今回は総合商社より伊藤忠商事、三菱商事、三井物産3社が先日発表した本決算の内容を事前に公表されていた四季報のコンセンサス予想と比較していきます。
個人的に総合商社は三井物産を100株保有しており、伊藤忠商事、三菱商事は今後購入を検討していますので、総合商社の現状と今後をみていきたいと思います。
総合商社の現状
総合商社は原油や鉄鉱石などの資源原料を国内外の様々な企業と取引していますが、数年前までは資源価格の下落や2020年はコロナショックにより業績が低迷する事も多かった為、資源部門から非資源部門への収益構造改革を各社とも進めている状況です。しかし、2022年3月期はコロナショックからの経済回復やロシアのウクライナ侵攻を受けた資源価格高騰により各社とも業績が急回復しています。
総合商社3社の特徴
伊藤忠商事は従来から非資源部門(情報、金融やファミリーマート)に強みを持っており、ここ数年の業績は他の商社と比較して好調です。
三菱商事は金属資源部門に強みを持っていますが企業規模は大きく、国内外の様々な企業と取引がある為、金属資源部門以外のセグメント割合もバランスの良い収益構造です。
三井物産は資源部門に強みを持っていますが、現在非資源部門への収益構造改革も進めているところです。
簡単にまとめると非資源部門に強い伊藤忠商事、総合力の三菱商事、資源部門に強い三井物産のようなイメージです。
最終利益会社予想とコンセンサス予想
そんな総合商社の最終利益について、決算発表前の会社予想と四季報コンセンサス予想を表にまとめています。
銘柄 | コード | 会社予想(億円) | コンセンサス予想(億円) | |
伊藤忠商事 | 8001 | 8200 | 8377 | |
三菱商事 | 8058 | 8200 | 8883 | |
三井物産 | 8031 | 8400 | 8735 |
3銘柄ともコンセンサス予想の方が会社予想よりも高い見込みになっていますので、実際の決算がこの数字と比較してどうだったか、決算発表後の株価の動きも含めて検証していきます。
伊藤忠本決算
伊藤忠は5月10日に本決算を発表していますが、2022年3月期の最終利益は8202億円と4188億円の増益となっており、ほぼ会社予想通りの数字でしたがコンセンサス予想を175億円下回りました。
また2022年3月期の年間配当は従来の予想通り110円のままです。
今期予測は最終利益が7000億円と1202億円の減益見込みですが、配当は20円増配の年間130円で発表しています。
配当推移
銘柄名 | 伊藤忠 |
2015年 | 46 |
2016年 | 50 |
2017年 | 55 |
2018年 | 70 |
2019年 | 83 |
2020年 | 85 |
2021年 | 88 |
2022年 | 110 |
2023年(会社予想) | 130 |
2015年からの配当推移をまとめていますが順調に増配傾向です。
コロナショックで業績が落ち込んだ2021年でも増配しており、またここ数年の増配額は業績好調を背景に凄いペースになっています。
伊藤忠の配当方針は2023年度までの中期経営計画中は累進配当を継続としており、2022年度は120円を下限配当、2023年度は130円を下限配当とする事を発表していましたが、今回の決算で今期2022年度の下限配当を130円、2023年度は130円+αを下限配当とする事に変更しています。
また具体的な数値としては、2023年度までに配当性向30%をコミットメントとしています。
株価推移

株価はコロナショックで1911円まで売られましたが、その後は順調に上昇しています。
特に今年に入ってからは右肩上がりのペースが続いており、3月末には4200円を超える場面もありましたが権利落ち以降は値を下げ、また今回の決算を受けて株価は3500円を割れる水準まで売られました。
三菱商事の本決算
三菱商事も5月10日に本決算を発表していますが、2022年3月期の最終利益は9375億円と7650億円の増益となっており、会社予想を1175億円、コンセンサス予想を492億円上回っています。
また2022年3月期の配当は従来予想から8円増額の年間150円で発表しています。
今期予測は最終利益が8500億円と875億円の減益、配当は据え置きの150円となっています。
配当推移
銘柄名 | 三菱商事 |
2015年 | 70 |
2016年 | 50 |
2017年 | 80 |
2018年 | 110 |
2019年 | 125 |
2020年 | 132 |
2021年 | 134 |
2022年 | 150 |
2023年(会社予想) | 150 |
三菱商事の2015年からの配当推移をまとめていますが、順調に増配傾向です。
コロナショックでも増配を継続しており、特に2022年は16円増と大幅の増配です。
三菱商事の配当方針は、2022年度も減配せずに利益成長に合わせて増配していく「累進配当」を継続としています。
前期配当が本決算で8円増配された為、今期配当は現状据え置きとなっていますが、今後の業績次第では今期の増配も期待できそうです。
株価推移

株価はコロナショックで2094円まで売られた後は順調に上昇傾向です。
特に今年に入ってからは上昇ペースを加速させており、ロシアのウクライナ侵攻で一瞬下げる場面もありましたが、すぐに切り返しました。
しかし3月末に4749円の高値を付けた後は権利落ちもあり株価は売られ、また今回の決算を受けて4000円を割れる場面もありましたが、その後は切り返し直近では4200円台後半で推移しています。
三井物産の本決算
三井物産は5月2日に本決算を発表していますが、最終利益は9147億円と5793億円の増益となっており、従来の会社予想を747億円、コンセンサス予想を412億円上回っています。
また、2022年3月期の年間配当は従来予測通り105円となっています。
今期予測は最終利益が8000億円と1147億円の減益見込みですが、配当は15円増配の年間120円で発表しています。
配当推移
銘柄名 | 三井物産 |
2015年 | 64 |
2016年 | 64 |
2017年 | 55 |
2018年 | 70 |
2019年 | 80 |
2020年 | 80 |
2021年 | 85 |
2022年 | 105 |
2023年(会社予想) | 120 |
2015年からの配当推移をまとめていますが、コロナショックの影響を受けた2020年は据え置きとなっていますが、ここ数年の増配額には勢いを感じます。
三井物産の配当方針は2023年3月期までの中期経営計画中は年間配当80円を下限とし、1株あたりの基礎営業キャッシュ・フローを引き上げる事で配当の安定的向上を目指す方針です。
株価推移

株価はコロナショックで1378円まで売られた後は、順調に右肩上がりです。特に去年夏頃からは上昇ペースも上がっており、ロシアのウクライナ侵攻を受けて一旦売られる場面もありましたが、すぐに切り替えしており強い動きが続いています。
また今回の決算は連休谷間5月2日の場中に発表されましたが、翌営業日の5月6日も堅調な動きは続いています。
しかし、連休明け後に伊藤忠や三菱商事の決算が発表されると全体相場の軟調もあり株価は下げる場面がありましたが、直近は3100円前後で推移しています。
総合商社3社最終利益推移(億円)
銘柄名 | 伊藤忠 | 三菱商事 | 三井物産 |
2018年3月期 | 4003 | 5601 | 4184 |
2019年3月期 | 5005 | 5907 | 4142 |
2020年3月期 | 5013 | 5353 | 3915 |
2021年3月期 | 4014 | 1725 | 3354 |
2022年3月期 | 8202 | 9375 | 9147 |
2023年3月期(会社予想) | 7000 | 8500 | 8000 |
総合商社3社の2018年からの最終利益推移を比較しています。
2022年の最終利益は資源価格上昇の恩恵を大きく受け、コロナショックの影響を受けた2021年の数倍となる最終利益です。
今期予測は3社とも資源価格高騰の反動などを織り込み現状減益見込みですが、それでもコロナ前の水準を大きく上回る予想となっています。
総合商社3社最終利益コンセンサス予想比較
総合商社3社の最終着地と会社予想、コンセンサス予想を比較していきます。
銘柄 | コード | 決算発表日 | 最終利益(億円) | 最終利益会社予想(億円) | コンセンサス予想(億円) | |
伊藤忠商事 | 8001 | 5月10日 | 8202 | 8200 | 8377 | |
三菱商事 | 8058 | 5月10日 | 9375 | 8200 | 8883 | |
三井物産 | 8031 | 5月2日 | 9147 | 8400 | 8735 |
三菱商事、三井物産は、会社予想、コンセンサスともに上回る着地となっていますが、伊藤忠は、ほぼ会社予想通りの着地となっており、コンセンサスを下回りました。
総合商社3社の株価は決算が出揃った5月10日以降売られる場面がありましたが、この辺の状況もあってか特に伊藤忠商事が売られています。
配当推移比較
銘柄名 | 伊藤忠 | 三菱商事 | 三井物産 |
2015年 | 46 | 70 | 64 |
2016年 | 50 | 50 | 64 |
2017年 | 55 | 80 | 55 |
2018年 | 70 | 110 | 70 |
2019年 | 83 | 125 | 80 |
2020年 | 85 | 132 | 80 |
2021年 | 88 | 134 | 85 |
2022年 | 110 | 150 | 105 |
2023年(会社予想) | 130 | 150 | 120 |
総合商社3社の2015年からの配当推移を比較していますが、3社ともコロナショックで業績が落ち込んだタイミングでも減配はしておらず、株主還元姿勢の高さを感じます。
また、三菱商事は今回の本決算で2022年3月期の更なる増配を発表した為、今期は現状据え置き予想となっていますが、今後の業績次第では増配の可能性があるかもしれません。
指標比較(2022年5月13日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
伊藤忠 | 8001 | 3541 | 7.4 | 1.24 | 130 | 3.67 | 27.2 |
三菱商事 | 8058 | 4285 | 7.4 | 0.92 | 150 | 3.50 | 26.0 |
三井物産 | 8031 | 3080 | 6.2 | 0.88 | 120 | 3.90 | 24.0 |
総合商社3社の株価等指標をまとめています。
株価は3月権利落ち以降下落している事に加え今回の増配を受けて配当利回りは上昇していますので、3銘柄とも3%半ばから後半の水準です。
また3社とも業績好調ですのでPERは市場平均と比較してかなり割安で、配当性向は20%台と余裕を感じる水準です。
総合商社3社の投資判断
今回の決算を受けて総合商社の投資判断ですが、2022年3月期は資源価格上昇を受けて業績は大きく伸長しました。
冒頭でもお伝えした様に総合商社は現在資源部門から非資源部門への収益構造改革を進めていますが、今回の決算でまだまだ資源部門が収益に与える影響の大きさを再認識する結果となりました。
資源価格の今後はロシアウクライナ情勢を含め不透明な部分が大きく、当然今期はいままでの反動で下がる場面も予測されますので注意は必要です。
しかし、3銘柄ともその辺りの状況を想定して今期は現状減益見込みで業績を発表していますので、今期も総合商社の業績、株価は資源価格に左右される展開が続きそうです。
また最近の株価については去年夏頃からハイペースで上昇していましたので、ようやく押し目がきた様な感じではあります。
個人的にも総合商社は現状三井物産を100株保有しているだけで、伊藤忠商事、三菱商事の購入を検討していますが、特に伊藤忠は今回の決算を受けて株価も下がってきていますので、今後の状況をみながらチャンスがあれば購入したいと考えています。
総合商社3社の投資判断はYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。





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