先週からは3月期銘柄の本決算を中心に決算発表が本格化していますが、序盤は決算発表日が早かった事や大幅増配を発表した銘柄が多かった事で、特に総合商社に注目が集まっている状況かと思います。
そんななか、今日は5大総合商社の大トリとして伊藤忠が本決算を発表しています。
という事で今回は、昨日5月7日から今日本決算を発表した銘柄の決算内容を速報で検証しつつ、決算発表が出揃った5大総合商社の内容をまとめていきます。
【7466】SPK
最初の銘柄はGW明け初日の昨日7日(火)に本決算を発表したSPKです。最近の業績はコロナからの経済回復や円安要因もあり順調に推移しているなか、前期業績も第3四半期時点の通期進捗率は86%付近と好調ですので、前期の最終着地や今期の増益も期待できる状況でした。
また、配当も前期までで26期連続増配と国内トップクラスの連続増配を継続しているなか、現在の配当性向も23%付近と余裕のある水準でしたので、今期配当は前期と同レベルの増配となる55円付近での発表を期待していました。
直近決算
SPKは5月7日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は23億円と3億円の増益となっているなか、配当は6円増配の年間50円としています。
今期は最終利益が24億円と微増益見込みにしているなか、配当は年間60円と10円の増配予測で発表しています。
注目ポイント
SPKの決算ポイントについて、前期の最終利益は従来予想を3億円程度上回り、売上や営業利益などと共に過去最高の水準となっていますので、前期配当の増額こそありませんでしたが、ほぼ完ぺきな最終着地だったかと思います。
業績好調の要因については、順調な国内事業や大幅な売上・利益増加の海外・工機事業、連結業績に大きく貢献したグループ子会社によるものとしています。
今期は現状微増益の見込みにしていますが、想定為替レートは140円/ドルとしており、また後日公表する次期中期経営計画では、「持続的成長のためのアップグレード」に重点をおき、毎年着実な増収増益を目指すとしていますので、今後も期待できそうです。
そして、今回の決算で1番サプライズだった点が今期の配当見込みを一気に10円の増配で発表した事です。SPKは前期までで26期連続増配中と国内トップクラスの増配記録を更新中でしたので、今期も増配見込みとなる可能性は高いと思っていましたが、個人的には5円程度の増配を予測していましたので、期初から10円の増配はSPKの自信を感じるサプライズでした。
また、今までも実質的に累進配当の様な銘柄でしたが、今回の決算では「累進増配」という文言も加えられていますので、名実ともに累進配当銘柄となっています。
そして、課題のPBR1倍以上に向けて次期中期経営計画で積極的に取り組むとしており、現状のPBRは0.8倍台ですので、今後の更なる株主還元にも期待できそうです。
【9831】ヤマダHD
5月7日決算発表2銘柄目は全国に家電量販手を展開するヤマダHDです。最近の業績は減益が続くなか、前期も4月15日に物価高などに起因する家電の買い控えや暖冬による季節家電の売上不振などを要因に業績の下方修正を発表した事で25%程度の減益見込みになっていました。
ただ、配当は創業50周年の記念配当1円により、1円の増配見込みにしていましたので、例年非開示としている配当見込みの公表が今期はあるのか、また業績は増益見込みとなるのか注目でした。
直近決算
ヤマダHDは5月7日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は240億円と78億円の減益となっていますが、配当は1円増配の年間13円としています。
今期予測は最終利益が282億円と42億円の増益予測にしていますが、配当は据え置きの年間13円で発表しています。
注目ポイント
ヤマダHDの決算ポイントについて、1番のサプライズは今期の配当見込みが公表された事でした。ヤマダHDは期末一括配当という事もあってか、例年は配当見込みどころか配当性向の目安も公表していませんでしたので、期初から今期の配当見込みが発表された事はサプライズでした。
しかも、前期は創立50周年の記念配当が1円加わっており、今期は普通配当のみで据え置きとなっていますので、もちろん他の高配当株と比較すると物足りない水準ですが、今期は久しぶりに増益見込みとなった最終利益と共に期待したいところです。
【8001】伊藤忠
続いては本日5月8日(水)に決算を発表した総合商社の伊藤忠です。前期業績は、ほぼ据え置きの最終利益見込みと、商品市況下落の影響で減益見込みにしていた他の総合商社と比較しても順調に推移しているなか、第3四半期時点の通期進捗率も76%付近でしたので、前期は増益での着地も可能性がある水準でした。
また、配当も増配が続くなか、4月頭に今期の経営計画を発表しており、今期の配当見込みは配当性向30%または1株当たり200円のいずれか高い方としていましたので、既に最低でも40円の増配が確定している状況でした。
直近決算
伊藤忠は5月8日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は8017億円と12億円の増益となっているなか、配当は20円増配の年間160円としています。
今期予測は最終利益が8800億円と783億円の増益予測にしているなか、配当も40円増配の年間200円で発表しています。
注目ポイント
伊藤忠決算の注目ポイントは、意地の増益着地となった前期の最終利益だと思います。伊藤忠は、先ほどお伝えした様に今期の経営計画を4月頭に表明していたため、今期の最終利益や配当などの見込みについては既に公表済みでした。
従って、今日の本決算でも今期見込みの数字についてはサプライズがありませんでしたが、前期の最終利益は8000億円予測とわずかに減益の見込みにしていましたので、増益着地となるか微妙なところでしたが、結果としては13億円の増益とギリギリでしたが、まさに意地の増益着地となりました。
結果としてはギリギリでしたが、5大総合商社の前期最終利益は伊藤忠以外全て減益となっていましたので、今回の増益着地には相当意味があるものだと個人的には感じています。実際、具体的な中身を見てみると商品市況下落の影響を受けて金属事業は減益となっていますが、ファミリマートや食料関連取引などの非資源部門でカバーしている状況ですので、今期以降も商品市況の影響に左右されず増益を維持できそうな印象です。
そして、今期最終利益は8800億円と1割の増益見込みにしていますが、大部分を非資源部門で稼ぐ予定にしていますので頼もしい限りです。
また、配当も公表通り40円増配の年間200円で発表していますが、現時点の配当性向は33%付近となっていますので、今後業績の上方修正が行われれば更なる増配も十分期待できる状況となっています。
5大総合商社決算まとめ
という事で、早くも5大総合商社の本決算が出揃いましたので、改めて内容を確認していきたいと思います。
5大総合商社通期最終利益(億円)
まずはこちらの表に2020年からの通期最終利益推移をまとめています。
銘柄名 | 三菱商事 | 伊藤忠 | 三井物産 | 住友商事 | 丸紅 |
2020年3月期 | 5353 | 5013 | 3915 | 1713 | -1975 |
2021年3月期 | 1725 | 4014 | 3354 | -1530 | 2232 |
2022年3月期 | 9375 | 8202 | 9147 | 4636 | 4243 |
2023年3月期 | 11806 | 8005 | 11306 | 5653 | 5430 |
2024年3月期 | 9640 | 8017 | 10636 | 3863 | 4714 |
2025年3月期(会社予想) | 9500 | 8800 | 9000 | 5300 | 4800 |
2021年頃はコロナショックの影響で低迷する銘柄も目立ちましたが、2023年にかけてはコロナからの経済回復や商品市況上昇の影響もあり、5銘柄とも業績が大きく伸びています。
前期は商品市況反落の影響もあって減益となっている銘柄が多く、今期も三菱商事と三井物産は減益見込みで発表していますが、数年前と比較すると最終利益は高水準で推移しています。
この様に少し前と比較すると、さすがに業績が伸びるペースは鈍化していますが、それでもここ数年の総合商社の好調さが分かる最終利益の推移かと思います。
5大総合商社配当推移
銘柄名 | 三菱商事 | 伊藤忠 | 三井物産 | 住友商事 | 丸紅 |
2015年 | 23.3 | 46 | 64 | 50 | 26 |
2016年 | 16.6 | 50 | 64 | 50 | 21 |
2017年 | 26.6 | 55 | 55 | 50 | 23 |
2018年 | 36.6 | 70 | 70 | 62 | 31 |
2019年 | 41.6 | 83 | 80 | 75 | 34 |
2020年 | 44 | 85 | 80 | 80 | 35 |
2021年 | 44.6 | 88 | 85 | 70 | 33 |
2022年 | 50 | 110 | 105 | 110 | 62 |
2023年 | 60 | 140 | 140 | 115 | 78 |
2024年 | 70 | 160 | 170 | 125 | 85 |
2025年(会社予想) | 100 | 200 | 200 | 130 | 90 |
続いては5大総合商社の2015年からの配当推移を見ていきますが、こちらも数年前までは据え置きや減配を発表する銘柄も多かったですが、最近は業績好調を背景に大幅増配が続いています。
実際、今期見込みを2015年の配当と比較すると、1番伸び率の低い住友商事でも2.6倍、三菱商事や伊藤忠は4倍以上に増えていますので、控えめに言っても物凄い事だと思います。
また、配当方針についても、今回の決算で住友商事が累進配当を宣言した事で5大総合商社全てが累進配当銘柄となりましたので、今後の増配にも期待できそうな状況です。
今回の本決算まとめ
銘柄 | コード | 前期配当 (従来予想) | 前期配当 (確定) | 今期配当 (予測) | 備考 | |
三菱商事 | 8058 | 70 | 70 | 100 | 累進配当制度維持 | |
伊藤忠 | 8001 | 160 | 160 | 200 | 1500億円上限の自社株買い | |
三井物産 | 8031 | 170 | 170 | 200 | 株式2分割、2000億円上限の株式分割 | |
住友商事 | 8053 | 125 | 125 | 130 | 累進配当導入、500億円上限の自社株買い | |
丸紅 | 8002 | 83 | 85 | 90 | 500億円上限の自社株買い |
続いては、今回の決算で配当がどの様に変わったかを具体的に見ていきます。こちらの表の1番左が前期配当の従来予想、真ん中に今回の決算で確定した前期配当、1番右が今期配当予測になっています。
前期配当は既に大きく増配予測にしていた事もあり、更なる増額を発表した銘柄は少なかったですが、今期見込みはいずれも増配となっています。特に三菱商事は去年株式の3分割を行ったうえでの30円増配ですので、前期までだと実質90円の大幅増配という事になります。
そして、伊藤忠は公表通りの40円増配、三井物産も30円と大幅増配だった事に加え、株式分割まで発表しており、また自社株買いを発表した銘柄も多かったですので、5大総合商社の株主還元力の凄さを改めて感じる本決算だったかと思います。
5大総合商社株価指標(2024年5月8日時点)
ただ、5大総合商社をここから買えるかとなると少し微妙ですので、最後は今日時点の株価指標を見ていきます。
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
三菱商事 | 8058 | 3321 | 14.2 | 1.50 | 100 | 3.01 | 42.9 |
伊藤忠 | 8001 | 7097 | 11.6 | 1.88 | 200 | 2.82 | 32.7 |
三井物産 | 8031 | 7640 | 12.7 | 1.52 | 200 | 2.62 | 33.3 |
住友商事 | 8053 | 4180 | 9.6 | 1.15 | 130 | 3.11 | 29.9 |
丸紅 | 8002 | 2877 | 10.0 | 1.39 | 90 | 3.13 | 31.4 |
それぞれ大幅増配を発表していますが、株価上昇により配当利回りは2%台から3%前半にとどまっています。
また、先ほどお伝えした様に最終利益も最近は商品市況下落の影響もあり、さすがに頭打ちになっていますので、前期や今期は減益となる銘柄も増えてきています。
以上の点を踏まえると、個人的に現在保有している5大総合商社は、伊藤忠、三井物産、丸紅の3銘柄で、特に三菱商事は買いたかったのですが、今の水準で買い向かう事は少し勇気が入りますので、とりあえず現状は新規購入を考えず、現在保有している銘柄の永久保有に集中したいと思っています。
【8591】オリックス
続いて5月8日(水)決算発表銘柄に戻りますが、2番目は個人投資家の人気も高いオリックスです。オリックスの前期最終利益は2割程度の増益見込みにしていましたが、第3四半期時点の通期進捗率は66%付近と低調な水準でした。
ただ、通期見通しは修正せず、今期見込みも700億円の増益となる4000億円で既に公表していましたので、予測通りに着地できるか注目でした。
また、株主優待も前期で廃止となり、今後は配当などに利益還元を集約するとの事でしたので、今期見込みをいくらで発表するかにも期待が集まっていました。
直近決算
オリックスは5月8日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は3461億円と558億円の増益となっているなか、配当も従来予想から4.6円増額の年間98.6円としています。
今期予測は最終利益が3900億円と439億円の増益見込みとしていますが、配当は据え置きの年間98.6円予測で発表しています。
注目ポイント
オリックス決算の注目ポイント1つ目は前期の最終着地でしたが、見事に第4四半期で巻き返し、過去最高益での着地となっています。この辺りの要因は、クレジット社の株式一部譲渡による売却益計上や、不動産、国内PEおよびアジア・豪州が下期に売却益を計上できたためとしており、2年前に弥生を売却した時の四半期利益を前期の第4四半期は超えたとの事です。
また、今期も400億円以上の増益予測で発表していますので、今後のオリックスにも期待できそうな印象です。
注目ポイント2つ目は株主優待が廃止された事も含め、今期配当がどうなるかでしたが、結果として前期は従来予測から4.6円増額の年間98.6円と13円の増配になりましたが、今期は据え置きの予測で発表しています。
今期の配当については正直少し物足りない感じですが、オリックスは今期から配当性向を引き上げるとの事で、今期の配当方針は配当性向39%、もしくは前年度配当金(98.6円)のいずれか高い方と、いつもの感じで発表しています。
ちなみに、現状の配当性向は29%付近で最終利益が予測通り3900億円の場合の配当性向39%は約133円となりますので、業績が予測通りに推移すれば今期は現状から30円以上の増額も期待できそうです。
【7198】アルヒ
5月8日決算発表最後の銘柄はアルヒです。アルヒは日本最大手の住宅ローン専門金融機関で住宅ローン「フラット35」の取り扱い実行件数ではシェアNo.1となっています。
しかし、最近の業績は固定金利と変動金利の金利差などを背景にフラット35市場が引き続き低調として、4月19日に業績の下方修正を発表していましたので、今期見込みに業績回復の兆しがあるのか、そして減配はないのかが注目でした。
直近決算
アルヒは5月8日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は15億円と13億円の減益となっているなか、配当も15円減配の年間40円としています。
今期は通期最終利益が20億円と5億円の増益見込みにしていますが、配当は据え置きの年間40円見込みで発表しています。
注目ポイント
アルヒ決算の注目ポイント1つ目は業績に回復の兆しがあるのかでしたが、前期業績はフラット35市場は低迷したものの、変動金利商品の好調やSBIエステートファイナンスの連結効果もあり反転の兆しがあるとしており、今期はSBIエステートファイナンスの連結効果が通年で寄与するため5億円の増益見込みとしていますので、何とかそろそろ減益の悪い流れをくい止めて欲しいところです。
そして、2つ目の注目ポイントは減配が無いのかでしたが、何とか据え置きで踏ん張れた印象です。実際、前期の配当性向は100%を超えましたので、更なる配当減額があってもおかしくない状況でしたが、今期は株主還元にDOEを取り入れるとしていますので、現状の年間40円が下限になってくれそうな印象です。
明日の注目決算
最後は明日の注目決算を確認していきますが、メインは個人投資家の人気も高いソフトバンク、武田薬品工業の2銘柄だと思います。特にソフトバンクは先月株式の10分割と株主優待の新設を発表しており、株主還元力向上から今期は増配にも期待がかかります。
また、武田薬品工業も前期は大きく減益見込みになっていますが、第3四半期時点の通期進捗率は150%を超えており、想定の為替レート137円も第4四半期は大きく超えて推移していましたので、前期業績は大きく上振れて着地する可能性があります。
そのため、前期の最終着地や累進配当政策のもと、今期配当の増配があるのか注目です。
また、その他にも明日は場中に稲畑産業の本決算や12月決算銘柄になりますが、こちらも個人投資家の人気が高いJTとキリンHDの第1四半期決算も控えていますので、この辺りにも注目です。
まとめ
今回は昨日5月7日(火)と本日5月8日(水)に発表された本決算の内容や本決算が出揃った5大総合商社の内容を速報で検証しました。途中でお伝えした様に5大総合商社は5銘柄とも増配や自社株買いに加え、株式分割を発表する銘柄まであり、想像以上の内容だった印象です。
ただ、まだまだ好調な決算が期待できる銘柄は控えていますので、明日以降も速報で検証していきたいと考えています。
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