高配当株へ投資する1番の目的は中長期にわたって配当をもらい続ける事で、株価による値上がり益(キャピタルゲイン)を狙って投資する訳ではありません。
しかし、中長期の保有となる高配当株投資の場合、常に含み損の状態でいるよりは、大きな含み益を抱えている状態の方が精神的にも楽に保有を続ける事ができると思います。
その様な意味では、高配当株投資であっても将来的に株価上昇が期待できる銘柄を購入した方が良い事に変わりはありません。
そこで今回は、現在の株価がここ数年で見ると下落している銘柄や今年の業績が期待できそうな4銘柄が高配当株として投資可能か検証していきます。
【9142】JR九州
最初の銘柄はJR九州です。
JR九州は九州地方を中心に旅客鉄道などを運営する鉄道事業者で2016年に上場しています。
現在は鉄道事業を補完するため旅行やホテルに加え、不動産、船舶、飲食業、農業などの事業多角化を進めており、その営業範囲は九州に限らず首都圏や海外にも展開しています。
ここ数年はコロナの影響を受けて苦戦が続いていますが、今年はコロナからの経済回復を受けて業績の回復も期待したいです。
直近決算
JR九州は11月1日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は120億円と前年同期の赤字から黒字転換しています。
業績好調に伴い通期最終利益を266億円へ21億円上方修正していますが、年間配当は従来予想通り93円で変更はありません。
業績好調の要因は、コロナ感染者は過去最高の水準で推移しましたが、行動制限の緩和や社会経済活動の正常化が進んだ事に加え、ハウステンボスの株式売却に伴う特別利益増加のためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | JR九州 |
2019年3月期 | 492 |
2020年3月期 | 314 |
2021年3月期 | -189 |
2022年3月期 | 132 |
2023年3月期(会社予想) | 266 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、変動が大きくなっています。
ちなみにJR九州は2016年まで一度も営業黒字を計上したことがありませんでしたが、2015年度に実施された減損会計による原価償却費の大幅な圧縮や合理化などにより、2017年決算で初の黒字化を達成しています。
その後も業績は順調に推移していましたがコロナショックで再び赤字に転落し、今期はコロナからの経済活動回復の動きもあり黒字見込みとなっていますが、まだコロナ前の水準へは戻れていない状況です。
配当推移
銘柄名 | JR九州 |
2017年 | 38.5 |
2018年 | 83 |
2019年 | 93 |
2020年 | 93 |
2021年 | 93 |
2022年 | 93 |
2023年(会社予想) | 93 |
JR九州は2016年上場ですので2017年からの配当推移を見ていきますが、ここ数年は93円で変わらない水準です。
コロナショックで赤字に転落した2021年も減配はしておらず、前期は黒字に転換していますが配当性向は100%を超えていました。
JR九州の配当方針は長期安定的に行っていくことが重要と考え、2025年3月期までは1株当たり配当金93円を下限として、連結配当性向35%を目安としています。
またコロナによる今後の業績への影響などを慎重に見極めるため、2021年以降中間配当は行わず期末配当の年1回配当としています。
株主優待
JR九州には株主優待が設定されており、JR九州鉄道の片道運賃が5割引になる優待券が保有株数によってもらえます。
また、JR九州グループが運営する施設の割引券も一律2500円分もらえます。
JR九州グループが運営する飲食店やホテルで使用できますが、場所は九州が中心ですので特に九州に住んでいる人にとってはおすすめの優待です。
株価推移
株価は2020年7月に2055円まで売られた後は、上下を繰り返しながら少しずつ株価を戻しています。そして、去年春以降は業績回復を背景に株価は右肩上がりで10月には3235円まで上昇しましたが、直近は高値から下落し2800円前後で推移しています。
株価指標(2023年1月13日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
JR九州 | 9142 | 2815 | 16.6 | 1.14 | 93 | 3.30 | 54.9 |
最近の株価は安値から反発していますが年間配当はここ数年変わらないため、配当利回りは3%を超えています。
業績は回復傾向ですがPER、PBRに割安感はなく、配当性向は55%付近と目安の35%を大きく上回っています。
投資判断
今までの内容からJR九州の投資判断ですが、ここ数年の業績はコロナの影響を大きく受けている状況です。コロナ感染者はなかなか減少しませんが、今期の業績をみても分かる様にコロナからの経済回復は進んできています。
今年もこの流れは継続しそうですのでこのまま順調に経済が回復していけば、JR九州の業績もコロナ前の水準へ戻る事が期待できます。
配当も2025年3月期までは現在の水準を維持する方針ですので、高配当株として購入を検討しても良さそうな気はします。
【5201】AGC
2番目の銘柄はAGCです。
AGCは、建築用や自動車向けのガラスを中心に電子材料や化学素材も製造しており、旧商号の旭硝子から2018年に社名を変更しています。
社名変更はAGCを世界的な統一ブランドとして定着させる事も目標としており、実際アジアやヨーロッパなど様々な国へ製品を輸出しています。
最近はCMなどで見かける事も多く、「素材で頑張るAGC」を強くアピールしています。
直近決算
AGCは12月決算ですので11月2日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は987億円と前年同期比で307億円の減益となっています。
業績低迷に伴い通期最終利益を920億円へ280億円下方修正しましたが、年間配当は210円で変更はありません。
業績低迷の要因は、原材料価格の高止まりや塩ビ市況の下落に加え、ディスプレイ事業の急激な需要減少のためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | AGC |
2018年12月期 | 895 |
2019年12月期 | 444 |
2020年12月期 | 327 |
2021年12月期 | 1238 |
2022年12月期 | 920 |
2018年からの通期最終利益を見ていきますが、ここ数年は変動が大きくなっています。
2020年頃はコロナショックの影響で大きく業績を落としましたが、前期は塩化ビニル樹脂や建築用ガラスの販売価格上昇などにより過去最高益となっています。
今期は売上高については過去最高の水準を見込んでいますが、原材料価格の高止まりなどの影響で減益見込みとしています。
配当推移
銘柄名 | AGC |
2015年 | 90 |
2016年 | 90 |
2017年 | 105 |
2018年 | 115 |
2019年 | 120 |
2020年 | 120 |
2021年 | 210 |
2022年(会社予想) | 210 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、数年前までは120円前後の水準でしたが、前期は業績好調により一気に増配幅が大きくなっています。
ただ前期配当210円は、北米建築用ガラスの事業譲渡による一時的な収益に対応する還元として特別配当50円が含まれた金額で、今期は現状据え置き見込みですが普通配当のみで年間210円の予測となっています。
AGCの配当方針は、財務健全性の維持や成⻑事業への投資機会を確保しつつ株主還元を着実に実施する方針で、具体的な目安として安定的に連結配当性向40%としています。
株価推移
株価はコロナショックで2255円まで売られた後は、2021年11月には6040円まで上昇しました。
しかし、その後は右肩下がりの状況で直近は4000円台で推移しています。
株価指標(2023年1月13日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
AGC | 5201 | 4490 | 10.8 | 0.65 | 210 | 4.68 | 50.7 |
最近の株価は低迷していますが、配当は前期の水準を維持している事で配当利回りは4%半ばの水準です。
今期業績は減益見込みですがPER、PBRは市場平均より割安で、配当性向は50%付近になっています。
投資判断
今までの内容からAGCの投資判断について今期業績は減益見込みですが、数年前と比較するとそこまで悪い数字ではないです。
ただ、減益要因である原材料費の高騰や製品需要減速の流れは、今年も継続する可能性がありますので懸念点ではあります。
配当性向も50%付近と今後更なる業績の下方修正があると減配も気になり始める水準ですので、最近の株価は低迷気味ですが、もう少し様子を見たいところではあります。
【4502】花王
3番目の銘柄は花王です。
花王はアタックなどでお馴染みの洗剤や石鹸に加え、ボディソープなどのトイレタリー商品や化粧品など普段の生活で使用する商品を製造、販売する日用品メーカーです。
コロナ感染が拡大した2020年にインバウンド需要は消滅しましたが、ハンドソープ、手指消毒液などの衛生関連商品の特需でカバーしています。
今年はコロナからの経済回復によりインバウンド需要の復活も期待されていますので、花王の業績も期待できるかもしれません。
直近決算
花王は12月決算ですので11月1日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は583億円と前年同期比で237億円の大幅減益ですが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありませんでした。
第3四半期が大幅減益になった要因は、一部日用品の値上げや商品市況上昇により売上は増収となりましたが、原材料価格高騰の影響で最終利益は減益に陥ったとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 花王 |
2018年12月期 | 1536 |
2019年12月期 | 1482 |
2020年12月期 | 1261 |
2021年12月期 | 1096 |
2022年12月期(会社予想) | 1110 |
2018年からの通期最終利益を見ていきますが、ここ数年は減益傾向が続いており、2020年頃はコロナショックによるインバウンド需要消滅や外出自粛による化粧品などの販売落ち込みが主な減益要因でした。
最近はコロナから経済は回復してきている状況ですが、原材料費高騰の影響が最終利益に大きく響いています。
そして今期は現状増益見込みとしていますが、第3四半期時点の通期進捗率は約52%ですので、今後余程の事が起きない限り今期も減益での着地となりそうな感じです。
配当推移
銘柄名 | 花王 |
2015年 | 80 |
2016年 | 94 |
2017年 | 110 |
2018年 | 120 |
2019年 | 130 |
2020年 | 140 |
2021年 | 144 |
2022年(会社予想) | 148 |
2015年からの配当推移をまとめていますが、減益が続く業績とは関係なく配当は増配が続いています。
そして、花王の配当は2022年迄で33期連続増配の日本記録を更新中と株主還元姿勢の高い企業です。
花王の配当方針は、安定的・継続的な配当の実施を通じた利益還元を重視としており、具体的な数値としては配当性向40%を目標にしています。
株価推移
株価は2020年6月に9000円を超える場面もありましたが、そこからは下落が続き去年3月には4663円まで下げました。
その後は6000円を超える水準まで反発しましたが、直近は高値から下落し5000円前後で推移しています。
株価指標(2023年1月13日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
花王 | 4452 | 5030 | 21.1 | 2.37 | 148 | 2.94 | 61.9 |
株価は下落が続いていますが、増配を継続している事で配当利回りは2%後半まで上昇しています。
第3四半期決算で通期業績の下方修正はありませんでしたが、現状の見込みでもPER、PBRは市場平均と比較して割高で、配当性向は62%付近と高水準です。
投資判断
今までの内容から花王の投資判断ですが、最近の業績や株価は低迷が続き今期も第3四半期までは厳しい状況となっています。
直近の業績が低迷している要因は原材料価格の高騰で、今年もこの流れは継続しそうです。
しかし、コロナからの経済回復は着実に進んでおり、今年はインバウンド需要の復活も期待できそうですので花王の業績も復活を期待したいところですが、2月発表予定の本決算までは様子を見たいというのが正直なところです。
【8282】ケーズHD
最後の銘柄はケーズHDです
ケーズHDは、家電量販店ケーズデンキを中核にした持株会社で本社は茨城県です。
ケーズデンキグループとして現在全国に約550店舗を展開しています。
家電量販店業界は今期苦戦が続いている企業が多く、ケーズHDの業績や株価も低迷が続いていますので、今年高配当株として投資可能か検証していきます。
直近決算
ケーズHDは10月31日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は125億円と前年同期比で41億円の減益になっています。
業績低迷により通期最終利益を255億円へ45億円下方修正しましたが、年間配当予測は44円で変更はありません。
業績低迷の要因は、夏季商戦最盛期に気温が低下しエアコン販売が不振だった事や前期の東京オリンピックによるテレビ買い替え需要の反動に加え、水道光熱費などの増加としています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | ケーズHD |
2019年3月期 | 238 |
2020年3月期 | 215 |
2021年3月期 | 387 |
2022年3月期 | 285 |
2023年3月期(会社予想) | 255 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが2021年に過去最高益を記録した後は、減益傾向が続いています。
2021年はコロナによる営業時間短縮などの影響はありましたが、特別定額給付金の支給が家電買い替えの後押しになったことに加え、テレワークの普及によってパソコンなどの販売が好調だったとの事です。
その後は前年の反動や天候不順により減益が続いており、今期も当初は増益見込みとしていましたが、先ほどお伝えした通り第2四半期決算で通期見込みを下方修正し減益見込みになっています。
配当推移
銘柄名 | ケーズHD |
2015年 | 17.5 |
2016年 | 20 |
2017年 | 27.5 |
2018年 | 31.5 |
2019年 | 30 |
2020年 | 30 |
2021年 | 40 |
2022年 | 43 |
2023年(会社予想) | 44 |
2015年からの配当推移について数年前までは30円付近で安定していましたが、ここ数年は40円を超える水準まで上昇しています。
ケーズHDの配当方針は、連結配当性向30%を⽬指しその実現に努めるとしています。
株主優待
ケーズHDには保有株数に応じてケーズデンキで使用できるお買い物優待券がもらえますので内容を表にまとめています。
保有株数 | 優待券 | 金額 |
100株以上 | 1枚 | 1000円 |
500株以上 | 3枚 | 3000円 |
1000株以上 | 5枚 | 5000円 |
3000株以上 | 10枚 | 1万円 |
6000株以上 | 20枚 | 2万円 |
1万株以上 | 30枚 | 3万円 |
下記内容を3月と9月の年2回もらえ、また継続保有期間1年以上の場合、保有株数100株以上1000株未満で優待券1枚、保有株数1000株以上で優待券2枚が追加でもらえますので長期保有者に有難い株主優待です。
株価推移
株価はコロナショックで920円まで売られた後、2021年3月には1600円付近まで上昇しました。
しかし、その後は下落が続き直近は1100円付近で推移しています。
株価指標(2023年1月13日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
ケーズHD | 8282 | 1121 | 8.4 | 0.75 | 44 | 3.93 | 32.9 |
最近の株価は低迷が続いていますが増配が継続している事もあり、配当利回りは4%前後の水準です。
減益発表はありましたがPER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は33%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容からケーズHDの投資判断ですが、今期業績は減益見込みとなりましたがコロナ前と比較してもそこまで悪い数字ではないです。
また、今期家電量販店はどこも苦戦が続いていますが、今年インバウンド需要が復活すれば業績の回復も期待できるかもしれません。
その割に最近の株価は売られすぎの様な気もしますので、長い目で見れば高配当株として狙ってみても面白そうな印象です。
まとめ
今回は今年株価の上昇が期待できそうな高配当株を4銘柄検証しました。
JR九州と花王は、今年コロナからの経済回復がより鮮明なものになれば業績や株価にも期待できそうな気がします。
AGCとケーズHDについては今後の業績推移に懸念点もありますが、株価は下落が続いていますので、長い目でみれば今の水準はチャンスかもしれません。
個人的には今回の4銘柄の中ではJR九州が1番面白そうに感じましたので、今後の動向を見守りたいと思っています。
株価上昇も期待できる高配当株4選は、YouTubeで動画版も投稿していますので宜しくお願いします。
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