中長期の運用となる高配当株投資において1番大切な事は配当の安定性ですが、できれば安定しているだけで無く、継続的な増配も期待したいです。そんななか、最近は好調な業績や株主還元の向上を背景に増配を行ってくれる銘柄も増えていますが、なかには「減配せずに現在の配当水準を維持または増配し続ける」累進配当政策を導入する企業も増えています。
実際、数年前は累進配当を宣言している企業の数も数銘柄程度でしたが、現在は日本を代表する大企業から知名度はそれ程高くない中小企業まで累進配当を導入するケースが増えていますので、高配当株投資家としては本当に有難い限りです。
そこで今回は、現在累進配当を宣言している銘柄の中から、導入した時期が早かった銘柄や誰もが知っている大企業など、王道の高配当株を6銘柄検証していきます。
【8316】三井住友FG
最初の銘柄はメガバンクの三井住友銀行を中核に持つ三井住友FGです。国内では三菱UFJFGに次ぐ金融グループで、最近はM&Aを絡めて海外への進出も進めており、直近売上の海外比率はアメリカやアジアを中心に5割を超えている状況です。
そんななか、初めて配当方針に「累進」の文言が出てきたのは、2017年に発表した決算からで、累進配当銘柄のパイオニア的存在です。
直近決算
三井住友FGは7月31日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は3768億円と前年同期比55億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因は、国内における預貸金収益の増加や決済ファイナンスビジネスなどが好調に推移したためとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 三井住友FG |
2019年3月期 | 7,266 |
2020年3月期 | 7,038 |
2021年3月期 | 5,128 |
2022年3月期 | 7,066 |
2023年3月期 | 8,058 |
2024年3月期 | 9,629 |
2025年3月期 | 11,779 |
2026年3月期(会社予想) | 13,000 |
2019年からの通期最終利益について、コロナショックの影響を受けた2021年は5000億円台へ大きく減益となりましたが、その後は順調に増益が続いており、特にここ数年は法人貸出の増加や好調な決済ビジネスなどに加え、円安や金利上昇などの外部要因の追い風もあり増益幅も拡大しています。
実際、前期も国内金利の上昇で貸出金利が上昇した影響などで、初の1兆円超えとなる過去最高益を記録しており、今期も厳しい環境変化や景気後退リスクを踏まえたうえで、更に1割程度の増益予測としているなか、第1四半期時点の通期進捗率も29%付近と順調なスタートを切っています。
配当推移
銘柄名 | 三井住友FG |
2016年 | 50 |
2017年 | 50 |
2018年 | 56.6 |
2019年 | 60 |
2020年 | 63.3 |
2021年 | 63.3 |
2022年 | 70 |
2023年 | 80 |
2024年 | 90 |
2025年 | 122 |
2026年(会社予想) | 136 |
2016年からの配当推移について、2021年までは据え置きの年もありましたが、概ね順調に増配が続いていました。そして、2022年以降は好調な業績を背景に増配幅も大きくなり、最近は10円刻みの増配が続いていたなか、前期は一気に32円の大幅増配となり、今期も期初から12円の増配見込みで発表しています。
三井住友FGの配当方針はボトムラインの成長を通じて増配を実現するとしており、配当は累進的で具体的な目安は配当性向40%としています。
株価推移

株価は今後の金利先高観が高まった2022年11月以降に上昇ペースが加速し、今年3月には4140円まで上昇しました。
その後、4月の暴落で2560円まで売られ、関税交渉の合意を受けて4000円付近まで反発しましたが、直近は3850円前後で推移しています。
株価指標(2025年7月31日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
三井住友FG | 8316 | 3855 | 11.4 | 1.03 | 136 | 3.53 | 40.3 |
最近の株価は上昇していますが、大幅増配も続いていますので配当利回りは3%半ばとなっています。
今期も過去最高益の見込みですのでPERは市場平均より割安で、配当性向は40%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容から三井住友FGの投資判断ですが、最近の業績は過去最高益が続いており、今期も更に増益予測にしていたなか、第1四半期も順調なスタートになっています。その様な背景もあり、大幅増配も続いていますが、低金利が続いていた事で業績が今ほど好調では無かった2017年から累進配当を宣言しており、導入時期の早さを含め、日本を代表する王道の累進配当銘柄と言って間違い無いです。
以上の点に加え、今後も政策金利が0.25%利上げされる毎に1000億円の増益効果があるとしていますので、最近の株価は少し停滞気味でしたが、直近は再度動き出した雰囲気です。
【8002】丸紅
2番目の銘柄は丸紅で、三菱商事や伊藤忠と並ぶ5大総合商社の一角です。5大総合商社の中では企業規模や業績が見劣りする部分はありますが、農業関連や電力事業などの非資源部門に強みを持っている事が特徴です。
そんななか、総合商社は累進配当を宣言している企業が多いですが、丸紅も2023年から累進配当を導入しています。
直近決算
丸紅は8月1日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は1544億円と前年同期比118億円の増益になっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因は、為替や商品市況のマイナス影響はありましたが、食品マーケティング事業や米国肥料卸売事業など既存事業の磨き込みが進んだ事に加え、北米貨車リース事業の売却益計上などの一時的要因もあったためとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 丸紅 |
2020年3月期 | -1975 |
2021年3月期 | 2232 |
2022年3月期 | 4243 |
2023年3月期 | 5430 |
2024年3月期 | 4714 |
2025年3月期 | 5029 |
2026年3月期(会社予想) | 5100 |
2020年からの通期最終利益を見ていきますが、増減が激しくなっており、2020年はコロナショックの影響で赤字に転落しています。しかし、2021年以降は商品市況の上昇や円安の追い風などで大幅増益が続き、2023年には過去最高益を記録していますが、2024年は資源価格下落に伴い原料炭事業などが低迷した影響で減益となりました。
そんななか、前期も資源部門は商品市況の影響で減益でしたが、非資源部門が過去最高益を記録した事で増益になっており、今期も非資源部門の利益成長が業績を牽引するとして更に増益の予測で発表しているなか、第1四半期時点の通期進捗率も30%付近と順調なスタートを切っています。
配当推移
銘柄名 | 丸紅 |
2016年 | 21 |
2017年 | 23 |
2018年 | 31 |
2019年 | 34 |
2020年 | 35 |
2021年 | 33 |
2022年 | 62 |
2023年 | 78 |
2024年 | 85 |
2025年 | 95 |
2026年(会社予想) | 100 |
2016年からの配当推移について、数年前までは30円台で推移していましたが、2022年は業績好調を背景に一気に2倍近い29円の大幅増配となりました。その後も順調に増配が続き、2024年は7円、前期も10円の増配となり、今期も期初から更に5円の増配予測で発表しています。
丸紅の配当方針は、2027年度までの中期経営計画中は総還元性向40%を目安とし、また年間配当100円を基点とする累進配当の継続も発表しています。
株価推移

2023年以降の株価は右肩上がりだったなか、去年7月には3158円まで上昇しました。
しかし、その後は下落が続き、4月の暴落では1878円まで売られましたが、直近は3000円前後まで反発しています。
株価指標(2025年7月31日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
丸紅 | 8002 | 3113 | 10.1 | 1.41 | 100 | 3.21 | 32.3 |
最近の株価は直近安値から大きく上昇していますが、増配も続いていますので配当利回りは3%前半となっています。
今期業績も増益見込みですのでPERは市場平均と比較して割安で、配当性向は32%付近と余裕を感じる水準です。
投資判断
今までの内容から丸紅の投資判断について、最近は商品市況下落の影響で減益が続いている総合商社も多いですが、丸紅は非資源部門の好調で増益を維持しており、直近の株価にも勢いがあります。そんななか、総合商社は昔から累進配当を導入している銘柄も多いですが、丸紅が累進配当を宣言したのは2023年2月と少し遅めで、それまでの増配ペースも緩やかでした。
実際、丸紅は当時、累進配当を宣言した理由として、「自社の株主還元が商社セクター内でやや見劣りしている事を課題」としていましたが、その後の増配ペースや早くも2027年度までの累進配当継続を発表した現状を踏まえると、今や王道の累進配当銘柄と呼べそうです。
【8801】三井不動産
3番目の銘柄は三井不動産で、オフィスビルや商業施設、ホテル、レジャー施設、住宅、マンションなどを手掛ける総合不動産会社です。東京ドームや東京ミッドタウンタワー、ららぽーと、東京ディズニーリゾートなど有名施設を数多く手掛けています。
そんななか、累進配当を導入したのは前期からと最近ですが、日本を代表する知名度と会社規模を誇っています。
直近決算
三井不動産は5月9日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は2487億円と241億円の増益になっているなか、配当は3円増配の年間31円としています。
今期予測は通期最終利益を2600億円と113億円の増益見込みにしているなか、配当は2円増配の年間33円予測で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 三井不動産 |
2021年3月期 | 1295 |
2022年3月期 | 1769 |
2023年3月期 | 1969 |
2024年3月期 | 2246 |
2025年3月期 | 2487 |
2026年3月期(会社予想) | 2600 |
2021年からの通期最終利益を見ていきますが、海外オフィスやホテル・リゾートの収益・利益の拡大に加え、国内商業施設の売上が伸⾧した事などを要因に順調に増益が続いています。
実際、前期も固定資産・販売用不動産・投資有価証券をトータルで捉えた資産入れ替えの加速による利益の伸⾧や、好調なホテル・リゾートにおける更なる収益・利益の伸⾧によって過去最高益を更新しており、今期も東京都心の高額分譲住宅の販売が好調に推移しそうな事やインバウンドによる旺盛なホテル需要も続く見込みとして、更に増益の予測で発表しています。
配当推移
銘柄名 | 三井不動産 |
2016年 | 10 |
2017年 | 11.3 |
2018年 | 13.3 |
2019年 | 14.6 |
2020年 | 14.6 |
2021年 | 14.6 |
2022年 | 18.3 |
2023年 | 20.6 |
2024年 | 28 |
2025年 | 31 |
2026年(会社予想) | 33 |
2016年からの配当推移について、コロナショックの影響を受けた2020年頃は据え置きの年が続きましたが、減配はありませんでした。そんななか、最近は業績好調により増配幅も大きくなっており、2024年は約8円、前期も3円の増配だったなか、今期も期初から2円の増配見込みにしています。
三井不動産の配当方針は持続的な利益成長と連動した安定的な増配としており、前期から累進配当を導入するなか、目安の配当性向は35%程度、総還元性向50%以上としています。
株価推移

2023年春以降の株価は右肩上がりで、去年4月には1709円まで上昇しました。
しかし、その後は低迷が続き、去年の年末には1199円まで下落しましたが、直近は1350円前後で推移しています。
株価指標(2025年7月31日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
三井不動産 | 8801 | 1358.5 | 14.5 | 1.20 | 33 | 2.43 | 35.2 |
最近の株価は停滞しているなか、増配は続いていますが配当利回りは2%半ばとなっています。
今期も過去最高益の見込みですがPER、PBRに割安感はなく、配当性向は35%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容から三井不動産の投資判断について、最近の業績は過去最高益が続いているなか、配当も増配が続いていますが、株価は今後の利上げが警戒されてか停滞しています。ただ、インフレが進む現代社会においては、今後も更なる不動産価格の上昇が期待できますし、前期から導入された累進配当や現在の余裕ある配当性向まで含めると、今後の継続的な増配も現実的です。
以上の点を踏まえると、現状の配当利回りは2%台と高配当株としては寂しい水準ですが、知名度抜群の王道累進銘柄として注目したいです。
【8766】東京海上HD
4番目の銘柄は東京海上HDで東京海上日動火災保険や日新火災海上などを傘下にしている保険持株会社です。自動車保険や火災保険などの国内損害保険や国内生命保険に加え、海外保険も手掛けており、直近の海外売上比率もアメリカを中心に5割を超えている状況です。
直近決算
東京海上HDは5月20日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は1兆552億円と3594億円の増益となっているなか、配当も49円増配の年間172円としています。
今期予測は通期最終利益を9300億円と1252億円の減益見込みにしていますが、配当は38円増配の年間210円予測で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 東京海上 |
2019年3月期 | 2,745 |
2020年3月期 | 2,597 |
2021年3月期 | 1,618 |
2022年3月期 | 4,204 |
2023年3月期 | 3,764 |
2024年3月期 | 6,958 |
2025年3月期 | 10,552 |
2026年3月期(会社予想) | 9,300 |
2019年からの通期最終利益について、コロナショックの影響を受けた2021年にかけては減益が続いていましたが、その後はコロナの反動や運用資産を背景としたインカム収益の拡大に加え、円安影響などで大きく増益となる年が増えました。
実際、2024年も自動⾞保険の販売拡⼤や海外事業の好調に加え、政策保有株式の売却で前期比約2倍となる過去最高益を記録し、前期も国内外でのレートアップや政策保有株式の売却加速を要因に最終利益は初めて1兆円の大台を超えていますが、今期は円高進行や前年の反動を考慮して1割程度の減益見込みで発表しています。
配当推移
銘柄名 | 東京海上 |
2016年 | 36.67 |
2017年 | 46.67 |
2018年 | 53.33 |
2020年 | 75 |
2021年 | 78.33 |
2022年 | 85 |
2023年 | 100 |
2024年 | 123 |
2025年 | 172 |
2026年(会社予想) | 210 |
2016年からの配当推移を見ていきますが順調に増配が続いているなか、最近の増配幅は業績好調を背景に大きくなっています。実際、2024年は23円、前期も本決算で10円増額された事で合計49円の大幅増配となっており、今期も業績は減益見込みですが期初から38円の増配予測でスタートしています。
東京海上HDの配当方針は5年平均の修正純利益に配当性向50%を目安にしており、原則減配はしないとしているなか、来期からは各種指標、定義の見直しを行う方針で、詳細は今年秋に表明する予定としています。
株価推移

2022年頃からの株価は右肩上がりの状況が続き、去年7月には6679円まで上昇しました。
しかし、その後は低迷が続き、4月の暴落では4355円まで下落しましたが、直近は6000円前後で推移しています。
株価指標(2025年7月31日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
東京海上HD | 8766 | 6124 | 12.6 | 2.31 | 210 | 3.43 | 43.2 |
最近の株価は直近安値から反発していますが、配当も大幅増配が続いていますので配当利回りは3%半ばの水準です。
今期業績は減益見込みですがPERは市場平均より割安で、配当性向は43%付近となっています。
投資判断
今までの内容から東京海上HDの投資判断について、ここ数年の業績は海外保険事業の好調や金利上昇に加え、政策保有株式の売却によって大きく伸びていますが、ここ1年くらいの株価は停滞が続いていました。株価停滞の要因は、今までの上昇ペースが早かった事や政策保有株式の売却も永遠にできる訳では無い事に加え、保有している債券価格の下落も懸念されていた印象です。
ただ、配当は大幅増配が続いており、原則減配はしない方針も掲げているなか、今年秋には新しい配当方針を発表予定としていますが、現状の流れから改悪される事は無いと思いますので、今から期待しておきたいです。
【8439】東京センチュリー
5番目の銘柄は東京センチュリーでオートリースや航空機リースなどを手掛ける伊藤忠系の大手総合リース会社です。パソコンやサーバーなどの情報通信機器の取り扱いに強みを持っており、再生可能エネルギー事業も手掛けています。
リース株は累進配当を宣言している銘柄が多いですが、もちろん東京センチュリーも累進配当を導入しています。
直近決算
東京センチュリーは5月14日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は852億円と131億円の増益となっているなか、配当は10円増配の年間62円としています。
今期予測は通期最終利益を930億円と78億円の増益見込みにしているなか、配当は6円増配の年間68円予測で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 東京センチュリー |
2021年3月期 | 491 |
2022年3月期 | 502 |
2023年3月期 | 47 |
2024年3月期 | 721 |
2025年3月期 | 852 |
2026年3月期(会社予想) | 930 |
2021年からの通期最終利益について、2022年頃は500億円前後で安定していましたが、2023年は連結子会社を通じてロシアへ航空機をリースしていた事などにより、ロシア関連の特別損失を580億円計上した事で大きく減益となりました。しかし、2024年はロシア関連損失の剥落や全事業分野で増益になったとして過去最高益の水準へV字回復しており、前期も不動産事業や国際事業分野の好調に加え、政策保有株式の売却も加わった事で増益となっています。
そして、今期もトランプ関税の影響などによるマイナス影響を320億円織り込んでいますが、ロシアの航空会社向けにリースしていた機体等を対象に約400億円の保険和解金を計上するとして、更に過去最高益を更新する予測にしています。
配当推移
銘柄名 | 東京センチュリー |
2016年 | 20 |
2017年 | 25 |
2018年 | 28.5 |
2019年 | 31 |
2020年 | 34 |
2021年 | 34.5 |
2022年 | 35.75 |
2023年 | 35.75 |
2024年 | 52 |
2025年 | 62 |
2026年(会社予想) | 68 |
2016年からの配当推移について、大きく減益となった2023年は据え置きになっていますが、その年以外は順調に増配が続いています。特に直近は業績好調から増配幅も大きくなっており、2024年は約16円、前期も10円の大幅増配、そして今期も期初から6円の増配見込みで発表しています。
東京センチュリーの配当方針は累進配当を基本としつつ、利益成長による増配を目指し、配当性向は35%程度を目安にしています。
株価推移

株価は2023年の春頃からは上昇傾向となり、去年9月には1784円まで上昇しました。
しかし、その後は低迷が続き、4月の暴落で1261円まで値を下げましたが、直近は再度1700円前後で推移しています
株価指標(2025年7月31日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
東京センチュリー | 8439 | 1736.5 | 9.1 | 0.82 | 68 | 3.92 | 35.7 |
最近の株価は上昇していますが、大幅増配も続いていますので配当利回りは4%前後と高水準です。
今期も過去最高益の見込みですのでPER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は35%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容から東京センチュリーの投資判断について、最近の業績は過去最高益が続いているなか、配当も大幅増配を継続中です。そんななか、今期は2023年の大きな減益要因となっていたロシア関連の損失が保険和解金として約400億円戻ってくる事で更に増益の予測としていますが、同時に関税影響などに備えたリスク要因を320億円見込んでいるため、現状の増益幅は約78億円とそこまで大きくありません。
ただ、関税影響は限定的でリスクが顕在化しなければ、業績は更に上振れる可能性があるとしており、また「現状の配当性向も同業他社と比較して低い事を踏まえ、適正な配当水準を強く意識して設定していく考え」としています。
以上の点を踏まえると、リース銘柄は累進配当を導入している企業が多いですが、今後の伸びしろまで考慮すると、東京センチュリーがリース業界を代表する累進銘柄と言えなくも無いです。
【4502】武田薬品工業
最後の銘柄は武田薬品工業で売上は国内医薬品企業の中でトップとなっており、M&Aを絡め企業規模の拡大を図っている事もあり、現在約80の国と地域で医薬品を販売しています。
実際、直近の海外売上比率は5割を超えているアメリカを中心にヨーロッパやカナダなど9割近くを占めている状況です。
そんななか、配当は40年以上減配しておらず、実質的に累進配当銘柄の様な存在でしたが、2024年から正式に累進配当政策を導入しています。
直近決算
武田薬品工業は7月30日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は1242億円と前年同期比290億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因は、主力品の特許切れや円高の影響で売上は減収でしたが、前年同期に計上した構造改革費用が減った影響などとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 武田薬品 |
2019年3月期 | 1351 |
2020年3月期 | 442 |
2021年3月期 | 3760 |
2022年3月期 | 2300 |
2023年3月期 | 3170 |
2024年3月期 | 1440 |
2025年3月期 | 1079 |
2026年3月期(会社予想) | 2280 |
2019年からの通期最終利益について、増減の激しい展開が続いていますが、2023年は大幅増益となっており、要因は成長製品や新製品の販売が好調に推移している事に加え、円安の追い風があったためとの事です。
しかし、2024年以降はVYVANSEなどの独占販売期間満了による大幅なマイナス影響やコロナワクチンの減収に加え、前期は事業構造再編費用の計上もあって減益が続きましたが、今期は潰瘍性大腸炎治療薬エンビディオなどの主力製品や新製品の売上が堅調に推移する見込みな事や調達コスト削減などの効果も出るとして約2倍の増益予測にしているなか、第1四半期時点の通期進捗率は54%付近と、第2四半期決算での上方修正も期待できそうなロケットスタートです。
配当推移
年 | 武田薬品 |
2016年 | 180 |
2017年 | 180 |
2018年 | 180 |
2019年 | 180 |
2020年 | 180 |
2021年 | 180 |
2022年 | 180 |
2023年 | 180 |
2024年 | 188 |
2025年 | 196 |
2026年(会社予想) | 200 |
2016年からの配当推移を見ていきますが、2023年までは毎年180円で、遡ると2009年から15年以上180円で変わっておらず、40期以上減配はしていません。そんななか、2024年は配当方針を変更した事で、久しぶりに8円の増配になっており、前期も更に8円の増配になりましたが、今期は現状4円の増配予測になっています。
武田薬品工業の配当方針は、毎年の年間配当金を増額または維持するとしており、2024年より累進配当を導入しています。
株価推移

株価は2023年頃から上昇傾向で9月には4873円まで上昇しましたが、その後は4000円付近で停滞しました。
ただ、4月の暴落で3916円まで下落した後は、じわじわ上昇して直近は4200円前後で推移しています。
株価指標(2025年7月31日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
武田薬品 | 4502 | 4200 | 29.1 | 0.97 | 200 | 4.76 | 138.5 |
直近の株価はじわじわ上昇していますが、配当は増配が続いていますので配当利回りは4%後半と高水準です。
今期は増益見込みですがPERは市場平均よりもかなり割高で、配当性向も138%付近と今期も100%を超えている状況です。
投資判断
今までの内容から武田薬品工業の投資判断について、最近の業績は後発品や研究開発費増加の影響で減益が続いていましたが、今期は成長製品や新製品の売上拡大で大きく増益の予測にしており、第1四半期も好調なスタートになっています。そんななか、関税交渉は合意しましたが、アメリカへの売上が半分を占めており、また医薬品へは品目別での関税が示唆されている点が懸念点ですが、製造先の中心がアメリカであるため影響は限定的としており、影響を受ける輸入品についても在庫やサプライチェーンの管理などで緩和策を実施しているとの事です。
ただ、薬価の引き下げ要請も含め、依然先行きが不透明な事は確かですので、今後の状況次第で業績は下方修正が発表される可能性もありそうです。以上の様に、今後の業績も増減を繰り返しそうですが、40年以上減配していない今までの配当推移を踏まえると、累進配当を宣言したのは2024年と最近ですが、日本を代表する王道の累進配当銘柄である事は確かです。
まとめ
今回は現在累進配当を宣言している銘柄の中から、導入した時期が早かった銘柄や誰もが知っている大企業など、王道の高配当株を6銘柄検証しました。累進配当政策は減配しない事を約束した配当方針ですので、据え置きでも問題ありませんが、今回検証した6銘柄とも累進配当を宣言した後の配当は順調に増配が続いており、今後に期待できる部分も大きかったかと思います。
そんななか、冒頭でお伝えした様に現在は多くの企業が累進配当を宣言していますので、一般的には知名度が高くない銘柄やあまり高配当株のイメージが無い様な銘柄でも累進配当を導入しているケースがあります。
という事で、もちろん今回検証した6銘柄の様に知名度や会社規模が抜群の王道銘柄の方が安心して投資できる一面はありますが、あまり知られていない銘柄の方が狙い目の可能性はありますので、明日8月3日(日)の夜19時に、そんな隠れた累進銘柄をまとめた「実は累進配当を宣言していた5銘柄」の記事を投稿しますので、是非そちらもご覧ください。
王道の累進6銘柄はYouTubeで動画版も投稿していますので、あわせてご覧ください。
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