高配当株投資のデメリットとして高配当銘柄は成熟企業のため、株価や企業の将来性に期待しにくいという点を良く言われる事があるかと思います。
確かに新興市場のグロース銘柄の様に急激な株価上昇や企業成長は期待できないかもしれませんが、個人的には高配当銘柄にも将来性が期待できる企業はたくさんあると思っています。
そこで今回は今後の日本が抱える3つの重要テーマごとに、将来性が期待できそうな4つの高配当株を個別に検証していきます。
防衛関連
最初の重要テーマは防衛関連です。
岸田総理は去年12月に2023年度から5年間の防衛費を従来計画の約1.5倍となる43兆円規模とする方針を示し、財源の問題を含め話題になりました。
ロシアウクライナ情勢を報道で見ていると防衛関連が将来性のあるテーマになってしまう事自体は悲しい事ですが、現実問題として考えていかないといけないテーマだと思います。
そこでここからは、戦闘機や艦艇を製造しており防衛関連の代表銘柄である三菱重工を検証していきます。
【7011】三菱重工
三菱重工は、三菱グループの総合重機メーカーで、原子力発電所などのエネルギー関連やプラント、インフラ事業に加え、防衛産業も手掛けています。
今回のテーマである防衛関連については、防衛航空機や飛昇体、艦艇、特殊機械などを製造しています。
そして、去年発生したロシアウクライナ情勢の影響で防衛関連銘柄として注目された事もあり、ここ1年の株価は大きく上昇しています。
直近決算
三菱重工は11月1日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は541億円と前年同期比421億円の増益ですが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありませんでした。
業績好調の要因は、GTCC、航空エンジン、原子力などを中心に受注を伸ばした事や固定費削減に加え、円安の追い風もあったとの事です。
GTCCとはガスタービン・コンバインドサイクル発電プラントの事でガスタービンでの発電に加え、その排熱を利用して蒸気タービンでも発電することにより高い発電効率が実現できるとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 三菱重工 |
2019年3月期 | 1102 |
2020年3月期 | 871 |
2021年3月期 | 406 |
2022年3月期 | 1256 |
2023年3月期(会社予想) | 1200 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、変動が大きくなっています。
2021年頃はコロナショックによる市場縮小や設備投資が翌年以降へ繰り越された事により大きく減益となっています。
しかし、前期はコロナからの経済回復や堅調な受注が続く防衛、宇宙事業の影響もあり業績をコロナ前の水準へ戻しています。
そして今期は現状微減益見込みとしていますが、第2四半期時点の通期進捗率は45%付近で推移しています。
配当推移
銘柄名 | 三菱重工 |
2015年 | 110 |
2016年 | 120 |
2017年 | 120 |
2018年 | 120 |
2019年 | 130 |
2020年 | 150 |
2021年 | 75 |
2022年 | 100 |
2023年(会社予想) | 120 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、業績と連動して配当も変動が大きくなっており、2021年は業績低迷に伴い配当も半減しています。
前期以降は業績回復により配当も増配が続いていますが、まだコロナ前の水準へは戻れていない状況です。
三菱重工の配当方針は、事業成長と財務健全性とのバランスを考慮しながら、連結配当性向30%を目処にするとしています。
株価推移
株価は2021年11月に2511円まで売られた後、ロシアウクライナ情勢で防衛関連として注目された事もあり去年6月には5672円まで上昇しました。そこからは横ばいの展開が続き、直近は5000円前後で推移しています。
株価指標(2023年1月13日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
三菱重工 | 7011 | 4980 | 13.9 | 1.00 | 120 | 2.41 | 33.5 |
直近の株価は横ばいが続くなか今期配当は増配ですが、配当利回りは2%台の水準です。
業績は回復傾向ですがPER、PBRに割安感はなく、配当性向は33%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容から三菱重工の投資判断ですが、最近の業績はコロナからの経済回復もあり順調に推移しています。
防衛関連事業についてはコロナも関係なく堅調に推移しており、防衛費増加により今後も期待できそうです。
既に防衛関連銘柄として株価が上昇している点は気になりますが、今後業績が伸びていくならば更なる株価上昇も期待できるかもしれません。
少子高齢化
続いて2つ目の重要テーマは小子高齢化です。
日本の出生率はコロナの影響もあり想定を上回るスピードで低下しており、このままだと2045年に65歳以上の人口は約4割程度に上昇する見込みです。
少子高齢化に対する抜本的対策は見当たらず、今後は人口減少も加速していく見込みです。
少子高齢化が将来性のあるテーマという事自体には矛盾を感じますが、避けては通れない問題ですので、ここでは病院や介護関連の事業を手掛けている2銘柄を検証します。
【2393】日本ケアサプライ
少子高齢化最初の銘柄は日本ケアサプライです。
日本ケアサプライは「社会基盤整備に貢献するプロジェクト」として三菱商事が設立した企業で、福祉用具のレンタルや販売を手掛けています。
全国の営業所を拠点とし福祉用具貸与事業者や病院・介護施設などの事業者を通じて、福祉用具や生活支援物品、食事サービスなどを提供しており、介護関連の事業者だけでなく健康長寿社会を支える全ての事業者を支援しています。
直近決算
日本ケアサプライは10月28日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は6億5000万円と前年同期比で約1700万円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、福祉用具のレンタル、販売は堅調に推移し売上は増収ですが、レンタル資産購入による減価償却費や物流費の増加に加え、人件費、営業拠点の新設、移転による開発費増加のためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 日本ケアサプライ |
2019年3月期 | 14 |
2020年3月期 | 14 |
2021年3月期 | 17 |
2022年3月期 | 16 |
2023年3月期(会社予想) | 16 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、2021年をピークに前期以降は減益が続いています。しかし今期の見込みも含め売上は順調に伸び続けており、最近の減益は人員や設備の先行投資が要因となっている状況です。
そのため将来的な業績には期待できる部分もありますが、今期については第2四半期時点の通期進捗率が40%付近と今後の下方修正が心配になる水準です。
配当推移
銘柄名 | 日本ケアサプライ |
2015年 | 17 |
2016年 | 25 |
2017年 | 35 |
2018年 | 46 |
2019年 | 46 |
2020年 | 46 |
2021年 | 46 |
2022年 | 60 |
2023年(会社予想) | 70 |
配当について数年前までは46円で据え置きの期間が長かったですが、前期以降は増配額が増えています。
日本ケアサプライの配当方針は、業績に対応した配当を行う事や業容拡大を図るため設備投資を積極的に行うなど事業基盤を強化する観点から、内部留保を充実させることも併せて勘案したうえで配当を決定するとしています。
具体的な数値として2025年3月までは利益水準にかかわらず、70円の年間配当を維持する事を目標にしています。
株価推移
株価はコロナショックで1111円まで売られた後、2021年1月には1900円に迫る水準まで上昇しました。
しかし、そこから反落した後は1500円前後で動きがとまり、直近は1500円台で推移しています。
株価指標(2023年1月13日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
日本ケアサプライ | 2393 | 1532 | 14.9 | 1.56 | 70 | 4.57 | 67.9 |
直近の株価は少し上昇していますが、大幅増配を受けて配当利回りは4%半ばの水準です。
しかし、PER、PBRに割安感はなく、配当性向は68%付近と高水準になっています。
投資判断
以上の点を踏まえ日本ケアサプライの投資判断ですが、福祉用具のレンタルや販売は今後も需要の高まりが想定され、実際最近の売上は増加傾向です。
ここ数年は先行投資の影響で減益になっていますが、長期的に見た場合は将来に期待できる部分は大きいと思います。
配当性向は60%後半と高水準な点は気になる部分ですが、2025年までは現在の配当水準を維持する方針ですので、少し勇気は入りますが狙ってみても面白いかもしれません。
【3455】ヘルスケア&メディカル投資法人
少子高齢化2つ目の銘柄は、REIT(リート)のヘルスケア&メディカル投資法人です。
REITとは投資家から集めた資金を不動産などに投資し、賃料などで得られた利益を投資家に分配する仕組みのファンドで、投資先にはオフィスビルやマンション、商業施設、物流施設など様々な種類があります。
そしてヘルスケア&メディカル投資法人は名前の通り、介護、医療、健康をキーワードとするヘルスケア施設へ重点投資しています。
分配金推移
銘柄名 | ヘルスケア&メディカル |
2016年 | 5070 |
2017年 | 5137 |
2018年 | 5352 |
2019年 | 6763 |
2020年 | 6560 |
2021年 | 6452 |
2022年 | 6611 |
2023年(会社予想) | 6754 |
2016年からの分配金配当推移を見ていきますが、順調に増配傾向が続いています。
REITは収益の90%超を分配する事で実質的に法人税は免除になるため、ヘルスケア&メディカルも最終利益の大半を分配金として還元しています。
基準価格推移
基準価格はコロナショックで7万8400円まで売られた後は、上下を繰り返しながら上昇しています。
しかし、去年10月に20万円を超えた後は反落し、直近は17万円台で推移しています。
株価指標(2023年1月13日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
ヘルスケア&メディカル | 3455 | 175800 | 25.2 | 1.63 | 6754 | 3.84 | ‐ |
最近の基準価格は低迷していますが、分配金は増加している事で利回りは4%前後の水準です。
4%前後の利回りは通常の銘柄では十分高水準ですが、RIETの中では平均より少し高いくらいの水準です。
投資判断
今までの内容からヘルスケア&メディカル投資法人の投資判断ですが、保有物件は有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅などに特化しており、オフィスやマンションなどが主流のREIT銘柄の中では異色の存在です。
しかし、先ほど触れた様に少子高齢化は今後の日本が避けては通れない問題であり、高齢者向け施設や住宅の需要も今後更に高まる事が想定されます。
実際、ヘルスケア&メディカル投資法人の業績、分配金は順調に推移しており将来性も期待できます。
しかし、REITは投資物件の購入資金を銀行から借り入れる事もあり、今後の金利先高観はマイナス材料ではあります。
その辺りも最近に基準価格下落に繋がっているかと思いますが、長い目でみれば今の水準はチャンスかもしれません。
再生可能エネルギー
3つ目の重要テーマは再生可能エネルギーです。
最近は世界的な脱炭素やSDGsの流れもあり、太陽光や風力、地熱に加えバイオマスといった再生可能エネルギーが注目を集めています。
人類がこの先も地球で生活していくために避けては通れない問題だと思いますので、再生可能エネルギー事業も今後更に飛躍していくと思います。
そこで再生可能エネルギーの銘柄としては、インフラファンドからいちごグリーンインフラの現状を検証します。
【9282】いちごグリーンインフラ投資法人
インフラファンドとは、太陽光発電設備をはじめとする再生可能エネルギーや空港、鉄道、道路といったインフラに投資し、そのインフラから得られる収益を分配金として配当するファンドの事です。
インフラファンドは現在5銘柄が上場していますが、全てのインフラファンドが太陽光発電を保有物件に組み入れており、保有物件が不動産という点は違いますがREITの太陽光発電版の様なイメージです。
そして、いちごグリーンインフラも再生可能エネルギーの発電施設を主たる投資対象にしており、現在保有している15件全てが太陽光発電所です。
保有している発電所の場所は沖縄から北海道まで分散されてはいますが、北海道が7件と半数を占めています。
保有している発電所が自然災害などの被害を受ける事や天候不良で想定ほど発電できないリスクがありますので、保有施設のエリアは分散している方が望ましいです。
分配金推移
銘柄名 | いちごグリーンインフラ |
2018年 | 4226 |
2019年 | 3865 |
2020年 | 3802 |
2021年 | 3922 |
2022年 | 4248 |
2023年(会社予想) | 4095 |
2024年(会社予想) | 4065 |
2025年(会社予想) | 3885 |
2026年(会社予想) | 3540 |
いちごグリーンインフラファンドの2018年からの分配金を見ていきますが、ここ数年は4000円前後で安定しており、また6月の年1回分配となっています。
そしていちごグリーンインフラファンドは、2026年までの分配金予測を公表しています。
分配金が徐々に低下傾向な点は気になる部分ですが、ここまで長期的な分配金予測を公表している銘柄は他にないと思いますので、投資材料の1つになるかと思います。
基準価格推移
インフラファンドの基準価格は基本的に安定しており、いちごグリーンインフラの基準価格も最近は7万円付近で安定傾向です。日経平均が大きく下げている時でもインフラファンドの株価は安定している事が多いので安心して保有する事ができます。
株主優待
またいちごグリーンインフラには抽選ですが、Jリーグのチケットが当たる優待もありますのでサッカーが好きな方は狙ってみても良いかもしれません。
ちなみに私は毎試合申し込みを行っており去年も1回当選しています。申し込み出来る席数や席の種類は毎回違いますが、当選した時の席は1人1万円くらいする非常に良い席でした。
また、年末には期間限定の優待として宮崎県の特産品がもらえました。
どちらも抽選にはなりますが、他の銘柄ではあまりない面白い株主優待だと思います。
株価指標(2023年1月13日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
いちごインフラ | 9282 | 71200 | 37.2 | 1.77 | 4095 | 5.75 | ‐ |
基準価格、分配金は安定しているなか、利回りは5%後半と高水準です。
インフラファンドにもREIT同様、配当可能利益の90%超を投資家に分配することなどを条件として、法人税の非課税期間が20年間となる優遇制度が設けられていますので、他のインフラファンドも含め利回りは高水準となっています。
投資判断
今までの内容からいちごグリーンインフラの投資判断ですが、基準価格、分配金は安定しており、現在の分配金利回りは5%後半と高水準です。
そして2026年までの分配金予測を公表しており事業内容も再生可能エネルギー関連ですので、将来性も楽しみです。
将来的には電力の買い取り価格下落などの懸念点もありますが、ポートフォリオの一部としてならば、十分購入を検討できるかと思います。
まとめ
今回は防衛関連、少子高齢化、再生可能エネルギーと将来性が期待できるテーマごとに4つの高配当株を検証しました。
途中でも触れた様に、防衛関連と少子高齢化については将来性を期待したくない部分もありますが、現実を受け止めた場合、避けては通れない問題だと思います。
10年、20年と保有を続ける高配当株投資では、含み益状態の方が安心して継続保有できる かと思いますので将来性を期待できる銘柄を狙いたいと考えています。
将来性が期待できる高配当株4選については、YouTubeで動画版をまとめていますのであわせてご覧ください。
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