先月末からは国内企業も決算シーズンに入りましたが、今回の決算は想像よりも良い内容の銘柄が多く、また好調な業績を背景に累進配当の導入や株主優待の拡充など株主還元を更に向上させている銘柄も複数ありました。
そんななか、先週は12月期銘柄の本決算発表も相次ぎましたので、今回は2月7日(金)から先週発表された決算の中から保有銘柄を中心に特に気になった銘柄を検証していきます。
【9432】NTT
最初は2月7日(金)に決算を発表した銘柄からNTTです。ここ数年の業績は順調に増益が続いていましたが、今期見込みは通信事業の不振やコスト構造改革に積極的に取組んでいくとして、減益見込みで発表しています。
その辺りの影響もあってか最近は株価も低迷が続いていますので、業績に持ち直しの兆しが見られるのか注目でした。
直近決算
NTTは2月7日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は8506億円と前年同期比1605億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、携帯電話の通信収入減や固定電話事業の不振に加え、量販店での販売強化費増加などの影響としています。
直近決算の感想
決算の感想について、第2四半期に続いて減益状態に変わりはありませんでしたが、減益率は16%程度まで回復しており、通期進捗率も77%付近まではきています。ただ、例年の平均は約87%ですので普段と比較して厳しい状況である事に変わりはなく、決算後の株価も売られる展開となりました。
以上の点を踏まえると、今期はこのまま減益着地となる可能性が高そうですが、来期は業績の回復とともに株価の反発も期待したいです。
2月10日(月)
続いては、連休の谷間となった2月10日(月)から個人投資家の人気も高いオリックスとソフトバンクの2銘柄を見ていきます。
【8591】オリックス
2月10日決算発表最初の銘柄はオリックスで、ここ数年の最終利益は3000億円付近で停滞が続いていましたが、前期は3400億円台に乗せ、今期は3900億円の大幅増益見込みとしています。
そんななか、第2四半期時点の通期進捗率も47%付近とまずまずの水準で推移しており、また、配当も現状は据え置き予測になっていますが、今期の配当方針は配当性向39%、もしくは前年度配当金(98.6円)のいずれか高い方としていますので、今回の決算での増配発表も期待できる状況でした。
直近決算
オリックスは2月10日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は2717億円と前年同期比525億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因は、保険の運用益が拡大している事やアセットマネジメント、空港運営の業績が回復している事に加え、複数のセグメントで売却益を計上しているためとの事です。
直近決算の感想
決算の感想について、上方修正の発表こそありませんでしたが、好調な状況が続いており、通期進捗率も70%付近と目安の水準には届いていませんが許容範囲内です。そんななか、何よりも気になる年間配当の行方ですが、あわよくば今回の決算である程度の増配を発表して欲しかったですが、小数点第2位まで設定する方針もあってか5月の本決算まで持ち越しとなりました。
ただ、今回の決算書にも予測通りの最終利益ならば年間配当は133.2円という表記がありましたので、まず間違いないのだと思います。
【9434】ソフトバンク
2月10日決算発表2番目の銘柄は通信会社のソフトバンクで、NTT、KDDIと並ぶ大手通信会社です。前期は減益となりましたが、今期は通信料収入の落ち込みに反転の兆しが見えている事やヤフー・LINE事業も引き続き好調を維持している事で増益見込みにしていたなか、第2四半期時点の通期進捗率も63%付近で推移していましたので、今回の決算で業績の上方修正や増配の発表も無くはない状況でした。
直近決算
ソフトバンクは2月10日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は4366億円と前年同期比300億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因は、モバイル売上高が増収反転している事やPayPayが3四半期連続で営業黒字を達成するなど、全セグメントで増益を達成したためとしています。
直近決算の感想
決算の感想ですが、主力のモバイル事業が契約数増加や通信料収入の下げ止まりで反転しているなか、赤字が続いていたファイナンス事業もPayPay連結の売上が順調に拡大している事で大きく改善しています。
また、今後は金融サービスをPayPayに集約して成長を加速させる事や分散型AIデータセンターの構造など次世代社会インフラへの取組も進展させる方針としていますので、来期以降も楽しみな銘柄です。
2月13日(木)
続いては、今回の決算シーズンも終盤戦に入った2月13日(木)から12月期銘柄のJTとINPEX、そして最近色々あったホンダに加え、大和ハウスを見ていきます。
【2914】JT
2月13日決算発表最初の銘柄はJTで、ここ数年の業績は海外たばこ事業の好調や価格改定により好調を維持していたなか、今期は第3四半期決算で通期見込みを下方修正した事で3%程度の減益見込みになっていました。
そんななか、第3四半期時点の通期進捗率は95%付近と順調に推移していましたが、カナダにおける訴訟の先行きも不透明な状況でしたので、前期の最終着地や何と言っても今期配当の見込みをいくらで発表するのか注目でした。
直近決算
JTは12月決算ですので2月13日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は4633億円と189億円の減益となっていますが、配当は据え置きの年間194円としています。
今期予測は通期最終利益を4500億円と133億円の減益見込みにしていますが、配当は据え置きの年間194円予測で発表しています。
前期の最終利益や今期見込みが減益の要因について、主力のたばこ事業は海外で値上げが浸透した事で営業利益は増益でしたが、新興国通貨安及びコスト関連通貨⾼により、ネガティブな為替影響が発現したためとの事です。
直近決算の感想
決算の感想について、前期の最終着地は減益で今期も減益見込みとなりましたが、主な要因は金融損益の悪化で本業は順調に推移しており、また今期見込みも減益率は3%程度ですので、今後の展開次第では増益となる可能性もありそうです。
そんななか、1番の注目だった配当は据え置きで変わりありませんでした。JTの今期配当については、減配、増配どちらの可能性もありそうでしたので、個人的には据え置きが妥当との思いもありますが、やはり市場は増配を期待しており、決算後の株価も売られています。
【1605】INPEX
2月13日決算発表2番目の銘柄はINPEXで石油や天然ガスなどの開発生産を手掛ける国内最大手の石油開発企業です。前期の最終利益は第3四半期決算で上方修正を行った事もあり2割弱の増益見込みとなっていたなか、通期進捗率も76%付近と順調に推移していましたので、前期の業績や配当は予測付近での着地となりそうでしたが、今期見込みをどの様に発表するのか注目でした。
直近決算
INPEXは12月決算ですので2月13日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は4273億円と1056億円の増益となっているなか、配当は12円増配の年間86円としています。
今期予測は通期最終利益を3300億円と973億円の減益見込みにしていますが、配当は4円増配の年間90円予測で発表しています。
また、今期から2027年までの中期経営計画中は年間90円を起点とする累進配当の導入も宣言しています。
直近決算の感想
決算の感想について、前期の最終利益は従来予想を500億円弱上回る完璧な最終着地でしたが、今期は2割強の減益見込みで発表しています。ただ、主な減益要因は想定の原油価格レートを前期より低く想定しているためですので、良くも悪くも通常運転です。
そんななか、今期から累進配当を宣言してくれましたので、今後も業績は原油価格や為替動向によって大きく増減を繰り返しそうですが、配当への安心感は増しています。
【7268】ホンダ
2月13日決算発表3番目の銘柄はホンダで日本を代表する輸送機器メーカーです。最近の自動車メーカーは世界的な販売不振で厳しい状況が続いており、ホンダも第2四半期決算で下方修正を発表していましたが、通期進捗率は52%付近とまずまずの水準で推移していました。
そんななか、ホンダは去年日産との経営統合に向けた協議を開始すると表明していましたが、決算前には破談になったとの報道もありましたので、その辺りの説明にも注目が集まっていました。
直近決算
ホンダは2月13日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は8052億円と前年同期比644億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当見込みに変更はありません。
前期比減益の要因について、二輪車の販売は好調に推移しており、四輪車も北米での販売は堅調でしたが、中国を中心としたアジアでの販売が減少したためとの事です。
また、日産との経営統合協議を打ち切る事を正式に表明しています。
直近決算の感想
決算の感想について、前期比減益の状況ですが、二輪車の販売は好調に推移しており、通期進捗率も85%付近まで持ってきていますので、順調な内容だったかと思います。そんななか、今回の注目点は日産との経営統合の行方でしたが、事前の報道通り打ち切りとなり、正直この2ヶ月間は何だったんだという感じです。
ただ、経営統合協議を進めるにあたり、年末に発表していた上限1.1兆円の自社株買いは継続して推進すると表明してくれましたので、ホンダホルダーにとっては良い結末だったのかもしれません。
【1925】大和ハウス
2月13日決算発表最後の銘柄は大和ハウスで大阪が本社の住宅総合メーカーです。今期業績は一時的要因の影響もあり1割程度の減益見込みにしていたなか、第2四半期時点の通期進捗率は58%付近と順調に推移していましたので、今回の決算で今期増益着地への期待が持てるのか注目でした。
直近決算
大和ハウスは2月13日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は2368億円と前年同期比206億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因は、物流施設を中心とした開発物件の売却が順調に推移した事や米国での戸建住宅事業の拡大などのためとしています。
また、今期から3年以上継続保有を条件に従来から2倍の優待券がもらえる様に株主優待制度を拡充しています。
直近決算の感想
決算の感想について、前期比増益の状況で通期進捗率も89%付近まで来ていますので、最終着地が増益となる可能性もぎりぎり残した感じです。そんななか、今期から株主優待の拡充も発表しており、大和ハウスの株主優待はホテルやゴルフ場などのグループ会社で理由できる優待券のため、あまり馴染みが無い人がいるかもしれませんが、グルメギフトでも使用できるため、個人的には毎回レトルトカレーを頼んでいます。
私は購入したのが2022年10月ですので、長期優遇されるのは来期からになりますが、この様な還元姿勢強化の方針もあってか、決算後の株価は5000円の大台を超えています。
2月14日(金)
続いては、いよいよ今回の決算発表も最後にしてピークを迎えた2月14日から12月期銘柄のキリンとENEOS、東京海上の3銘柄を検証していきます。
【2503】キリンHD
2月14日決算発表最初の銘柄はキリンHDでキリンビールやキリンビバレッジなどを傘下に持つキリングループの持株会社です。今期は第3四半期決算で下方修正を発表した事で15%程度の減益見込みになっていましたが、数年前と比較すると高水準で推移しており、通期進捗率も82%付近と順調に推移していました。
従って、前期の最終着地に波乱要因は少なめでしたが、今期見込みをどの様に発表するのか注目でした。
直近決算
キリンHDは12月決算ですので2月14日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は582億円と544億円の減益となりましたが、配当は据え置きの年間71円としています。
今期予測は通期最終利益を1500億円と918億円の増益見込みにしているなか、配当は3円増配の年間74円予測で発表しています。
また、今期から配当方針の目安を従来の配当性向40%以上からDOE5%以上へ変更し、累進配当の導入も宣言しています。
直近決算の感想
決算の感想について、前期の最終利益が従来予想を大きく下回った事は衝撃でしたが、要因はヘルスサイエンス事業の成長に向けた基盤を整えるために事業構造改革費用などを計上した事や海外ビール事業に絡む減損損失の影響で本業は順調に推移しています。
実際、今期予測は大幅増益の予測になっており、また累進配当の導入も発表されましたので、株主還元力の向上を感じる好決算だったかと思います。
【5020】ENEOS
2月14日決算発表2番目銘柄はENEOSです。ENEOSは日本を代表するエネルギー・資源・素材企業グループで、石油や天然ガス開発、金属事業などを手掛けています。従って、業績は商品市況や為替の影響を大きく受けますが、今期は2割以上の減益見込みにしていたなか、第2四半期決算で業績の上方修正と久しぶりに増配を発表していましたので、今回の決算で通期見込みが修正される可能性は低そうでしたが、順調に進捗しているのか注目でした。
直近決算
ENEOSは2月14日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は1706億円と前年同期比361億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は油価下落に伴う在庫影響の悪化が主因としていますが、在庫影響を除いた実質の利益では、石油製品のマージン良化や金属事業における半導体材料などの増販などで増益を維持しているとの事です。
直近決算の感想
決算の感想について、前期比減益の状況ですが、要因は原油価格の影響で、また第3四半期単体では大幅増益と本業は順調に推移しているなか、通期進捗率も77%付近まで持ってきています。
以上の点を踏まえると、来期以降も業績は原油価格と連動する動きが続きそうですが、配当は今期の増配をきっかけにどんどん増やして欲しいところです。
【8766】東京海上HD
2月14日決算発表最後の銘柄は東京海上HDで東京海上日動火災保険や日新火災海上などを傘下にしている保険持株会社です。最近の業績は過去最高益が続くなか、今期も第2四半期決算で上方修正を行った事もあり26%程度の増益予測となっていました。
そんななか、海外市場への開拓も進めていますが、直近ではロサンゼルスで起きた山火事の影響が懸念されていましたので、実際にどの程度の影響があるのか詳細な内容が発表されるか注目でした。
直近決算
東京海上HDは2月14日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は8952億円と前年同期比3778億円の増益となっているなか、通期最終利益の見込みを1200億円上方修正していますが、年間配当予測に変更はありません。
業績上方修正の要因は、政策保有株式の売却ペースを更に加速させた事や海外保険事業の好調も続いているためとの事です。
直近決算の感想
決算の感想について、上方修正額が1200億円と巨額だった事で遂に最終利益の見込みは1兆円の大台に乗せていますが、進捗率は90%に迫る水準ですので、最終着地では更なる上積みも期待できそうです。
そんななか、最終利益の半分近くを政策株式の売却益が占めている点は気になる部分ですが、ロサンゼルスの山火事影響も310億円程度の見込みと発表していますので、来期以降にも期待が持てる本決算を期待したいです。
まとめ
今回は2月7日(金)から先週金曜日までに決算を発表した銘柄の中から保有銘柄を中心に特に気になった銘柄を検証しました。決算の内容自体は概ね好調な銘柄が多く、また本決算を発表したINPEXやキリンは配当方針に累進配当を導入していますので、高配当株としての魅力度も高まっています。 という事で、今回の決算シーズンは一段落付きましたが、3月期銘柄の第3四半期決算にも期待が持てる内容が多かったですので、5月の本決算が今から楽しみです。
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