高配当株投資は株価の値動きによる値上がり益を求めて売買するわけではありませんが、それでも株価が少しでも安いタイミングで購入した方が良い事に変わりはありません。
しかし、銘柄によってはなかなか株価が下がらず、購入できない様な時もあると思います。
そこで今回は、現在の業績や株価、今後の見通しなどを踏まえ、今の株価は高い状況ですが、それでも購入したいと思える高配当株を3銘柄個別に検証していきます。
【8566】リコーリース
最初の銘柄はリコーリースです。
リコーリースは、事務機器などのリースや集金代行、不動産などの投資事業を手掛けるリコー系のリース会社でリース銘柄らしく業績、配当は安定しており株主還元力も抜群です。
そして既存ビジネス強化と新規ビジネス創出により事業活動を通じた社会的課題解決を図るとして、環境関連分野や農業、医療分野への取り組みも進めています。
直近決算
リコーリースは8月2日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は47億円と前年同期比で9億円の増益ですが、通期最終利益、配当予測に変更はありません。
業績好調の要因は、レンタルや割賦を中心としたリース&ファイナンス事業が好調の為としており、第1四半期としては過去最高益を更新しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | リコーリース |
2019年3月期 | 119 |
2020年3月期 | 118 |
2021年3月期 | 120 |
2022年3月期 | 134 |
2023年3月期(会社予想) | 135 |
2019年からの最終利益を見ていきますが、コロナショックの影響も関係なく順調に増益が続いており、特に前期の業績は大きく伸びています。
前期業績好調の要因は、資産利回り改善の継続やレンタル事業の伸長により各利益はいずれも計画を達成し、過去最高益を更新した為との事です。
配当推移
銘柄名 | リコーリース |
2015年 | 50 |
2016年 | 55 |
2017年 | 60 |
2018年 | 70 |
2019年 | 80 |
2020年 | 90 |
2021年 | 100 |
2022年 | 120 |
2023年(会社予想) | 135 |
配当についても好調な業績を背景に増配傾向が続いており、リコーリースは2022年までで27期連続増配を継続中です。
リコーリースの配当方針は2020年度~2022年度の中期経営計画の目標として、配当性向30%(2023年3月期)を目指すとしています。
株価推移
株価はコロナショックで2423円まで売られた後は順調に上昇し、今年始めにかけて4000円に迫る場面もありました。その後はロシアのウクライナ侵攻や3月権利落ちの影響で売られ、直近は3600円前後で推移しています。
株価指標(2022年9月22日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
リコーリース | 8566 | 3645 | 8.3 | 0.55 | 135 | 3.70 | 30.8 |
株価は高値圏で動きが止まっていますが安定して増配している事で配当利回りは3%後半の水準です。
業績好調の為、PER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は約30%付近と方針通りです。
株主優待
リコーリースには株主優待があり、保有株数や保有継続年数によってQUOカードかカタログギフトが貰えますので、詳細を表にまとめています。
保有株数 | 保有継続年数 | 金額 | 優待品 | |||
100株~299株 | 1年未満 | 2000円相当 | QUOカード | |||
1年以上3年未満 | 4000円相当 | |||||
3年以上 | 5000円相当 | |||||
300株以上 | 1年未満 | 5000円相当 | カタログギフト | |||
1年以上3年未満 | 8000円相当 | |||||
3年以上 | 1万円相当 |
しかし最近の株主優待は、株主への公平な利益還元の流れから廃止にする企業も増えていますので、リコーリースの株主優待にも注意は必要です。
投資判断
今までの内容からリコーリースの投資判断ですが、業績、配当は安定して右肩上がりで、配当利回りも3%後半ですので高配当株として魅力を感じる銘柄です。
しかし、業績が安定していますので株価も安定しており、現在の株価はここ数年でみても安い水準ではありません。
そしてリコーリースの株価は普段それ程大きく動く銘柄では無い為、ここ8年くらいは2000円台後半から4000円付近での動きになっています。
という事でリコーリースは個人的にも現在100株保有していますが、ある程度株価については妥協して、今後少しでも調整する場面があれば買い増しもしたいと考えています。
【8096】兼松エレクトロニクス
2つ目の銘柄は兼松エレクトロニクスです。
兼松エレクトロニクスは総合商社兼松のグループ会社でITを基盤に企業の情報システムに関する設計・構築、運用サービス及びシステムコンサルティングとITシステム製品、ソフトウェアの販売などを行っています。
設立は1968年と古く、セグメントはITインフラの設計、機器の検証、導入・構築などを行うシステム事業とシステムトラブル時の対応や据付・調整から設置環境の調整・対策・レイアウトなどの導入コンサルを手掛けるサービス・サポート事業がメイン事業です。
直近決算
兼松エレクトロニクスは7月29日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は約8億円と前年同期比で2億円の増益ですが、通期最終利益、配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因は、サプライチェーンの混乱や急激な円安の進行による調達コストへの影響などにより不透明感が増しましたが、コロナ禍におけるライフスタイルなどの変化による企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が一層加速した事で、サービス業や官公庁向けのサーバー関連事業が堅調に推移したことに加え、システム構築案件に伴う作業代収入などが増加した為としています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 兼松エレクトロニクス |
2019年3月期 | 67 |
2020年3月期 | 73 |
2021年3月期 | 73 |
2022年3月期 | 87 |
2023年3月期(会社予想) | 86 |
2019年からの最終利益を見ていきますが順調に増益傾向で、2021年はコロナショックによる企業の設備投資抑制などの影響があり前年並みでしたが、その2021年以外は順調に増益傾向です。
業績好調の要因は、リモートワークの拡大により高度化・多様化したサイバー攻撃の急増に伴うセキュリティ対策への需要や人手不足を背景に業務効率化や自動化を目的とした戦略的なIT投資などが堅調に推移している為との事です。
しかし今期は、コロナ感染の動向やロシアのウクライナ侵攻に伴う世界的なインフレの助長、地政学的リスクが高まりサプライチェーンの混乱に伴う供給面の制約や資源価格の上昇などの消費下振れリスクなどが懸念されるとして現状減益見込みとしています。
配当推移
銘柄名 | 兼松エレクトロニクス |
2015年 | 65 |
2016年 | 75 |
2017年 | 90 |
2018年 | 110 |
2019年 | 125 |
2020年 | 135 |
2021年 | 135 |
2022年 | 155 |
2023年(会社予想) | 155 |
配当についても好調な業績を背景に増配が続いており、業績が前年並みだった2021年は据え置きですが、その2021年以外は増配が続いています。
しかし今期については減益見込みとしている業績の影響もあり、現状据え置きの予測となっています。
兼松エレクトロニクスの配当方針は、中長期的な企業成長のための事業基盤の強化に努め、安定的かつ継続的な配当を実現していくことを基本方針としており、具体的な数値としては配当性向50%以上を目安にしています。
株価推移
株価はコロナショック時に2714円まで売られましたが、その後は2020年の年末にかけて4650円まで上昇しています。その後は3500円付近まで値を下げましたが、今年に入り再び上昇し直近の株価は4000円付近で推移しています。
株価指標(2022年9月22日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
兼松エレクトロニクス | 8096 | 4065 | 13.5 | 1.94 | 155 | 3.81 | 51.5 |
最近の株価はじわじわ上昇していますが、安定して増配していますので配当利回りは3%後半の水準です。
しかし、PER、PBRに割安感はなく、配当性向は50%付近と方針通りです。
投資判断
今までの内容をもとに兼松エレクトロニクスの投資判断ですが、ITに特化している企業体制や安定している業績、配当など高配当銘柄として魅力を感じる銘柄だと思います。
コロナ禍によるリモートワークなどの新しい生活スタイルや企業のDX化は、コロナが収束したとしても今後加速していくものだと思いますので、不確かな事が多い現代社会ですがIT業界の未来は明るいと言い切れるかと思います。
将来に期待できる企業で配当も安定して高配当というのは、配当だけでなく将来の値上がり益やポートフォリオ分散の面でも優良な銘柄かと思います。
株価については長期間のチャートで見ると高値圏ですが、ある程度は妥協して短期的に押し目があれば狙いたい銘柄です。
【1911】住友林業
最後の銘柄は住友林業です。
住友林業グループは、木のプロフェッショナルとして人と地球環境にやさしい木を活かし、国内外における山林経営、植林事業からグローバルなネットワークによる木材・建材の調達、流通、製造、加工、住宅建築などを手掛けています。
また、2003年に米国での住宅事業を開始するなどM&Aを絡めて海外展開も進めており、直近の海外売上比率は半数を占めるほどの水準へ急成長しています。
直近決算
住友林業は12月期決算の為、8月9日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は約495億円と前年同期比で204億円の増益となっています。
業績好調により通期最終利益予想を140億円増の1000億円へ上方修正し、配当は従来予想から45円増額して年間125円で発表しています。
業績好調の要因は、米国を中心とした海外住宅・不動産事業および木材建材事業が業績を牽引し、 第2四半期として経常利益、当期純利益とも過去最高益を更新としています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 住友林業 |
2019年3月期 | 291 |
2020年3月期 | 278 |
2020年12月期 | 303 |
2021年12月期 | 871 |
2022年12月期(会社予想) | 1000 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、住友林業は2020年より12月期決算へ変更していますので少し変則的ですが、2021年以降の業績は大きく伸びています。
業績が伸びている大きな要因は、米国の住宅事業が好調な住宅市場を背景に販売戸数・販売価格が上昇している為です。
また、米国不動産開発事業も物件売却数・物件当たりの利益額の上昇により、海外住宅・不動産セグメントが大幅に伸びており、最近の円安も業績に好影響を与えています。
配当推移
銘柄名 | 住友林業 |
2015年 | 21.5 |
2016年 | 24 |
2017年 | 35 |
2018年 | 40 |
2019年 | 40 |
2020年3月 | 40 |
2020年12月 | 35 |
2021年12月 | 80 |
2022年12月(会社予想) | 125 |
配当推移について数年前までは40円付近の水準でしたが、2021年の配当は業績好調を背景に前期の2倍以上の増配となっています。
今期の配当も先程触れた様に当初は据え置きの予想でしたが、業績の上方修正にあわせて増額されています。
住友林業の配当方針は、株主への利益還元を最重要課題の一つと認識し、これを継続的かつ安定的に実施することを基本方針としており、利益の状況に応じた適正な水準での利益還元を行うとしています。
株価推移
株価はコロナショックで1095円まで売られた後は、約1年をかけて2582円まで上昇しました。
その後再び2000円を割れる場面もありましたが、今回の決算を受けて株価は上昇し直近は2300円前後で推移しています。
株価指標(2022年9月22日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
住友林業 | 1911 | 2315 | 4.6 | 0.77 | 125 | 5.40 | 24.9 |
最近の株価は上昇していますが、大幅増配を受けて配当利回りは5%を超えています。
業績好調を受けてPER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は約24%付近と余裕を感じます。
投資判断
今までの内容から住友林業の投資判断ですが、海外事業の好調を中心に業績、配当は大きく伸びており、配当利回りも5%超と高配当株として投資を検討できる銘柄です。
木材に特化していながら海外での売上を伸ばしている点も将来を期待したくなるところですが、アメリカのインフレ対策からの利上げで住宅ローン金利も上昇し、実際アメリカの新設住宅販売件数が下落している点は懸念材料ではあります。
現在の株価はバブル時代の上場来高値2700円に迫る水準まで上昇していますが、住友林業の未来を信じる事ができるならば狙ってみても面白いかもしれません。
まとめ
今回は現在の株価は高いですが、それでも購入を検討したくなる高配当株を3銘柄検証しました。
株価が高いだけに3銘柄とも現在の業績、配当は順調に推移しており、なかなか押し目のチャンスがない状況です。
しかし、どんなに好調な銘柄でもコロナショックやロシアのウクライナ侵攻の様に相場全体が下がる場面では調整する局面があるかと思いますので、今後の購入機会を逃さない様に普段から銘柄の株価動向をチェックしておく事も大切かと思います。
株価が高くても買いたい高配当株3銘柄はYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
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