最近の相場はバリュー株を中心に特に高配当株はしっかりとした値動きが続き、なかなか思う様に狙っている銘柄を購入できない展開が続いています。高配当株投資の1番の目的は中長期にわたり配当を受け取る事で株価の値上がりによる利益を求めるものではありませんが、それでも株価が少しでも安い場面で購入した方が良い事に変わりはありません。
そこで今回は高配当株の強い動きが続く相場のなかでも、最近の株価が下落傾向な4銘柄が高配当株として投資可能か個別に検証していきます。
【4452】花王
最初の銘柄は花王です。
花王はアタックなどでお馴染みの洗剤や石鹸、ボディソープなどのトイレタリー商品、また化粧品など普段の生活で使用する商品を製造、販売する日用品メーカーです。
原料からの一貫生産と物流・販売システムが強みで、国内外に多数の工場や営業拠点があります。
また、花王は現在国内No.1の連続増配記録を更新している株主還元力の高い企業でもあります。
直近決算
花王は12月期決算ですので2月2日に本決算を発表しており、通期最終利益は860億円と236億円の減益ですが、配当は4円増配の年間148円となっています。
今期見込みは最終利益が880億円と20億円の増益、配当は2円増配の年間150円で発表しています。
前期大幅減益の要因としては、未曽有の原材料価格高騰や中国、欧米の景気減速に加え、日本の生活防衛意識の高まりなどの環境変化に対応できなかったためとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 花王 |
2018年12月期 | 1536 |
2019年12月期 | 1482 |
2020年12月期 | 1261 |
2021年12月期 | 1096 |
2022年12月期 | 860 |
2023年12月期(会社予想) | 880 |
2018年からの通期最終利益を見ていきますが、減益傾向が止まりません。コロナ感染が拡大した2020年はハンドソープや手指消毒液などの衛生関連商品の特需がありましたが、化粧品のインバウンド需要消滅などのマイナス要因もあり大きく減益となっています。
直近の業績はコロナからの経済回復の動きもあり売上は伸びていますが、原材料費高騰の影響で減益状態が続いています。
今期はコロナからの経済活動再開の動きが更に加速し、日本市場やインバウンド需要の回復が期待できますが、原材料費高騰など先行きは不透明な状況が継続しているため、若干の増益見込みとしています。
配当推移
銘柄名 | 花王 |
2015年 | 80 |
2016年 | 94 |
2017年 | 110 |
2018年 | 120 |
2019年 | 130 |
2020年 | 140 |
2021年 | 144 |
2022年 | 148 |
2023年(会社予想) | 150 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、低迷する業績とは関係なく配当は増配が続
いており、前期までで33期連続増配の日本記録を更新中です。今期も現状2円ですが増配見込みとしていますので、更に連続記録を伸ばす可能性が高そうです。
花王の配当方針は、安定的・継続的な配当の実施を通じた利益還元を重視としており、具体的な数値としては配当性向40%を目標にしています。
株価推移
株価は2020年6月には9000円を超える場面もありましたが、そこからは右肩下がりの状況です。2022年3月に4663円まで値を下げた後は6000円台まで反発する場面もありましたが、業績低迷を背景に再び下落し、直近は5000円前後で推移しています。
株価指標(2023年3月10日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
花王 | 4452 | 5031 | 26.6 | 2.41 | 150 | 2.98 | 79.2 |
最近の株価は下落が続いているなか増配を継続している事で配当利回りは3%付近まで上昇しています。しかし、ここ数年の業績低迷によりPER、PBRは市場平均より割高で、配当性向は80%付近と目標の40%をかなり上回っています。
投資判断
今までの内容から花王の投資判断ですが、業績、株価が低迷するなか国内No.1の連続増配を継続中とかなり特殊な状況です。日本を代表する企業で株主還元力の高さにも魅力を感じ、連続増配記録にこだわる姿勢も評価したいですが、やはり配当性向80%は高すぎます。
今後も増配を維持するためには業績の向上が最優先課題ですが、原材料費の高騰など先行きは不透明です。以上の点を踏まえ、株価はかなり下落していますが今後の業績や配当推移をもう少し見守る必要があるかと思います。
【2282】日本ハム
2番目の銘柄は日本ハムです。
日本ハムは大手食肉加工メーカーでシャウエッセンや豊潤などで知られるハム、ソーセージ商品やピザ、ハンバーグなどの加工食品まで幅広い商品を製造しています。
生産から加工、販売までを一貫して行っている事が強みで、オーストラリアやアメリカを中心に海外でも事業を展開中です。
プロ野球チーム日本ハムの親会社でもあり、企業規模や知名度ともに日本を代表するメーカーです。
直近決算
日本ハムは1月31日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は192億円と前年同期比175億円の減益となっています。
業績低迷により通期最終利益見込みを170億円へ90億円下方修正しましたが、配当は従来の予想通り年間110円のままです。
業績低迷の要因は、第3四半期に入り食肉や海外事業を取り巻く環境が激変した事に加え、加工事業も主力ブランドの回復が遅れたためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 日本ハム |
2019年3月期 | 195 |
2020年3月期 | 192 |
2021年3月期 | 326 |
2022年3月期 | 480 |
2023年3月期(会社予想) | 170 |
2019年からの通期最終利益について、2021年、2022年は2期続けて大幅増益となっていますが、今期は大きく減益見込みとなっています。
2期連続大幅増益の要因は、コロナショックの影響による外食需要の低迷により業務用商品は苦戦が続きましたが、内食需要の高まりと買い置き需要によりコンシューマ商品が伸びた事に加え、前期は業務用商品の回復や連結子会社マリンフーズ売却による譲渡益発生のためとしています。
今期は原材料費高騰の影響などが懸念されるとして、期初当初から最終利益330億円の減益見込みとしていましたが、主力ブランド商品の回復遅れや輸入食肉の需給バランス悪化、海外牛肉事業の収益性悪化などを要因に四半期決算の度に下方修正を繰り返す厳しい状況が続いています。
配当推移
銘柄名 | 日本ハム |
2015年 | 92 |
2016年 | 66 |
2017年 | 104 |
2018年 | 106 |
2019年 | 90 |
2020年 | 90 |
2021年 | 94 |
2022年 | 102 |
2023年(会社予想) | 110 |
2015年からの配当推移について、数年前までは100円を挟んで増減を繰り返していましたが、直近は業績好調を背景に増配が続いていました。そして今期も業績は先程触れた様に大幅減益見込みとなっていますが、配当は現状増配予定としています。
日本ハムの配当方針は、安定配当を基本とし中長期的な企業価値向上を目的とした最適資本・負債構成の実現に向けた資本政策の一環として位置付けているとの事です。
具体的な目安については、DOE(親会社所有者帰属持分配当率)2.3%程度を目安に、安定的かつ継続的な配当成長を目指すとしています。
株価推移
株価は2017年には7000円を超えていましたが、そこからは下落傾向でコロナショック時には2900円まで値を下げました。その後は反発し4000円台での動きが中心でしたが、直近は再び値を下げ3000円台で推移しています。
株価指標(2023年3月10日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
日本ハム | 2282 | 3840 | 23.1 | 0.80 | 110 | 2.86 | 66.3 |
株価は下落していますが配当は増配を継続していますので、配当利回りは3%前後の水準です。今期業績は大幅減益見込みの影響もありPERは市場平均と比較して割高で、配当性向は66%付近となっています。
投資判断
今までの内容から日本ハムの投資判断ですが、企業規模や知名度は文句なく日本を代表する企業です。ここ数年の業績は大きく増減しており今期も大幅減益見込みですが、数年前と比較するとそこまで悪い数字ではありません。
ただ原材料費高騰などの懸念要因について今後の動向は不透明ですし、今期の配当性向も高水準な事を考慮すると、もう少し様子を見たいところではあります。
【3231】野村不動産HD
3番目の銘柄は野村不動産HDです。
野村不動産HDは野村不動産を中核に持つ持株会社で、「プラウド」ブランドなどのマンション開発や分譲が主力事業です。また、自社ブランドの賃貸ビルやホテルも運営しているほか、東南アジアを中心に海外事業も拡大しています。
直近決算
野村不動産HDは1月26日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は409億円と前年同期比で141億円の増益となっています。
業績好調により通期最終利益見込みを600億円へ30億円上方修正し、配当は従来見込みから5円増額の年間115円としています。
業績好調の要因は、住宅分譲事業において計上戸数が増加したことや収益不動産事業において物件売却収入が増加したためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 野村不動産 |
2019年3月期 | 458 |
2020年3月期 | 488 |
2021年3月期 | 421 |
2022年3月期 | 553 |
2023年3月期(会社予想) | 600 |
2019年からの通期最終利益について数年前までは400億円台での動きでしたが、前期以降は大きく増益傾向となっています。
前期以降業績好調の要因は、顧客ニーズの多様化・低金利環境の継続などの下支えにより、供給戸数がコロナ前の水準まで回復した事や空室率が都心エリアを中心に直近数年間の中では高い水準で推移した事に加え、良好な資金調達環境及び国内不動産に対する国内外投資家の旺盛な投資意欲によって、物流施設・賃貸住宅を中心に物件取引が活発化し、市場規模の拡大が継続した事などが要因としています。
そして今期も引き続き堅調な流れが継続しているとの事で更に増益見込みとなっています。
配当推移
銘柄名 | 野村不動産 |
2015年 | 45 |
2016年 | 57.5 |
2017年 | 65 |
2018年 | 70 |
2019年 | 75 |
2020年 | 80 |
2021年 | 82.5 |
2022年 | 97.5 |
2023年(会社予想) | 115 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、据え置きの年すらなく順調に増配が続いており、特に前期以降は業績好調を背景に増配幅も大きくなっています。
野村不動産HDの配当方針は、2025年3月期までの中長期経営計画フェーズⅠにおいては総還元性向40~50%との方針を掲げており、2026年3月期から始まるフェーズⅡに向け配当性向を40%へ段階的に引き上げる方針です。
株価推移
株価はコロナショックで1465円まで売られましたが、2022年9月には3625円まで上昇しました。しかし、そこからは下落が続き直近は3000円前後で推移しています。
株価指標(2023年3月10日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
野村不動産HD | 3231 | 3060 | 8.9 | 0.84 | 115 | 3.76 | 33.4 |
最近の株価は高値から下落しているなか、大幅増配が続いている事で配当利回りは3%後半の水準です。業績好調によりPER、PBRは市場平均よりも割安で、配当性向は33%付近となっています。
投資判断
今までの内容から野村不動産HDの投資判断ですが、直近の業績や配当は順調に推移しており、配当利回りも3%後半と高配当株として気になる水準です。好調な業績にも関わらず最近の株価が下落している要因は今後の景気後退や国内の金利引き上げ懸念している印象です。
不動産業界は景気後退による住宅市場の低迷や金利引き上げによる住宅ローン金利上昇や借入金利上昇がマイナス材料になりますので仕方がない部分はありますが、過度に下げる場面は狙いたくなる銘柄です。
【7453】良品計画
最後の銘柄は良品計画です。
良品計画は国内では無印良品ブランドで約500店舗を展開しており、取り扱い商品は、衣服や生活雑貨、食料品が中心です。また、海外ではMUJIブランドの商号で中国を中心に店舗を展開しており、海外の店舗数は現状国内よりも多い状況です。
また、最近は未来の食料危機を想定しコオロギ粉末入りのコオロギせんべいやコオロギチョコを発売した事でも話題になっています。
直近決算
良品計画は8月期決算のため1月6日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は38億円と前年同期比で40億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
業績低迷の要因は、売上は国内及び中国大陸における既存店の苦戦を新規出店に伴う店舗数の増加によりカバーできましたが、原材料の高騰や急激な円安に伴う仕入れ価格の上昇により最終利益は減益に陥ったとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 良品計画 |
2020年2月期 | 232 |
2020年8月期(6ヵ月) | -169 |
2021年8月期 | 339 |
2022年8月期 | 245 |
2023年8月期(会社予想) | 213 |
良品計画の2020年からの通期最終利益をみていきますが、増減が激しくなっています。良品計画は2020年に8月決算へ決算時期を変更しているため、2020年8月期は半年分の決算と不規則になっていますが、その2020年8月期はコロナショックの影響で大きな赤字に転落しています。
その後2021年はコロナからの経済回復により、国内事業の販売が好調だった事や海外事業の収益改善が進み過去最高益の水準へV字回復しましたが、前期は減益での着地となっています。
前期減益の要因は、出店拡大に伴う店舗数の増加により売上は増収となっていますが、衣服・雑貨の販売苦戦などによる日本と中国大陸の既存店売上低迷や急激な円安、輸送費の上昇などとしています。今期は引き続き新店および新設既存店の売上増を見込み売上は増収見込みですが、原材料費高騰の影響などを考慮し減益見込みとなっています。
配当推移
銘柄名 | 良品計画 |
2016年2月 | 24.6 |
2017年2月 | 29.3 |
2018年2月 | 34.5 |
2019年2月 | 38.7 |
2020年2月 | 36.4 |
2020年8月(6ヵ月) | 5 |
2021年8月 | 40 |
2022年8月 | 40 |
2023年8月(会社予想) | 40 |
2016年からの配当推移をみていきますが、コロナショックの影響を受けて赤字に転落した2020年8月期に大幅減配となりました。
しかし、2021年は業績の回復を受けて大きく増配となっており、そこからは40円で据え置きとなっています。
良品計画の配当方針は連結業績に基づいた配当性向30%を基準とし、株主の皆様への継続的な利益還元を実施する方針としています。
株価推移
株価は2018年に4120円まで上昇しましたが、その後は右肩下がりの状況が続き、コロナショック時には969円まで売られました。
その後は3000円に迫る水準まで値を戻しましたが、業績低迷を背景に再び株価は売られ直近は1400円前後での動きとなっています。
株価指標(2023年3月10日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
良品計画 | 7453 | 1395 | 17.3 | 1.56 | 40 | 2.87 | 49.6 |
最近の株価は低迷が続いているなか、配当は据え置きですので配当利回りは3%前後の水準です。しかし、今期業績は減益見込みな事もありPERに割安感はなく、配当性向は50%付近と目安にしている30%を大きく上回っている水準です。
投資判断
今までの内容から良品計画の投資判断について、直近の業績は減益が続いていますが新規出店を中心に売上は増収が続いており、原材料費高騰などの問題が落ち着けば最終利益も増えていきそうな印象です。しかし、原材料費高騰の先行きは不透明ですし、中国を中心に海外出店を行っている点も先々リスクとなる要因ではあります。
ただ株価はここ数年で3分の1近い水準まで売られていますので、長い目で見れば今の株価は割安かもしれません。
まとめ
今回は、ここ最近の株価が下落傾向な4銘柄を個別に検証しました。最近の堅調な相場展開でも株価を下げている事もあり、4銘柄ともそれぞれ何かしらの懸念材料を抱えている印象です。
しかし、最近株価を上げている銘柄も数年前までは大きく売られている銘柄も多かったですし、何より株式投資の基本は株価が安いうちに購入する事ですので、株価を下げている要因や今後の懸念点を自分なりに納得する事ができれば、購入を検討しても良いかと思います。
最近の株価が下落している銘柄については、YouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
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