最近の相場はインフレや金利引き上げによる景気後退懸念に加え、原材料費高騰、為替の過度な変動など懸念材料が複数あるなか、高配当株を中心に株価は強い動きが続いている印象です。
そんななか、抜群の株主還元力を誇り配当利回りも高水準な銘柄が多いリース業界の銘柄は、他の高配当株と比較して株価がそこまで上昇していない気がします。
そこで今回はリース銘柄の代表的な4銘柄の現状を個別に検証していきたいと思います。
【8591】オリックス
最初の銘柄はオリックスです。
オリックスはリース業界の代表的な銘柄ですが、現在はリース業にとどまらず、不動産、金融、事業投資など様々な事業で海外を含む多くの企業と取引しています。
その分コロナショックの影響は大きかったですが、以前と比較して企業規模が大きくなっている事は間違いないです。
そして、去年個人投資家から人気を集めていたカタログギフト方式の株主優待を2024年3月末で廃止すると発表した事でも話題になりました。
直近決算
オリックスは2月6日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は2113億円とほぼ前年同期並みの数字になっており、通期最終利益、年間配当見込みに変更はありませんでした。
前年同期並みだった要因について、保険事業はコロナ給付金の支払いで減益となっていますが、コロナからの経済回復を受けて輸送機器や不動産運営事業などが増益となったためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | オリックス |
2019年3月期 | 3237 |
2020年3月期 | 3027 |
2021年3月期 | 1923 |
2022年3月期 | 3121 |
2023年3月期(会社予想) | 2500 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、コロナショックの影響で大きく減益となった2021年以外は3000億円前後で安定しています。
しかし、前期は弥生の売却益が1632億円含まれていた事もあり、今期はその反動で現状大きく減益見込みとなっています。
しかし、第3四半期時点の通期進捗率は85%付近とコロナからの経済回復もあり持ち直しの動きもありますので、来期以降期待できそうな印象です。
配当推移
銘柄名 | オリックス |
2015年 | 36 |
2016年 | 45.75 |
2017年 | 52.25 |
2018年 | 66 |
2019年 | 76 |
2020年 | 76 |
2021年 | 78 |
2022年 | 85.6 |
2023年(会社予想) | 85.6 |
2015年からの配当推移をみていきますが概ね順調に増配傾向です。
コロナショックの影響が出始めた2020年は据え置きとなっていますが、2021年は配当性向を一時的に50%まで引き上げて増配を実施しています。
オリックスの配当方針は、事業活動で得られた利益を主に内部留保として確保し、事業基盤の強化や成長のための投資に活用することにより株主価値の増大に努めるとしており、業績を反映した安定的かつ継続的な配当を実施するとしています。
そして今期については、配当性向33%または前期配当金額(85.6円)の高い方を年間配当にする方針です。現在の予想は据え置きの85.6円となっており、第3四半期時点のEPSで配当性向33%を計算すると70円付近ですので、今期は据え置きの可能性が高そうです。
株主優待
廃止にはなりますが、まだ2回の猶予がありますので株主優待制度についても表にまとめています。
オリックス | 保有継続年数 | 金額 | 優待品 | |||
100株以上 | 3年未満 | Bコース(5000円相当) | カタログギフト | |||
3年以上 | Aコース(1万円相当) | カタログギフト |
100株以上保有で5000円相当のカタログギフトが貰えるのですが、3年以上の継続保有で1万円相当にグレードがアップする「ふるさと優待」とオリックスグループが提供する各種サービスを割引価格で利用できる株主カードがもらえます。
カタログギフトは毎年楽しみにしていましたので廃止は痛いですが、今後は配当などによる利益還元に集約するとの事ですので、更なる増配を期待したいところです。
株価推移
株価はコロナショックで1100円まで売られた後は順調に値を戻しています。特に2021年以降は上昇ペースが加速し、去年1月には2612円まで上昇しています。
その後はロシアのウクライナ侵攻もあり値を下げ、直近は2300円前後で推移しています。
株価指標(2023年2月10日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
オリックス | 8591 | 2359 | 11.1 | 0.85 | 85.6 | 3.63 | 40.2 |
最近の株価は安定していますが、増配が継続している事もあり配当利回りは3%半ばの水準です。
今期は減益見込みとなっていますが、PER、PBRは市場平均と比較して割安で配当性向は40%付近となっています。
投資判断
今までの内容からオリックスの投資判断ですが、今期の業績見込みが減益な事もあり2022年以降の株価は停滞が続いています。オリックスの場合、2021年までの株価上昇が凄いペースだった事もありますが、他業種の高配当株と比較しても停滞しすぎの気はします。
現在の水準でも指標面に割高感はなく配当利回りも3%後半となっており、何より株主還元力は抜群の銘柄ですので、今後も株価が停滞する様ならば狙ってみたい気もします。
【8566】リコーリース
2番目の銘柄はリコーリースです。
リコーリースは複合機やパソコンなどのオフィス関連機器に加え、医療機器や産業工作機械、計測器などのファイナンス・リースや法人向けに融資を行っているリコー系のリース会社です。
コロナショックでも業績は減益になっていないなか、リース銘柄らしく株主還元力は抜群ですが、ここ数年の株価はそれ程上昇していません。
直近決算
リコーリースは2月10日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は123億円と前年同期比で4億円の増益ですが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
業績好調の要因は、リース&ファイナンス事業において主力である事務用や情報関連機器が回復傾向な事に加え、新規契約利回りの改善が継続しているためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | リコーリース |
2019年3月期 | 119 |
2020年3月期 | 118 |
2021年3月期 | 120 |
2022年3月期 | 134 |
2023年3月期(会社予想) | 135 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、コロナショックの影響も関係なく順調に増益が続いており、特に前期の業績は大きく伸びています。
前期業績好調の要因は、資産利回り改善の継続やレンタル事業の伸長により各セグメントの利益はいずれも計画を達成し、過去最高益を更新したためとの事です。
今期は更に増益見込みとしていますが、第3四半期時点の通期進捗率は90%を超えていますので更なる上積みも期待できそうです。
配当推移
銘柄名 | リコーリース |
2015年 | 50 |
2016年 | 55 |
2017年 | 60 |
2018年 | 70 |
2019年 | 80 |
2020年 | 90 |
2021年 | 100 |
2022年 | 120 |
2023年(会社予想) | 135 |
2015年からの配当推移を見ていきますが好調な業績を背景に増配傾向が続いており、2022年迄で27期連続増配を継続中です。
リコーリースの配当方針は2022年度までの中期経営計画の目標として、配当性向30%を目指すとしています。ただ、現在の配当方針は今期までとなりますので、来期以降の配当方針は気になるところです。
株主優待
リコーリースには株主優待があり、保有株数や保有継続年数によってQUOカードかカタログギフトがもらえますので、詳細を表にまとめています。
保有株数 | 保有継続年数 | 金額 | 優待品 | |||
100株~299株 | 1年未満 | 2000円相当 | QUOカード | |||
1年以上3年未満 | 4000円相当 | |||||
3年以上 | 5000円相当 | |||||
300株以上 | 1年未満 | 5000円相当 | カタログギフト | |||
1年以上3年未満 | 8000円相当 | |||||
3年以上 | 1万円相当 |
特に継続保有年数が3年を超えると金額もかなり大きくなりますので、中長期投資家には有難い株主優待です。
株価推移
株価はコロナショックで2423円まで売られた後は値を戻しましたが、コロナ前の水準には届いていないです。2021年以降は3000円台での動きが中心で、直近は3900円前後で推移しています。
株価指標(2023年2月10日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
リコーリース | 8566 | 3895 | 8.9 | 0.57 | 135 | 3.47 | 30.8 |
ここ数年の株価はじわじわ上昇していますが安定して増配している事で、配当利回りは3%半ばの水準です。
業績好調によりPER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は30%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容からリコーリースの投資判断ですが、業績や配当が順調に推移している事を踏まえると、コロナ前の水準を超えられない株価の動きは物足りなく見えてきます。
27期連続増配と日本でもトップ5に入る連続増配記録を持ちながら、株主優待まであります。
以上の点を踏まえ、最低購入金額は40万円前後と少し高額で個人的には現在100株保有していますが、今後買い増したいと思っています。
【8593】三菱HCキャピタル
3番目の銘柄は三菱HCキャピタルです。
三菱HCキャピタルは、2021年4月に三菱UFJリースと日立キャピタルの合併により誕生した総合リース会社です。
直近の業績は欧米を中心とした事業の伸長や航空関連における売却益などにより増益傾向となっています。
そして、海外事業にも注力しておりアメリカなどで風力や太陽光などの再生可能エネルギー事業にも出資参画しています。
直近決算
三菱HCキャピタルは、2月10日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は859億円と前年同期比で102億円の増益ですが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
業績好調の要因は、2021年11月に完全子会社化した米国の海上コンテナリース会社CAI の利益貢献や航空セグメントなどにおける貸倒関連費用の減少に加え、海外地域セグメントの米州子会社を中心とした事業の伸長などとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 三菱HCキャピタル |
2019年3月期 | 687 |
2020年3月期 | 707 |
2021年3月期 | 553 |
2022年3月期 | 994 |
2023年3月期(会社予想) | 1100 |
2019年からの通期最終利益をみていきますが、コロナショックで業績が落ち込んだ2021年以外は順調に増益傾向となっています。
前期業績が大きく伸びている要因は日立キャピタルとの合併効果もありますが、合併効果が関係ない今期も増益見込みとしており、過去最高益を更新する予測になっています。
そして第3四半期時点の通期進捗率も78%付近と好調を維持していますので、本決算が楽しみな内容です。
配当推移
銘柄名 | 三菱HCキャピタル |
2015年 | 9.5 |
2016年 | 12.3 |
2017年 | 13 |
2018年 | 18 |
2019年 | 23.5 |
2020年 | 25 |
2021年 | 25.5 |
2022年 | 28 |
2023年(会社予想) | 31 |
2015年からの配当推移をまとめていますが順調に増配傾向が続いており、連続増配は23期連続を継続中です。
コロナショック時の2021年は増配額が0.5円とぎりぎりの増配でしたが、その2021年以外は安定した増配額です。
三菱HCキャピタルの配当方針は、2023年4月にスタート予定の新中期経営計画期間中の配当性向イメージである40%程度に沿って決定する方針としています。
株価推移
株価は2020年11月に437円まで下がりましたが、その後は反発しています。しかし、700円を超える場面もあったコロナ前の水準へは戻れておらず、直近は600円台で推移しています。
株価指標(2023年2月10日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
三菱HCキャピタル | 8593 | 679 | 8.9 | 0.63 | 31 | 4.57 | 40.4 |
最近の株価は600円台で安定していますが増配が続いている事もあり、配当利回りは4%半ばと高水準です。
業績好調を受けてPER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は40%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容から三菱HCキャピタルの投資判断についても、業績、配当は順調に推移している事を踏まえると、コロナ前の水準を超えられない株価の動きは物足りなく思えます。
株主優待はありませんが、配当利回りは4%半ばとリース銘柄の中でもトップクラスです。
そして、現在23期連続増配中と今後の増配にも期待できますので、現在400株保有していますが今後も買い増したい銘柄です。
【8425】みずほリース
最後の銘柄はみずほリースです。
みずほリースは2019年により一層の事業成長及び企業価値の向上を実現していくため、みずほ銀行と資本業務提携を実施し、商号を興銀リースからみずほリースに変更しています。
みずほリースは、リース及び割賦といった「モノ」に係わるファイナンスを中心に発展し、現在では法人向けの総合金融サービスグループとして国内外で積極的に事業を展開しています。
直近決算
みずほリースは、2月7日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は247億円と前年同期比で74億円の増益ですが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありませんでした。
業績好調の要因は、収益性の高いファイナンスや不動産分野での資産積上や採算重視の取り組みなどのためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | みずほリース |
2019年3月期 | 165 |
2020年3月期 | 175 |
2021年3月期 | 217 |
2022年3月期 | 149 |
2023年3月期(会社予想) | 260 |
2019年からの通期最終利益についてコロナショックも関係なく順調に増益が続いていましたが、前期は大きく減益となっています。前期大幅減益の要因は、航空業界の低迷による業績悪化及びロシアウクライナ情勢に伴う減損計上に加え、前期にあった投資有価証券売却益の反動としています。
しかし、今期予測はコロナ前を上回る水準となっており、第3四半期時点の通期進捗率も95%付近と更なる上積みも期待できる状況です。
配当推移
銘柄名 | みずほリース |
2015年 | 56 |
2016年 | 60 |
2017年 | 64 |
2018年 | 70 |
2019年 | 78 |
2020年 | 82 |
2021年 | 92 |
2022年 | 110 |
2023年(会社予想) | 130 |
2015年からの配当推移をまとめていますが、業績が大きく落ち込んだ2022年でも増配しており、株主還元力の高さを感じます。そして、今期は現状20円増配と好調な業績を背景に増配幅も大きくなっています。
みずほリースの配当方針は、収益力の向上を図りつつ業績に応じた配当を実施することを基本方針としており、具体的な数値としては配当性向25%以上を目標にしています。
株主優待
みずほリースには、100株以上の保有でクオカードがもらえる株主優待があり、継続保有期間が1年未満で3000円相当、1年以上で4000円相当となっています。
最初から3000円相当のクオカードがもらえますので、なかなか良い株主優待だと思います。
株価推移
株価はコロナショックで1666円まで値を下げた後、2021年9月には3845円まで上昇しました。その後はロシアウクライナ情勢もあり値を下げましたが、今回の決算を受けて株価は少し上昇し直近は3500円付近で推移しています。
株価指標(2023年2月10日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
みずほリース | 8425 | 3545 | 6.6 | 0.65 | 130 | 3.67 | 24.2 |
最近の株価は3000円台で安定しているなか増配が継続している事で、配当利回りは3%半ばの水準です。
今期業績は好調によりPER、PBRは市場平均より割安で、配当性向は24%付近と余裕を感じます。
投資判断
今までの内容からみずほリースの投資判断について、前期はロシアウクライナ情勢の影響もあり大きく業績を落としましたが、今期は過去最高益の水準へV字回復する見込みで配当も順調に増配傾向です。
その割に、株価はまだ上昇しきれていない様にも思いますので、今後も現在の水準が続く様ならば狙ってみたい銘柄です。
まとめ
今回は、他業種の高配当株と比較して株価が出遅れている様に感じるリース4銘柄を個別に検証しました。
今回個別に検証して、リース業界には業績や配当推移が順調で株主還元力の高い銘柄が多い事を改めて感じました。リース銘柄は他の業種と比較してPERが低い傾向にはありますが、それでも指標面を含めコロナ前に届いていない現在の株価は、他の優良株と比較して出遅れている印象です。
という事で、リース銘柄は景気敏感株ですので今後の景気後退懸念はリスクではありますが、株式投資の基本は株価が割安な時に購入する事ですので、将来的には株価が総合商社や銀行株の様になる事を夢みて、今のうちにコツコツ購入していきたいと考えています。
リース4銘柄の検証はYouTubeで動画版も投稿していますので、あわせてご覧ください。
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