく増減する可能性があります。
業績が大きく増減した場合でも年間配当は180円で安定していますが、途中で触れた様に配当性向の高さは気になる部分です。
2019年から今期予測まで含めた5年間で3年間は配当性向が100%超えており、100%を超えていなかった2021年でも配当性向は75%付近と高水準です。
そして今期の配当性向も現状95%付近ですので、今後少しでも業績を下方修正すると100%を超えてしまう水準です。
財務基盤はしっかりしており30年以上減配していない実績は安心材料ではありますが、いつまでも利益以上の配当を出し続けられる訳ではありませんので、業績の安定は今後の配当推移にも繋がる重要な課題です。
業績を安定させる為にも現在は14製品で売上の約4割を占めていますので、少しでも多く主力製品に加われる新薬を開発する事が製薬メーカーとしての課題であり使命なのだと思います。
そして直近の売上は企業買収の効果もあり順調に伸びてきていますので、最終利益も順調に増益傾向となるかが今後の注目点だと思います。
以上の点を踏まえ武田薬品工業の投資判断ですが、企業規模や事業内容、配当利回りの高さなどは高配当銘柄として魅力を感じる水準です。
新薬の開発状況や突如買収絡みでマイナスの影響が発生するリスクはありますが、ポートフォリオの分散という意味では購入を検討できる銘柄かと思います。
武田薬品工業の投資判断はYouTubeで動画版を投稿していますのであわせてご覧ください。





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