最近は3月期銘柄の第2四半期決算を中心に決算発表が本格化していますが、7月から9月期の決算になりますので、更に進んでいる円安や原材料費高騰の影響を受けて通期予測の上方修正や下方修正を発表する銘柄も目立ちます。
そこで約1週間前に保有銘柄を中心に11月11日までに発表された決算のうち、気になった9銘柄の検証記事を投稿しました。
そこで今回は、保有銘柄以外で気になった決算や、11月14日以降に発表された決算の中から気になる8銘柄を選んで個別に検証していきます。
今回も8銘柄と数が多いので、決算の内容をメインにその他の部分については簡単にまとめていますので是非最後までご覧ください。
【1911】住友林業
まずは10月31日に決算が発表された住友林業です。
住友林業グループは、木のプロフェッショナルとして人と地球環境にやさしい木を活かし、国内外における山林経営、植林事業からグローバルなネットワークによる木材・建材の調達、流通、製造、加工、住宅建築などを手掛けています。
2003年に米国での住宅事業を開始するなどM&Aを絡めて海外展開も進めており、直近の海外売上比率は半数を占めるほどの水準へ急成長しています。
しかし、アメリカは住宅ローン金利が上昇している事に伴い、住宅着工件数が減少している事が今後の懸念材料になっています。
直近決算
住友林業は12月決算の為、10月31日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は827億円と前年同期比で291億円の大幅増益でしたが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありませんでした。
業績好調の要因は、金利上昇などに伴いアメリカの受注販売数は減少していますが、値上げによる販売単価上昇や円安の影響で海外市場が好調だった為としています。
直近決算の感想
決算の感想ですが、ここ最近の業績は海外事業の好調を中心に大きく伸びていましたので、アメリカの金利上昇の影響がどの程度決算に出てくるのか注目点でした。
実際の決算は、販売戸数は減少していましたが、値上げと円安でカバーしている状況です。
今後も販売戸数は減少していく可能性がありますので、販売価格は維持できたとしても為替が円高に振れると少し怖いかなというところです。
【8058】三菱商事
続いては11月8日に決算を発表した三菱商事です。
三菱商事は三菱グループの総合商社でエネルギー、金属などの金属資源部門に強みを持っていますが、企業規模は大きく国内外の様々な企業と取引がある為、金属資源部門以外のセグメント割合もバランスの良い収益構造です。
総合商社の決算は三井物産、伊藤忠ともに好調な内容でしたので、最大手の三菱商事の決算も順調な内容が期待されていました。
直近決算
三菱商事は11月8日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は7200億円と前年同期比で3595億円の大幅増益となっています。
業績好調に伴い、通期最終利益を1兆300億円へ1800億円上方修正し、年間配当は150円と従来予想から5円増額しています。
業績好調の要因は、商品市況や円安の追い風を捉えた金属資源、天然ガスに加え、自動車・モビリティ、電力ソリューションなどの各セグメントで増益を見込む為としており、第2四半期として過去最高益になっています。
直近決算の感想
決算の感想ですが、商社業界初の年間利益1兆円予測へ上方修正するなど期待通りの決算内容でした。
配当の増額幅が他の商社と比較して低かった事もあってか、決算後株価が急落する場面もありましたが、すぐに値を戻しています。
そして、上方修正後でも通期進捗率は約70%と更なる上積みも期待できそうな内容です。
【9432】NTT
続いては同じく11月8日に決算が発表されたNTTです。
NTTは通信事業を主体とするNTTグループの持株会社で、2020年にはNTTドコモを完全子会社化しています。
通信料収入については値下げによる収益減のほか、国内市場は飽和状態で今後の飛躍的な成長が見込めない為、通信部門以外での収益確立を目指すようになっています。
しかし、先に決算が発表されたKDDIとソフトバンクは通信料収入の減少も影響して前期比減益の微妙な決算でしたので、最大手のNTTの決算も減益になるのか注目でした。
直近決算
NTTは11月8日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は6966億円と前年同期比208億円の増益でしたが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありませんでした。
前期比増益の要因として通信料金値下げや電気料金高騰の影響はありましたが、グローバルソリューション事業などが好調だった為としており、第2四半期としては過去最高益を更新しています。
直近決算の感想
決算の感想ですが、通信最大手のNTTらしく第2四半期も増益での着地となっています。
NTTも通信料金値下げの影響はありましたが、DX関連や決済サービスなど他の事業でカバーできており非常に良い決算でした。
非常に良い内容でしたが、株価は決算後なぜか大きく売られましたのでNISA枠が残っていれば買いたいところでした。
【2503】キリンHD
続いては保有銘柄の中から11月9日に決算を発表したキリンHDです。
キリンHDは、キリンビールやキリンビバレッジなどを傘下に持つキリングループの持株会社です。
ここ数年の飲料メーカーは度重なる緊急事態宣言の影響による休業要請や外出自粛などにより厳しい状況が続いていました。
そんななか、キリンHDは政情不安が続くミャンマー市場からの撤退を決めた事もあり、今期は大幅増益見込みとしていましたので、順調に進捗しているのか注目でした。
直近決算
キリンHDは12月決算銘柄ですので11月9日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は1290億円と前年同期比で774億円の大幅増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありませんでした。
業績好調の要因は、酒類事業の業務用市場が回復した事や円安の影響などとしています。
直近決算の感想
決算の感想ですが、前期までとは見違えるほど順調な内容になっています。
要因はコロナからの経済回復や円安の影響ですが、第3四半期時点の通期進捗率は約96%でしたので、予測を上回っての最終着地にも期待が持てます。
原材料費高騰やコロナ感染再拡大などの懸念点はありますが、来期以降もこの流れを継続して欲しいところです。
11月14日(月)
続いて11月14日は決算発表も多く、保有銘柄からは三菱UFJ、三井住友FG、アルヒの決算をみていきます。
【8316】三菱UFJFG
11月14日最初の銘柄は三菱UFJFGです。
三菱UFHFGは、メガバンクの三菱UFJや三菱UFJ証券などを傘下に持つ金融持株会社で世界最大級の金融グループです。
メガバンクはコロナ倒産に備えていた貸倒引当金を想定ほど使用しなくて良かった事や金利上昇により業績は順調に推移しています。
しかし、三菱UFJFGの第1四半期決算はMUB(米国地銀ユニオンバンク)の株式譲渡に絡む臨時損失が発生した事で前年同期比約70%の大幅減益となっていました。
MUB(米国地銀ユニオンバンク)の売却は今年12月1日に実行する事が決定したと事前に報じられていましたので、第2四半期で持ち直しの動きが見られるのか注目でした。
直近決算
三菱UFJFGは11月14日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は2310億円と前年同期比5504億円の大幅減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更ありませんでした。
第2四半期決算が大幅減益の要因は、MUB株式譲渡に伴う会計処理に関連した損失が5638億円発生した為としています。
しかし、この損失はMUB株式譲渡時に特別利益として4481億円が戻ってくるとしており、MUB関連を除くと最終利益は6792億円で通期進捗率は約68%としています。
直近決算の感想
決算の感想ですが、第2四半期もMUB関連の特別損失で大幅減益となりましたので、数字だけを見るとかなり心配な内容でした。
しかし、先程触れた様にMUB関連の損失は大部分が戻ってくる予定となっており、また他の事業は順調に進捗しています。
MUB株式譲渡の詳細な流れは正直分かりませんが、今回の決算書では執拗なくらいMUB関連を除く最終利益が示されていましたので、三菱UFJFGを信じて第3四半期以降の決算を楽しみに待ちたいと思います。
【8316】三井住友FG
続いては同じく11月14日に決算を発表した三井住友FGです。
三井住友FGは、メガバンクの三井住友銀行やSMBC日興証券などを傘下に持つ金融持株会社で、国内では三菱UFJFGに次ぐ存在です。
三井住友FGも貸倒引当金を想定ほど使用しなくて良かった事や金利上昇で業績は順調に推移しています。
そして三井住友FGは三菱UFJFGの様に特別損失もなく、第1四半期も順調な内容でしたので第2四半期決算にも期待がかかっていました。
直近決算
三井住友FGは11月14日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は5254億円と前年同期比で694億円の増益となっています。
業績好調に伴い通期最終利益を7700億円へ400億円上方修正しており、年間配当は230円へ従来予想から10円増額しています。
業績好調の要因は、国内外の法人貸出の増加と付帯取引の獲得や好調な決済ビジネスに加え円安の影響としています。
直近決算の感想
決算の感想ですが、業績の上方修正と配当の増額に加え自社株買いまで発表される期待以上の決算で、実際決算後の株価も大きく上昇しています。
そして今回の決算は円安の影響も大きく、改めてメガバンクの海外進出力を感じました。
上方修正後でも通期進捗率は約68%と今後に期待が持てそうですが、通期業績の上方修正にあわせて為替の想定レートを120円から140円に引き上げていましたので、今後円高に振れる局面は少し心配かなというところです。
【7198】アルヒ
11月14日発表最後の銘柄は日本最大手の住宅ローン専門金融機関アルヒです。
アルヒは住宅ローン「フラット35」の取り扱い実行件数では12年連続のシェアNo.1を継続中ですが、物件価格の高騰などから利用顧客層の購入見送りなどの影響も見られ厳しい状況が続いています。
そして、決算発表の約2週間前に通期業績の下方修正と配当の減額を発表するなど厳しい決算が予想されていました。
直近決算
アルヒは11月14日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は17億円と前年同期比5億円の減益となっています。
そして先程お伝えした様に決算の約2週間前に通期業績の下方修正を発表していましたが、そこから最終利益、年間配当の変更はありませんでした。
業績低迷の要因は住宅価格の上昇や物価高の加速などにより、毎月の返済額を抑えた商品の需要拡大が継続したことでフラット35の実行件数が伸び悩んだ為としています。
直近決算の感想
決算の感想ですが、予想されていた通り厳しい内容になりました。
減益要因となった住宅価格の高止まりや物価高による購入見送りは下期以降も継続しそうな為、今後も厳しい展開が予想されます。
しかし、アルヒはSBIグループによるTOBが成立していますので、今後はSBIグループとの協業により早期の業績回復に期待したいです。
【8766】東京海上HD
最後は11月18日に決算を発表した損保大手の東京海上HDです。
東京海上HDは、東京海上日動火災保険や日新火災海上などを傘下にしている保険持株会社です。
社名に海上と入っていますが、現状は自動車関連の保険が売上の半数近くを占めており、また世界46の国や地域で事業を展開するなど海外への進出も注力しています。
直近決算
東京海上HDは11月18日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は865億円と前年同期比で1827億円の大幅減益となっています。
大幅減益に伴い、通期最終利益を3700億円へ600億円下方修正しましたが、年間配当予測に変更はありません。
大幅減益の要因として、海外事業における円安の追い風もあり売上は増収でしたが、自然災害やコロナによる保険金の支払いが増えた為としています。
直近決算の感想
決算の感想ですが、内容だけを見ると凄く悪い決算に見えますが、下方修正した数字でも数年前を大きく上回っている状況です。
しかし、減益の要因は自然災害やコロナによる一過性の影響としていますが、下方修正後でも通期進捗率は約23%でしたので、今後更なる下方修正がないか不安になる決算ではありました。
まとめ
今回は最近発表された決算のうち保有していない銘柄や、11月14日以降に発表された決算の中より気になった銘柄を8銘柄検証しました。
冒頭でも触れた様に7月から9月の決算だった為、更に進んだ円安や原材料費の高騰が大きく業績に影響して明暗は分かれている状況でした。
円安や商品市況の上昇をプラスにしていた住友林業や三菱商事は絶好調でしたが、アルヒや東京海上は少し微妙な決算となっています。
今後の為替相場や商品市況がどの様に動くかは分かりませんが、最近の為替についてはピークを迎えた様な雰囲気もあります。
これは前回の決算を検証した時にも感じましたが、現在色々言われている円安は国内企業の業績にプラスの影響を与えている部分もかなりあると思います。
実際、最近の円安を受けて各企業は為替の想定レートを引き上げる事で上方修正の要因となっているケースも目立っただけに、今後円高に振れると少し怖い感じはします。
という事で今後の業績を見ていくなかで重要な為替の動きにも注意しながら、引き続き優 良高配当株を探していきたいと考えています。
直近の決算が気になった高配当株8選についてはYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
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