高配当株投資において銘柄を選ぶポイントはいくつもありますが、長期間に渡り保有を続ける高配当株投資の場合は、株価が安定している事も銘柄選定の大切な指標になります。
もちろん購入後、株価は上昇する方が嬉しいですが、個人的には保有銘柄の株価がいくら上がっても売却するつもりはありませんし、値動きが激しすぎる銘柄の長期保有は精神的に疲れる部分もあると思います。
そこで今回は、株価が安定している高配当株を3銘柄選定し個別に検証していきます。
【9434】ソフトバンク
最初の銘柄はソフトバンクです。
ソフトバンクはNTT、KDDIと並ぶ大手通信界会社で親会社はソフトバンクグループです。
通信会社ですが、近年はPayPayなどによる決済・金融事業にも注力しており、通信料金値下げの影響をカバーしている状況です。
直近決算
ソフトバンクは8月4日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は1285億円と前年同期比で224億円の減益ですが、通期最終利益、配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、法人、ヤフー・LINE、流通部門は増収も通信料金値下げや獲得関連費用増加の影響でコンシューマ部門が減収減益の為としています。
しかし、第1四半期は前期比で減益でしたが、通期目標達成に向けては順調に進捗としています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | ソフトバンク |
2018年3月期 | 4007 |
2019年3月期 | 4307 |
2020年3月期 | 4731 |
2021年3月期 | 4912 |
2022年3月期 | 5175 |
2023年3月期(会社予想) | 5300 |
通期最終利益を見ていきますが、順調に増益が続いています。
ここ最近は、通信料金値下げの影響を法人やヤフー・LINEでカバーしている展開ですが、通信料金値下げの影響は今期を底に大幅に縮小する見込みとの事です。
また、PayPayの登録者、決済回数は順調に増えており、今後PayPayは事業育成期から本格的なマネタイズ期へ移行していくとしています。
配当推移
銘柄名 | ソフトバンク |
2019年 | 37.5(期末のみ) |
2020年 | 85 |
2021年 | 86 |
2022年 | 86 |
2023年(会社予想) | 86 |
ソフトバンクは上場が2018年の為、2019年からの配当推移をまとめていますが、ここ数年はほぼ横ばいの動きです。
ソフトバンクの配当方針は、2021年3月期から2023年3月期においては、親会社の所有者に帰属する純利益に対する総還元性向85%程度を目安に、安定的かつ継続的に1株当たりの配当を実施する方針です。
業績は増益が続いていますのでそろそろ増配も期待したいところですが、ソフトバンクは元々の配当性向が高いですので、来期以降の配当方針を含め今後の配当推移にも注目です。
株価推移
株価は通信料金の値下げ圧力を受けた2020年9月に1158円まで売られましたが、その後は順調に値を戻し、1年後の2021年9月には1600円を超える水準まで上昇しました。
しかし、通信料金値下げの影響が業績に出始めた去年後半からは株価も停滞し、最近は1400円から1500円付近での安定した動きとなっています。
株価指標(2022年10月6日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
ソフトバンク | 9434 | 1473 | 13.1 | 4.27 | 86 | 5.84 | 76.5 |
株価、配当ともに安定しているなか、配当利回りは6%付近と高水準です。
しかし、業績は好調ですがPER、PBRに割安感はなく、配当性向は76%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容からソフトバンクの投資判断ですが、通信会社という事で業績は安定しており、懸念材料だった通信料金値下げの影響にも目処が付きそうな状況です。
配当は現状維持が続いていますが現状の配当利回りは5%後半ですので、高配当銘柄として十分購入を検討できる銘柄だと思います。
NTTやKDDIと比較すると近年の株価動向は安定しすぎの気もしますが、逆に考えるとまだまだ購入できる水準なのかもしれません。
【7466】SPK
2つ目の銘柄はSPKです。
SPKは自動車や産業、建設機械の部品を中心に取り扱っており、メーカー、モデルを問わず、あらゆる国産車、輸入車を対象に補修部品などを供給しています。
販路は国内のみに限らず、80か国、350社以上の顧客に高品質な自動車用補修部品の提供をしています。また、自動車業界は電気自動車や自動運転など急速に変化を進めている為、新商品の開発や新規事業への取り組みも進めているところです。
直近決算
SPKは7月29日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は約3.5億円と前年同期比で約1.2億円の減益ですが、通期最終利益、配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因について売上は好調な輸出に支えられて増収ですが、急激な円安及び原材料の高騰による仕入れ価格の上昇に加え、物流費などの高騰によるものとしています。
しかし、この収益性の悪化を受け、既に販売価格の見直しや物流網の再構築に着手しており、その効果は第2四半期以降に表れてくる見込みとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | SPK |
2019年3月期 | 14 |
2020年3月期 | 15 |
2021年3月期 | 13 |
2022年3月期 | 16 |
2023年3月期(会社予想) | 17 |
2019年からの最終利益を見ていきますが、コロナショックの影響で大きく減益となった2021年以外は順調に増益傾向です。
そして前期はコロナからの経済回復を背景に、コロナ前を上回る過去最高益へ業績は急回復しています。
今期見込みは現状更に増益見込みとなっていますが、第1四半期の通期進捗率は約20%でしたので今後の業績推移に注目です。
配当推移
銘柄名 | SPK |
2015年 | 29.5 |
2016年 | 30.5 |
2017年 | 31.5 |
2018年 | 32.5 |
2019年 | 33.5 |
2020年 | 36 |
2021年 | 37 |
2022年 | 40 |
2023年(会社予想) | 44 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、SPKは2020年に株式を2分割していますので2020年より前の配当は分割調整した数字です。
数年前までは年間1円ずつの増配でしたが、前期は3円、今期は4円増配見込みと以前と比較して増配ペースに勢いが付いています。
そして増配は2022年までで24年連続増配を継続中で、連続増配記録では国内でトップ5に入る水準です。
SPKの配当方針は中長期的な視野で財務体質の強化と業績との連動を考え、積極的に実施していく方針としています。
株価推移
株価はコロナショックで1112円まで売られた後は1500円を超える水準まで急速に戻しました。
しかし2021年夏以降は1250円付近から1400円付近での動きとなっており、ここ最近の株価は1400円付近で安定しています。
株価指標(2022年10月6日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
SPK | 7466 | 1413 | 8.3 | 0.69 | 44 | 3.11 | 25.9 |
株価が安定しているなか連続増配を継続中ですので、配当利回りは3%を超えています。
PER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は約26%とまだまだ余裕を感じる水準です。
投資判断
今までの内容からSPKの投資判断ですが、業績、配当は安定しており、何よりも24年連続増配中と株主還元姿勢の高さは高配当株として大切なポイントです。
企業規模や知名度はそこまで高くありませんが、株価は安定していますので中長期投資の対象としてもおすすめかと思います。
原材料費高騰などの影響が気になるところですが、仮に業績の下方修正などで株価が下がる場面があれば、チャンスの様な気はします。
【9282】いちごグリーンインフラ投資法人
最後の銘柄はインフラファンドからいちごグリーンインフラ投資法人です。
インフラファンドとは、太陽光発電設備をはじめとする再生可能エネルギーや空港、鉄道、道路といったインフラに投資し、そのインフラから得られる収益を分配金として配当するファンドの事です。
日本の成長戦略の1つとしてインフラ投資に民間資金を投入させる目的があり、インフラファンドには配当可能利益の90%超を投資家に分配することなどを条件として、法人税の非課税期間が20年間となる優遇制度が設けられており、現在6銘柄が上場していますが、今回はその中よりいちごグリーンインフラを検証していきます。
いちごグリーンインフラ投資法人とは
いちごグリーンインフラは再生可能エネルギー発電施設を主たる投資対象にしており、現在保有している15件全てが太陽光発電所です。
そしてエリアは沖縄から北海道まで分散されてはいますが、北海道が7件と半数を占めています。また、分配金は6月権利確定の年1回分配ですが、2026年の分配金予想まで公表している点は特徴です。
分配金推移
銘柄名 | いちごグリーンインフラ |
2018年 | 4226 |
2019年 | 3865 |
2020年 | 3802 |
2021年 | 3922 |
2022年 | 4248 |
2023年(会社予想) | 4095 |
2024年(会社予想) | 4065 |
2025年(会社予想) | 3885 |
2026年(会社予想) | 3540 |
いちごグリーンインフラは2016年末上場の為、2018年からの分配金を見ていきますが、4000円前後で安定しています。
そして先ほども触れた様に既に2026年までの分配金予測を公表しています。
分配金が徐々に低下傾向な点は気になる部分ですが、ここまで長期的な分配金予測を公表している銘柄は他にないと思いますので、投資材料の1つになるかと思います。
基準価格推移
インフラファンドの基準価格は基本的に安定しており、いちごグリーンインフラの基準価格も最近は7万円付近で安定傾向です。ただ、いちごの場合は権利確定が年1回ですので、権利が落ちる6月末に基準価格が大きく下がります。
株主優待
またいちごグリーンインフラには抽選ですが、Jリーグのチケットが当たる優待もありますのでサッカーが好きな方は狙ってみても良いかもしれません。
ちなみに私は毎試合申し込みを行っており今シーズンも1回当選しています。申し込み出来る席数や席の種類は毎回違う様ですが、当選した時の席は1人1万円くらいする非常に良い席でした。
株価指標(2022年10月6日時点)
銘柄名 | コード | 基準価格 | 分配金確定月 | 予想分配金(2023年) | 利回り |
いちごグリーンインフラ投資法人 | 9282 | 71500 | 6月 | 4095 | 5.73 |
基準価格、分配金は安定しているなか、分配金利回りは6%付近と高水準です。
インフラファンドは分配金利回りの高さが売りの1つであり、現在上場しているインフラファンドの分配金利回りは全て同様に高水準になっています。
投資判断
今までの内容からいちごグリーンインフラの投資判断ですが、基準価格、分配金は安定しており、現在の分配金利回りは6%付近と高水準です。
そして2026年までの分配金予測を公表しており、事業内容も再生可能エネルギー関連ですので将来性も楽しみです。
将来的には電力の買い取り価格下落などの懸念点もありますが、ポートフォリオの一部としてならば、十分購入を検討できるかと思います。
まとめ
今回は最近の株価が安定している高配当株を3銘柄検証しました。
直近の業績は微妙な銘柄もありますが3銘柄とも株価は安定しており、将来性も期待できるかと思います。
冒頭でも触れましたが高配当株投資は長期間の保有になりますので、値動きの激しい銘柄よりは、株価が安定している方が精神的にも楽かと思います。
という事で個人的にも株価が安定している銘柄に調整局面があれば狙っていきたいと考えています。
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