今回は5大総合商社より伊藤忠、三菱商事、三井物産3社の直近決算の内容を中心に現状と今後を見ながらおすすめ度を比較検証していきます。
総合商社3社(伊藤忠、三菱商事、三井物産)の最新情報は下記記事でまとめています。
総合商社3社(伊藤忠、三菱商事、三井物産)の2022年3月期本決算を検証
商社業界の現状
それではまず商社業界の現状から簡単に見ていきますが、もともと商社は原油や鉄鉱石等の資源原料を取り扱う事が多く、ここ数年は資源価格の下落により業績も芳しくない状態が続いていました。また、2021年3月期の決算では多くの企業がコロナの影響を受け大幅な減益となり、資源部門から非資源部門への構造改革は各社共通の課題になっています。
しかし、今期については資源価格高騰により業績が急回復し、各社ともコロナ前の水準を大きく上回る最終利益見込みとなっています。
今回はそんな商社業界より大手の伊藤忠、三菱商事、三井物産3社の直近決算を中心に内容を比較検証していきます。
総合商社3社の特徴
そこで今回検証する総合商社3社の特徴を簡単にまとめていきますが、伊藤忠は従来から非資源部門(情報、金融やファミリーマート)に強みを持っており、ここ数年の業績は他の商社と比較して好調でした。
三菱商事は金属資源部門に強みを持っていますが、企業規模は大きく国内外の様々な企業と取引がある為、金属資源部門以外のセグメント割合のバランスも良い収益構造です。
三井物産は、元々資源部門に強みを持っていましたが、現在非資源部門への収益構造改革も進めているところです。
簡単にまとめると非資源部門に強い伊藤忠、総合力の三菱商事、資源部門に強い三井物産のようなイメージです。
それではここからは3社の直近決算の内容を検証していきます。
伊藤忠直近決算
まずは伊藤忠の直近決算からみていきます。
伊藤忠は2月3日に第3四半期決算を発表していますが、第3四半期迄の最終利益は6788億円と前年同期比で3145億円の増益です。
業績好調により通期最終利益予想を従来予想から700億円増の8200億円へ上方修正していますが、配当は従来予想の年間110円のままです。
業績好調の要因は、非資源部門での利益伸長や資源分野での価格上昇等により全セグメントで増益としています。
配当推移
銘柄名 | 伊藤忠 |
2015年 | 46 |
2016年 | 50 |
2017年 | 55 |
2018年 | 70 |
2019年 | 83 |
2020年 | 85 |
2021年 | 88 |
2022年(会社予想) | 110 |
伊藤忠の2015年からの配当推移をまとめていますが順調に増配傾向です。
コロナ禍でも減配をせず、2015年と比較すると2倍以上の配当額になっています。
伊藤忠の配当方針は2023年度までの中期経営計画中は累進配当を継続としており、ステップアップ下限配当を再導入し、2022年度は120円を下限配当、2023年度は130円を下限配当とする事を発表しています。
また具体的な数値としては、2023年度までに配当性向30%をコミットメントとしています。
株価推移

伊藤忠の株価はコロナショックで2000円を割れる水準まで売られましたが、その後は順調に上昇しています。去年夏頃は3000円前半から半ばの水準でもみ合う時期もありましたが、好調な業績と共に去年後半から更に上昇が続いています。
三菱商事の直近決算
三菱商事は2月3日に3四半期決算を発表していますが、第3四半期時点の最終利益は、6447億円と前年同期比で4756億円の増益です。
業績好調により通期最終利益を従来予想から800億円増の8200億円へ上方修正していますが、配当は従来予想の年間142円のままです。
業績好調の要因は、金属資源、天然ガスの両セグメントに加え自動車関連、鮭鱒養殖、鉄鋼製品などの多くの事業で収益機会を着実に利益に結び付ける事が出来たとして、第3四半期時点で通年の過去最高益を上回っている状況です。
配当推移
銘柄名 | 三菱商事 |
2015年 | 70 |
2016年 | 50 |
2017年 | 80 |
2018年 | 110 |
2019年 | 125 |
2020年 | 132 |
2021年 | 134 |
2022年(会社予想) | 142 |
三菱商事の2015年からの配当推移をまとめていますが、こちらも順調に増配傾向です。
コロナ禍でも増配を継続しており、三菱商事も2015年と比較すると約2倍の数値になっています。
三菱商事の配当方針は、2021年度までの中期経営戦略においても減配せずに利益成長に合わせて増配していく「累進配当」を継続としています。累進配当のもと増配が続いていますので、来期以降も累進配当が継続されるかは注目点です。
株価推移

三菱商事の株価はコロナショックで2000円前半まで売られた後は順調に上昇傾向です。特にここ最近の上昇ペースは早く、4000円の壁もあっさり超えてきているところです。
三井物産の直近決算
三井物産も2月3日に第3四半期決算を発表していますが、第3四半期迄の最終利益は6332億円と前年同期比で4343億円の増益です。
業績好調により通期最終利益を従来予想から1200億円増の8400億円へ上方修正し、配当も従来予想から10円増額の年間配当105円へ増配となっています。
業績好調の要因は商品市況のアップサイド取込みと事業ポートフォリオ良質化による収益基盤の強化を実現としています。
配当推移
銘柄名 | 三井物産 |
2015年 | 64 |
2016年 | 64 |
2017年 | 55 |
2018年 | 70 |
2019年 | 80 |
2020年 | 80 |
2021年 | 85 |
2022年(会社予想) | 105 |
三井物産の2015年からの配当推移をまとめています。たまに配当が据え置きや減配の年はありますが、ここ数年は順調に増配傾向です。
三井物産の配当方針は、2023年3月期までの中期経営計画中は年間配当80円を下限とし、1株あたりの基礎営業キャッシュ・フローを引き上げる事で配当の安定的向上を目指す方針です。
株価推移

三井物産の株価もコロナショックで1400円を割れる水準まで売られた後は、順調に右肩上がりです。三井物産も年明けからの上昇スピードが特に凄く、あっさり3000円の壁を超えてきています。
総合商社3社業績推移等比較
それではここからは、総合商社3社の業績や配当推移等を比較検証していきます。
第3四半期時点最終利益(億円)
銘柄名 | 伊藤忠 | 三菱商事 | 三井物産 |
2020年3月期第3四半期 | 4266 | 3733 | 3350 |
2021年3月期第3四半期 | 3643 | 1691 | 1989 |
2022年3月期第3四半期 | 6788 | 6447 | 6332 |
2020年3月期通期進捗率(%) | 85.0 | 69.7 | 85.5 |
2021年3月期通期進捗率(%) | 90.7 | 98.0 | 59.3 |
2022年3月期通期進捗率(%) | 82.7 | 78.6 | 75.3 |
通期最終利益推移(億円)
銘柄名 | 伊藤忠 | 三菱商事 | 三井物産 |
2018年3月期 | 4003 | 5601 | 4184 |
2019年3月期 | 5005 | 5907 | 4142 |
2020年3月期 | 5013 | 5353 | 3915 |
2021年3月期 | 4014 | 1725 | 3354 |
2022年3月期(会社予想) | 8200 | 8200 | 8400 |
総合商社3社の2018年からの最終利益推移と2020年からの第3四半期時点の最終利益推移を比較していますが、コロナショックで大きく業績を落とした2021年以外は概ね順調です。
今期の業績予測は商品市況上昇の恩恵が大きく3社ともコロナ前の水準を大きく上回る最終利益予想になっています。
また、第3四半期時点の通期進捗率も80%前後で推移していますので、本決算の数字が楽しみな業績になっています。
配当推移比較
銘柄名 | 伊藤忠 | 三菱商事 | 三井物産 |
2015年 | 46 | 70 | 64 |
2016年 | 50 | 50 | 64 |
2017年 | 55 | 80 | 55 |
2018年 | 70 | 110 | 70 |
2019年 | 83 | 125 | 80 |
2020年 | 85 | 132 | 80 |
2021年 | 88 | 134 | 85 |
2022年(会社予想) | 110 | 142 | 105 |
総合商社3社の2015年からの配当推移を比較しています。
3社とも順調に増配傾向ですが、伊藤忠と三菱商事の増配ペースと比較すると三井物産の増配ペースは少し見劣りします。今期は商品市況の恩恵で業績もかなり好調の為、来期以降の配当にも注目です。
株価等指標比較(2022年2月22日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
伊藤忠 | 8001 | 3790 | 6.9 | 1.43 | 110 | 2.90 | 19.88 |
三菱商事 | 8058 | 3953 | 7.1 | 0.95 | 142 | 3.59 | 25.56 |
三井物産 | 8031 | 3029 | 5.8 | 0.98 | 105 | 3.47 | 20.13 |
総合商社3社の株価等指標データをまとめています。
好調な業績と共に株価も上昇している為、配当利回りは以前と比較して低下傾向ですが、それでも三菱商事、三井物産は3%半ば、伊藤忠も3%前後の水準です。
また各社とも業績好調の為、配当性向は20%前後と来期以降の増配にも期待が持てる数字です。
総合商社の今後
総合商社の今後をみていきますが3銘柄共、今期業績好調の大きな要因は資源価格の上昇です。
資源価格も当然上がり続ける訳ではないですし、今までの反動で来期以降は下がる場面もあるかと思います。
当然各社ともその辺りの状況は想定しているかとは思いますし、引き続き非資源部門への構造改革も進んでいくものと思われますが、今期の決算でまだまだ資源価格が業績に与える部分が大きい事も再認識出来ました。
各社ともデジタル化や脱炭素社会への対応、非資源部門の強化へ向け川下(コンビニ等)へのビジネス展開を広げていく方針ですので、今後の商社株を見ていくうえで、資源価格同様、非資源部門への進捗も重要になってくると思います。
総合商社3社の投資判断
今までの点をもとに総合商社の投資判断ですが、今期業績は絶好調で企業規模、配当方針ともに抜群の3社ですので高配当株として十分購入を検討出来る銘柄だと思います。
しかし、特に直近の株価はかなりハイペースで上昇している為、最近のロシア情勢を含め、そう遠くない将来に調整が入りそうな気もします。
総合商社の株価は商品市況の動向に影響を受けやすく、3社とも注目度が高い銘柄である為、値動きも激しくなる傾向があります。
個人的にも現在保有している商社株は三井物産だけの為、伊藤忠や三菱商事の購入を検討していますが、なかなか買い場が無いのが現状です。
しかし、ここで焦って買ってしまうと高値掴みになってしまう可能性もありそうですので、もう少し様子を見つつチャンスを狙うくらいの感じが現状は良さそうな気がします。
3大総合商社の比較検証はYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧下さい。






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