高配当株投資において1番大切な事は配当の安定性ですが、できれば安定しているだけで無く、継続的な増配も期待したいところです。そんななか、最近は好調な業績を背景に増配を行ってくれる銘柄も増えていますので、今月末から本格化する決算シーズンでも更なる増配発表が期待できそうな状況です。
そして、最近は減配せず現在の配当水準を維持または増配し続ける最強の配当方針『累進配当』を宣言する銘柄も増えています。累進配当を宣言している銘柄に減配リスクはなく、他の銘柄と比較して継続的な増配も期待できますので、今回は累進配当を宣言している銘柄を4つのテーマに分けたうえで、現在累進配当を宣言している高配当株を紹介していきます。
累進配当銘柄が多い業種
という事で最初のテーマは累進配当を宣言している銘柄が多い業種です。日本企業は良くも悪くも横並びの意識が強く、同業種のライバル企業が累進配当を宣言すると、続いて累進配当を導入するケースも多いです。
従って、業種によって累進配当銘柄が偏る場合もありますので、まずは現状1番累進配当銘柄が多い商社業界から代表的な3銘柄の配当方針や配当推移を紹介していきます。
【8058】三菱商事
商社業界最初の銘柄は三菱商事です。三菱商事は三菱グループの総合商社でエネルギー、金属などの金属資源部門に強みを持っています。
配当方針
三菱商事の配当方針は、2024年度までの中期経営戦略においては累進配当を継続としており、具体的な目安は総還元性向で40%程度としているなか、稼ぐ力が伸長し、キャッシュフローの予見性が高まった事から市場期待も踏まえ、一段高い水準まで配当額を引き上げるとしています。
ちなみに三菱商事が累進配当を宣言したのは2016年からで、今回紹介する銘柄の中でもトップクラスに長い期間、累進配当政策を継続しています。
配当推移
銘柄名 | 三菱商事 |
2015年 | 23.3 |
2016年 | 16.6 |
2017年 | 26.6 |
2018年 | 36.6 |
2019年 | 41.6 |
2020年 | 44 |
2021年 | 44.6 |
2022年 | 50 |
2023年 | 60 |
2024年 | 70 |
2025年(会社予想) | 100 |
2015年からの配当推移を見ていますが、累進配当を導入した2017年以降、もちろん減配はなく順調に増配傾向で、コロナショックで業績を大きく落とした2021年にも0.6円とわずかですが、増配を継続しています。
そして、2022年以降は好調な業績を背景に増配幅も大きくなっており、今期見込みは2015年と比較すると4倍以上の水準です。
【8031】三井物産
商社業界2番目の銘柄は三井物産です。三井物産は三菱商事、伊藤忠、丸紅、住友商事と並ぶ5大総合商社の一角で、従来から資源部門に強みを持っていましたが、現在は非資源部門への収益構造改革も進めています。
5大総合商社の中では少し遅れを取りましたが、去年5月に累進配当を宣言しています。
配当方針
三井物産の配当方針は当期利益ではなく、獲得するキャッシュの水準に基づき株主還元額を決定し、安定性と機動性を兼ね備えた株主還元を実施する方針です。
そして、2026年3月期までの中期経営計画中は基礎営業キャッシュフローに対する株主還元の割合を37%程度目標としていますが、現状は40%を超える見込みで、また中期経営計画中の累進配当を宣言しています。
配当推移
銘柄名 | 伊藤忠 |
2015年 | 46 |
2016年 | 50 |
2017年 | 55 |
2018年 | 70 |
2019年 | 83 |
2020年 | 85 |
2021年 | 88 |
2022年 | 110 |
2023年 | 140 |
2024年 | 160 |
2025年(会社予想) | 200 |
2015年からの配当推移について、コロナ前は据え置きや減配の年もありましたが、最近は順調に増配傾向となっています。特にここ数年の増配幅は業績好調を背景に大きくなっており、今期見込みは2015年と比較すると3倍以上の水準です。
累進配当の導入は総合商社の中でも遅い方でしたが、ここ数年の配当推移は実質的に累進配当の様な銘柄でした。そんななか、去年正式に累進配当を宣言した事で今後の更なる増配にも期待が持てる状況となっています。
【8002】丸紅
商社業界最後の銘柄は丸紅で三菱商事や伊藤忠と並ぶ5大総合商社の1つです。5大総合商社の中では企業規模や業績が見劣りする部分はありますが、丸紅は穀物事業や電力事業などの非資源部門にも強みを持っている事が特徴です。
配当方針
丸紅の配当方針は2025年3月期までの中期経営戦略期間は中長期的な利益成長に合わせて増配していく累進配当を実施としています。
また、自己株式取得は資本効率の改善及び1株当たりの指標改善などを目的として機動的に実施し、実施の金額・タイミングは総還元性向30%~35%程度を目安に経営環境などを踏まえて判断するとの事です。
配当推移
銘柄名 | 丸紅 |
2015年 | 26 |
2016年 | 21 |
2017年 | 23 |
2018年 | 31 |
2019年 | 34 |
2020年 | 35 |
2021年 | 33 |
2022年 | 62 |
2023年 | 78 |
2024年 | 85 |
2025年(会社予想) | 90 |
2015年からの配当推移について、数年前までは30円台で推移していましたが、2022年は業績好調を背景に一気に2倍近い29円の大幅増配となっており、その後も順調に増配が続いている事で今期見込みは2015年と比較して3倍以上の水準に増えています。
丸紅は自社の株主還元が商社セクター内でやや見劣りしている事を課題と考えており、ここ数年で収益基盤と財務基盤の充実・強化が進展したことを踏まえ、去年2月に今期までの累進配当を宣言しています。
総合商社まとめ
この様に商社銘柄は最近の好調な業績もあって累進配当を宣言している銘柄が多く、この他にも住友商事や豊田通商、双日なども累進配当を導入しています。また、同じく5大総合商社の伊藤忠も前期までは累進配当を謳っていましたが、今期の配当方針には累進配当の文言が消えました。しかし、今期配当は下限の年間200円か配当性向30%のいずれか高い方としていますので、事実上累進配当のなか、業績によっては更なる増配が期待しやすい状況になっています。
銀行株の累進配当銘柄
以上の様に、商社業界は現状1番累進配当銘柄が多い業種となっていますが、続いては同じく累進配当を宣言している銘柄が多い銀行業界を紹介していきます。
【8306】三菱UFJFG
銀行業界最初の銘柄は三菱UFJFGです。三菱UFJFGはメガバンクの三菱UFJ銀行を中核に持つ金融持株会社で国内最大手の金融グループです。三菱UFJ銀行のほか、三菱UFJ証券やリースの三菱HCキャピタルなども傘下にしています。
そんななか、近年はアメリカやアジア、オセアニアを中心に海外への積極的な進出も進めており、直近の海外売上比率は5割を超えている状況です。
配当方針
三菱UFJの配当方針は、利益成長を通じた1株当たり配当金の安定的・持続的な増加を基本方針にしており、具体的な目安は配当性向40%程度としています。
三菱UFJFGは2019年に発表した決算で配当方針に「安定的・持続的な増加」という文言を加えており、また配当性向40%の目標も2019年に公表しています。
という事で、5年近く累進配当を導入しており、目安の水準にも変更はないですが、業績の伸長によりここ数年の配当は大きく増えている状況です。
配当推移
銘柄名 | 三菱UFJ |
2015年 | 18 |
2016年 | 18 |
2017年 | 18 |
2018年 | 19 |
2019年 | 22 |
2020年 | 25 |
2021年 | 25 |
2022年 | 28 |
2023年 | 32 |
2024年 | 41 |
2025年(会社予想) | 50 |
という事で、2015年からの配当推移を見ていきますが、2018年頃からは順調に増配傾向です。コロナショックで業績が落ち込んだ2021年は据え置きでしたが、ここ数年は業績好調を背景に増配額も大きくなっています。前期は過去最高の引き上げ幅となる9円の増配、今期も期初から同額の増配見込みとした事で年間配当は50円の大台に乗せていますが、現状の配当性向は約38.8%と目安の水準を下回っている状況です。
【8316】三井住友FG
銀行業界2番目の銘柄は三井住友FGです。三井住友FGは、メガバンクの三井住友銀行を中核に持つ金融持株会社で国内では三菱UFJFGに次ぐ存在です。三井住友銀行のほか、SMBC日興証券や三井住友ファイナンス&リース、三井住友カードなどを傘下にしています。
また、アメリカやアジア、オセアニアを中心に直近の海外売上比率は6割に迫る水準です。
配当方針
三井住友FGの配当方針はボトムラインの成長を通じて増配を実現するとしており、配当は累進的で具体的な目安は配当性向40%としています。三井住友FGの配当方針に「累進」の文言が出てきたのは、2017年に発表した2018年3月期決算からで、ちなみに当時の目安も現在と同じ配当性向40%でした。
配当推移
銘柄名 | 三井住友FG |
2015年 | 46.6 |
2016年 | 50 |
2017年 | 50 |
2018年 | 56.6 |
2019年 | 60 |
2020年 | 63.3 |
2021年 | 63.3 |
2022年 | 70 |
2023年 | 80 |
2024年 | 90 |
2025年(会社予想) | 110 |
2015年からの配当推移について、2021年までは据え置きの年もありましたが、概ね順調に増配が続いていました。そして、2022年以降は好調な業績を背景に増配幅も大きくなり、最近は10円刻みの増配が続いていたなか、今期は一気に20円の大幅増配見込みになっていますが、現在の配当性向は40%付近と方針通りの水準です。
【8411】みずほFG
銀行業界3番目の銘柄はみずほFGです。みずほFGは、メガバンクのみずほ銀行を中核に持つ持株会社で、国内では三菱UFJFG、三井住友FGに次ぐ、3番目の存在です。みずほ銀行のほか、みずほ証券やみずほ信託銀行などを傘下にしています。
そんななか、アジアや北米を中心に海外事業を展開しており、直近の海外売上比率は7割に迫る水準となっています。
配当方針
みずほFGの配当方針は累進的な配当を基本とし、自己株式取得は機動的に実施することとしており、配当は安定的な収益基盤の着実な成長に基づき配当性向40%を目安に決定する方針です。
配当推移
銘柄名 | みずほFG |
2015年 | 75 |
2016年 | 75 |
2017年 | 75 |
2018年 | 75 |
2019年 | 75 |
2020年 | 75 |
2021年 | 75 |
2022年 | 80 |
2023年 | 85 |
2024年 | 105 |
2025年(会社予想) | 115 |
2015年からの配当推移について、数年前までは75円で横ばいの時期が続いていましたが、2022年以降は増配が続いています。そんななか、前期は一気に20円の大幅増配となっており、今期は現状10円の増配見込みになっています。この様に他のメガバンク2銘柄と比較すると物足りない水準である事は否定できませんが、最近の配当推移は累進配当政策のもと増配が続いています。
銀行株まとめ
ここまでは銀行業界の中で累進配当を宣言している銘柄を検証していきましたが、メガバンクは3社とも累進配当を導入しており、また最近は地銀でも累進配当を宣言する銘柄が増えていますので、商社業界同様に銀行業界も好調な業績を背景に累進配当銘柄が増えています。
今期から累進配当を宣言した銘柄
そんななか、この2業種以外にも最近は株主還元強化の方針から累進配当を宣言する銘柄は増えていますので、2つ目のテーマでは今期から累進配当を宣言した3銘柄を検証していきます。
【8801】三井不動産
今期から累進配当を宣言した最初の銘柄は三井不動産で、オフィスビルや商業施設、ホテル、レジャー施設、住宅、マンションなどを手掛ける総合不動産会社です。東京ドームや東京ミッドタウンタワー、ららぽーと、東京ディズニーリゾートなど有名施設を数多く手掛けています。
配当方針
三井不動産の配当方針は持続的な利益成長と連動した安定的な増配としており、今期から累進配当を導入するなか、目安の配当性向は35%程度、総還元性向は50%以上としています。
配当推移
銘柄名 | 三井不動産 |
2015年 | 8.3 |
2016年 | 10 |
2017年 | 11.3 |
2018年 | 13.3 |
2019年 | 14.6 |
2020年 | 14.6 |
2021年 | 14.6 |
2022年 | 18.3 |
2023年 | 20.6 |
2024年 | 28 |
2025年(会社予想) | 30 |
2015年からの配当推移について、コロナショックの影響を受けた2020年頃は据え置きの年が続きましたが、減配はありませんでした。そんななか、最近は業績好調により増配が続いており、2015年と比較して今期見込みは3倍以上の水準です。
以上の様に今までの配当推移でも減配はなく、実質的に累進配当の様な銘柄でしたが、今期から明確に累進配当が宣言された事で今後の増配への期待も高まっています。
【4182】三菱ガス化学
今期から累進配当を宣言した2番目の銘柄は三菱ガス化学で基礎化学品や機能化学品を生産する化学材料メーカーです。主要製品は海外で合弁生産するメタノールや過酸化水素となっており、半導体やスマホ向け材料に強みを持っています。
また、海外の売上も多くなっており、直近の海外売上比率はアジアを中心に6割近くを占めています。
配当方針
三菱ガス化学の配当方針は内部留保の水準と株主還元の水準を勘案して、自己株式の取得も機動的に実施し、資本効率の向上と株主還元の充実を図る事を基本方針としています。
そんななか、今期から2027年3月期までの新中期経営計画中は、具体的な目安を従来から10%引き上げて総還元性向50%にしつつ、累進配当を採用しています。
配当推移
銘柄名 | 三菱ガス |
2015年 | 28 |
2016年 | 32 |
2017年 | 38 |
2018年 | 59 |
2019年 | 70 |
2020年 | 70 |
2021年 | 70 |
2022年 | 80 |
2023年 | 80 |
2024年 | 80 |
2025年(会社予想) | 90 |
2015年からの配当推移について、据え置きが続く期間もありますが減配はなく、概ね増配傾向です。ここ最近も3年続けて80円で据え置きとなっていましたが、今期は久しぶりに10円の増配見込みになっています。
今までの配当推移は数年単位で据え置きが続く期間がありますが、累進配当導入をきっかけに今後増配が続いていくのか注目です。
【3393】スターティアHD
今期から累進配当を宣言した最後の銘柄はスターティアHDで、中小企業向けにITインフラやサーバーなどを提供しています。最近はデジタルマーケティング事業に注力しており、営業支援ツールや見込み顧客化・商談化ツールなども手掛けているなか、今期から累進配当の導入を発表しています。
配当方針
スターティアHDの配当方針は財務健全性の維持に努め、連結業績や今後の事業展開などを総合的に勘案し、累進配当を継続的に実施すると共に、連結ベースの配当性向 55%を目途としています。
配当推移
銘柄名 | スターティア |
2015年 | 10 |
2016年 | 9 |
2017年 | 9 |
2018年 | 12 |
2019年 | 9 |
2020年 | 9 |
2021年 | 10 |
2022年 | 14 |
2023年 | 41 |
2024年 | 69 |
2025年(会社予想) | 97 |
2015年からの配当推移について、数年前は10円前後で停滞している期間が長かったですが、2021年以降は増配傾向が続いています。そんななか、特に最近は増配幅も大きくなっており、前期、今期ともに28円の大幅増配となっています。
直近の配当が大きく増配となっている要因は、最近の業績が好調に推移している事や今回の累進配当導入に合わせ、配当性向の目安も従来の配当性向35%から55%へ引き上げられたためです。
事実上累進配当な銘柄
ここまでは累進配当を宣言している銘柄を業種や宣言した時期ごとにまとめてきましたが、なかには配当方針に「累進配当」と明確に謳っているわけではありませんが、20年近く連続増配が続いており、事実上累進配当と呼べる銘柄もあります。
という事で3つ目のテーマでは、長期間に渡り連続増配が続いており、事実上の累進配当と呼べる3銘柄を紹介していきます。
【4732】ユー・エス・エス
事実上の累進配当最初の銘柄はユー・エス・エスです。ユー・エス・エスは中古車のオークションなどを運営している企業で、現車オークションの「USSオートオークション」や中古買い取り店「ラビット」を展開しています。
中古オークション業界のシェアは約4割とトップの存在で、廃自動車などのリサイクル事業も手掛けています。
配当方針
ユー・エス・エスの配当方針は、成長投資と株主還元の両輪で株主価値の向上を目指すとしており、具体的な目安は連結配当性向55%以上を維持としているなか、2026年度までは総還元性向80%以上としています。
配当推移
銘柄名 | ユー・エス・エス |
2015年 | 18.85 |
2016年 | 20.4 |
2017年 | 23.2 |
2018年 | 23.9 |
2019年 | 25.2 |
2020年 | 27.7 |
2021年 | 27.75 |
2022年 | 33.1 |
2023年 | 33.75 |
2024年 | 37.7 |
2025年(会社予想) | 41.2 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、業績が大きく落ち込んだ2021年でも0.05円の増配を行っており、増配は前期までで24期連続となっています。ちなみに2021年の配当性向は300%を超えていましたので、まさに意地の連続増配です。
そして、業績が過去最高益を記録し始めた2022年以降は増配ペースも加速し、今期見込みは2015年と比較すると2倍以上の水準となっています。
この様にユー・エス・エスの配当方針に累進の文言はありませんが、連続増配は20年以上継続しており、特にコロナショックの様な異例の事態に見舞われ、業績が大きく悪化したタイミングでも増配してくれている株主還元姿勢は、事実上の累進配当銘柄と呼んで良いかと思います。
【9989】サンドラッグ
事実上の累進銘柄2番目はサンドラッグで、ドラッグストア「サンドラッグ」をチェーン展開しています。「サンドラッグ」は全国に店舗を展開しており、またグループ会社まで含めた店舗数は約1400店舗と業界第4位になっています。
そして、九州を中心にディスカウントストアの「ダイレックス」も約400店舗運営しています。
配当方針
サンドラッグの配当方針は事業成長につながる積極投資と株主還元策を検討しながら、 持続的な企業価値向上をめざした経営判断と戦略遂行に務めるとしており、具体的な目安を配当性向50%としています。
配当推移
銘柄名 | サンドラッグ |
2015年 | 30 |
2016年 | 42.5 |
2017年 | 50 |
2018年 | 60 |
2019年 | 66 |
2020年 | 68 |
2021年 | 70 |
2022年 | 71 |
2023年 | 100 |
2024年 | 114 |
2025年(会社予想) | 130 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、減配はもちろん据え置きの年すらなく増配が継続しており、連続増配は前期までで22期連続となっています。そんななか、最近は好調な業績を背景に増配幅も大きくなっており、今期見込みは2015年と比較すると4倍以上の水準です。
サンドラッグも配当方針に累進の文言はありませんが、20年以上の長期連続増配記録を継続中で、また最近は業績も好調に推移している事で、現状の配当性向も50%付近と方針通りの水準ですので、今後の更なる連続増配も期待できそうです。
【2317】システナ
事実上の累進配当銘柄3番目はシステナです。システナは独立系のシステム開発会社で、ITのソリューション提案やIT・クラウドサービス、IT商品の提供に加え、保守・運用までトータルなシステム支援を手掛けています。
自動運転や車載システム、社会インフラ、ネットビジネスに加え、公共系の基幹・周辺システム開発など幅広い分野に進出しています。
配当方針
システナの配当方針は、各事業年度の業績および財務状況ならびに経営基盤の強化と今後の事業展開などを勘案し、連結配当性向40%以上を目標に積極的に実施する方針です。
配当推移
年 | システナ |
2015年 | 1.88 |
2016年 | 2 |
2017年 | 2.25 |
2018年 | 2.88 |
2019年 | 4 |
2020年 | 5 |
2021年 | 5 |
2022年 | 6 |
2023年 | 8 |
2024年 | 10 |
2025年(会社予想) | 12 |
2015年からの配当推移について、システナは何度か株式分割を行っているため、かなり細かい数字になっていますが減配はなく、順調に増配が続いています。そんななか、コロナショックの影響を受けた2021年は据え置きでしたが、最近は2円刻みの増配が続いており、前期も業績は減益でしたが2円の増配となっています。
高配当な累進配当銘柄
ここまでは様々な観点から累進配当銘柄を検証してきましたが、高配当株として1番重要な事はやはり配当利回りの高さだと思います。何故なら、累進配当銘柄といっても配当利回りが1%台の銘柄や全然増配を行ってくれない銘柄もあるからです。
もちろん、累進銘柄の配当は据え置きでも問題ありませんが、やはりわざわざ累進配当を宣言している銘柄には連続増配からの高利回り株を期待したくなりますので、最後のテーマでは現在の配当利回りが3%半ば程度を超えている高配当な累進銘柄を紹介していきます。
【4502】武田薬品工業
高配当な累進銘柄最初は武田薬品工業です。武田薬品工業の売上は国内医薬品企業の中でトップとなっており、現在約80の国と地域で医薬品を販売しています。
今までも配当については30期以上減配していませんでしたが、去年5月に累進配当を宣言しています。
配当方針
武田薬品工業の配当方針は、毎年の年間配当金を増額または維持するとしており、前期より累進配当を導入しています。
配当推移
年 | 武田薬品 |
2015年 | 180 |
2016年 | 180 |
2017年 | 180 |
2018年 | 180 |
2019年 | 180 |
2020年 | 180 |
2021年 | 180 |
2022年 | 180 |
2023年 | 180 |
2024年 | 188 |
2025年(会社予想) | 196 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、2023年までの年間配当は毎年180円で、遡ると2009年から10年以上180円で変わっておらず、30期以上減配はしていませんでした。
そんななか、前期はレバレッジ低下の進捗および将来の成長に対する自信に基づく増配として、久しぶりに8円の増配になっており、今期も更に8円の増配予測になっています。
以上の様に武田薬品の配当は長らく据え置きが続いていましたが、累進配当を宣言した前期以降は増配が続いており、現在の配当利回りも4%半ばと高配当になっています。
【8439】東京センチュリー
高配当な累進銘柄2番目は東京センチュリーで、オートリースや航空機リースなどを手掛ける伊藤忠系の大手総合リース会社です。
パソコンやサーバーなどの情報通信機器の取り扱いに強みを持っており、再生可能エネルギー事業も手掛けています。
配当方針
東京センチュリーの配当方針は、長期的かつ安定的に利益還元を行うことを基本としており、累進配当を基本としつつ、利益成長による増配を目指し、配当性向は35%程度を目安にしています。
配当推移
銘柄名 | 東京センチュリー |
2015年 | 16.25 |
2016年 | 20 |
2017年 | 25 |
2018年 | 28.5 |
2019年 | 31 |
2020年 | 34 |
2021年 | 34.5 |
2022年 | 35.75 |
2023年 | 35.75 |
2024年 | 52 |
2025年(会社予想) | 58 |
2015年からの配当推移について、ロシア関連の損失で大きく減益となった2023年は据え置きになっていますが、その年以外は順調に増配が続いています。ちなみに2023年の配当性向は300%を超えていましたので、減配しなかったのが不思議な水準です。
そんななか、直近は業績回復から増配幅も大きくなっており、前期は約16円、今期も6円の増配見込みと2015年と比較すると3倍以上の水準です。
以上の様に東京センチュリーの配当推移も事実上累進配当の様な銘柄でしたが、今期から明確に累進配当と謳っている事で今後の更なる増配も期待できそうな状況になっているなか、現在の配当利回りでも既に3%半ば程度の水準となっています。
【6625】JALCO
高配当な累進銘柄最後はJALCOで不動産金融のジャルコを中核とする持株会社です。パチンコホールや事業会社保有不動産の物件・用地取得、テナント賃貸に加え、ファイナンス事業を手掛けています。
また、中古遊技機売買サイトの提供や遊技機、設備機器のレンタル・販売に加え、M&Aコンサルなどアミューズメント周辺事業にも注力しています。
配当方針
JALCOの配当方針は賃貸不動産から得られるストック収入を基準として、「減配なし、配当維持もしくは増配のみ」とする『累進的配当政策』を今期から導入する事により、配当の拡充を図りつつ、その安定性と透明性を向上させる方針です。
また、配当金と株主優待を組み合わせることで、年間3%以上の利回りを享受して頂きながら、その再投資を含めた長期保有による資産形成の可能性を提供としています。
配当推移
銘柄名 | JALCO |
2015年 | 0 |
2016年 | 0 |
2017年 | 0 |
2018年 | 0 |
2019年 | 0 |
2020年 | 0 |
2021年 | 2 |
2022年 | 2 |
2023年 | 6 |
2024年 | 18 |
2025年(会社予想) | 18 |
2015年からの配当推移について、数年前までは無配の状況が続いていましたが、2021年に初めて配当を実施した後は増配傾向で、特に前期は一気に12円の大幅増配となっています。
しかし、今期は大幅減益見込みになっている事で配当も据え置きの予測になっており、現状の配当性向も200%を超えている状況です。
JALCOについては数年前まで無配が続いており、現在の配当性向も200%超えと少し心配な点もありますが、今期から累進配当を宣言したばかりですし、現状の配当利回りも4%半ばと高水準ですので、長い目で様子を見る事が大切そうです。
まとめ
今回は累進配当を宣言している銘柄を4つのテーマに分けたうえで、現在累進配当を宣言している高配当株を紹介しました。高配当株投資家にとって増配は1番有難い存在で、減配は1番恐ろしい言葉ですが、累進配当には減配リスクが無く、更に増配の可能性を高めてくれますので、最強の投資方針である事は間違いないです。
そんななか、最近は株主還元に力を入れ始めている日本株も多く、おそらく今後も新たに累進配当を導入する銘柄は増えるかと思いますので、投資銘柄を選定する時の大切なポイントになるかと思います。
累進配当を宣言している銘柄はYouTubeで動画版も投稿していますので、あわせてご覧ください。
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