サプライズ決算で株価が大きく上下した高配当株

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銘柄検証

最近の株式市場は衆議院選挙を挟み上下を繰り返しており、選挙前は与党の過半数割れを想定して大きく売られる場面がありました。しかし、実際に与党が過半数割れとなった後は材料出尽くしからか堅調な展開が戻っていたなか、先週金曜日はNY市場の下落や先月末の日銀会合で年内の追加利上げの可能性が高まったとの見方から大きく下げる展開となっています。

そんななか、今後の相場はまもなく投票が始まるアメリカの大統領選に注目が集まっているところですが、先週からは決算発表も本格化しています。

今回の決算は3月期銘柄は折り返しとなる第2四半期決算、12月期銘柄は終盤となる第3四半期決算ですので、通期業績や年間配当予測の上方修正が発表される可能性も高まりますが、一時期と比較して円高が進んでいる状況が、業績にどの様に影響しているか気になるところでもありまます。

という事で今回は、先週発表された決算の中から、保有銘柄を中心に特に気になった9銘柄を検証していきます。

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10月31日(木)

まずは、本格的に決算発表が増え始めた10月31日から、上方修正の期待がかかるJTや武田薬品など個人投資家の人気も高い5銘柄を見ていきます。

【2914】JT

10月31決算発表最初の銘柄はJTで、メインのたばこ事業のほか医薬品や加工食品なども製造しています。ここ数年の業績は海外たばこ事業の好調や価格改定により好調を維持していたなか、今期も第2四半期決算で通期見込みを上方修正しましたが、依然1.5%程度の減益見込みの状況でした。

ただ、第2四半期時点の通期進捗率は64%付近と順調に推移していましたので、今回の決算での更なる上方修正や据え置きとなっている配当の増配発表が期待できる状況となっていました。

直近決算

JTは10月31日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は4424億円と前年同期比4億円の増益となっていますが、通期最終利益の見込みを80億円下方修正しており、年間配当予測については変更ありません。

通期最終利益を下方修正した要因は、たばこ事業における力強いモメンタムに買収したVGR(米たばこメーカー)の貢献も加わり、売上や営業利益は上方修正していますが、金融損益の悪化及び法人税負担の増加に加え、VGR買収関連の費用を織り込んだためとの事です。

直近決算の感想

決算の感想について、JTには通期最終利益や配当の上方修正を期待していましたので、配当の据え置きは、まだ許容範囲内でしたが、通期最終利益の下方修正はネガティブサプライズでした。ただ、下方修正の要因は法人税負担や買収関連費用の支払いによるもので、本業は順調に推移しており、通期進捗率も95%付近まで持ってきています。

以上の点を踏まえると、カナダにおける訴訟の先行きが不透明な事も加わり、決算翌営業日の株価は3%以上下落しましたが、今後の買収効果も含め、来期以降も期待できそうです。

【4502】武田薬品

10月31日決算発表2番目の銘柄は武田薬品工業で、最近の業績は減益傾向が続いているなか、今期も6割近い減益予測で発表しています。大幅減益見込みの要因は、VYVANSEを含む独占販売期間満了によるマイナス影響としていますが、第1四半期の最終利益は既に通期見込みを372億円オーバーしている状況でした。

従って、今回の決算では通期見通しの上方修正が行われるのか注目でした。

直近決算

武田薬品工業は10月31日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は1872億円と1459億円の増益となっているなか、通期最終利益を100億円上方修正していますが、年間配当見込みに変更はありません。

業績上方修正の要因は、後発品によるVYVANSEの減少が想定より緩やかだった事に加え、成長製品や新製品の伸びが独占販売期間満了によるマイナス影響を上回ったためとの事です。

直近決算の感想

決算の感想について、期待通り通期最終利益の上方修正は発表されましたが、上方修正額はわずかに100億円で、依然前期比5割程度の減益見込みとなっており、また、第2四半期時点で通期見込みを1200億円程度上回る利益が稼げている状況です。

上方修正額がわずかに100億円だった要因については、今期予定している事業構造再編費用1400億円のうち、上期は計画通りの616億円を計上しているとしており、下期は残りの約800億円が計上される予定としています。

以上の点に加え、引き続きVYVANSEの減少や研究開発費が下期に集中する事などが懸念されるとしており、決算翌日の株価も上昇で始まった後、下落に転じ、わずかにプラスで引けるという複雑な展開になっています。

【9882】イエローハット

10月31日決算発表3番目の銘柄はイエローハットで、カー用品を専門に取り扱う量販店です。前期業績は減益となりましたが、ここ数年は過去最高益を記録する事も多く、今期は再び増益見込みとしているなか、第1四半期は前期比6%程度の減益で通期進捗率も21%付近と少し心配なスタートになっていましたので、業績に持ち直しの動きが見られるのか注目でした。

直近決算

イエローハットは10月31日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は39億円と前年同期比1億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当見込みに変更はありません。

前期比減益の要因は、タイヤ・オイル・バッテリーなど消耗品の販売好調と工賃収入増加の影響などにより売上は増収ですが、人件費の上昇などにより販管費が増加したためとの事です。

また、50億円を上限とする自社株買いも発表しています。

直近決算の感想

決算の感想について、売上は順調に推移していますが販管費の上昇により前期比減益の状況は続いており、通期進捗率も37%程度に留まっています。ただ、通常であれば売られても仕方が無い内容ですが、一緒に発表した自社株買いの影響もあってか決算翌日の株価は上昇しました。今回の自社株買いは、発行済み株式に対し5.4%とそれなりの規模で、また同時に償却も発表しましたのでサプライズとなっています。

いずれにしても、イエローハットは例年第3四半期で稼ぐ傾向がありますので、年明け発表の第3四半期決算に期待したいです。

【8133】伊藤忠エネクス

10月31日決算発表4番目の銘柄は伊藤忠エネクスで、伊藤忠グループ中核のエネルギー商社です。最近の業績は過去最高益が続いているなか、今期は3%程度の減益見込みにしていますが、第1四半期時点の通期進捗率は27%付近と順調に推移していましたので、今回の決算で通期増益への上方修正発表があるのか注目でした。

直近決算

伊藤忠エネクスは10月31日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は78億円と11億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当見込みに変更はありません。

前期比減益の要因は、ホームライフ事業や電力・ユーティリティ事業の採算改善があった一方で前年同期のメガソーラー売却の反動影響としています。

直近決算の感想

決算の感想について、前期比減益の状況は続いていますが、要因はメガソーラー売却による特殊要因の反動で、第2四半期単体で比較すると前期比4億円の増益となっていますので、問題ないかと思います。また、伊藤忠などと一緒にビックモーターの再建で手掛けているWECARSへの投資も94億円と膨らんでいますが、この辺りが今後収益に繋がってくると将来楽しみです。

そんななか、通期進捗率も58%付近と順調に推移していますので、決算翌日の株価も全体が下げるなか底堅く推移しました。

【4658】日本空調サービス

10月31日決算発表最後の銘柄は日本空調サービスで、建物設備のメンテナンス・維持管理、設備・環境診断、ソリューション提案を行う建物設備のトータルサポート企業です。

最近の業績は順調に増益が続いているなか、第1四半期も前期比増益でスタートしていましたので好調な状況が続いているのか注目でした。

直近決算

日本空調サービスは10月31日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は11億円と4億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当見込みに変更はありません。

前期比増益の要因は、国内外ともに環境保全に関心が高まっている昨今において、省エネや省コストなどに関する顕在及び潜在ニーズの高い状況が継続しているためとの事です。

直近決算の感想

決算の感想について、安定感のある日本空調サービスらしく順調な内容で、例年第4四半期で稼ぐ傾向があるため、通期進捗率こそ39%付近と低調に見えますが、第2四半期までの最終利益は前期比約5割以上の増益と好調を維持しています。

実際、大幅増益となった前期も第2四半期時点の通期進捗率は28%付近でしたので、第3四半期以降の上方修正が期待できる状況になっています。ただ、決算翌日の株価は5%以上上昇する場面がありましたが、引けにかけては全体の下落もあり、ほぼ前日の終値付近で引けています。

11月1日(金)

続いては、先週末に決算を発表した銘柄の中から、KDDIや総合商社など同じく個人投資家の人気が高い銘柄の決算を見ていきます。

【9433】KDDI

11月1日決算発表最初の銘柄は通信会社のKDDIです。前期は一時的要因の影響で減益となりましたが、基本的には増益が続いているなか、今期は前期の反動もあり8%程度の増益見込みにしています。

そんななか、第1四半期時点の通期進捗率も25%付近と順調にスタートしていますので、好調な状況が続いているのか注目でした。

直近決算

KDDIは11月1日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は3512億円と174億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当見込みに変更はありません。

前期比減益の要因は、通信料収入の反転やDXをはじめとした注力領域は引き続き順調に推移していますが、子会社・関連会社の組織再編に係る一過性影響や為替影響のためとしています。

また、来年3月末での株式2分割と追加の自社株買い1000億円(上限)も発表しています。

直近決算の感想

決算の感想について、第2四半期では前期比減益の状況になっており、通期進捗率も51%付近と例年の平均55%を下回ってはいますが、減要因は一時的な要因が大きく、本業は順調ですので大きな問題はないかと思います。

実際、今回の決算では株式分割と追加の自社株買いも発表されましたので、決算翌営業日の株価も上昇で反応しました。

【8031】三井物産

11月1日決算発表2番目の銘柄は総合商社の三井物産です。ここ数年の業績は商品市況上昇の影響で大きく伸びていましたが、前期は商品市況の反落もあって減益となっており、今期も現状15%程度の減益見込みとしていました。

そんななか、第1四半期は資産売却による特殊要因はありましたが、通期進捗率は31%付近と好調なスタートを切っていましたので、今回の決算で通期見込みの上方修正があるのか注目でした。

直近決算

三井物産は11月1日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は4117億円と前年同期比445億円の減益となっていますが、通期最終利益を200億円上方修正しており、年間配当見込みに変更はありません。

前期比減益のなか上方修正を行った要因は、商品市況下落の影響はありますが、エネルギー、機械・インフラ、次世代・機能推進などのセグメントが順調に推移しているためとの事です。

直近決算の感想

決算の感想について、商品市況下落の影響により金属資源部門の減益額が大きく、前期比減益の状況は続いているなか、期待通り上方修正が発表されました。上方修正後でも通期見込みは依然13%程度の減益見込みで、進捗率も45%程度と厳しい状況ですが、ここ数年が異常に良かった事を踏まえると十分すぎる内容で、実際、場中に発表された決算後の株価は上昇に転じています。

【8002】丸紅

11月1日決算発表3番目の銘柄は丸紅です。丸紅もここ数年の業績は商品市況上昇の影響で大きく伸びていましたが、前期は減益となっています。ただ、今期は2%程度の増益予測にしているなか、第1四半期時点の通期進捗率は30%付近と好調なスタートを切っていましたので、今回の決算での上方修正が期待できる状況でした。

直近決算

丸紅は11月1日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は2381億円と132億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。

前期比減益の要因は、航空・船舶、化学品などは増益でしたが、資源価格下落に伴い原料炭・鉄鉱⽯事業などが減益だったためとの事です。 

直近決算の感想

決算の感想について、第1四半期は好調なスタートでしたので、今回の決算での上方修正も期待していましたが、前期比減益の状況になってしまいました。ただ、通期最終利益見込みは現在の商社業界では貴重な増益予測を維持しているなか、進捗率も49.6%付近で推移していますので、何とかこのまま今期増益での最終着地を目指して欲しいところです。

【8566】リコーリース

11月1日決算発表最後の銘柄はリコーリースで、ここ数年順調に増益が続いていましたが、前期は保有する有価証券の減損処理を行った事で大きく減益となりました。

しかし、本業は順調に推移しており、今期は前期の反動も考慮して3割程度の増益見込みにしているなか、第1四半期時点の通期進捗率も24%付近と順調に推移していましたので、好調な状況が続いているのか注目でした。

直近決算

リコーリースは11月1日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は82億円と前年同期比29億円の増益になっているなか、通期最終利益の見込みに変更はありませんが、配当予測を10円増額の年間175円へ上方修正しています。

配当見込みが上方修正された要因は、株主還元基本方針を踏まえ、財務基盤の安定性を維持したうえで、より一層の利益還元が重要と考えたためとの事です。

直近決算の感想

決算の感想について、一時的要因の反動もあって大幅増益の状況が続いているなかでしたが、今回の決算で既に15円の増配見込みだった年間配当が10円増額された事はサプライズです。ただ、上方修正の要因としている株主還元基本方針では、来期の配当性向を40%以上、30年3月期には50%を目安としており、今回の増額後でも現在の配当性向は36.7%程度ですので、まだまだ上値の余地はありそうです。

また、通期進捗率も56%付近と順調に推移していますので、決算後の株価は少ししか上昇しませんでしたが、今後の増益からの更なる増配も十分期待できる状況です。

まとめ

今回は日経平均の乱高下が続くなか、先週10月31日(木)と11月1日(金)に決算を発表した9銘柄を検証しました。ここ数年の業績は好調に推移していた銘柄が多いなか、第1四半期は少し前と比較して円高も進みましたので、影響が懸念される状況でしたが、現状そこまでマイナス影響は出ていない印象です。

そんななか、JTの下方修正は残念でしたが、その他の銘柄は堅調な決算も多く、特にリコーリースの配当増額はサプライズでした。

決算後の株価は、11月1日(金)の日経平均が1000円以上下げるタイミングだった事もあり、思ったほど上がらない銘柄もありましたが、好決算でも株価が上がっていない時は絶好の買い場となる可能性もありますので、引き続き、今後の決算も注意深く見守りたいと思っています。

先週発表された決算の検証はYouTubeで動画版も投稿していますので、あわせてご覧ください。

サプライズ決算で株価が大きく上下した高配当株を検証

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