1月下旬から2月中旬にかけては3月期銘柄の第3四半期を中心に決算発表がピークを迎えました。3月期銘柄にとっては終盤を迎え、今期の最終着地も見えてくる時期ですが、原材料費高騰の影響や年末にかけて進んだ円高の影響で内容も明暗が分かれていた印象です。
そこで今回は先日発表された第3四半期決算を踏まえ、今期の最終着地が上振れしそうな4銘柄が高配当株として投資可能か個別に検証していきます。
【9882】イエローハット
最初の銘柄はイエローハットです。
イエローハットはカー用品を専門に取り扱う量販店で、現在全国に700店舗以上展開しているため、馴染みがある人も多いかと思います。
取り扱い製品はタイヤやカーナビなどに加え、車検やオイル交換などのメンテナンスも行っており、車全般に関わるサービスを手掛けています。
直近決算
イエローハットは1月31日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は93億円と前年同期比で13億円の増益になっていますが、通期最終利益、年間配当見込みに変更はありません。
前期比増益の要因について、半導体不足による新車販売数減少によりカーナビやドライブレコーダーの売上は低調でしたが、タイヤの価格改定が2度実施された事で値上げ前の駆け込み需要が発生した事などによりタイヤ販売が好調だったためとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | イエローハット |
2019年3月期 | 73 |
2020年3月期 | 73 |
2021年3月期 | 85 |
2022年3月期 | 96 |
2023年3月期(会社予想) | 98 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、コロナショックの影響もそれ程関係なく順調に増益が続いており、前期は過去最高益となっています。増益が続く要因としてコロナショックによる営業時間短縮などの影響はありましたが、感染対策として車、バイクでの移動需要が高まったことにより当初予想よりも早く需要が回復した事や寒波による降雪の影響で冬用タイヤやタイヤチェーンなどの販売数が増加したためとの事です。
そして、今期は更に増益見込みとしていますが、第3四半期時点の進捗率は95%付近ですので、更なる上積みも期待できそうです。
配当推移
銘柄名 | イエローハット |
2015年 | 23 |
2016年 | 27 |
2017年 | 30 |
2018年 | 33 |
2019年 | 36 |
2020年 | 46 |
2021年 | 54 |
2022年 | 58 |
2023年(会社予想) | 62 |
2015年からの配当推移をみていきますが、据え置きの年すらなく順調に増配が継続しています。また、イエローハットは2019年に株式分割を行っていますので、株式分割前の金額は調整した金額です。イエローハットの配当方針は、中長期的な視点で連結業績に応じた利益還元を重視し、連結配当性向30%を目指すとしています。
株主優待
イエローハットには株主優待が設定されており、保有株数によって全国の店舗で使用できる割引券がもらえますので内容を表にまとめています。
保有株数 | 割引券 | |
100株以上1000株未満 | 10枚(3000円分) | |
1000株以上3000株未満 | 25枚(7500円分) | |
3000株以上5000株未満 | 40枚(1万2000円分) | |
500株以上 | 50枚(1万5000円分) |
こちらの内容を3月と9月の年2回もらえるほか、ウォッシャー液2.5L1本と引き換えできる引換券ももらえますので、イエローハットをよく利用する人にはおすすめの株主優待です。
株価推移
株価はコロナショックで1195円まで売られた後、2021年8月には2157円まで上昇しました。しかしその後は値を下げ、直近は1800円前後で推移しています。
株価指標(2023年2月24日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
イエローハット | 9882 | 1777 | 8.4 | 0.78 | 62 | 3.49 | 29.2 |
最近の株価は高値圏から下落している事に加え、増配が継続している事もあり配当利回りは3%半ばの水準です。
業績好調によりPER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は29%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容からイエローハットの投資判断ですが、最終利益は過去最高益が続くなか今期も第3四半期時点の進捗率は90%超と順調に推移しています。業績好調により増配が継続している事で配当利回りも3%半ばと高配当株として気になる水準です。
業績については、半導体不足による新車販売数減少や若者の車離れなどの懸念点があるため、今後も今まで通りの水準で伸び続けていくか不安な部分はありますが、株価が下がる場面では狙いたくなる銘柄です。
【9513】Jパワー
2番目の銘柄はJパワーです。
Jパワーは戦後の電力不足を解消するために1952年に国によって設立され、各地に発電所を建設して日本の経済成長を支え、2004年に完全民営化を果たしています。
現在、全国約100ヶ所の発電所で水力、風力、地熱、再生可能エネルギー、石炭火力など様々なエネルギーを利用して発電し、作った電力を各地域の電力会社などへ販売しています。
また、Jパワーは青森県の大間に稼働待ちの原子力発電所を抱えているため、今後の動向は気になるところです。
直近決算
Jパワーは1月31日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は1110億円と前年同期比で707億円の大幅増益となっています。
業績好調により通期最終利益を1150億円へ70億円上方修正していますが、配当については従来の予想通り年間80円のままです。
業績好調の要因は、電気事業及び海外事業での電力販売価格の上昇などによる売上高の増加を見込むことに加え、豪州連結子会社の石炭販売単価の上昇による利益増などを見込むためとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | Jパワー |
2019年3月期 | 462 |
2020年3月期 | 422 |
2021年3月期 | 223 |
2022年3月期 | 696 |
2023年3月期(会社予想) | 1150 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、変動が大きくなっています。
特に2021年は大きく減益となっており、要因は電力価格高騰を受けてJEPXなどから電力を購入して販売している子会社で大幅な損失が発生し、第4四半期が大きな赤字に転落してしまったためです。
前期以降は、電力販売価格や石炭価格の上昇を背景に業績が大きく伸びており、今期は第2、第3四半期と続けて業績を上方修正しています。
Jパワーは2021年の様に四半期単位で業績が大きく変動するリスクがあるため油断はできませんが、上方修正後でも通期進捗率は96%付近ですので最終着地に期待が集まる内容になっています。
配当推移
銘柄名 | Jパワー |
2015年 | 70 |
2016年 | 70 |
2017年 | 70 |
2018年 | 75 |
2019年 | 75 |
2020年 | 75 |
2021年 | 75 |
2022年 | 75 |
2023年(会社予想) | 80 |
2015年からの配当推移について、ここ数年は75円で安定していますが、今期は久しぶりに増配見込みとなっています。
Jパワーの配当方針は、短期的な利益変動要因を除いて連結配当性向30% 程度を目安に利益水準、業績見通し、財務状況などを踏まえた上で、安定的かつ継続的な還元充実に努めるとしています。
株価推移
株価は2020年12月に1352円まで売られた後は、上下を繰り返しながらも上昇しています。そして去年夏以降は2000円台前半での動きが中心です。
株価指標(2023年2月24日)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
Jパワー | 9513 | 2155 | 3.4 | 0.35 | 80 | 3.71 | 12.7 |
最近の株価は動きが止まっていますが、今期は久しぶりの増配という事もあり配当利回りは3%半ばの水準です。
業績好調を受けてPER、PBRは市場平均と比較してかなり割安で、配当性向も13%付近とこちらもかなり余裕のある数値です。
投資判断
今までの内容からJパワーの投資判断ですが、最近の業績は電力価格や石炭価格の上昇により大きく伸びていますが、業績の伸びと比べると増配幅は低い様な気がします。Jパワーの配当方針には「短期的な利益変動要因を除いて」という言葉が含まれていましたので、現在の好業績は短期的な変動要因と捉えているのかと思います。
実際Jパワーの業績は電力価格や商品市況によって大きく上下する展開が続いており、今はプラスの部分が強調されている状況ではあります。
しかし、途中でも触れた様に過去には電力価格の変動などにより四半期単位で通期業績予測が大きく変動した事や今後は老朽化による発電所の設備トラブルリスクに加え、稼働待ちの原発も抱えています。
その様な状況もあり、好業績の割に株価は上昇できていない様にも思えますが、Jパワーについては本決算までは様子を見たいかなというところです。
【4839】WOWOW
3番目の銘柄はWOWOWです。
WOWOWは、日本初の有料放送を行う民放衛星放送局として1991年に開局し、サッカーやテニスなどのスポーツ番組やコンサートツアーなどの音楽番組に加え、オリジナルドラマなども放送しています。
しかし、最近の業績は乱立する動画配信サービスなどの影響による加入者数減少により、厳しい状況が続いています。
直近決算
WOWOWは、1月31日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は28億円と前年同期比で7億円の減益ですが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、前年同期にあったサッカー欧州選手権の放送がなかった事などにより新規加入件数が減少した事やサッカーワールドカップの影響でUEFAチャンピオンズリーグの中断期間が通常よりも長く、解約が増加したためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | WOWOW |
2019年3月期 | 51 |
2020年3月期 | 50 |
2021年3月期 | 29 |
2022年3月期 | 42 |
2023年3月期(会社予想) | 16 |
2019年からの通期最終利益をみていきますが、変動が激しいなか今期は大幅減益の見込みとなっています。
2021年大幅減益の要因は、コロナショックの影響によるスポーツや音楽ライブなどの延期・中止に伴い番組が減少した事に加え、4Kや配信関連費用などが増加したためとしており、前期は減損損失が無かった事もあり一時的に業績が回復しています。
今期は第3四半期時点の最終利益が28億円と既に通期予測を大きくクリアしていますが、元々の予測が大幅減益だった事に加え、第3四半期でこれだけ予測を超えていながら上方修正しなかった事も含め、最終着地に謎が残ります。
配当推移
銘柄名 | WOWOW |
2015年 | 60 |
2016年 | 70 |
2017年 | 80 |
2018年 | 80 |
2019年 | 80 |
2020年 | 80 |
2021年 | 80 |
2022年 | 60 |
2023年(会社予想) | 50 |
2015年からの配当推移について数年前までは80円で安定していましたが、最近は業績低迷を背景に減配が続いています。そして前期配当60円のうち10円は開局30周年の記念配当となっており、記念配当を考慮すると今期は据え置きという事になります。
WOWOWの配当方針は、各事業年度の業績、財務体質の強化、中長期事業戦略などを総合的に勘案して、内部留保の充実を図りつつ、継続的に安定的な配当を目指すとしています。
株主優待
WOWOWには株主優待があり、100株以上1年間継続保有すると、「WOWOW視聴料3カ月分無料」、か「WOWOW特製QUOカード(2,000円分)」、「日本赤十字社への寄付(2,000円)」のいずれかを選択できます。
また、3年以上継続保有の場合は、WOWOWの無料視聴料が4ヶ月分になるとの事ですので、WOWOWファンの人にはおすすめの株主優待です。
株価推移
株価は2017年頃には4000円を超える場面もありましたが、その後は下落が続いています。特に去年1年間は業績低迷を背景に右肩下がりの状況が続き、直近は1300円前後で推移しています。
株価指標(2023年2月24日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
WOWOW | 4839 | 1297 | 23.3 | 0.55 | 50 | 3.86 | 89.8 |
最近の配当は減配が続いていますが、株価も下落している事で配当利回りは4%前後の水準です。
業績低迷によりPERは市場平均より割高で、配当性向は90%付近とかなりの高水準です。
投資判断
今までの内容からWOWOWの投資判断について、第3四半期時点の最終利益は通期目標をクリアしていますが、とても好調といえる業績ではありません。これだけ動画配信サービスが乱立している現代社会では簡単ではないと思いますが、やはり加入者を増やしていく事が最優先の課題だと思います。
WOWOWについては、個人的にも以前はよく利用していましたので復活を期待したいですが、投資については暫く様子を見たいところです。
【8316】三井住友FG
最後の銘柄は三井住友FGです。
三井住友FGは、メガバンクの三井住友銀行を中核に持つ金融持株会社で国内では三菱UFJFGに次ぐ存在です。
三井住友銀行のほか、SMBC日興証券や三井住友ファイナンス&リース、三井住友カードなどを傘下にしています。
そして国内市場の伸びしろは限られるため、インドネシア、インド、ベトナム、フィリピンを中心に海外進出も進めています。
直近決算
三井住友FGは1月30日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は7660億円と前年同期比で1413億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありませんでした。
業績好調の理由は国内外の法人貸出と付帯取引の獲得や好調な決済ビジネスに加え、政策保有株式の売却益増加のためとしています。
業績好調により通期進捗率は第3四半期時点で99%となっていますが、世界経済が不透明な状況であることを踏まえ、通期目標は変更していないとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 三井住友FG |
2018年3月期 | 7343 |
2019年3月期 | 7266 |
2020年3月期 | 7038 |
2021年3月期 | 5128 |
2022年3月期 | 7066 |
2023年3月期(会社予想) | 7700 |
2018年からの通期最終利益を見ていきますが、コロナショックの影響で大きく減益となった2021年以外は7000億円台で安定しています。
前期はコロナ倒産に備えていた貸倒引当金を想定ほど使用しなくて良かった事もあり、業績をコロナ前の水準へ戻し、今期は更に増益の見込みとしています。
そして、先程も触れた様に第3四半期時点の進捗率は99%付近ですので、最終利益8000億円台での最終着地も期待できそうです。
配当推移
銘柄名 | 三井住友FG |
2015年 | 140 |
2016年 | 150 |
2017年 | 150 |
2018年 | 170 |
2019年 | 180 |
2020年 | 190 |
2021年 | 190 |
2022年 | 210 |
2023年(会社予想) | 230 |
2015年からの配当推移をまとめていますが、コロナショックの影響が出た2021年など据え置きとなっている年もありますが、概ね安定した増配が続いており最近の増配幅は業績好調を背景に大きくなっています。
三井住友FGの配当方針は、株主還元は配当を基本に機動的な自己株取得も実施していくとしており、配当は累進的とし配当性向は2022年度までに40%を目指すとしています。
累進配当を宣言している現在の配当方針は今期までとなっていますので、来期以降の配当方針は気になるところです。
株価推移
株価はコロナショックで2507円まで売られた後は上下を繰り返しながらも値を上げています。そして去年年末以降は、日銀が長期金利の上限幅を引き上げた事で今後の金利先高観が強まり上昇ペースも加速し、直近は6000円の大台を超える場面もありました。
株価指標(2023年2月24日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
三井住友FG | 8316 | 5849 | 10.3 | 0.64 | 230 | 3.93 | 40.5 |
最近の株価は急騰していますが、順調に増配が継続している事で配当利回りはまだ4%前後の水準です。
PER、PBRも市場平均と比較して割安で、配当性向は40%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容から三井住友FGの投資判断ですが業績、配当は順調に推移しており、日本を代表する企業規模や海外進出力を含め、高配当株として最適の銘柄だと思います。
今後の金利先高観を含め業績の将来性にも期待が持てますし、累進配当政策のもと更なる増配も期待できます。
ただ、最近の株価上昇はいくら何でも急スピード過ぎる気がしますので、購入は今後の調整局面を待ちたいところです。
まとめ
今回は、第3四半期時点の通期進捗率が高く最終着地が上振れしそうな高配当株を4銘柄個別に検証しました。4銘柄とも第3四半期時点の通期進捗率は90%を超えており、最終着地で更なる上振れも期待できそうです。
しかし、WOWOWの様に業績が低迷している銘柄や三井住友FGの様に株価上昇ペースが速すぎる銘柄もありましたので、投資については銘柄ごとに状況を見極める事が大切かと思います。
今期最終利益が上振れしそうな4銘柄については、YouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
コメント