10月下旬からは国内企業でも決算発表が本格化している事で、個別銘柄の株価も決算を受けて大きく上下する展開となっています。
ただ、決算発表で難しいところは、「単純に良い決算で買われる」、「悪い決算で売られる」という事ではなく、「事前予想に対してどうだったか」、「今後の予想がどうなっているか」などに株価が反応する事です。
そのため、株式市場には好決算でも「材料出尽くし」や「事前予想に届かず」などの理由で売られたり、悪い決算でも「悪材料出尽くし」などの表現で買われる事があります。
という事で今回は、11月6日から先週末までに発表された決算の中から、保有銘柄を中心に気になった9銘柄の内容や株価の反応をまとめていきます。
11月6日(月)
まずは11月6日に決算を発表した銘柄の中から総合商社の伊藤忠とニッスイの決算を見ていきます。
【8001】伊藤忠
11月6日決算発表最初の銘柄は総合商社の伊藤忠です。
伊藤忠は従来から繊維や食品などの非資源部門に強みを持っており、前期は微減益での着地となりましたが、数年前と比較して業績は大きく伸びている状況です。
今期も商品市況の反落などを想定して減益の見込みにしていますが、減益率は3%程度と他の総合商社と比較して低い水準でした。
そんななか、第1四半期時点の通期進捗率は27%付近と順調に推移していましたので、既に決算が発表されていた他の総合商社同様に業績の上方修正や配当増額があるのか注目でした。
直近決算
伊藤忠は11月6日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は4128億円と702億円の減益となっています。
第2四半期決算は前期比減益でしたが、通期最終利益の見通しを8000億円へ200億円上方修正し、配当は従来の予想通り年間160円のままでした。
業績上方修正の要因は、自動車や建機関連の取引が想定より好調に推移している事に加え、円安の影響としています。
直近決算の感想
決算の感想について、業績の上方修正はありましたが配当増額は無しと、他の総合商社と比較すると物足りない内容にも見えますが、伊藤忠は従来から減益率も低く、増配幅も大きかったので仕方がない部分はあります。
そして、上方修正後でも通期進捗率は52%付近と順調に推移していますので、今期増益での着地も見えてくる水準となっており、決算後の株価も上昇しています。
【1332】ニッスイ
11月6日決算発表2銘柄目はニッスイです。
ニッスイは水産品の加工や物流を手掛ける大手水産メーカーで、家庭用の冷凍食品でも馴染みがあると思います。
最近の業績はコロナからの経済回復で国内外の販売が堅調に推移している事や国内養殖事業の改善に加え、加工品の販売好調などのために増益が続いており、第1四半期時点の通期進捗率も27%付近と順調に推移していましたので、好調な流れが続いているのか注目でした。
直近決算
ニッスイは11月6日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は116億円とほぼ前年並みの数字で、通期最終利益、年間配当予測に変更はありませんでしたが、通期の売上予測を200億円上方修正しています。
最終利益が前年並みだった要因は、為替の影響に加え食品の値上げ効果もあり売上は増収でしたが、主力の鮭鱒・すりみなどの市況が調整局面に入ったことで評価減が発生した事や商事事業が高値疲れで今後の市況を見据えた買い控えなどの影響があったためとしています。
直近決算の感想
決算の感想について、売上が順調に推移するなか、前年第2四半期に日水製薬の株式売却益があった事を考慮すると前年並みの最終利益は順調に推移している方かと思いますが、決算発表後の株価は1割程度下げる場面がありました。
しかし、増益予測にしている通期最終利益に対しても進捗率は54%付近で推移していますので、引き続き取り巻く環境は不透明としていますが、今後も期待したくなる銘柄です。
11月8日(水)
続いては、11月8日に決算を発表した通信会社のソフトバンクとENEOSの2銘柄を見ていきます。
【9434】ソフトバンク
11月8日決算発表最初の銘柄は、通信会社のソフトバンクです。
最近の業績は通信料収入の値下げによる収益減をPayPay子会社化に絡む再測定益や通信部門以外の分野でカバーし、何とか増益を維持している印象でした。
そのため、今期は大きく減益の見込みとしていましたが、第1四半期時点の通期進捗率は35%付近と好調なスタートでしたので、良い流れが継続しているのか注目でした。
直近決算
ソフトバンクは11月8日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は3021億円と前年同期比679億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
業績好調の要因はPayPay子会社化などによりファイナンス事業が堅調に推移している事や通信料値下げ影響の縮小に加え、スマートフォン契約数の増加などでコンシューマー事業が持ち直しているためとしています。
直近決算の感想
決算の感想について、通信部門以外の事業が順調に伸びているなか、通信料収入の落ち込みにも目途が付き始めるという理想的な展開になっています。
実際、通期進捗率も72%付近と通信会社は第3四半期までの進捗率が高くなる傾向がありますが、それでも例年の平均を10%程度上回っており、決算後の株価も年初来高値を更新しています。
このまま好調な流れは継続しそうですので、第3四半期以降に業績の上方修正も十分期待できそうですが、増配まであるかは微妙なところです。
【5020】ENEOS
11月8日決算発表2銘柄目は、石油元売り最大手のENEOSです。
石油元売り銘柄の業績は、その時の原油価格によって以前仕入れて現在在庫で持っている石油の価格も増減し、販売するガソリンなどの石油製品の利益も変わってくるため、原油価格に大きく左右されます。
そのため、ENEOSの業績も2022年は過去最高益でしたが、前期は大きく減益となっており、今期は25%程度の増益見込みにしていますが、第1四半期決算は大きく減益となっていましたので、第2四半期決算がどの様な数字になっているのか注目でした。
直近決算
ENEOSは11月8日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は1716億円と前年同期比771億円の減益となっています。
第2四半期決算は前期比減益でしたが、通期最終利益を2400億円へ600億円上方修正しており、配当は従来の予想通り年間22円で変更はありません。
業績上方修正の要因は、白油マージンや化学品などのマージンが良化したことや製油所トラブル改善効果に加え、電気の売価改善などの影響としています。
直近決算の感想
決算の感想について、底堅く推移している原油価格や継続している円安の追い風で前期比減益の状況は変わりませんでしたが、配当見込み以外を上方修正する好調な内容でした。
そして、上方修正後でも通期進捗率は72%付近と高水準で、また前期の第3四半期が原油価格下落の影響などで赤字に転落していた事を踏まえると、更なる上積みの可能性も十分ありそうです。
そうなってくると、ENEOSには久しぶりの増配をそろそろ期待したくなります
【7267】ホンダ
続いては11月9日に決算を発表したホンダです。
ホンダは日本を代表する輸送機器メーカーで、オートバイの販売台数、売上高は世界1位となっており、国内に限らず北米やアジアなど世界各国に製品を販売しています。
今期業績は2割以上の大幅増益予測にしているなか、第1四半期決算も北米を中心とする四輪販売台数が堅調に推移しているとして、通期進捗率は45%付近と好調なスタートになっていましたので、今回の決算で業績の上方修正や配当増額があるのか注目でした。
直近決算
ホンダは11月9日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は6163億円と前年同期比2778億円の増益です。
業績好調に伴い通期最終利益を9300億円へ1300億円上方修正しており、配当も年間58円へ8円の増額を発表しています。
業績好調の要因は高収益の二輪事業に加え、四輪事業も大きく改善したためとしており、中国やアジアなどにおける厳しい市場環境は継続していますが、収益体質の更なる強化や為替影響を反映し通期見通しを上方修正したとの事です。
直近決算の感想
決算の感想について、期待通りの上方修正と配当増額で文句の無い決算となりました。
また、上方修正後でも通期進捗率は66%付近と順調に推移していますので、更なる上積みも期待できそうです。
これだけの好決算でありながら、市場予想に届かなかったとして翌日の株価は100円以上値を下げる場面がありましたが、好決算でも売られる典型的なパターンとなっています。
11月10日(金)
続いては、11月10日に決算を発表した銘柄の中から、三菱HCキャピタルと大和ハウスの2銘柄を見ていきます。
【8593】三菱HCキャピタル
11月10日決算発表最初の銘柄は三菱HCキャピタルです。
三菱HCキャピタルは2021年4月に三菱UFJリースと日立キャピタルの合併により誕生した総合リース会社です。
最近の業績は過去最高益が続いており、今期も更に増益の見込みにしているなか、第1四半期時点の通期進捗率は29%付近と順調に推移していましたので、今回の決算で業績の上方修正や配当増額があるのか注目でした。
直近決算
三菱HCキャピタルは11月10日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は527億円と104億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、航空事業が着実に業績回復を続けた事や海上コンテナリース事業も期初計画比で好調に推移しましたが、期初計画外の米国不動産事業における損失や環境エネルギー事業における減損損失の影響としています。
直近決算の感想
決算の感想について、予想外の前期比減益、また通期進捗率も44%付近にとどまるなど低迷した内容になりました。
この決算を受けて翌営業日の株価も50円近く値を下げる展開となっています。
ただ、航空事業の純利益が下期偏重である事や期初計画比で海上コンテナリース事業が好調を継続する事に加え、アセット売却益の上振れも見込めるとして、通期見通しの下方修正は発表していませんので、今後の巻き返しを期待したいところです。
【1925】大和ハウス
11月10日決算発表2番目の銘柄は大和ハウスです。
大和ハウスは大阪が本社の住宅総合メーカーで住宅の他に商業施設や事業施設も手掛けています。
ハウスメーカーにとって今後の金利先高観は、住宅ローン金利上昇に繋がる部分でもマイナス材料となり、実際大和ハウスも今期は2割以上の減益見込みにしていました。
そんななか、第1四半期決算は前期比増益で通期進捗率も24%付近と順調に推移していましたので、引き続き順調に推移しているか注目でした。
直近決算
大和ハウスは11月10日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は1544億円と485億円の増益となっています。
業績好調に伴い通期最終利益を2630億円へ130億円上方修正し、配当も5円増額の年間140円で発表しています。
業績好調の要因は、開発物件売却について物流施設の売却が順調に進捗した事やホテル事業も順調に回復した事に加え、米国の戸建住宅の受注も堅調に推移したためとしています。
直近決算の感想
決算の感想について、業績の上方修正後でも減益の状況に変わりはありませんが、順調に推移しており、配当の増額も発表されました。
懸念されていたアメリカの戸建住宅事業も当初計画を大きく超えて推移しており、翌営業日の株価も決算内容を好感し、年初来高値を更新する場面がありましたが、終値は前日比マイナスとなっています。
この辺りは、今後の市場環境の不透明感を警戒している雰囲気ですので、今後も慎重に見守りたいと思います。
11月14日(火)
最後は11月14日に決算を発表した銘柄の中から三菱UFJFGと三井住友FGのメガバンク2銘柄を見ていきます。
【8316】三菱UFJFG
11月14日決算発表最初の銘柄は三菱UFJFGで、メガバンクの三菱UFJ銀行を中核に持つ国内最大手の金融グループです。
最近の業績は順調に推移しているなか、前期はMUB(米国地銀ユニオンバンク)の株式譲渡に絡む臨時損失が発生した事で減益とはなりましたが、最終利益は1兆円の大台を超えています。
そんななか、今期は16%程度の増益見込みにしているなか、第1四半期決算は前期MUB関連損失の反動があったものの、通期進捗率は43%付近と好調なスタートを切っていましたので、今回の決算で業績の上方修正や配当増額があるのか注目でした。
直近決算
三菱UFJFGは11月14日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は9272億円と前年同期比6962億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
業績好調の要因は、海外の融資関連手数料増加や前年に計上したポートフォリオ組換えに伴う国債等の債券関係損益やMUB関連損失の反動に加え、円安の影響としています。
また、総額4,000億円を上限とする自己株式取得も発表しています。
直近決算の感想
決算の感想ですが、第1四半期までの好調な流れが継続し、第2四半期時点としては過去最高益、通期進捗率も71%付近と素晴らしい内容でした。
通期最終利益や配当の増額こそありませんでしたが、このままいけば第3四半期以降の上方修正が期待できそうな印象です。
しかし、今期は前期とは逆にMUB関連の反動で第4四半期が大きく減益となる可能性が高いですので、引き続き第3四半期までにどの程度利益を積み上げられるか注目です。
そして、決算翌営業日の株価は前日に発表されたアメリカのCPIが市場予想を下回り、長期金利が下落した影響もあってか、前日比マイナスという結果になっています。
【8316】三井住友FG
11月14日決算発表2番目の銘柄は三井住友FGで、メガバンクの三井住友銀行やSMBC日興証券などを傘下に持つ金融持株会社です。
最近の業績は順調に推移しており今期も増益の見込みにしているなか、第1四半期時点の通期進捗率も30%付近と好調なスタートでしたので、引き続き業績は順調に推移しているか、そして業績や配当の上方修正があるのか注目でした。
直近決算
三井住友FGは11月14日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は5264億円と前年同期比10億円の増益となっています。
業績好調に伴い通期最終利益を9200億円へ1000億円上方修正し、配当は20円増額の年間270円で発表しています。
業績上方修正の要因について、SMBC日興の回復や国内外の貸金収益増に加え、円安や株高などのマーケット要因もあったためとの事です。
また、1500億円を上限とする自社株買いも発表しています。
直近決算の感想
決算の感想について、期待通りの好決算と期待を上回る年間20円の配当増額に加え、自社株買いまで発表される完璧な決算でした。
そして、上方修正後でも通期進捗率は57%付近で推移していますので、現状の好調な流れが続けば更なる上積みも期待できそうです。
しかし、三菱UFJFG同様に翌営業日の株価はアメリカの長期金利低下の影響で上値が重たくなりました。
まとめ
今回は保有銘柄を中心に11月6日から先週までに発表された9銘柄の決算や決算を受けた株価動向を検証しました。
通期見通しの上方修正を発表した銘柄は合計6銘柄と多く、配当増額を発表した銘柄もホンダ、大和ハウス、三井住友FGと好決算が多かった印象です。
ただ、好決算を素直に好感して株価が上昇した銘柄は少なく、ホンダやメガバンクの様に好決算でも翌日の株価が売られた銘柄も目立ちました。
この辺りは冒頭でもお伝えした様に事前予想との比較や外部環境に左右された印象ですが、好決算でも売られた銘柄は購入チャンスの場合もありますので、チェックしておきたいところです。
直近の決算が気になった9銘柄はYouTubeで動画版を投稿していますので、あわせてご覧ください。
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