最近の株式市場はアメリカの大統領選でトランプ大統領が当選した事による景気拡大策への期待から日米ともに堅調な展開が続いていますので、このまま年末に向けて力強い動きが継続するか注目が集まっています。
そんななか、今月上旬は3月期銘柄の第2四半期決算や12月期銘柄の第3四半期決算を中心に決算発表がピークを迎えましたので、今回は今月発表された決算の中から保有銘柄を中心に特に気になった銘柄を検証していきますが、最後の部分では異次元の還元を発表した事で配当利回りが大きく上昇した銘柄も検証しています。
11月6日(水)
まずは、アメリカ大統領選の開票状況でトランプ氏優勢の情報が伝わり、日経平均も大きく上昇した11月6日に決算を発表した銘柄の中から総合商社の伊藤忠と自動車メーカーホンダの2銘柄を見ていきます。
【8001】伊藤忠
11月6日決算発表最初の銘柄は総合商社の伊藤忠で、最近は商品市況反落の影響で減益に陥る総合商社が多いなか、ファミリマートや食料関連取引などの非資源部門でカバーし、今期も1割程度の増益予測にしていました。
そんななか、第1四半期決算は減益で通期進捗率も23%付近と微妙な水準でしたので、今回の決算では前期比増益、進捗率も目安の50%付近まで持って来れているのか注目でした。
直近決算
伊藤忠は11月6日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は4384億円と前年同期比256億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因は、非資源分野での盤石な収益基盤や一部事業のターンアラウンドに加え、資産入替に伴う一過性利益の増加影響があったためとの事です。
直近決算の感想
決算の感想について、第1四半期は前期比減益でしたが、第2四半期では前期比増益へと転換しており、通期進捗率も50%付近まで持って来ていますので、さすがというところです。
この辺りの要因は、やはり非資源部門の強みが効いている感じで、決算後の株価も上昇しています。期初の設定ハードルが高めのため、第3四半期以降の上方修正は普通に考えれば厳しそうですが、伊藤忠ならばやってくれそうな気もしてきます。
【7268】ホンダ
11月6日決算発表2番目の銘柄はホンダで日本を代表する輸送機器メーカーです。前期は四輪販売台数の増加や商品価値向上に見合う値付けに加え、円安影響などで過去最高益を記録していますが、今期は厳しい市場環境を想定し1割程度の減益見込みにしていました。
しかし、第1四半期時点の通期進捗率は39%付近とかなりのロケットスタートになっていましたので、今回の決算で通期見込みの上方修正が発表されるか注目でした。
直近決算
ホンダは11月6日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は4946億円と前年同期比1217億円の減益となっているなか、通期最終利益の見込みを500億円下方修正していますが、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、日本やアメリカでの販売台数は伸びていますが、中国の販売台数が価格競争激化などの影響で減少した事に加え、持分法による投資利益減益などのためとの事です。
直近決算の感想
決算の感想について、第1四半期の内容から上方修正の期待もありましたが、逆に下方修正が発表された事はネガティブサプライズでした。ただ、今回の決算で自動車株は苦戦している銘柄が多く、特に日産などは厳しい状況ですので健闘している方かとは思います。
いずれにしても、今後の自動車メーカーには中国市場の動向やEV車への対応、またトランプ大統領誕生による関税の引き上げなど懸念点も多いですので、何とか粘って欲しいところです。
11月7日(木)
続いては、大統領選挙の結果を受けて相場が乱高下するなか、11月7日に決算を発表した銘柄の中からNTT、ジャックスの2銘柄を見ていきます。
【9432】NTT
11月7日決算発表最初の銘柄はNTTです。ここ数年の業績は順調に増益が続いていましたが、今期見込みは通信事業の不振やコスト構造改革に積極的に取組んでいくとして、14%程度の減益見込みで発表しています。
その辺りの影響もあってか最近の株価は低迷が続いており、第1四半期も前期比3割弱の減益でしたので、業績に持ち直しの兆しが見られるのか注目でした。
直近決算
NTTは11月7日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は5547億円と前年同期比1161億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、携帯電話の通信収入減や固定電話事業の不振に加え、量販店での販売強化費増加などの影響としています。
直近決算の感想
決算の感想について、第1四半期に続いて減益状態に変わりはありませんでしたが、減益率は17%程度まで回復しており、通期進捗率も50%を超えてきています。例年の平均は58%付近ですので、普段と比較して厳しい状況である事は変わりませんが、決算後の株価は上昇する場面もありました。
以上の点を踏まえると、今期はこのまま減益着地となる可能性が高そうですが、株価はそろそろ反発して欲しいところです、
【8584】ジャックス
11月7日決算発表2番目の銘柄はジャックスです。ジャックスはオートローンのクレジット事業などを手掛けており、最近の業績は数年前の2倍以上に増えています。
しかし、今期は一部の加盟店で利上げなどの事業改革を行った影響でクレジット事業の取扱高が減速する見込みな事や海外事業の厳しい事業環境に加え、貸倒関連費用の増加などで期初から減益見込みとしていたなか、第1四半期決算でも更なる下方修正を発表しましたので、業績に巻き返しの兆しがあるのか注目でした。
直近決算
ジャックスは11月7日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は111億円と前年同期比12億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、国内事業ではカード・ペイメント事業及びファイナンス事業が堅調に推移しましたが、クレジット事業が利上げなどにより取扱高が減少した事や海外事業では、厳しい事業環境を強いられているベトナムやインドネシアの低迷により取扱高が減少したためとの事です。
直近決算の感想
決算の感想について、今期は厳しい状況が続くジャックスですが、第2四半期単体では増益となっており、累計の減益率も9%程度まで回復してきています。実際、通期進捗率も67%付近で推移していますので、決算後の株価も上昇する場面がありました。
以上の点を踏まえると、最悪の状況は脱した様な雰囲気もありますので、第3四半期以降の上方修正が期待できるかもしれません。
11月8日(金)
続いては週末という事で、今回の決算シーズンも最初のピークを迎えた11月8日から個人投資家の人気も高いオリックスとソフトバンクの2銘柄を見ていきます。
【8591】オリックス
11月8日決算発表最初の銘柄はオリックスで、ここ数年の最終利益は3000億円付近で停滞が続いていましたが、前期は3400億円台に乗せ、今期は3900億円の大幅増益見込みで発表していました。
また、今期から株主優待が廃止となり、今後は配当などに利益還元を集約するとの事でしたが、現状は据え置きの見込みになっています。ただ、今期の配当方針は配当性向39%、もしくは前年度配当金(98.6円)のいずれか高い方としていましたので、今回の決算での増配発表が期待できる状況でした。
直近決算
オリックスは11月8日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は1829億円と前年同期比548億円の増益となっているなか、通期最終利益、年間配当予測に変更はありませんでしたが、中間配当は前期比約19円増配の62.17円で発表しています。
前期比増益の要因は、インバウンド需要の取り込みや不動産売却に加え、投資先のベース利益も伸長した事で金融、事業、投資の3分類とも想定通り順調に推移したためとの事です。
直近決算の感想
決算の感想について、好調な流れが継続し、前期比4割以上の増益、中間配当も配当方針に沿って、小数点第2位まで設定される大幅増配と期待通りの内容でした。年間配当予測は配当方針との兼ね合いで変わりありませんでしたが、通期進捗率も47%付近と順調に推移しています。
以上の点を踏まえると、年間配当が確定するのは来年5月の本決算発表時となりそうですし、株式投資において絶対という言葉は禁句ですが、今期オリックスの年間配当については、〇〇大幅増配となりそうです。
【9434】ソフトバンク
11月8日決算発表2番目の銘柄は通信会社のソフトバンクで、NTT、KDDIと並ぶ大手通信会社です。前期は減益となりましたが、今期は通信料収入の落ち込みに反転の兆しが見えている事やヤフー・LINE事業も引き続き好調を維持している事で増益見込みにしていたなか、第1四半期時点の通期進捗率も32%付近で推移していましたので、好調な状況が続いているのか注目でした。
直近決算
ソフトバンクは11月8日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は3238億円と前年同期比217億円の増益となっているなか、通期最終利益を100億円上方修正していますが、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因は、モバイル売上高が増収基調を維持している事やPayPayが2四半期連続で営業黒字を達成するなど、全セグメントで増益を達成したためとしています。
直近決算の感想
決算の感想ですが、主力のモバイル事業が契約数増加や通信料収入の下げ止まりで順調に推移しているなか、赤字が続いていたファイナンス事業もPayPay連結の売上が順調に拡大しています。
実際、今回の上方修正後でも通期進捗率は63%付近と順調に推移しており、現在の配当性向も79%前後まで低下してきましたので、ソフトバンクには0.1円でも良いので、そろそろ増配を期待したいです。
11月14日(木)
続いては、少し期間が空きましたが、今回の決算シーズンがピークを迎えた11月14日に決算発表を行った銘柄の中から異次元の還元を発表した三菱UFJFG、三井住友FGのメガバンクとリースの三菱HCキャピタルの3銘柄を検証していきます。
【8316】三菱UFJFG
11月14日決算発表最初の銘柄は三菱UFJFGで、メガバンクの三菱UFJ銀行を中核に持つ国内最大手の金融グループです。最近の業績は金利上昇や円安などを要因に貸金収益や海外の融資関連などの各種手数料収入が増加した事で大幅増益が続いており、今期も更に増益の見込みにしていました。
そんななか、第1四半期時点の通期進捗率も37%付近と好調なスタートを切っていましたので、今回の決算で上方修正があるのか注目でした。
直近決算
三菱UFJFGは11月14日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は1兆2581億円と前年同期比3309億円の増益となっているなか、通期最終利益の見込みを2500億円上方修正し、配当も10円増額の年間60円へ修正しています。
業績好調の要因は、子会社のタイ大手銀行KS(クルンシィ)の決算期変更影響や海外における買収、円金利上昇に加え、政策保有株式の売却も進んだためとの事です。
直近決算の感想
決算の感想について、第1四半期の進捗率から最終利益の上方修正は期待できそうな状況でしたが、一気に2500億円の上積みとなっています。数年前に最終利益が初めて1兆円を超えたと話題になっていた事を思い出すと、今期は中間時点で既に1兆円を超えていますので衝撃の成長力です。
また、配当については既に9円の増配見込みだったため、今回の決算での上方修正は厳しいと思っていましたが、想像のはるか上を行く10円の増額と言葉がありません。
【8316】三井住友FG
11月14日決算発表2銘柄目はメガバンクの三井住友銀行やSMBC日興証券などを傘下に持つ三井住友FGです。最近の業績は三菱UFJ同様順調に推移しており、前期は過去最高益を記録しているなか、今期の最終利益は初めて1兆円を超える見込みで発表していました。
そんななか、第1四半期時点の通期進捗率も35%付近と好調に推移していますので、今回の決算で上方修正が発表されるのか注目でした。
直近決算
三井住友FGは11月14日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は7251億円と前年同期比1987億円の増益となっているなか、通期最終利益の見込みを1000億円上方修正し、配当も10円増額の年間120円へ修正しています。
業績好調の要因は、国内外における預貸金収益の増加や資産運用・決済ファイナンスビジネスの好調に加え、政策保有株式の削減加速によって売却益が増加したためとの事です。
直近決算の感想
決算の感想について、三菱UFJ同様に好調な内容で文句の付け様がない決算でした。特に配当は三井住友FGも今回の決算での増額は厳しいと思っていましたので嬉しいサプライズです。
ただ、今後政策金利が0.5%になった場合は更に1000億円の増収効果を見込むとしており、また、今回の上方修正後でも通期進捗率は62%付近で推移していますので、メガバンクは末恐ろしいです。
【8593】三菱HCキャピタル
11月14日決算発表最後の銘柄は三菱HCキャピタルで、最近の業績は過去最高益が続くなか、今期も1割程度の増益予測で発表していました。そんななか、第1四半期時点の通期進捗率は29%付近と順調なスタートが切れていましたので、引き続き好調な状況が続いているのか注目でした。
直近決算
三菱HCキャピタル11月14日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は617億円と前年同期比90億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因は、航空セグメントが好調に推移している事や不動産セグメントにおける大口のアセット売却益に加え、 JSAの決算期変更影響などのためとしています。
直近決算の感想
決算の感想について、同日に発表したメガバンクの決算が異次元だったため、物足りなく感じてしまう部分もありますが、きちんと前期比増益で好調な内容だったかと思います。通期進捗率こそ45.7%と目安の50%を下回っていますが、航空セグメントやロジスティクスセグメントは期初計画を上回る業績推移を見込んでおり、環境エネルギーセグメントも下期に期初計画を上回る売却益を見込んでいるとの事でしたので、引き続き期待したいです。
異次元の還元発表で配当利回りが上昇した銘柄
最後は保有銘柄や決算発表日に関係なく、今回の決算で異次元の還元を発表し、配当利回りが上昇した3つの銘柄を検証していきます。
【8219】青山商事
異次元の還元を発表した最初の銘柄は青山商事で「洋服の青山」を中心に全国で紳士服販売のチェーン店を展開しています。また、雑貨販売や印刷、メディアなどの販促支援サービスなども手掛けるなど、事業の多角化も進めているところです。
直近決算
青山商事は11月12日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は約6億円の赤字に転落しているなか、通期最終利益の見込みに変更はありませんが、配当を従来予想から66円増額の年間127円予測に修正しています。
最終利益が赤字のなか、配当の大幅増額を発表した要因は配当方針の変更によるもので、従来までは年間60円を下限としたうえ、目安を連結配当性向40%としていましたが、今回の決算で連結配当性向 70%もしくは株主資本配当率(DOE)3%のいずれか高い方へと変更しています。
直近決算の感想
決算の感想について、第2四半期時点では赤字に陥っているなか、配当方針の変更により2倍近い増額となった配当予測は衝撃的でした。ただ、最近の業績は増益傾向で現在事業の多角化を注力中とは言え、紳士服メインの事業形態にどこまで将来性があるのかの判断は難しいところです。
そんななか、決算発表後の株価はストップ高を挟んで大きく上昇していますが、配当利回りは依然6%台で推移していますので、今後の動向は気になります。
【3393】スターティアHD
異次元の還元を発表した2番目の銘柄はスターティアHDで中小企業向けにITインフラやサーバーなどを提供しています。最近はデジタルマーケティング事業に注力しており、営業支援ツールや見込み顧客化・商談化ツールなども手掛けています。
そんななか、最近の業績は順調に推移しており、今期から累進配当の導入も発表していました。
直近決算
スターティアHDは11月8日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は10億円と前年同期比約1.5億円の増益となっているなか、通期最終利益の見込みを1.5億円上方修正し、配当も5円増額の年間102円予測へ修正しています。
業績上方修正の要因は、ITインフラ関連事業におけるネットワーク関連機器の販売とビジネスフォンのリプレイスが好調に推移した事やストックサービスの拡販によりストック売上高も好調に積み上げることができたためとの事です。
決算の感想
決算の感想について、最近の好調な流れを引き継ぎ、第2四半期時点の売上や各利益は過去最高益を更新しています。好調な業績と連動して、今期は期初から既に28円の大幅増配見込みにしていた配当も更に増額されましたので、決算後の株価は200円以上上昇しましたが、配当利回りは依然4%半ばと高水準です。
以上の点を踏まえると、ITインフラの需要は今後も高まっていく事が期待できますので、高配当株として気になる銘柄です。
【5020】ENEOS
異次元の還元を発表した最後の銘柄はENEOSです。ENEOSは日本を代表するエネルギー・資源・素材企業グループで、石油や天然ガス開発、金属事業などを手掛けています。従って、業績は商品市況や為替の影響を大きく受けますが、今期は2割以上の減益見込みにしていたなか、第1四半期時点の通期進捗率は39%付近と順調なスタートを切っていましたので、今回の決算で上方修正が発表されるか注目でした。
直近決算
ENEOSは11月13日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は681億円と前年同期比1035億円の減益となっていますが、通期最終利益を100億円上方修正し、配当も4円増配の年間26円予測で発表しています。
業績上方修正の要因は、円の対ドル相場および銅価格が前回予想の前提より高水準で推移しているためとの事です。
決算の感想
決算の感想について、今回の決算で業績の上方修正が発表される期待はありましたが、増配まで発表されたのは衝撃的でした。実際、ENEOSの配当は2020年以降、業績がどれだけ増減しようと年間22円で固定されていましたので、今回の決算でも増配への期待はそこまで高くなかったかと思います。
従って、決算発表後の株価もサプライズで上昇しましたが、配当利回りは3%台を回復しています。
まとめ
今回は大統領選を挟み株式市場が大きく振れ動くなか、今月発表された決算の中から保有銘柄を中心に特に気になった銘柄や異次元の還元を発表した銘柄を検証しました。
決算の内容自体は、第2四半期に進んだ円高や中国市場の低迷などを受け、苦戦している銘柄もありましたが、上方修正を発表してくれた銘柄も多く、第3四半期以降にも期待が持てそうな印象です。
という事で、今回の決算シーズンは一段落付きましたが、株式市場は年末に向けて大きく揺れ動く可能性もありますので、改めて今回の決算を見直し、来年の購入候補の選定を進めたいと考えています。
異次元の還元を発表した銘柄はYouTubeで動画版も投稿していますので、あわせてご覧ください。
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