最近の株式市場は先月大統領に就任したトランプ氏の動向に影響を受ける展開が続いていますが、国内企業は先月末から決算シーズンに入っています。今回の決算は3月期銘柄が終盤に差し掛かる第3四半期決算、12月期銘柄は本決算となりますので、3月期銘柄には通期予測の修正が発表されるかや12月期銘柄には今期見込みをどの様に発表するのかにも注目も集まります。
そんななか、今回の決算は想像以上に好調な企業が多く、また好決算を発表した後の株価が大きく上昇した銘柄も複数ありましたので、ここからは先週までに発表された決算の中から、保有銘柄を中心に特に気になった銘柄を検証していきます。
【8316】三井住友FG
最初は保有銘柄の先陣を切って1月29日(水)に決算を発表した三井住友FGです。最近の業績は国内金利の利上げなどを要因に好調を維持しており、今期も過去最高益の予測に対して第2四半期時点の通期進捗率は62%付近と好調に推移していました。
そんななか、第2四半期決算で通期最終利益や配当の予測を大きく上方修正していましたので、今回更に上方修正が発表される可能性は低そうでしたが、好調な状況が続いているのか注目でした。
直近決算
三井住友FGは1月29日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は1兆1359億円と前年同期比3431億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因は、特に国内ビジネスが牽引した事や株式等損益が上振れたためとの事です。
直近決算の感想
決算の感想について、第2四半期までの好調が継続しており、通期進捗率も98%付近とほぼ今期の見込みを達成している状況です。そんななか、第4四半期に不採算アセット売却による損失計上や予防的な引当の計上も検討しているとして上方修正の発表はありませんでしたが、今後も国内金利0.25%の引き上げによって約1000億円の増収効果を想定しているとの事ですので、5月発表の本決算はとんでもない事になりそうです。
【4502】武田薬品
続いては1月30日(木)に決算を発表した武田薬品工業で、最近の業績は減益が続いているなか、今期も第2四半期決算で上方修正を発表しましたが、依然5割近い減益予測となっていました。ただ、第2四半期時点で通期見込みを1200億円程度上回る利益が稼げている状況でしたので、今回の決算で通期最終利益の上方修正が発表されるのか注目でした。
直近決算
武田薬品工業は1月30日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は2110億円と前年同期比640億円の増益となっているなか、通期最終利益を500億円上方修正していますが、年間配当見込みに変更はありません。
業績上方修正の要因は、後発品によるVYVANSEの減少が想定より緩やかだった事や前提の為替レートを見直したためとの事です。
また、上限1000億円の自社株買いも発表しています。
直近決算の感想
決算の感想について、期待通り通期最終利益の上方修正が発表された事で減益率も前期比2割弱の水準まで回復しています。ただ、それでも既に第3四半期時点で通期見込みを900億円程度上回る利益が稼げている状況ですので、もう少し上方修正しても良さそうに感じますが、恐らく第4四半期は大きく減益になるのだと思います。
この辺りが製薬メーカーの難しいところですが、自社株買いを好感した影響もあり、決算後の株価は100円近く上昇する場面がありました。
1月31日(金)
続いては、週末という事で決算発表が最初のピークを迎えた1月31日発表銘柄の中から、イエローハットと伊藤忠エネクスの2銘柄を見ていきます。
【9882】イエローハット
1月31日決算発表最初の銘柄はイエローハットで、カー用品を専門に取り扱う量販店です。ここ数年は過去最高益を記録する事も多く、今期も増益見込みとしていましたが、第2四半期時点の通期進捗率は37%程度に留まっていましたので、下方修正も心配される状況でした。
直近決算
イエローハットは1月31日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は97億円と前年同期比8億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当見込みに変更はありません。
前期比増益の要因は、旅行や帰省をはじめとしたドライブ需要などによりタイヤ・オイル・バッテリーなど消耗品の店頭販売が順調に推移したためとの事です。
また、3月末を基準日とした株式の2分割と来期からの優待拡充に加え、配当性向も30%から45%への引き上げを発表しています。
直近決算の感想
決算の感想について、第3四半期は四半期ベースで過去最高益と想像以上に好調な内容で、通期進捗率も92%付近まで持ってこれました。そんななか、上方修正こそありませんでしたが、株式分割と配当性向の引き上げはサプライズとなり、決算後の株価も200円近く上昇しています。
ただ、新しい配当方針で計算すると来期の配当は30円以上増配となる可能性も十分ありますので、納得の株価急騰です。
【8133】伊藤忠エネクス
1月31日決算発表2番目の銘柄は伊藤忠エネクスで、伊藤忠グループ中核のエネルギー商社です。最近の業績は過去最高益が続いているなか、今期は3%程度の減益見込みにしていましたが、第2四半期時点の通期進捗率は58%付近と順調に推移していましたので、今回の決算で今期も過去最高益予測となる上方修正発表があるのか注目でした。
直近決算
伊藤忠エネクスは1月31日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は139億円と前年同期比7億円の増益となっているなか、通期最終利益の見込みを20億円上方修正し、配当も2円増額の年間58円予測に修正しています。
前期比増益の要因は、ホームライフ事業や電力・ユーティリティ事業の採算改善があったためとしており、各事業の利益が順調に積み上がっている事で通期見通しを上方修正したとの事です。
直近決算の感想
決算の感想について、今回の決算で上方修正への期待はありましたが、一気に20億円の上方修正は想像以上で、実際、決算発表後の株価は150円以上上昇する場面がありました。
また、上方修正後でも通期進捗率は89%付近で推移していますので、今期の最終着地や来期以降の業績にも期待できそうな状況です。
2月4日(火)
続いては、決算シーズンも本格化してきた2月4日発表銘柄の中から、三菱UFJFG、三井物産と個人投資家の注目も高い2銘柄の決算を見ていきます。
【8306】三菱UFJFG
2月4日決算発表最初の銘柄は三菱UFJFGで、メガバンクの三菱UFJ銀行を中核に持つ国内最大手の金融グループです。最近の業績は金利上昇や円安などを要因に大幅増益が続いており、今期も過去最高益の見込みにしています。
ただ、第2四半期決算で通期最終利益や年間配当見込みを大きく上方修正していましたので、今回の決算で更に通期予測が修正される可能性は低そうでした。
直近決算
三菱UFJFGは2月4日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は1兆7489億円と前年同期比4510億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当見込みに変更はありません。
前期比増益の要因は、日銀の利上げで貸し出し利ざやが改善した事や企業の資金需要も旺盛に推移した事に加え、保有株式の売却、持分法投資損益の増加影響などのためとしています。
直近決算の感想
決算の感想について、今回は他のメガバンクの決算が先に発表されていた事もあり、好調な決算が出てくる事は確実な状況でしたが、さすが国内トップの金融グループとして期待を裏切らない内容でした。
また、1月の利上げが今期業績に与える影響は約200億円としていますが、利上げ後1年目は約1000億円、3年目は約1800億円を想定としていますので、現在の株価は上場来高値付近だった事もあり、決算後の株価はそこまで反応しませんでしたが、そう遠くない将来に2000円の大台は突破しそうな雰囲気です。
【8031】三井物産
2月4日決算発表2番目の銘柄は総合商社の三井物産です。ここ数年の業績は商品市況上昇の影響で大きく伸びていましたが、前期は商品市況の反落もあって減益となっており、今期も第2四半期決算で上方修正を行いましたが、依然13%程度の減益見込みとしていました。
そんななか、通期進捗率も45%付近と微妙な水準に留まっていましたので、何とか最終着地で増益の可能性も残る決算を期待していました。
直近決算
三井物産は2月4日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は6521億円と前年同期比743億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当見込みに変更はありません。
前期比減益の要因は、鉄鉱石や原料炭市況の悪化に加え、資産入れ替えに伴う利益の減少などが影響したためとしています。
直近決算の感想
決算の感想について、苦戦が続く5大総合商社のトップを切って決算を発表しましたが、内容は前期比1割程度の減益で通期進捗率も71%付近と微妙な水準に留まっています。ただ、第4四半期には資産リサイクル益やエネルギーの季節性収益を見込むとして、全体としては順調な進捗としています。
以上の点を踏まえると、決算後の株価は売られ続けていますが、数年前と比較してそこまで悪い訳でもないですので、耐え時の様な印象です。
2月5日(水)
続いては、2月5日に決算を発表した銘柄の中から、KDDI、丸紅、スカパーの決算を見ていきます。
【9433】KDDI
2月5日決算発表最初の銘柄は通信会社のKDDIです。今期は8%程度の増益見込みにしていますが、第2四半期時点の通期進捗率は51%付近と例年の平均55%を下回っている状況でした。
ただ、減要因は一時的な要因が大きく、本業は順調でしたので、進捗率を例年の平均程度まで持ってこれているのか注目でした。
直近決算
KDDIは2月5日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は5365億円と前年同期比90億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当見込みに変更はありません。
前期比減益の要因について、通信料収入の回復や金融、決済事業などの主要事業も引き続き順調に推移している事に加え、ローソンの業績も好調ですが、前年同期にあった子会社再編の再評価益計上などの反動で最終利益は減益との事です。
直近決算の感想
決算の感想について、前期比減益の状況に変わりはなく、通期進捗率も78%付近と例年の平均83%を下回る結果となりました。ただ、前年の第4四半期は特別損失の影響で大きく減益となっており、今期はその反動がありますので、最終着地はきちんと増益で決めてくれそうな印象です。
以上の点を踏まえると、決算前に株価が上昇していた事もあり、決算後の株価は大きく売られましたが、特別心配は要らなそうです。
【8002】丸紅
2月5日決算発表2番目の銘柄は5大総合商社の丸紅です。ここ数年の業績は商品市況上昇の影響で大きく伸びていましたが、前期は商品市況の反落で減益となっています。ただ、今期は2%程度の増益予測にしていたなか、第2四半期時点の通期進捗率も49%付近と好調を維持していましたので、今回の決算での上方修正も期待できる状況でした。
直近決算
丸紅は2月5日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は4251億円と前年同期比537億円の増益となっているなか、通期最終利益の見込みを200億円上方修正し、配当も5円増額の年間95円へ修正しています。
前期比増益の要因は、電⼒、アグリ事業、⾦融・リース・不動産などの非資源分野が堅調に推移したためとの事です。
直近決算の感想
決算の感想について、苦戦が続く総合商社の中で通期最終利益と年間配当予測の上方修正を発表と期待以上の好決算でした。また、丸紅は今回の決算と合わせて来期から2027年度までの中期経営計画も発表しており、従来の総還元性向30~35%程度を40%程度まで引き上げる事と年間配当100円を基点とする累進配当の継続も発表しています。
この辺りの要因もあり決算後の株価は150円程度上昇する場面もありましたので、他の総合商社も続いて欲しいところです。
【9412】スカパーJSAT
2月5日決算発表最後の銘柄はスカパーJSATです。スカパーJSATは日本唯一の衛星通信専業会社でメイン事業は衛星多チャンネル「スカパー!」などを運営しているメディア事業と軌道衛星を活用した衛星通信サービスを展開している宇宙事業となっています。
そんななか、最近の業績は過去最高益が続いており、今期も増益予測にしているなか第2半期時点でも前期比増益と堅調に推移していましたので、好調な状況が続いているのか注目でした。
直近決算
スカパーJSATは2月5日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は144億円と前年同期比11億円の増益となっているなか、通期最終利益の見込みを10億円上方修正し、配当も5円増額の年間27円予測へ修正しています。
業績上方修正の要因は、メディア事業が計画を上回って進捗している事や事業運営上のコスト低減などのためとしています。
直近決算の感想
決算の感想について、好調な状況は続いていましたが、個人的に今回の決算で上方修正が発表された事はサプライズで、特に配当はここ数年増配といっても1円から2円のレベルでしたので、一気に5円の増額は衝撃的でした。上方修正の要因はメディア事業の計画比上振れとしていますが、最近は宇宙事業が主力事業になっている事は間違いなく、社長も「うちは放送会社ではない」と明言しています。
そんな宇宙事業は今後、国策とも絡み成長していく事ができますので、決算後の株価も200円近い大幅上昇となっています。
2月6日(木)
最後は、決算発表数もかなり増えてきた2月6日発表銘柄の中から、伊藤忠、三菱商事の総合商社とジャックスの3銘柄を見ていきます。
【8001】伊藤忠
2月6日決算発表最初の銘柄は総合商社の伊藤忠で、最近は商品市況反落の影響で減益に陥る総合商社が多いなか、ファミリマートや食料関連取引などの非資源部門でカバーし、今期も1割程度の増益予測にしています。
そんななか、第2四半期時点の通期進捗率も50%付近と順調に推移していましたので、今回の決算では上方修正や最低購入金額の高さから個人的には株式分割の発表も期待していました。
直近決算
伊藤忠は2月6日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は6764億円と前年同期比648億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因について資源分野は減益でしたが、非資源分野が着実に伸長した事に加え、一部事業のターンアラウンドや資産入替に伴う一過性利益の増加影響があったためとしています。
直近決算の感想
決算の感想について、上方修正や個人的に期待していた株式分割の発表こそありませんでしたが、前期比1割以上の増益で通期進捗率も77%付近と好調を維持しており、伊藤忠も過去最高益となる通期最終利益8800億円の達成に向けて確実に進捗としています。
そんななか、決算後の株価は他の総合商社と比較して今までの動きが底堅かった事もあってか大きく売られてしまいましたが、来期に向けても期待が持てる好決算だったと思います。
【8058】三菱商事
2月6日決算発表2番目の銘柄は同じく総合商社の三菱商事です。数年前の業績は商品市況上昇の影響で過去最高益を記録していましたが、前期は商品市況反落の影響で減益になりました。
そして、今期も1.5%程度の減益見込みにしていたなか、第2四半期時点の通期進捗率は65%程度と順調に進捗していましたが、一時的要因が多く含まれていた事もあり、予断を許さない状況となっていました。
直近決算
三菱商事は2月6日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は8274億円と前年同期比1308億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因は、国内洋上風力発電事業における減損損失などを計上しましたが、大口の評価益、売却益などの積み増しやLNG関連事業における受取配当金の計上などがあったためとの事です。
直近決算の感想
決算の感想について、一時的要因の影響もありますが、通期進捗率は87%付近まで持って来ていますので、今期の最終利益は増益着地も意識できるレベルとなっています。そんななか、来期は今期の反動や商品市況の動向も引き続き懸念事項として残りますが、決算後の株価は伊藤忠とは逆にこれまで売られ続けていた影響もあってか、反発の動きとなっています。
【8584】ジャックス
2月6日決算発表最後の銘柄はジャックスです。ジャックスはオートローンなどのクレジット事業などを手掛けており、最近の業績は数年前の2倍以上に増えています。しかし、今期は一部の加盟店で利上げなどの事業改革を行った影響でクレジット事業の取扱高が減速する見込みな事や海外事業の厳しい事業環境に加え、貸倒関連費用の増加などで3割程度の減益見込みにしていますが、第2四半期時点の通期進捗率は67%付近と順調に推移していましたので、業績に回復の兆しがあるのか注目でした。
直近決算
ジャックスは2月6日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は161億円と前年同期比20億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、オートローンや住宅ローンの増収影響はありましたが、貸倒関連費用の増加や調達金利が上昇したためとしています。
直近決算の感想
決算の感想について、今期は大きく減益見込みにしていますが、通期進捗率は97%付近まで持ってきており、今回の決算で上方修正が発表されても不思議ではない水準でした。実際、海外市場では依然貸倒関連費用の増加が続いており、厳しい市場環境が続いている印象ですが、一部には回復傾向の動きも見られている様ですので、少しでも今期の上積みを目指しつつ、来期のV字回復につなげて欲しいです。
まとめ
今回は1月末から2月6日(木)に決算を発表した銘柄の中から保有銘柄を中心に特に気になった銘柄を検証しました。今回検証した銘柄は全て3月期銘柄の第3四半期決算でしたが、内容は好調な銘柄が多く、また好決算を発表した後の株価も素直に上昇している銘柄が多かった印象です。
そんななか、いよいよ明日からは12月期銘柄の本決算発表も本格化しますが、JTやキリン、INPEXなどは前期の最終着地もですが、今期予測をどの様に発表するのか注目も集まります。
超絶好決算で株価急騰中の銘柄はYouTubeで動画版も投稿していますので、あわせてご覧ください。
※Xでも投資に役立つ情報を連日投稿中!!
コメント
ブログ拝見させていただいています。
武田薬品の自社株買いやイエローハットの配当性向引き上げなど、投資判断の重要なポイントを見逃さずに解説されていて、実際の投資戦略に役立ちそうでした。
ブログをご覧頂き、有難うございます。少しでも参考になりそうなら良かったです。