高配当株投資は10年単位での長期投資になるため、投資する銘柄を選定する時には、その企業の将来性まで想像する事が大切です。
しかし、欲を言えば投資する企業だけでなく、投資する業界全体に将来性がある方が望ましく、また今後の日本にはEVや再生可能エネルギー、介護に加え防衛関連など将来性が期待できる様々な市場が存在しています。
そんななか、AI市場も今年話題のChatGPTを始め接客ロボットや自動運転など、急速に成長している市場の1つです。
そして、今後も同様の流れは更に加速し、AI市場は飛躍的に成長していく事が想定されますので、今回はAI市場に関連している4つの銘柄が高配当株として投資可能か検証していきます。
【2317】システナ
最初の銘柄はシステナです。
システナは独立系のシステム開発会社で、ITソリューション提案やIT・クラウドサービス、IT商品の提供に加え、保守・運用までトータルなシステム支援を手掛けています。
自動運転や車載システム、社会インフラ、ネットビジネスに加え、公共系の基幹・周辺システム開発など幅広い分野に進出しています。
直近決算
システナは7月27日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は12億円とほぼ前年同期比並みの水準となっており、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
業績が前期並みだった要因は、ソリューションデザイン事業で不採算プロジェクトが発生しましたが、金融分野でDX関連の案件を中心に引き合いが増加した事や半導体不足から納品が遅れていたサーバーやネットワーク製品を徐々に納品する事ができたためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | システナ |
2020年3月期 | 54 |
2021年3月期 | 49 |
2022年3月期 | 59 |
2023年3月期 | 73 |
2024年3月期(会社予想) | 72 |
2020年からの通期最終利益について、コロナ感染拡大の影響を受けた2021年は減益となっていますが、その後は順調に増益が続いています。
そして前期は、コロナからの経済回復が進むなか車載事業で大型案件を受注できた事やIT機器の導入、インフラ構築、クラウド活用、保守運用に至る高付加価値のワンストップサービス案件が増えた事で過去最高益を記録しています。
今期も引き続きDX関連の堅調な需要は続くと見込んでいますが、資源高や物価高など先行き不透明感があるとして微減益の予測にしているなか、第1四半期時点の通期進捗率は17%付近となっています。
配当推移
年 | システナ |
2015年 | 1.88 |
2016年 | 2 |
2017年 | 2.25 |
2018年 | 2.88 |
2019年 | 4 |
2020年 | 5 |
2021年 | 5 |
2022年 | 6 |
2023年 | 8 |
2024年(会社予想) | 10 |
2015年からの配当推移について、システナは何度か株式分割を行っているため金額を調整していますので、かなり細かい数字になっていますが減配はなく、順調に増配が続いています。
特に最近は好調な業績を背景に増配額も大きくなっていますので、今期見込みは2015年と比較すると5倍以上の水準です。
システナの配当方針は、各事業年度の業績および財務状況ならびに経営基盤の強化と今後の事業展開などを勘案し、連結配当性向40%以上を目標に積極的に実施としています。
株価推移
株価はコロナショックで259円まで売られましたが、2021年9月には622円まで上昇しました。
しかし、そこからはずるずる売られる展開となり、直近は250円前後で推移しています。
株価指標(2023年10月13日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
システナ | 2317 | 253 | 13.6 | 2.88 | 10 | 3.95 | 53.5 |
最近の株価は低迷していますが、配当は安定して増配している事で配当利回りは3%後半の水準です。
業績は増益が続いていますがPER、PBRは市場平均より割高で、配当性向は53%付近となっています。
投資判断
今までの内容からシステナの投資判断ですが、DX関連の堅調な需要を背景に最近の業績は増益傾向となっているなか、配当も増配が続いています。
そんななか、現在の配当性向は50%を超えていますが、今後の業績もDX市場の成長と共に伸びて行きそうな雰囲気ですので、更なる増配も期待できそうです。
その割に、ここ数年の株価は低迷し過ぎの様に見えますので、最低購入金額が2万円台と格安な事も含め、高配当株として狙いたい銘柄です。
【4725】CAC
2番目の銘柄はCACです。
CACは独立系のシステム開発会社で、製薬会社向けに治験業務の受託代行やIT支援、金融・製造システムの開発によるITソリューションなどを提供しています。
外国企業の買収などにより海外進出を進めており、直近の海外売上比率は3割に迫る水準です。
直近決算
CACは12月決算のため8月10日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は12億円と3億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因は、海外子会社の伸長や為替影響に加え、投資有価証券売却益を特別利益で計上したためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | CAC |
2019年12月期 | 15 |
2020年12月期 | 16 |
2021年12月期 | 24 |
2022年12月期 | 20 |
2023年12月期(会社予想) | 22 |
2019年からの通期最終利益について、2021年にかけて増益が続いた後は減益となっています。
2021年に業績が大きく伸びた要因は、国内のIT事業やインドネシアの子会社が堅調に推移した事に加え、関係会社の株式売却益があったためとしています。
前期も国内IT事業が堅調に推移した事や海外のIT事業も円安の影響により増収幅が拡大しましたが、CRO事業子会社の連結除外が大きく影響して減益となっています。
今期業績は、引き続き顧客のIT投資意欲は旺盛に推移するとして増益見込みにしているなか、第2四半期時点の通期進捗率は55%付近と順調に推移しています。
配当推移
年 | CAC |
2015年 | 32 |
2016年 | 40 |
2017年 | 36 |
2018年 | 38 |
2019年 | 50 |
2020年 | 60 |
2021年 | 60 |
2022年 | 60 |
2023年(会社予想) | 80 |
2015年からの配当推移について、ここ数年は60円で据え置きの期間が長かったですが、今期は久しぶりに20円の増配予測になっています。
CACの配当方針は、将来の成長のための内部留保と株主の皆様への継続的・安定的な配当の実現を目指し、DOE5%水準を目安としています。
株価推移
株価はコロナショックで781円まで売られましたが、その後は上下を繰り返しながらも上昇しています。
しかし、ここ半年くらいは1700円付近で停滞しており、直近も1750円前後で推移しています。
株価指標(2023年10月13日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
CAC | 4725 | 1765 | 13.70 | 1.00 | 80 | 4.53 | 61.9 |
最近の株価は停滞していますが、今期配当は大幅増配見込みですので配当利回りは4%半ばと高水準です。
今期業績は増益見込みですがPER、PBRは市場平均並みで、配当性向は62%付近となっています。
投資判断
今までの内容からCACの投資判断について、前期業績は子会社連結除外の影響で減益となっていますが、基本的には堅調なIT需要を背景に増益が続いています。
そんななか、配当は据え置きの期間も長かったですが、今期は久しぶりの増配という事で配当利回りは4%半ばと高水準です。
そして、現在の配当性向は60%を超えていますが、DOEを配当の目安にしていますので、今後も安定した配当は維持してくれそうな印象です。
その割に最近の株価は停滞が続いている様にも見えますので、高配当株としてチェックしておきたい銘柄です。
【9880】イノテック
3番目の銘柄はイノテックです。
イノテックは、半導体だけでなく自動車や産業機器などの製造プロセスを設計開発からテストシステムまでトータルで支援する企業グループです。
半導体設計ツールと半導体テスターが主力事業となっており、LSIや電子回路基板の設計支援ソフトEDA製品の取扱いは国内トップクラスとなっています。
そして、台湾を中心に海外進出も進めており、直近の海外売上比率は25%付近となっています。
直近決算
イノテックは8月9日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は約1.9億円と前年同期比約8000万円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、システム・サービス事業は堅調に推移しましたが、テストソリューション事業が低迷したためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | イノテック |
2020年3月期 | 11 |
2021年3月期 | 15 |
2022年3月期 | 21 |
2023年3月期 | 16 |
2024年3月期(会社予想) | 20 |
2020年からの通期最終利益を見ていきますが、2022年にかけて増益が続いた後は減益となっています。
2022年に業績が伸びた要因は、メモリー向けテスターの需要が旺盛だった事や半導体の設計関連向けソフトウェア、受託サービスが概ね堅調に推移したためとしており、過去最高益を記録しています。
前期は半導体市況の悪化や部材の安定調達難に加え、先行投資継続などの影響で減益になっていますが、今期はテスター需要の回復やEDAが堅調に推移する見込みとして増益の予測にしているなか、第1四半期時点の通期進捗率は9%付近と低調なスタートになっています。
配当推移
年 | イノテック |
2015年 | 14 |
2016年 | 14 |
2017年 | 15 |
2018年 | 30 |
2019年 | 40 |
2020年 | 40 |
2021年 | 50 |
2022年 | 65 |
2023年 | 70 |
2024年(会社予想) | 70 |
2015年からの配当推移について、たまに据え置きの年はありますが概ね順調に増配が続いている印象です。
順調に増配が続いている事で今期見込みは2015年と比較すると5倍の水準へ増えています。
イノテックの配当方針は、連結配当性向30%を下回らないこととしていますが、急激な業績変化などがなければ50%程度を目安にするとの事です。
株価推移
株価はコロナショックで752円まで売られた後は、停滞する時期を挟みながらも上昇しています。
そして、今年5月以降は上昇ペースが加速し、直近は1600円前後で推移しています。
株価指標(2023年10月13日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
イノテック | 9880 | 1622 | 10.70 | 0.92 | 70 | 4.32 | 46.0 |
最近の株価は上昇傾向ですが、増配が継続している事で配当利回りは4%半ばとなっています。
今期業績は増益見込みですのでPER、PBRは市場平均よりも割安で、配当性向は46%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容からイノテックの投資判断ですが、直近の業績や配当は順調に推移している事で株価も上昇傾向ですが配当利回りは4%台と高水準です。
事業内容も半導体関連が中心ですので、第1四半期決算は低調な内容でしたが、今後は持ち直しが期待されます。
以上の点を踏まえると、会社の規模感や株式の出来高が少ない点は気になりますが、高配当株として気になる銘柄です。
【8068】菱洋エレクトロ
最後の銘柄は菱洋エレクトロです。
菱洋エレクトロは、半導体とコンピューター製品をはじめとするICTの2つの事業基盤を柱にしており、それぞれの強みを活かしたサービス・ソリューション事業も手掛ける半導体商社です。
半導体とシステム情報機器を融合した組み込みシステムに注力しており、また直近業績の海外売上比率は3割程度となっています。
直近決算
菱洋エレクトロは1月決算ですので、8月31日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は57億円と前年同期比40億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
業績好調の要因は、ICT・ソリューション分野が堅調に推移した事や株式会社リョーサンを持分法適用関連会社化したことに伴い、負ののれん発生益を含む持分法による投資損益を営業外収益に計上したためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 菱洋エレクトロ |
2020年1月期 | 13 |
2021年1月期 | 8 |
2022年1月期 | 18 |
2023年1月期 | 30 |
2024年1月期(会社予想) | 75 |
2020年からの通期最終利益を見ていきますが、2021年はコロナショックの影響もあり減益となっていますが、2022年以降は大きく増益が続いています。
大幅増益が続いている要因は、半導体・デバイス部門の需要が通信機器・OA機器向けに拡大している事やICT・ソリューション関連はオンライン資格確認関連の需要取込みもあり堅調に推移しているためとの事です。
そして、今期業績も引き続き堅調な需要や負ののれん発生益で大幅増益見込みにしているなか、第2四半期時点の通期進捗率は76%付近と順調に推移しています。
配当推移
銘柄名 | 菱洋エレクトロ |
2015年 | 30 |
2016年 | 30 |
2017年 | 40 |
2018年 | 60 |
2019年 | 60 |
2020年 | 80 |
2021年 | 180 |
2022年 | 120 |
2023年 | 110 |
2024年(会社予想) | 160 |
2015年からの配当推移について、たまに据え置きや減配の年もありますが、概ね増配傾向となっています。
また、業績が低迷した2021年に配当が大きく増えている要因は、会社設立60周年の記念配当が60円出たためです。
2022年は記念配当の影響で減配となっていますが、今期は好調な業績を背景に大幅増配の見込みになっています。
菱洋エレクトロの配当方針は、DOE(純資産配当率)5%を目安とした配当の実施としています。
株主優待
菱洋エレクトロには株主優待が設定されており、1000株以上の保有か500株以上を1年以上継続保有が条件になっています。
内容は3000円相当のカタログギフトと国内約25,000ヵ所の宿泊施設の割引をはじめ、レジャー施設などの割引券がもらえます。
最低単元の100株ではもらえませんが、魅力を感じる株主優待です。
株価推移
株価はコロナショックで1600円まで値を下げた後、約1年で3700円まで上昇しました。
そこからは再び1760円まで下落しましたが、その後は反発し直近は3300円前後で推移しています。
株価指標(2023年10月13日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
菱洋エレクトロ | 8068 | 3345 | 9.0 | 1.31 | 160 | 4.78 | 43.1 |
最近の株価はここ数年の高値圏で推移していますが、大幅増配を受けて配当利回りは4%後半と高水準です。
今期業績は大きく増益見込みですのでPERは市場平均よりも割安で、配当性向は43%付近となっています。
投資判断
今までの内容から菱洋エレクトロの投資判断ですが、直近の業績はAI関連の需要を取り込み好調で、配当も大きく増えているため配当利回りも4%後半と高水準です。
しかし、今期業績は負ののれん発生益の影響で大きく増益、増配となっていますので、来期は減益、減配となる可能性があります。
以上の点を踏まえると、AI市場の更なる成長を期待して狙いたくなる銘柄ですが、来期の業績まで見極めたい気持ちもあります。
まとめ
今回は今後の飛躍的成長が期待できるAI関連の4銘柄が高配当株として投資可能か検証しました。
冒頭でもお伝えした様に、今後の日本には将来性が期待できる市場がたくさんありますが、その中でもAI関連には特に大きな期待が集まっているかと思います。
実際、今回の4銘柄も最近の業績や配当は順調に推移している企業が多く、更に今後の成長も期待できそうななか配当利回りも高水準でしたので、高配当株としてチャックしておきたいところです。
AI関連4銘柄はYouTubeで動画版も投稿していますので、あわせてご覧ください。
40代元証券マンの高配当株投資(YouTube編)
コメント