今回は、高配当銘柄としても購入を検討出来る5大総合商社の現状と今後について業績や配当利回り、今後の経営方針等から検証比較しています。
総合商社とは
そもそも商社とはどの様な業態なのかを簡単に検証していきます。
商社の基本的な役割はメーカーと客先(小売店・メーカー等)のパイプ役です。自社の持つ仕入先や物流を活かして客先の求める原料や商品を提供する事がメインの役割です。
商社の中でも企業規模、売上が大きく、多種多様の商品を取り扱っている商社を総合商社と呼びます。総合商社の取り扱い商品はラーメンからミサイルまでと表現される事がある様に多種多様に及びまた国内外の企業と取引を行います。
総合商社程の規模でこれだけ多数の商品を取り扱っている企業は日本にしかなく、日本独自の企業形態といえます。
その中でも代表的な5社を5大総合商社と呼び2020年に投資の神様ウォーレン・バフェットが購入した事でも注目を集めました。
5大総合商社の現状と今後
ここからは5大総合商社の現状や今後の企業方針等を検証します。
5大総合商社の現状は明暗が分かれている状況ですので各銘柄の業績や株価、配当等のデータを比較検証していきます。
業績推移
銘柄名 | 伊藤忠 | 三菱商事 | 三井物産 | 住友商事 | 丸紅 |
2018年3月期 | 4003 | 5601 | 4184 | 3085 | 2112 |
2019年3月期 | 5005 | 5907 | 4142 | 3205 | 2308 |
2020年3月期 | 5013 | 5353 | 3915 | 1713 | -1974 |
2021年3月期 | 4014 | 1725 | 3354 | -1530 | 2253 |
2022年3月期(会社予想) | 5500 | 3800 | 4600 | 2300 | 2300 |
2021年の業績はコロナの影響で大きく下がっていますが、住友商事以外の4社は黒字を維持しています。
2021年の住友商事や2020年の丸紅の赤字転落は、海外で進めている資源部門の損失が響いている状況です。海外での事業展開が多い商社株は、この様な海外事業の損失が突如大きく膨らむ可能性がある事がリスクの1つです。
また、2022年の業績予測については各社コロナからの復活を目指す数値になっています。
株価等データ
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
伊藤忠 | 8001 | 3363 | 9.1 | 1.51 | 94 | 2.80 | 25.38 |
三菱商事 | 8058 | 3072 | 11.9 | 0.81 | 134 | 4.36 | 52.00 |
三井物産 | 8031 | 2552 | 9.1 | 0.92 | 90 | 3.53 | 32.22 |
住友商事 | 8053 | 1527 | 8.3 | 0.76 | 70 | 4.58 | 38.04 |
丸紅 | 8002 | 1004 | 7.6 | 0.96 | 34 | 3.39 | 25.66 |
PERやPBRは市場平均を下回っており、配当利回りは3%から4%の銘柄が中心です。
配当推移
銘柄名 | 伊藤忠 | 三菱商事 | 三井物産 | 住友商事 | 丸紅 |
2015年 | 46 | 70 | 64 | 50 | 26 |
2016年 | 50 | 50 | 64 | 50 | 21 |
2017年 | 55 | 80 | 55 | 50 | 23 |
2018年 | 70 | 110 | 70 | 62 | 31 |
2019年 | 83 | 125 | 80 | 75 | 34 |
2020年 | 85 | 132 | 80 | 80 | 35 |
2021年 | 88 | 134 | 85 | 70 | 33 |
2022年(会社予想) | 94 | 134 | 90 | 70 | 34 |
配当については各社とも増配傾向です。
特にコロナで業績を大きく落とした2021年に増配を行っている企業もあり株主還元姿勢の強さは商社株の魅力の一つです。
総合商社の今後
商社の本来の役割はメーカーと小売店のパイプ役と説明しましたが、最近は通販や少しでもコストを抑える為にメーカーとの直取引を進める企業も増えてきており、従来の商社機能は弱まっています。
また、取り扱い量の多い鉄鉱石や石炭等の資源原料は原料価格の上下に業績が左右させられたり、環境問題の面でも将来にリスクがある為、各社とも資源から非資源への業績シフトは共通の課題となっています。
5大総合商社の特徴と今後の企業方針を比較
ここからは5大総合商社の特徴と今後の企業方針を銘柄ごとにまとめています。
伊藤忠商事

- 非資源部門に強みを持っており業績、株価は堅調に推移
- ファミリーマート等との提携により川下(末端)での利益拡大を目指す
- リテール金融・保険事業のビジネス拡大
- 中期経営計画中(2021年度~2023年度)に純利益6000億円、配当100円を目指す
三菱商事

- 2021年3月期は資源価格(豪州原料炭事業、LNG関連事業等)の下落により大幅減
- 子会社のローソンを中心にリテール事業の拡充を目指す
- NTTグループとの提携で日本産業界のDX促進を目指す
- 2021年度も減配せずに利益成長に合わせて増配していく「累進配当」を継続
三井物産

- 資源部門に強みを持っているが、今後は非資源部門へのシフトを強化
- 2022年、2023年の配当は90円を下限とし、最大500億円の自社株買(2021年5月~6月)実施
- 既存事業の徹底強化と共に周辺事業を強化してエネルギー・電力の次世代領域への転換を加速
- ヘルスケア(病院事業・給食事業等)等の既存事業をデータ事業等の成長基盤構築に進展
住友商事

- 2021年3月期は海外のニッケル生産計画見直しに伴う減損損失の計上850億円が響き赤字転落
- メディアとデジタル部門の収益は他社にはない強み
- 新中期経営計画(2021年度~2023年度)では配当70円を下限とし、配当
性向は30%程度を目安にする
丸紅

- 2021年3月期は前期と比較して4228億円の大幅増益だが、主な要因は前期特損の反動(+4050億円)
- 農業や食料関連のライフライン関連事業が増益
- 2021年度の配当は34円を下限とする
5大総合商社のおすすめランキング
最後に高配当銘柄としてのおすすめ総合商社についてまとめますが、5大総合商社のおすすめ度は判断が難しいところです。
現状の内容からすると伊藤忠が文句なしで1位なのですが、好調な業績と同様に株価も上がっており配当利回り2%台は高配当銘柄としては少し寂しいところです。
安定感や財務基盤で判断すると三菱商事が1位なのですが、今期業績が会社予想通りに復活出来るかは不透明です。
また、バフェットが5大総合商社を購入した理由は、今後コモディティ(商品市況)価格の上昇を見込んでという説もあります。
資源部門の割合が大きい商社は、今までコモディティ価格の下落に苦しめられていましたので、コモディティ価格の上昇はプラス要因になります。
以上の観点から現状1番おすすめな総合商社は三井物産だと思います。
資源部門に強みを持っていながら非資源部門へのシフトも進めている。
そこへコモディディ価格の上昇という増要因も加われば面白い存在になりそうです。
次のおすすめは三菱商事です。
現状は苦戦していますが抜群の安定感と財務基盤を持っており、配当利回りも4%台ですので中長期投資では十分購入を検討出来ると思います。
伊藤忠については、今後の増配や株価の調整局面で配当利回りが3%台半ば程度の水準があれば狙いたいかなというところです。
今回は総合商社についてまとめましたが、いずれの銘柄も日本独自の業務形態としての歴史があり、今後の動向には注目です。
5大総合商社についてはYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。






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