最近の相場は日経平均が久しぶりに3万円の大台を回復するなど非常に強い動きが続いており、保有銘柄の株価が上がる事は嬉しい気持ちもありますが、なかなか思う様に狙っている銘柄を購入できないもどかしい気持ちでもあります。
高配当株投資は中長期に渡って配当を受け取り続ける事が目的で、株価の値上がり益を狙うものではないですが、それでも少しでも株価が安いタイミングで購入できた方が良い事に変わりはありません。
そこで今回は強い動きが続く相場のなかでも、長期間株価が下落している高配当4銘柄を個別に検証していきます。
【7956】ピジョン
最初の銘柄はピジョンです。
ピジョンはベビー用品全般を製造するメーカーで、哺乳瓶やベビーカーに加え、マタニティや介護商品も取り扱っています。
そして販路は国内のみに限らず、中国を中心に海外市場への進出も進めています。
直近決算
ピジョンは12月決算ですので5月11日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は24億円と2億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当見込みに変更はありません。
第1四半期減益の要因について、売上は中国事業が牽引したことに加え円安の追い風もあり増収ですが、原材料価格の値上げによる調達コスト増加などが影響したためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | ピジョン |
2019年12月期 | 115 |
2020年12月期 | 106 |
2021年12月期 | 87 |
2022年12月期 | 85 |
2023年12月期(会社予想) | 81 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、減益傾向が止まりません。
2021年頃に減益となった要因は、コロナ感染の拡大に加え、新商品投入に伴う積極的な販売促進費や広告宣伝費の使用、将来に向けた商品力強化を目指した研究開発費拡充などのためとしています。
前期減益の要因は、中国本土でのコロナ感染拡大による市場回復の遅れや人件費、物流費の増加に加え、中国事業以外では旅費交通費やマーケティング関連費用などの増加としています。
今期予測は「ものづくり」強化や各事業における構造改革への投資を着実に実行し、24年以降の収益性改善に繋げていくとして減益の見込みにはしていますが、第1四半期時点の通期進捗率は29%付近となっています。
配当推移
銘柄名 | ピジョン |
2015年1月 | 35 |
2016年1月 | 42 |
2017年1月 | 53 |
2018年1月 | 66 |
2019年1月 | 68 |
2019年12月 | 70 |
2020年12月 | 72 |
2021年12月 | 74 |
2022年12月 | 76 |
2023年12月 | 76 |
2015年からの配当推移について、ピジョンは2019年から12月決算へ変更していますので少し変則的ですが順調に増配が続いており、今期は現状据え置きの予測となっていますが、2015年と比較すると2倍以上の水準になっています。
ピジョンの配当方針は、連結業績や財務状況等のさらなる改善とともに、 現在の配当水準を維持した上での安定的な配当を継続としています。
株価推移
株価は2018年10月に6650円まで上昇した後は右肩下がりの状況です。そして去年6月に1622円まで売られた後は少し反発する場面もありましたが、直近は2100円前後で推移しています。
株価指標(2023年6月9日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
ピジョン | 7956 | 2109.5 | 31.2 | 3.35 | 76 | 3.60 | 112.3 |
数年前と比較して株価は大きく下落しているなか増配を継続している事で、配当利回りは3%半ばの水準です。
しかし業績は減益が続いているためPER、PBRは市場平均より割高で、配当性向は100%を超えています。
投資判断
今までの内容からピジョンの投資判断について、業績は減益が続いている事もあり株価は5年前の3分の1以下まで売られています。
減益の要因はコロナや原材料費高騰に加え、先行投資が中心ですが、そろそろ底を打ちたい。
販路も国内のみだと今後は厳しそうですが、中国を中心に海外市場の開拓を進めている点には将来性を感じます。
ただ、現状の配当性向は100%を超えており今期も減益見込みな事を踏まえると、業績の回復を確認したうえで投資を検討したいところです。
【8439】東京センチュリー
2番目の銘柄は東京センチュリーです。
東京センチュリーはオートリースや航空機リースなどを手掛ける伊藤忠系の大手総合リース会社です。
パソコンやサーバーなどの情報通信機器の取り扱いに強みを持っており、再生可能エネルギー事業も手掛けています。
直近決算
東京センチュリーは5月12日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は47億円と455億円の減益ですが、配当は据え置きの年間143円としています。
今期予測は、最終利益が700億円と653億円の増益見込みとしているなか、配当は57円増配の年間200円で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 東京センチュリー |
2018年3月期 | 513 |
2019年3月期 | 522 |
2020年3月期 | 563 |
2021年3月期 | 491 |
2022年3月期 | 502 |
2023年3月期 | 47 |
2024年3月期(会社予想) | 700 |
2018年からの通期最終利益についえ、2022年までは500億円前後で安定していましたが前期は大きく減益となりました。
前期大幅減益の要因は、連結子会社を通じてロシアへ航空機をリースしていた事などにより、ロシア関連の特別損失を748億円計上したためとしています。
今期業績は、前期に計上した損失の剥落などもあり、全ての事業分野において増益を見込むとして、過去最高益の見込みとしています。
前期は大きく減益となりましたが、ロシア関連の特別損失を考慮すると、よく黒字を維持できたと思える水準ですので、今期のV字回復にも期待できそうです。
配当推移
銘柄名 | 東京センチュリー |
2015年 | 65 |
2016年 | 80 |
2017年 | 100 |
2018年 | 114 |
2019年 | 124 |
2020年 | 136 |
2021年 | 138 |
2022年 | 143 |
2023年 | 143 |
2024年(会社予想) | 200 |
2015年からの配当推移を見ていきますが前期までは順調に増配傾向で、据え置きとなった前期も大幅減益の業績を踏まえると、よく減配しなかったという印象です。
そして今期は大きく回復見込みの業績と連動し、大幅増配の見込みとしています。
東京センチュリーの配当方針は、長期的かつ安定的に利益還元を行うことを基本としており、利益成⻑により1株当たり配当⾦の増配を継続し、配当性向は当面35%程度を目安にしています。
株主優待
東京センチュリーには、保有株数や保有継続年数によってクオカードがもらえる株主優待がありますので内容を表にまとめています。
保有株数 | 保有継続年数 | 金額 | 優待品 | |||
100株~1000株未満 | ‐ | 2000円相当 | QUOカード | |||
1000株以上3000株未満 | 2年未満 | 4000円相当 | ||||
2年以上 | 6000円相当 | |||||
3000株以上 | 2年未満 | 6000円相当 | ||||
2年以上 | 8000円相当 |
また、国内のニッポンレンタカー全店舗で利用可能な3000円の割引券も100株以上の保有でもらえます。
株価推移
株価はコロナショックで2870円まで売られた後、2021年1月に9340円の高値を付けていますが、その後は右肩下がりの状態が続いています。
そしてロシアのウクライナ侵攻を受けて去年4月には3815円まで値を下げましたが、その後は反発し直近は5000円台で推移しています
株価指標(2023年6月9日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
東京センチュリー | 8439 | 5182 | 9.1 | 0.83 | 200 | 3.86 | 34.9 |
直近の株価は安値圏から反発していますが、大幅増配を受けて配当利回りは3%後半の水準です。
今期業績は大きく回復見込みですのでPER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は35%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容から東京センチュリーの投資判断について、前期業績はロシアウクライナ情勢の影響を受け大きく減益となりましたが、今期はV字回復の見込みです。
減益の要因を踏まえると今後の業績にも期待できますが、株価は2年前の半値付近の水準で推移しています。
そして前期大幅減益でも減配しなかった様に、リース銘柄らしく株主還元力も抜群ですので狙ってみたい銘柄です。
【5703】日本軽金属HD
3番目の銘柄は日本軽金属HDです。
日本軽金属HD、アルミニウムの総合メーカー日本軽金属を中核にしている持株会社です。
自動車やトラックに加え、半導体製造装置向けの部品など様々な分野で使用される化学品を製造しています。
また、国内に限らずアジアを中心に海外展開も進めています。
直近決算
日本軽金属HDは5月15日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は72億円と95億円の減益、配当は35円減配の年間50円としています。
今期予測は最終利益が75億円と3億円の増益見込みとしていますが、配当は据え置きの年間50円で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 日軽金 |
2020年3月期 | 74 |
2021年3月期 | 33 |
2022年3月期 | 167 |
2023年3月期 | 72 |
2024年3月期(会社予想) | 75 |
2020年からの通期最終利益について、大きく増益となった2022年以外は概ね70億円台で推移しています。
2022年に業績が大きく伸びた要因は、電機電子関連の需要が堅調だった事や地金部門、板・押出製品部門でアルミニウム地金市況を反映して販売価格が上昇したことに加え、中国子会社の全持分を譲渡したことなどで生じた利益を特別利益に計上したためとしています。
前期は自動車向けトラック架装関連や半導体製造措置向け厚板の減販が大きく、また原燃料価格高騰が販価改定効果を上回った事や前期の特別利益の反動で大きく減益となっていますが、今期は原燃料価格高騰に対し販価改定効果が上回るとして増益見込みにしています。
配当推移
銘柄名 | 日軽金 |
2015年 | 50 |
2016年 | 60 |
2017年 | 80 |
2018年 | 80 |
2019年 | 90 |
2020年 | 90 |
2021年 | 65 |
2022年 | 85 |
2023年 | 50 |
2024年(会社予想) | 50 |
2015年からの配当推移について、2019年にかけては増配が続いていましたが、ここ数年は減配傾向となっています。
そして2022年は業績の回復と連動して大きく増配となっていますが、前期は2015年の水準まで減配となっており、今期も現状据え置きの見込みにしています。
日本軽金属HDの配当方針は、自己株式の取得を含む総還元性向を30%以上とし、配当額を決定するとしています。
株価推移
株価は2017年10月に3530円まで上昇していますが、そこからは右肩下がりの状況です。業績が伸びた2021年頃に反発する場面もありましたが、その後は再び下落傾向で、直近は1400円付近で推移しています。
株価指標(2023年6月9日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
日軽金 | 5703 | 1369 | 11.3 | 0.41 | 50 | 3.65 | 41.3 |
株価は下落傾向が続いていますが、配当も減少傾向ですので配当利回りは3%半ばの水準です。
今期業績は増益見込みという事もありPER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は41%付近となっています。
投資判断
今までの内容から日本軽金属HDの投資判断ですが、株価は右肩下がりの状況で6年前と比較すると3分の1付近の水準となっており、指標面にも割安感があります。
ただ、業績は2020年とほぼ変わらない水準ですが、年間配当が40円下がっている点は気になる部分です。
それでも現状の配当性向は40%付近と特別余裕がある訳ではありませんので、気になる銘柄ではありますが、もう少し様子を見たい気持ちもあります。
【3465】ケイアイスター不動産
最後の銘柄はケイアイスター不動産です。
ケイアイスター不動産は埼玉県が本社の不動産会社で、戸建分譲事業や注文住宅事業、総合不動産流通事業などを手掛けています。
ITシステムで統合された一気通貫の供給体制によりコンパクト分譲開発を実現する事を目指した「KEIAIプラットフォーム」を方針に掲げており、賃貸以下の金額でデザインされたセミオーダー新築戸建住宅の提供が可能な点を強みにしています。
直近決算
ケイアイスター不動産は、5月12日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は118億円と29億円の減益、配当は35円減配の年間230円としています。
今期予測は最終利益が120億円と2億円の増益としているなか、配当は6円増配の年間236円で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | ケイアイ不動産 |
2019年3月期 | 34 |
2020年3月期 | 35 |
2021年3月期 | 76 |
2022年3月期 | 147 |
2023年3月期 | 118 |
2024年3月期(会社予想) | 120 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、2022年をピークに直近の業績は減益傾向となっています。
2022年にかけて業績が大きく伸びた要因は、先行投資として費用をかけていたDX化の推進が実を結び出したためとしています。
前期も「KEIAIプラットフォーム」と「コンパクト分譲戸建モデル」を活かした小ロット・高回転経営を継続した事で売上は過去最高益の水準へ伸びていますが、建築コスト上昇や積極的な販売促進によるコスト増により最終利益は減益となっています。
今期もKEIAIプラットフォームの強化や積極的な出店によるエリア拡大に加え、M&Aなどの事業投資を継続することで売上は2割近く増収見込みにしていますが、原材料高騰の影響が続いている事も考慮し、最終利益は微増益見込みとしています。
配当推移
銘柄名 | ケイアイ不動産 |
2015年 | 15 |
2016年 | 35 |
2017年 | 64 |
2018年 | 71 |
2019年 | 84 |
2020年 | 76 |
2021年 | 139 |
2022年 | 265 |
2023年 | 230 |
2024年(会社予想) | 236 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、業績と連動し2022年にピークを付けた後は減配となっています。
しかし、2022年までの増配ペースには勢いがあり、減配となった2022年以降の配当も数年前と比較すると大きく増えています。
ケイアイスター不動産の配当方針は、連結損益を基礎とし特別な損益状態である場合を除き、年間での連結配当性向30%程度を目途に実施するとしています。
株主優待
ケイアイスター不動産には株主優待もありますので内容を表にまとめています。
保有株数 | クオカード |
100株以上499株まで | 1000円 |
500株以上 | 3000円 |
保有株数によってQuoカードが貰えますが、株主優待の権利確定月は決算月とは異なり9月になっていますので注意が必要です。
株価推移
株価はコロナショック時に968円まで売られた後は業績好調を背景に急騰し、2021年11月には9370円まで上昇しました。
そこからは右肩下がりの状況が続いており、今年3月には4000円を割れる水準まで下落しましたが、直近は反発し4900円付近で推移しています。
株価指標(2023年6月9日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
ケイアイスター不動産 | 3465 | 4895 | 6.4 | 1.51 | 236 | 4.82 | 30.9 |
直近の株価は安値圏からは反発しており配当も減配見込みですが、配当利回りは4%後半と高水準です。
直近の業績はピークからは下落していますがPERは市場平均と比較して割安で、配当性向は31%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容からケイアイスター不動産の投資判断について、直近の業績、配当は2022年のピークからは減少していますが、数年前と比較すると大きく伸びている状況です。
しかし、株価は2年前と比較すると半値付近の水準です。
指標面は割安で配当利回りは5%付近と高配当株としても魅力的ですが、業績、株価の変動が大きい点は高配当株としてデメリットになりますので、もう少し様子を見たい気持ちもあります。
まとめ
今回は堅調な動きが続く相場の中でも、株価が下落傾向な4つの高配当株を検証しました。
冒頭でも触れた様に高配当株投資は中長期に渡って配当を受け取り続ける事が目的で、株価の値上がり益を狙うものではないですが、それでも少しでも株価が安いタイミングで購入できた方が良い事に変わりはありません。
もちろん今回検証した銘柄の様に長期間に渡り株価を下げている銘柄には、それなりの理由があるかとは思いますが、長期的に考えた場合は「良い買い場」になる可能性もありますので、リスクとリターンを踏まえたうえで投資を検討する事が大切です。
長期間株価が下落している4つの高配当株はYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
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