高配当株投資は10年、20年単位での中長期運用を前提としていますので、投資を検討している業界や銘柄の未来を想像する事が大切です。
もちろん、何十年も先の未来は誰にも分かりませんし、明日何が起こるのかも分からないほど不安定な世の中ではありますが、その様な状況でも手に入る情報や想像できる未来はあるはずです。
そして、これは保有している銘柄だけでなく、投資を検討している銘柄にも言える事です。
狙っている銘柄をすぐに購入するのではなく、自分が納得する株価や配当、企業体制などをあらかじめ設定し、基準をクリアするレベルまで待つ忍耐力が必要です。
という事で今回は、今すぐの購入ではなく個人的にいずれ買いたいと思っている4銘柄とその理由についてまとめていきます。
【4452】花王
最初の銘柄は花王です。
花王はアタックなどでお馴染みの洗剤や石鹸、ボディソープなどのトイレタリー商品、また化粧品など普段の生活で使用する商品を製造、販売する日用品メーカーです。
原料からの一貫生産と物流・販売システムが強みで、国内外に多数の工場や営業拠点があります。
そして、現在国内No.1の連続増配記録を更新しているほど株主還元力の高い企業です。
直近決算
花王は12月期決算ですので5月10日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は48億円と前年同期比134億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
第1四半期減益の要因として、売上はほぼ計画通りに推移しており、原材料高騰の影響も戦略的値上げにより約9割は打ち返せたとしていますが、ケミカル欧米市場の回復が遅れたためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 花王 |
2018年12月期 | 1536 |
2019年12月期 | 1482 |
2020年12月期 | 1261 |
2021年12月期 | 1096 |
2022年12月期 | 860 |
2023年12月期(会社予想) | 880 |
2018年からの通期最終利益を見ていきますが、減益傾向が止まりません。
コロナ感染が拡大した2020年はハンドソープや手指消毒液などの衛生関連商品の特需がありましたが、化粧品のインバウンド需要消滅などのマイナス要因もあり大きく減益となっています。
そして直近の業績はコロナからの経済回復の動きもあり売上は伸びていますが、原材料費高騰の影響で減益傾向が続いています。
今期はコロナからの経済活動再開の動きが更に加速し、日本市場やインバウンド需要の回復が期待できるとして増益見込みとしていますが、第1四半期時点の通期進捗率は5%付近となっていますので、8月3日発表の第2四半期決算での巻き返しが必要です。
配当推移
銘柄名 | 花王 |
2015年 | 80 |
2016年 | 94 |
2017年 | 110 |
2018年 | 120 |
2019年 | 130 |
2020年 | 140 |
2021年 | 144 |
2022年 | 148 |
2023年(会社予想) | 150 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、低迷する業績とは関係なく配当は増配が続いており、前期までで33期連続増配の日本記録を更新中です。
今期も現状2円ですが増配見込みとしていますので、更に連続記録を伸ばす予測になっています。
花王の配当方針は、安定的・継続的な配当の実施を通じた利益還元を重視としており、具体的な数値としては配当性向40%を目標にしています。
株価推移
株価は2020年6月には9000円を超える場面もありましたが、そこからは右肩下がりの状況です。
そして去年3月に4663円まで値を下げた後は6000円台まで反発する場面もありましたが、業績低迷を背景に再び下落し、直近は5300円前後で推移しています。
株価指標(2023年7月28日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
花王 | 4452 | 5331 | 28.2 | 2.80 | 150 | 2.81 | 79.2 |
最近の株価は下落が続いているなか増配を継続している事で配当利回りは2%後半の水準です。
しかし、ここ数年の業績低迷によりPER、PBRは市場平均よりかなり割高で、配当性向は79%付近と目標の40%をかなり上回っています。
買いたいタイミング
今までの内容から花王を買いたいタイミングについて、業績、株価が低迷するなか国内No.1の連続増配を継続中とかなり特殊な状況ですが、配当利回りは2%後半まで上昇しています。
しかし、今期も第1四半期時点の業績は厳しく、現在の配当性向は80%付近とかなりの高水準になっています。
それでも日本を代表する企業で、配当性向の目安を無視してまで連続増配を継続するほど株主還元力も抜群です。
以上の点を踏まえ花王を買いたいタイミングですが、連続増配の縛りから解放され配当性向も目安の40%程度まで下落した時点で、配当利回りが現在の水準くらいあれば狙いたいところです。
【3231】野村不動産HD
2番目の銘柄は野村不動産HDです。
野村不動産HDは野村不動産を中核に持つ持株会社で、「プラウド」ブランドなどのマンション開発や分譲が主力事業です。
また、自社ブランドの賃貸ビルやホテルも運営しているほか、東南アジアを中心に海外事業も拡大しています。
直近決算
野村不動産HDは7月27日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は243億円と前年同期比で26億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はないです。
前期比減益の要因は、開発部門で物件売却粗利益が減少した事や海外部門でベトナムにおける計上が減少したためとしていますが、通期計画に対しては順調に進捗しているとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 野村不動産 |
2019年3月期 | 458 |
2020年3月期 | 488 |
2021年3月期 | 421 |
2022年3月期 | 553 |
2023年3月期 | 645 |
2024年3月期(会社予想) | 650 |
2019年からの通期最終利益について数年前までは400億円台での動きでしたが、2022年以降は大きく増益傾向となっています。
2022年以降の業績が好調な要因は、顧客ニーズの多様化・低金利環境の継続などの下支えにより、供給戸数がコロナ前の水準まで回復した事やリテール事業において旺盛な住み替え需要により首都圏中古マンションの取引件数が高い水準で推移したためとしており、前期は過去最高益を記録しています。
そして今期も堅調な流れは継続する見込みとして更に増益の予測になっています。
配当推移
銘柄名 | 野村不動産 |
2015年 | 45 |
2016年 | 57.5 |
2017年 | 65 |
2018年 | 70 |
2019年 | 75 |
2020年 | 80 |
2021年 | 82.5 |
2022年 | 97.5 |
2023年 | 120 |
2024年(会社予想) | 130 |
2015年からの配当推移について、据え置きの年すらなく順調に増配が続いています。
特に2022年以降は好調な業績を背景に増配幅も大きくなっており、今期見込みは2015年と比較すると3倍近い水準です。
野村不動産HDの配当方針は、2025年3月期までの中長期経営計画フェーズⅠにおいては総還元性向40~50%との方針を掲げており、2026年3月期から始まるフェーズⅡに向け配当性向を40%へ段階的に引き上げる方針です。
株価推移
株価はコロナショックで1465円まで売られましたが、2022年9月には3625円まで上昇しました。
しかし、そこからは金利の先高観が警戒され2700円付近まで下落する場面がありましたが、直近は3400円前後まで反発しています。
株価指標(2023年7月28日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
野村不動産HD | 3231 | 3421 | 9.2 | 0.89 | 130 | 3.80 | 34.8 |
最近の株価はここ数年の高値圏で推移していますが、大幅増配が続いている事で配当利回りは3%後半の水準です。
業績好調によりPER、PBRは市場平均よりも割安で、配当性向は35%付近と余裕を感じる水準です。
買いたいタイミング
今までの内容から野村不動産HDを買いたいタイミングですが、直近の業績や配当は順調に推移しており、配当利回りも3%後半と高配当株として気になる水準です。
そんななか、去年後半以降の株価は今後の金利引き上げや景気後退を懸念してか、値を下げていました。
直近の株価は反発していますが不動産業界にとっては金利引き上げがマイナス材料になりますので、今後金利が引き上げられたタイミングで再度株価が下がる場面があれば狙いたいです。
【7974】任天堂
3番目の銘柄は任天堂です。
任天堂は世界を代表するゲームメーカーで、私の世代では「スーパーファミコン」、現代ですと「スイッチ」を中心としたハード機やゲームソフトの販売に加え、最近ではスーパーマリオを題材にした映画もヒットしています。
そして、直近の海外売上比率は8割に迫るほど世界中で人気の企業です。
直近決算
任天堂は5月9日に本決算を発表しており、最終利益は4327億円と449億円の減益、配当は17円減配の年間186円としています。
今期予測は最終利益を3400億円と927億円の減益見込みにしているなか、配当は39円減配の年間147円で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 任天堂 |
2019年3月期 | 1940 |
2020年3月期 | 2586 |
2021年3月期 | 4803 |
2022年3月期 | 4776 |
2023年3月期 | 4327 |
2024年3月期(会社予想) | 3400 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、2021年に過去最高益を記録した後は減益傾向となっており、2021年に業績が大きく伸びている要因は、コロナ感染拡大を受けた自粛要請により「あつまれどうぶつの森」などのゲームソフト販売が好調だったためです。
2022年以降は半導体不足などの影響でハードウェアの販売台数が落ち込んだ事で減益となっています。
今期は引き続きハードウェアやゲームソフトの販売が落ち込む事を想定している事に加え、為替想定レートを1ドル130円と前期よりも円高に設定しているため、大きく減益見込みとしています。
配当推移
銘柄名 | 任天堂 |
2015年 | 18 |
2016年 | 15 |
2017年 | 43 |
2018年 | 59 |
2019年 | 81 |
2020年 | 109 |
2021年 | 222 |
2022年 | 203 |
2023年 | 186 |
2024年(会社予想) | 147 |
2015年からの配当推移をみていきますが、任天堂は去年10月に株式を10分割していますので金額は分割調整した額になっており、配当も業績同様に2021年にピークを付けた後は減配傾向となっています。
そして前期は17円、今期は39円の減配見込みと減配幅も大きくなっていますが、2015年頃と比較すると配当は大きく伸びている状況です。
任天堂の配当方針は連結営業利益の33%を配当金総額の基準とし、期末時点で保有する自己株式数を差し引いた発行済株式数で除した金額の1円未満を切り上げた金額か、もしくは連結配当性向50%を基準として1円未満を切り上げた金額の、いずれか高い方を1株当たりの年間配当金として決定するとしています。
少しややこしい配当方針ですが、最低でも配当性向50%は約束されている様です。
株価推移
株価は2018年12月の2705円を底に上昇傾向で、2021年2月には業績好調を受けて6983円まで上昇しました。
その後は低迷が続き今年3月には5000円を割れる場面もありましたが、直近は6400円付近まで反発しています。
株価指標(2023年7月28日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
任天堂 | 7974 | 6354 | 21.8 | 3.26 | 147 | 2.31 | 50.3 |
最近の株価は上昇が続いている事に加え、配当も減配していますので配当利回りは2%前半まで低下しています。
今期業績は減益見込みのためPER、PBRは市場平均よりも割高で、配当性向は50%付近と方針通りの水準です。
買いたいタイミング
任天堂については日本を代表する企業である事や株式分割により最低購入金額が下がった事で注目していましたが、今期は大幅減益からの減配見込みで配当利回りは2%台前半まで低下しています。
しかし、減益要因の1つとしていた為替レートは想定よりも円安で推移しており、映画もヒットしていますので今後上方修正の可能性は十分あると思います。
以上の点を踏まえ任天堂を買いたいタイミングですが、今後の上方修正に加え、新しいハードウェアやドラクエなどの有力ソフト販売により、業績や配当が伸びた時点で配当利回りが3%程度あれば狙いたいです。
【2502】アサヒグループHD
最後の銘柄はアサヒグループHDで、アサヒビールやアサヒ飲料などを傘下に持つ持株会社です。
アルコール類はスーパードライやクリアアサヒが主力商品で、WONDAや十六茶などのソフトドリンクも手掛けています。
そして、海外の売上比率は5割に迫るほど、国際的な企業です。
直近決算
アサヒグループHDは12月決算ですので5月12日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は199億円と前年同期比で156億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありませんでした。
前期比増益の要因は大幅なコストアップは継続していますが、価格改定効果やプレミアム化の進展などにより日本を中心に計画を上回る増益を達成したためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | アサヒHD |
2018年12月期 | 1510 |
2019年12月期 | 1422 |
2020年12月期 | 928 |
2021年12月期 | 1535 |
2022年12月期 | 1515 |
2023年12月期(会社予想) | 1575 |
2018年からの通期最終利益を見ていきますが、コロナショックの影響を受けて大幅減益となった2020年以外は1500億円前後で安定しています。
そして、前期は原材料価格の影響を大きく受けた事で減益となっていますが売上は大きく伸びており、今期は増益見込みのなか第1四半期決算も前期比大幅増益ではありましたが、通期進捗率は13%付近となっています。
配当推移
銘柄名 | アサヒHD |
2015年 | 50 |
2016年 | 54 |
2017年 | 75 |
2018年 | 99 |
2019年 | 100 |
2020年 | 106 |
2021年 | 109 |
2022年 | 113 |
2023年(会社予想) | 115 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、据え置きの年すらなく順調に増配が続いています。
業績が大きく落ち込んだ2020年でも増配しており、2015年と比較すると配当額は2倍以上に増えています。
アサヒグループHDの配当方針は配当性向35%程度を目途とした安定的な増配を行う方針で、配当性向は2025年までに40%を目指すとしています。
株主優待
アサヒグループHDには株主優待が設定されており、保有株数によって自社商品の詰め合わせセットがもらえますので内容を表にまとめています。
保有株数 | 金額 |
100株以上500株未満 | 1000円相当 |
500株以上1000株未満 | 2000円相当 |
1000株以上 | 3000円相当 |
自社商品セットは、株主限定のプレミアムビールや清涼飲料水の詰め合わせセットなどから選べますのでアサヒグループファンには嬉しい優待です。
株価推移
株価はコロナショックで3006円まで売られた後、2021年9月には5684円まで上昇しました。
しかし、その後はじわじわと値を下げ今年1月には4000円を割れる場面もありましたが、直近は5500円付近まで反発しています。
株価指標(2023年7月28日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
アサヒHD | 2502 | 5614 | 18.1 | 1.35 | 115 | 2.05 | 36.9 |
配当は増配が続いていますが、最近の株価は上昇している事で配当利回りは2%前半となっています。
今期業績は増益見込みですがPER、PBRは市場平均より割高で、配当性向は37%付近と方針通りの水準です。
買いたいタイミング
今までの内容からアサヒグループHDを買いたいタイミングについて、業績は安定しているなか増配を継続していますが、直近の株価も上昇傾向ですので配当利回りは2%付近まで低下しています。
日本を代表する企業で将来性にも期待できますが、配当利回り2%では高配当株とは呼べませんので、今後の株価調整や増配で配当利回りが3%付近まで上昇するタイミングを待ちたいです。
まとめ
今回は様々な事情で今すぐの購入は考えていませんが、いずれ買いたいと思っている4つの銘柄を検証しました。
4銘柄とも日本を代表する企業ですが、業績や配当に加え、現在の株価や配当利回りが希望する水準へ届いていない状況です。
もちろん今後、希望する条件に届くかは分かりませんが、高配当株投資では自分が納得できる水準でない場合は、購入をあきらめる勇気も必要です。
その様な意味で中長期運用が基本となる高配当株投資ですが、購入に関しても長い目で見る忍耐力が大切です。
いつか買いたい4銘柄はYouTubeで動画版も投稿していますので、あわせてご覧ください。
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