今回は今後株式分割を発表しそうな銘柄についてまとめていきます。
株式分割をする事で資産価値は変わりませんが、保有している株数が自動的に増える事は嬉しいですし、株式分割は勢いのある企業が行うイメージもありますので好材料と捉えられる事が多いです。
そして株式分割は購入単価を下げる事を目的として行われる事も多いですので、現在の最低購入金額が高く、今後株式分割を発表しそうな高配当株を3銘柄個別に検証していきます。
株式分割とは
そもそも株式分割とは、1株をいくつかに分割し発行済みの株式数を増やす事です。
1株が2株に分割されると保有株数は2倍になりますが、理論上株価は半分になりますので資産価値としては変わりません。
資産価値は変わらないのに企業が株式分割を行う理由は、株式分割により株価が下がる事で購入しやすくする事が主な目的です。
実際東証も望ましい投資単位としている5万円以上50万円未満の水準へ移行する為、投資単位の引下げに関する考え方及び方針等を開示するよう義務付けています。
それでは以上の点を踏まえ今後株式分割を発表しそうな高配当株を3銘柄検証していきます。
【8035】東京エレクトロン
最初の銘柄は東京エレクトロンです。
東京エレクトロンは、半導体製造装置やフラットパネルディスプレイ製造装置を開発、製造、販売している電気機器メーカーです。
半導体とは金属などの電気を通しやすい導体とゴムなどの電気を通しにくい絶縁体の中間の抵抗率を持つ物質で、テレビ、パソコン、エアコン、炊飯器など様々な商品で使用されています。
東京エレクトロンは、そんな半導体を製造する装置をメインで作っているメーカーで半導体製造装置の売上比率は約9割で販売先は8割強が海外です。
直近決算
東京エレクトロンは8月8日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は880億円と前年同期比で123億円の減益ですが、通期最終利益、配当予測に変更はありません。
前年同期比減益の要因は、テレビ用大型液晶パネル向けの設備投資が一巡した事で、FPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置市場全体として減速傾向となった事などが要因としています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 東京エレクトロン |
2019年3月期 | 2482 |
2020年3月期 | 1852 |
2021年3月期 | 2429 |
2022年3月期 | 4370 |
2023年3月期(会社予想) | 5230 |
最終利益について2020年はコロナショックの影響で減益となっていますが、2021年以降は増益傾向で、特に2022年は過去最高益を更新し、今期は更に増益見込みの予想です。
業績好調の要因は、半導体製造装置の需要拡大に確実に対応した事で主力装置におけるシェアが上昇した事や急速な需要拡大への対応が奏功し、すべての製品において売上が前期比で増加している為との事です。
配当推移
銘柄名 | 東京エレクトロン |
2015年 | 143 |
2016年 | 237 |
2017年 | 352 |
2018年 | 624 |
2019年 | 758 |
2020年 | 588 |
2021年 | 781 |
2022年 | 1403 |
2023年(会社予想) | 1678 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、コロナショックで業績を落とした2020年以外は順調に増配傾向で、特に最近の増配ペースには勢いが出ています。
東京エレクトロンの配当方針は、連結配当性向50%、かつ1株当たり年間配当金150円を下回らない金額を目安としていますが、2期連続して当期利益を生まなかった場合は、配当金の見直しを検討するともしています。
株価推移
株価はコロナショックで1万6370円まで下落した後は順調に値を戻し、今年初めには7万円に迫る水準まで上昇しました。
しかし、そこからは右肩下がりの状況が続き、直近は4万円付近で推移しています。
株価指標(2022年9月22日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
東京エレクトロン | 8035 | 40410 | 12.0 | 4.84 | 1678 | 4.15 | 49.9 |
株価は下落が続くなか増配ペースは上がっていますので、配当利回りは4%付近まで上昇しています。
しかし、株価は下落気味でもPER、PBRに割安感はなく、配当性向は50%付近と方針通りです。
投資判断
今までの内容から東京エレクトロンの投資判断ですが、半導体製造装置のシェアは国内では断トツの1位、世界でも第4位と世界を代表する企業で、半導体需要の高まりを受けて最近の業績は好調を維持しています。
業績好調により配当も増配が続き、配当利回りは4%付近と高配当株として投資を検討できる水準です。
しかし、半導体需要は景気に影響を受ける部分が大きく、今後の世界経済の行方もインフレ対策による金利上昇の影響で不透明感が増しています。
そして現在の株価は4万円台と最低単元でも購入金額は400万円を超えますので、簡単に購入できる銘柄ではありません。
株価が同水準だった任天堂は10分割しましたので、東京エレクトロンにも10分割程度の株式分割を期待したくなります。
以上の点を踏まえ東京エレクトロンについては、色々な意味で今購入する事はリスクが大きいですが、今後株式分割や景気悪化で株価が大きく下がる事があれば狙ってみたいというところです。
【8424】芙蓉総合リース
2つ目の銘柄は芙蓉総合リースです。
芙蓉総合リースは、みずほ系の総合リース会社で情報関連、事務機器のほか不動産リースに強みを持っています。
また、「前例のない場所へ」をテーマにリースの枠組みを超え新たな領域へ果敢にチャレンジしていくとしており、医療福祉事業や再生可能エネルギー事業も手掛けています。
直近決算
芙蓉総合リースは7月29日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は82億円と前年同期比で約3億円の増益でしたが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
業績好調の要因は、ファイナンス部門は前期比減益でしたが、継続的な事業領域の拡大によりリース及び割賦セグメントが順調に推移した為との事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 芙蓉総合リース |
2019年3月期 | 255 |
2020年3月期 | 261 |
2021年3月期 | 295 |
2022年3月期 | 338 |
2023年3月期(会社予想) | 360 |
2019年からの最終利益を見ていきますが順調に増益傾向です。
コロナショックでも減益には陥っておらず、最近の増益幅は大きくなっています。
増益が続いている要因として、「エネルギー・環境」や「不動産」などの戦略分野へ経営資源を集中的に投下した事により戦略分野の領域拡大が実現している事に加え、持分法投資利益など営業外収益も拡大した為としています。
また、芙蓉総合リースは2026年までの新中期経営計画で車両領域と物流領域を中心にパートナー連携を軸としたモビリティ領域の拡大やグローバルベースでの再生可能エネルギー事業の拡大を方針として掲げています。
配当推移
銘柄名 | 芙蓉総合リース |
2015年 | 80 |
2016年 | 100 |
2017年 | 130 |
2018年 | 146 |
2019年 | 188 |
2020年 | 205 |
2021年 | 240 |
2022年 | 285 |
2023年(会社予想) | 316 |
2015年からの配当推移を見ていきますが順調に増配が続いており、現在17期連続増配を継続中です。
芙蓉総合リースの配当方針は、業績および経営目標などを勘案し、経営基盤・財務体質の強化をめざして株主資本の充実に努めるとともに、株主の皆様への長期的・安定的な利益還元に努めることを基本方針としており、具体的な数値としては2026年度までに配当性向30%を目指すとしています。
株価推移
株価はコロナショックで4585円まで下落した後は、約1年をかけて8000円を超える水準まで上昇しました。
そこからは7000円台での動きが中心でしたが、直近の株価は再び8000円台に乗せてきています。
株価指標(2022年9月22日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
芙蓉総合リース | 8424 | 8170 | 6.8 | 0.73 | 316 | 3.87 | 26.3 |
最近の株価は上昇していますが、安定して増配している事もあり配当利回りは4%付近の水準です。
業績好調によりPER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は約26%と余裕を感じます。
株主優待
芙蓉総合リースには、1単元(100株)以上の株主に対してカタログギフトか図書カードがもらえる株主優待があります。
また、金額は2年未満の継続保有で3000円相当、2年以上の継続保有で5000円相当となっています。
投資判断
今までの内容から芙蓉総合リースの投資判断ですが、業績、配当は順調に推移しており株主還元力の高さは他のリース銘柄にも引けをとりません。
そして現在の配当利回りは、3%後半と高配当株として魅力を感じる水準です。
しかし、最近の株価は高値圏で最低購入金額も80万円付近と1銘柄でジュニアNISA枠が埋まってしまう金額です。
という事で芙蓉総合リースについては、2分割か3分割の株式分割を期待したいところです。
【4063】信越化学
最後の銘柄は信越化学です。
信越化学は、塩化ビニル樹脂やシリコンウェハーなどを製造する化学メーカーです。
塩化ビニルは上下水道のパイプや窓枠など、シリコンウェハーはスマートフォンやパソコンなど幅広い商品で使用されています。
そしてその他にも世界でトップシェアの製品が多数あり、また海外への売上比率は70%を超えるなど世界を代表する企業です。
直近決算
信越化学は7月27日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は1841億円と前年同期比で884億円の増益です。
そして非開示だった通期最終利益は5880億円と879億円の増益、年間配当は450円と50円の増配で発表しています。
業績好調の要因は、生活環境基盤材料事業では苛性ソーダ市況が堅調に推移した事や電子材料事業では半導体材料を最大限出荷した為としています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 信越化学 |
2019年3月期 | 3091 |
2020年3月期 | 3140 |
2021年3月期 | 2937 |
2022年3月期 | 5001 |
2023年3月期(会社予想) | 5880 |
2019年からの最終利益を見ていきますが、2022年に大きく伸びて過去最高益となっています。
業績が大きく伸びた要因として塩化ビニルや苛性ソーダの需要が堅調に推移した事に加え原料事情を踏まえ製品の値上げを行った事や半導体デバイスの旺盛な需要に応えた為としています。
そして今期の予測については、5月の本決算発表時は合理的に予想する事が難しいとして非開示にしていましたが、先程もお伝えした通り第1四半期決算で更なる増益見込みを発表しています。
配当推移
銘柄名 | 信越化学 |
2015年 | 100 |
2016年 | 110 |
2017年 | 120 |
2018年 | 140 |
2019年 | 200 |
2020年 | 220 |
2021年 | 250 |
2022年 | 400 |
2023年(会社予想) | 450 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、減配はもちろん据え置きの年すらなく順調に増配傾向で、前期の配当は業績好調を背景に大幅増配となっています。
信越化学の配当方針は、長期的な観点に立って事業収益の拡大と堅固な財務基盤の維持に注力し、そうした経営努力の成果を株主の皆様に適正かつ安定的に還元させていただくことを基本方針としており、具体的な数値としては配当性向35%前後を目安としています。
株価推移
株価はコロナショックで8751円まで下落した後は、2万円を超える水準まで上昇しています。
しかし、そこからはじわじわと売られ直近の株価は1万5000円台で推移しています。
株価指標(2022年9月22日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
信越化学 | 4063 | 15570 | 10.8 | 1.86 | 450 | 2.89 | 31.2 |
株価は停滞が続いているなか大幅増配が続いていますので、配当利回りは2%後半まで上昇しています。
業績は好調ですがPERに割安感はそれ程なく、配当性向は約31%付近と方針通りです。
投資判断
今までの内容から信越化学の投資判断ですが、直近の業績や配当は商品市況上昇などを背景に大きく伸びており、配当利回りは2%後半ですが企業規模を含め今後に期待したくなる銘柄です。
しかし、最近の株価は高値からは下落していますが、それでも最低購入金額は150万円台とNISA枠をはるかに超えてしまいます。
という事で信越化学についても3から5分割程度を期待したいところです。
まとめ
今回は現在の最低購入金額が高く、今後株式分割を発表しそうな高配当株を3銘柄個別に検証しました。
冒頭でもお伝えした様に、東証は望ましい投資単位への引き下げについて方針などを開示する様に義務付けており、3銘柄とも株式分割を適正な株価形成を促すうえで有効な施策であると認識しており、その必要性や時期などについて引き続き検討するとしています。
現在は証券会社によっては単元未満株での購入も可能ですが、手数料や注文方法の部分では単元株で購入したいところです。
という事で今回紹介した3銘柄についても、今後の株式分割を期待しながら業績や株価の動向を見守りたいと思います。
今後株式分割をしそうな高配当株についてはYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
コメント