日本株は引き続き強い動きが続いており、最近は年初来高値や上場来の高値を更新する銘柄も増えてきました。
個人的に日本株は今後も上昇していくと考えていますが、これだけ上昇ペースが早いとなかなか手を出しづらくなるのが正直なところだと思います。
その様な強い相場状況ですが、なかには株価が下がり続けている銘柄もあります、
もちろんこれだけ相場全体が強いなかで株価が下がり続けているという事は、何らかの問題を抱えている可能性がありますが、他の高配当株が手を出しにくい現状においては購入チャンスとなる可能性もありますので、今回は株価下落が止まらない4つの高配当株を検証していきます。
【5857】AREホールディングス
最初の銘柄はAREホールディングスで、今年7月にアサヒホールディングスから社名を変更しています。
AREホールディングスは貴金属事業が売上の9割近くを占めていますが、多種多様な廃棄物の無害化や適正処理を行う環境保全事業も手掛けています。
メインの貴金属事業では貴金属含有原料などから、金や銀などをリサイクルし、精錬・加工・製品化まで行っています。
そして、イギリスやスイスを中心に直近の海外売上比率は60%に迫るほど国際的な企業です。
直近決算
AREホールディングスは7月27日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は23億円と前年同期比19億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、金価格が高水準で推移した事で販売量が増え売上は増収ですが、ロジウム価格の急落やエレクトロニクス分野などの回収量減少などのためとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | ARE |
2020年3月期 | 98 |
2021年3月期 | 257 |
2022年3月期 | 187 |
2023年3月期 | 109 |
2024年3月期(会社予想) | 132 |
2020年からの通期最終利益について、2021年に過去最高益を記録した後は減益が続いています。
2021年に業績が伸びた要因は、国内やアジアの貴金属リサイクル分野においてスマホなどの製造関連や自動車関連からの回収量が好調に推移した事や貴金属価格上昇のためとしています。
しかし、前期は宝飾分野からの回収量が増加し販売量が増加した事で売上は増収ですが、利益率の高いデンタル分野及び触媒分野の回収量が減少した事や自動車触媒に含まれるロジウム価格の急落で大きく減益となっています。
そして、今期業績は貴金属の回収量は概ね前期並みを計画しているとして増益の見込みにしていますが、第1四半期時点の通期進捗率は17%付近と少し心配なスタートになっています。
配当推移
年 | ARE |
2015年 | 30 |
2016年 | 30 |
2017年 | 30 |
2018年 | 31.5 |
2019年 | 60 |
2020年 | 65 |
2021年 | 85 |
2022年 | 90 |
2023年 | 90 |
2024年(会社予想) | 90 |
2015年からの配当推移について、数年前までは30円付近で変わりありませんでしたが、2019年以降は増配傾向となっています。
しかし、ここ数年は年間90円で変わりなく、今期も現状は据え置きの見込みになっています。
AREホールディングスの配当方針は、現在の年間配当水準から目減りさせることなく、継続的に実施していくとしており、具体的な目安は配当性向40%としています。
株価推移
株価はコロナショックで966円まで売られた後、約1年で2400円付近まで上昇しました。
しかし、その後は上値が重く去年春以降はずるずると売られ、直近は1900円前後で推移しています。
株価指標(2023年9月15日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
ARE | 5857 | 1948 | 11.3 | 1.31 | 90 | 4.62 | 52.30 |
最近の株価はずるずる売られているなか、配当は高水準を維持していますので配当利回りは4%半ばとなっています。
今期業績は増益見込みですがPERにそれほど割安感はなく、配当性向は52%付近となっています。
投資判断
今までの内容からAREホールディングスの投資判断について、今期業績は増益見込みな事に加え、配当は高水準を維持している事で配当利回りは4%半ばと気になる水準です。
そんななか、最近の株価が下落している要因は、ロジウム価格の下落や第1四半期決算を受けた今後の下方修正懸念かと思います。
しかし、業績が悪い時でも減配していない配当推移や配当方針に加え、現在の配当性向を考慮すると、多少減益が続いても現在の配当水準は維持されそうな印象です。
以上の点を踏まえると、今後の業績も貴金属価格に影響を受ける事は想定されますが、高配当株として気になる銘柄ではあります。
【5938】LIXIL
2番目の銘柄はLIXILです。
LIXILは住宅、ビル向けの建材や設備機器製品を取り扱う住宅設備の国内最大手です。
最近はM&Aにより海外企業を積極的に買収する事でグローバル化を進めており、直近の海外売上比率はアジアや北米を中心に3割を超えています。
直近決算
LIXILは、7月28日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は3億円と前年同期比54億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
業績低迷の要因は、⽇本や欧州市場での住宅設備・建材需要が低迷している事や前年の⼟地等資産の譲渡益剥落のためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | LIXIL |
2020年3月期 | 125 |
2021年3月期 | 330 |
2022年3月期 | 486 |
2023年3月期 | 159 |
2024年3月期(会社予想) | 110 |
2020年からの通期最終利益について、2022年にかけては大きく増益となりましたが、その後は減益が続いています。
2022年に業績が大きく伸びた要因は、欧州、中東、北米地域などの旺盛な需要に支えられた事やアジア太平洋地域も経済活動の回復が見られた事に加え、前期に実施した希望退職プログラムにかかる一時費用剥落などのためとしています。
しかし、前期は年初に実施した価格改定により売上は増収ですが、原材料費⾼騰によるコスト上昇と価格改定の浸透タイムラグや世界的な需要低迷により大きく減益となっています。
そして、今期業績も⽇本を含む世界の新築着⼯⼾数は当⾯弱めと予測される事などで減益の見込みにしています。
配当推移
年 | LIXIL |
2015年 | 60 |
2016年 | 60 |
2017年 | 60 |
2018年 | 65 |
2019年 | 70 |
2020年 | 70 |
2021年 | 75 |
2022年 | 85 |
2023年 | 90 |
2024年(会社予想) | 90 |
2015年からの配当推移について、業績は低迷が続いていますが減配はなく増加傾向となっています。
前期も業績は大きく減益のなか5円の増配を行っており、今期は現状据え置きの予測にしています。
LIXILの配当方針は、収益の拡大と企業体質の強化を図り長期的な株式価値の向上を実現するとしており、具体的な目安は連結ベースでの配当性向30%以上を維持としています。
株価推移
株価は2018年には3000円を超える水準でしたが、その後はコロナショックで1065円まで下落しています。
2021年には再び3000円付近まで値を戻しましたが、その後は下落が続き直近は1800円前後で推移しています。
株価指標(2023年9月15日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
LIXIL | 5938 | 1848.5 | 48.3 | 0.82 | 90 | 4.87 | 234.9 |
最近の株価は下落が続いているなか、配当は増加傾向ですので配当利回りは5%前後と高水準です。
業績は減益が続いているためPERは市場平均よりもかなり割高で、配当性向も200%超とあまり見ないほど高水準です。
投資判断
今までの内容からLIXILの投資判断ですが、業績や株価は低迷が続くなか配当は高水準を維持している事で、配当利回りは5%前後と魅力的な水準です。
しかし、直近の業績は大きく低迷しており配当性向も200%を超えているなか、業績低迷の要因である住宅市場の低迷や原材料費高騰は暫く続きそうな雰囲気です。
以上の点を踏まえると、株価は下落が続いていますが、なかなか手は出しにくい印象です。
【3333】あさひ
3番目の銘柄はあさひです。
あさひは、自転車の専門店「サイクルベースあさひ」を全国に展開しており、店舗数は500を超えていますので、馴染みがある人も多いかと思います。
取り扱い商品は一般的な自転車からスポーツサイクル、電動アシスト自転車に加え、パーツなども販売しています。
そして、ネット通販も強化しており、PB率も高くなっています。
直近決算
あさひは2月期決算ですので6月26日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は25億円と前年同期比2億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因は、去年8月に価格改定を行った事や電動アシスト自転車の販売が好調なためとしています。
第1四半期時点の通期進捗率は70%を超えていますが、あさひは例年3月から5月の第1四半期業績が突出していますので、9月25日に予定している第2四半期決算に注目です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | あさひ |
2020年2月期 | 25 |
2021年2月期 | 47 |
2022年2月期 | 35 |
2023年2月期 | 33 |
2024年2月期(会社予想) | 34 |
2020年からの通期最終利益を見ていきますが、2021年に大きく伸びた後は30億円台で安定しています。
2021年業績好調の要因は、コロナ禍による移動手段の見直しや健康意識の高まりなどの需要増加へ対応した事に加え、インターネット販売を強化したためとの事です。
2022年以降減益の要因はコロナ禍の需要は継続しているとして売上は増えていますが、仕入れコストや人件費の増加に加え、出店、店舗リニューアルなどの諸経費が膨らんだためとしています。
今期業績も仕入れコスト上昇など厳しい経営環境は継続するとしていますが、去年行った価格改定も反映されるとして増益見込みにしています。
配当推移
銘柄名 | あさひ |
2015年 | 12 |
2016年 | 14 |
2017年 | 14 |
2018年 | 14 |
2019年 | 18 |
2020年 | 18 |
2021年 | 28 |
2022年 | 28 |
2023年 | 28 |
2024年(会社予想) | 45 |
2015年からの配推推移について、数年前までは10円台で推移していましたが、業績好調により2021年は大きく増配となっています。
そして2022年以降の業績は先程も触れた様に減益傾向となっていますが配当は据え置いており、今期見込みは45円と一気に17円の増配になっています。
今期大幅増配の要因について、あさひは配当による直接的な利益還元への集約が適切と判断し、今期から株主優待を廃止しています。
株主優待の廃止に合わせて、今期より配当性向 35%を目安にした事で大きく増配となっています。
株価推移
株価はコロナショックで934円まで売られた後は、約半年で2000円付近まで反発しました。
しかし、その後はずるずる売られる展開となり、直近は1300円前後で推移しています。
株価指標(2023年9月15日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
あさひ | 3333 | 1292 | 9.9 | 0.91 | 45 | 3.48 | 34.6 |
最近の株価は低迷しているなか、今期配当は大きく増配見込みですので配当利回りは3%半ばとなっています。
業績は安定しているなかPER、PBRは市場平均よりも割安で、配当性向は35%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容からあさひの投資判断について、数年前のピークと比較すると業績は低迷していますが最終利益は30億円台で安定しており、最近の株価下落で指標面も割安な状況です。
そんななか、今期から見直された配当方針や現在の配当性向を考慮すると今後の増配にも期待できそうな印象です。
その割に最近の株価は低迷し過ぎの様にも見えますので、高配当株として狙いたくなる銘柄です。
【4839】WOWOW
最後の銘柄はWOWOWです。
WOWOWは、日本初の有料放送を行う民放衛星放送局として1991年に開局し、サッカーやテニスなどのスポーツ番組やコンサートツアーなどの音楽番組に加え、オリジナルドラマなども放送しています。
しかし、最近の業績は乱立する動画配信サービスなどの影響による加入者数減少により、厳しい状況が続いています。
直近決算
WOWOWは7月28日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は4億円と前年同期比3億円の減益ですが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、今期強化しているデジタルマーケティング施策などが功を奏し、新規加入、解約件数ともに前年同期からは良化していますが、トータルでの会員数は減少傾向が続いているためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | WOWOW |
2019年3月期 | 51 |
2020年3月期 | 50 |
2021年3月期 | 29 |
2022年3月期 | 42 |
2023年3月期 | 23 |
2024年3月期(会社予想) | 16 |
2019年からの通期最終利益をみていきますが、変動が激しいなか直近の業績は減益が続いています。
2021年大幅減益の要因は、コロナショックの影響によるスポーツや音楽ライブなどの延期・中止に伴い番組が減少した事に加え、4Kや配信関連費用などが増加したためとしており、2022年は減損損失が無かった事もあり一時的に業績が回復しています。
しかし、前期業績は配信サービスなどとの競争激化により、正味加入件数が4期連続の純減となった事で減益となっています。
そして、今期も引き続き厳しい事業環境は継続する見込みとして更に減益の予測にしているなか、第1四半期時点の通期進捗率は28%付近となっています。
配当推移
銘柄名 | WOWOW |
2015年 | 60 |
2016年 | 70 |
2017年 | 80 |
2018年 | 80 |
2019年 | 80 |
2020年 | 80 |
2021年 | 80 |
2022年 | 60 |
2023年 | 50 |
2024年(会社予想) | 30 |
2015年からの配当推移について数年前までは80円で安定していましたが、最近は業績低迷を背景に減配が続いています。
また、2022年の配当60円のうち10円は開局30周年の記念配当となっており、記念配当を考慮すると前期は据え置きという事になります。
しかし、今期予測は低迷する業績と連動し、20円の大幅減配見込みとなっています。
WOWOWの配当方針は、各事業年度の業績、財務体質の強化、中長期事業戦略などを総合的に勘案して、内部留保の充実を図りつつ、継続的に安定的な配当を目指すとしています。
株主優待
WOWOWには株主優待があり、100株以上1年間継続保有すると「WOWOW視聴料3カ月分無料」か「WOWOW特製QUOカード(2,000円分)」、「日本赤十字社への寄付(2,000円)」のいずれかを選択できます。
また、3年以上継続保有の場合は、WOWOWの無料視聴料が4ヶ月分になるとの事ですので、WOWOWファンの人にはおすすめの株主優待です。
株価推移
株価は2017年には4000円を超える場面もありましたが、その後は下落が続いています。特に最近は低迷する業績を背景に右肩下がりの状況が続き、直近は1200円前後で推移しています。
株価指標(2023年9月15日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
WOWOW | 4839 | 1161 | 20.5 | 0.49 | 30 | 2.58 | 52.8 |
株価は下落が続いていますが、今期配当は大幅減配見込みですので配当利回りは2%半ばの水準です。
業績低迷によりPERは市場平均より割高で、配当性向は53%付近となっています。
投資判断
今までの内容からWOWOWの投資判断について、株価は下落が続いていますが今期の減配により配当利回りは2%台まで低下しています。
株価が下落している要因は業績の低迷に尽きるかと思いますが、これだけ動画配信サービスが乱立している現代社会で加入者を増やしていく事は難しそうです。
また、今後は会員を中心としたビジネス展開に加え、新たな収益機会を創出するとしていますが、先行きは不透明です。
以上の点を踏まえると、有料放送チャンネルの先駆けであるWOWOWには復活して欲しい期待もありますが、現状投資対象としては厳しそうです。
まとめ
今回は強い相場が続く日本株の中でも株価下落が止まらない4つの銘柄が高配当株として投資可能か検証しました。
株価下落が止まらないだけに厳しい業績が続いている銘柄もありましたが、投資対象として検証するうえで1番大切な事は今後の業績がどうなるかです。
その様な視点でみると、今回検証した4銘柄の中ではAREホールディングスとあさひの2銘柄が高配当株として良さそうに思えました。
株価下落が止まらない4つの銘柄はYouTubeで動画版も投稿していますので、あわせてご覧ください。
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