今回はリース業界よりオリックス、三菱HCキャピタル、リコーリース3社が先日発表した本決算の内容を決算発表前の会社予想や四季報のコンセンサス予想と比較していきます。
個人的にリース銘柄はオリックス、三菱HCキャピタルを200株、リコーリースを100株保有していますのでリース会社の直近決算や配当推移を踏まえ、今後の買い増しが可能か検証していきたいと思います。
リース業界の現状
まずはリース業界の現状から見ていきますが、リース会社が取り扱う商品はパソコン、工作機械、不動産、航空機等様々ありますが、企業の設備投資に連動してしまいますので、景気の動向に業績が大きく左右してしまいます。
そして前期は各社ともコロナからの経済回復を受けて業績が回復していますが、航空機リース等が2月より始まったロシアウクライナ情勢の影響を懸念されている状況です。
最終利益会社予想とコンセンサス予想
銘柄 | コード | 会社予想(億円) | コンセンサス予想(億円) | |
オリックス | 8591 | 3100 | 3179 | |
三菱HCキャピタル | 8593 | 950 | 991 | |
リコーリース | 8566 | 126 | 133 |
そんなリース会社の最終利益について、決算発表前の会社予想と四季報コンセンサス予想を表にまとめています。3銘柄とも好調な業績を背景に増益としている会社予想よりも更にコンセンサスの方が高い予想になっていますので、この辺りの状況を踏まえ実際の決算がどうだったか個別に見ていきます。
【8591】オリックス直近決算
オリックスの通期最終利益は3121億円で1198億円の増益、配当は従来予想から7.6円増配の年間85.6円としています。
今期の予測について最終利益は開示していませんが、年間配当は据え置きの85.6円予想で発表しています。
業績好調の要因は、海外ビジネスを中心に堅調に推移した事や弥生の売却益が過去最大の案件になった為との事です。
配当推移
銘柄名 | オリックス |
2015年 | 36 |
2016年 | 45.75 |
2017年 | 52.25 |
2018年 | 66 |
2019年 | 76 |
2020年 | 76 |
2021年 | 78 |
2022年 | 85.6 |
2023年(会社予想) | 85.6 |
2015年からの配当推移をみていきますが概ね順調に増配傾向です。
コロナショックの影響が出始めた2020年は据え置きとなっていますが、2021年は配当性向を一時的に50%まで引き上げて増配を実施しています。
オリックスの配当方針は、今期については配当性向33%または前期配当金額(85.6円)の高い方を年間配当にするとしています。オリックスは最近この様な配当方針のケースが多く、前期配当も配当性向33%もしくは年間配当78円の高い方としていましたが、最終的なEPSは259.4円だった為、33%の85.6円が年間配当となっています。方針通りではあるのですが、正直85円でも文句を言う人はいなかったと思いますので、この0.6円にオリックスの株主還元姿勢を感じます。
株価推移
株価はコロナショックで1100円まで売られた後は上下を繰り返しながら上昇しています。
特に2021年以降は上昇ペースに勢いが付いており、今年1月には2600円を超える場面もありました。
その後はロシアのウクライナ侵攻もあり値を下げましたが、直近は2300円付近で推移しています。
【8593】三菱HCキャピタル直近決算
三菱HCキャピタルの通期最終利益は994億円と441億円の増益、配当は従来予想から2円増額の年間28円となっています。
今期予測は最終利益が1100億円と106億円の増益、配当は3円増配の年間31円予想で発表しています。
業績好調の要因は欧米を中心とした事業の伸長や航空関連における売却益の増加等としています。
配当推移
銘柄名 | 三菱HCキャピタル |
2015年 | 9.5 |
2016年 | 12.3 |
2017年 | 13 |
2018年 | 18 |
2019年 | 23.5 |
2020年 | 25 |
2021年 | 25.5 |
2022年 | 28 |
2023年(会社予想) | 31 |
2015年からの配当推移をまとめていますが、順調に増配傾向です。
三菱HCキャピタルは、2022年迄で23期連続増配を継続中で今期も24期連続増配を継続見込みです。
三菱HCキャピタルの配当方針は、株主還元は配当によって行うことを基本とし、2023年3月期の1株当たり年間配当金予想は2023年4月にスタート予定の新中期経営計画期間中の配当性向イメージである40%程度に沿って決定する方針としています。
株価推移
株価はコロナショックで448円まで売られた後は順調に値を戻し2021年3月には700円に迫る場面もありました。
その後は600円台での値動きとなり、直近は620円前後で推移しています。
【8566】リコーリース直近決算
リコーリースの通期最終利益は134億円と14億円の増益、配当は従来予測から5円増額の年間120円となっています。
今期予測は最終利益が135億円とほぼ据え置き見込みですが、配当は15円増配の年間135円予想で発表しています。
業績好調の要因は、資産利回り改善の継続やレンタル事業の伸長により各利益はいずれも計画を達成し過去最高益を更新した為としています。
配当推移
銘柄名 | リコーリース |
2015年 | 50 |
2016年 | 55 |
2017年 | 60 |
2018年 | 70 |
2019年 | 80 |
2020年 | 90 |
2021年 | 100 |
2022年 | 120 |
2023年(会社予想) | 135 |
配当推移については、リコーリースも順調に増配傾向です。
リコーリースは2022年迄で27期連続増配を継続中で今期は28期連続増配見込みです。
リコーリースの配当方針は2020年度~2022年度の中期経営計画の目標として、配当性向30%(2023年3月期)を目指すとしています。
株価推移
株価はコロナショックで2423円まで売られた後は3945円まで値を戻しましたが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて売られ、直近は3400円台で推移しています。
リース3社最終利益推移(億円)
リース3社の2018年からの最終利益推移を比較しています。
銘柄名 | オリックス | 三菱HCキャピタル | リコーリース |
2018年3月期 | 3131 | 636 | 113 |
2019年3月期 | 3237 | 687 | 119 |
2020年3月期 | 3027 | 707 | 118 |
2021年3月期 | 1923 | 553 | 120 |
2022年3月期 | 3121 | 994 | 134 |
2023年3月期(会社予想) | ‐ | 1100 | 135 |
オリックスと三菱HCキャピタルは、コロナショックの影響で2021年に大きく業績を落としたところから2022年は回復している格好ですが、リコーリースはコロナショックの影響もそれ程関係なく増益傾向です。
今期のオリックスは現状最終利益の予想を公表していませんが、三菱HCキャピタルとリコーリースは増益見込みで発表しています。
リース3社最終利益コンセンサス最終着地比較
冒頭で触れたリース3社の決算発表前の会社予想、コンセンサス予想と実際の最終着地を比較していきます。
銘柄 | コード | 最終利益(億円) | 会社予想(億円) | コンセンサス予想(億円) | |
オリックス | 8591 | 3121 | 3100 | 3179 | |
三菱HCキャピタル | 8593 | 994 | 950 | 991 | |
リコーリース | 8566 | 134 | 126 | 133 |
リース3社とも会社予想よりもコンセンサスの方が高い予想になっていましたが、三菱HCキャピタル、リコーリースの2銘柄は、そのコンセンサスも少しですが上回っています。
オリックスは、会社予想は上回りましたがコンセンサスには届いていない最終着地となりましたが、それでも3社とも順調な決算と言えるかと思います。
配当推移比較
リース3社の2015年からの配当推移を比較しています。
銘柄名 | オリックス | 三菱HCキャピタル | リコーリース |
2015年 | 36 | 9.5 | 50 |
2016年 | 45.75 | 12.3 | 55 |
2017年 | 52.25 | 13 | 60 |
2018年 | 66 | 18 | 70 |
2019年 | 76 | 23.5 | 80 |
2020年 | 76 | 25 | 90 |
2021年 | 78 | 25.5 | 100 |
2022年 | 85.6 | 28 | 120 |
2023年(会社予想) | 85.6 | 31 | 135 |
3社ともコロナショックで業績が落ち込んだタイミングでも減配はしておらず、株主還元姿勢の高さを感じます。
特に三菱HCキャピタルとリコーリースは20年以上連続増配を継続しており、今後の配当推移も楽しみです。
オリックスも最近の配当はぎりぎりまで配当額を高める姿勢を感じますので、改めてリース銘柄の株主還元姿勢を感じる配当推移です。
株価指標比較(2022年6月17日時点)
リース3社の株価等指標をまとめています。
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
オリックス | 8591 | 2286.5 | ‐ | 0.84 | 85.6 | 3.74 | ‐ |
三菱HCキャピタル | 8593 | 624 | 8.2 | 0.68 | 31 | 4.97 | 40.4 |
リコーリース | 8566 | 3440 | 7.8 | 0.53 | 130 | 3.78 | 30.8 |
オリックスの株価は右肩上がりの状況が続いている事もあり配当利回りは3.7%付近まで低下しています。またオリックスは今期最終利益見込みを公表していない為、PERや配当性向が算出できない状況です。
三菱HCキャピタルの配当利回りは5%前後と高水準で、リコーリースも3%後半と連続増配を受けて配当利回りは上昇しています。
株主優待
オリックスとリコーリースは株主優待もありますので個別に紹介します。
オリックス株主優待
オリックスの株主優待は、100株以上保有で5000円相当のカタログギフトが貰えるのですが、3年以上の継続保有で1万円相当にグレードがアップする「ふるさと優待」とオリックスグループが提供する各種サービスを割引価格で利用できる株主カードがもらえます。
オリックス | 保有継続年数 | 金額 | 優待品 | |||
100株以上 | 3年未満 | Bコース(5000円相当) | カタログギフト | |||
3年以上 | Aコース(1万円相当) | カタログギフト |
しかしオリックスは今回の決算で株主の皆様へのより公平な利益還元のあり方という観点から株主優待制度の廃止を発表しました。
最近は株主優待制度について個人投資家の受ける利益が機関投資家や海外の投資家と比較して大き過ぎるとの観点で株主優待を廃止にする企業も増えています。
しかし、廃止時期は両方とも2024年3月末時点としており、まだ2年近く猶予は残っていますので、この辺りにもオリックスの株主還元姿勢を感じます。
リコーリース株主優待
リコーリースは、保有株数や保有継続年数によってQUOカードかカタログギフトが貰える株主優待ですが、詳細はこちらの表に記載しています。
保有株数 | 保有継続年数 | 金額 | 優待品 | |||
100株~299株 | 1年未満 | 2000円相当 | QUOカード | |||
1年以上3年未満 | 4000円相当 | |||||
3年以上 | 5000円相当 | |||||
300株以上 | 1年未満 | 5000円相当 | カタログギフト | |||
1年以上3年未満 | 8000円相当 | |||||
3年以上 | 1万円相当 |
最近の株主優待廃止の流れを受けてリコーリースの優待も心配されましたが、今回の決算で優待の改悪や廃止の発表はありませんでした。
リース3社の投資判断
今までの点を踏まえリース3銘柄の投資判断ですが、業績、配当は順調に推移しており十分高配当銘柄として購入を検討できる銘柄だと思います。
しかし3銘柄の株価を比較するとオリックスはかなりのハイペースで上昇しており、また株主優待の廃止も発表されましたので、今の水準での買い増しは現状考えていないです。
三菱HCキャピタルやリコーリースは、今後の状況次第で買い増しも検討したいところですが、リコーリースは最低購入金額が30万円を超える為、個人的にはNISA枠の残り金額との絡みもあり、今年買い増すのならば三菱HCキャピタルかなというところです。
リース3社の投資判断はYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
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