最近はネットやニュースでもNISA枠の拡大や非課税期間の恒久化など金融庁が要望したNISA制度の改革案が話題になっているかと思います。
投資家にとってはもちろん気になるニュースですし、個人的にも今後どうなるのか気になっています。
そこで今回はNISA制度改革の行方や、今後もしNISA枠が拡大されたら買いたいと思っている高配当株を3銘柄検証していきます。
NISAとは
そもそもNISAとは2014年にスタートした「少額投資非課税制度」の事で、当初は年間120万円を5年間(合計600万円)投資できる一般NISAのみでしたが、その後ジュニアNISA(年間80万円×5年間)やつみたてNISA(年間40万円×20年間)が誕生しました。
NISA制度は元々2024年から大きく内容が変わる予定でしたが、岸田総理の「資産所得倍増プラン」をきっかけに、金融庁がNISA枠の拡大などを盛り込んだ税制改正要望案を公表し話題になっているところです。
NISA改正案
改正案では一般NISAの投資枠を年120万円から240万円に、つみたてNISAを40万円から60万円に引き上げる案を提示しており、しかも併用が可能で最大の投資額は合計300万円となっています。
そして、非課税期間及び新規投資期間の恒久化も求めていますので、要望が全て通れば今までの2倍以上の投資額を永遠に非課税で運用できるという素晴らしい内容です。
しかし、このままでは合計の投資額も無制限になってしまいますので、改革案では累計の投資額を上限2000万円とする案が提示されている様です。
どちらにしても現在の金額からかなり上限が上がりますので、資金が準備できるかも不安になりますが、投資家にとっては大きくプラスとなる材料です。
現状はあくまで要望案を提出した段階に過ぎず全ての要望が通るかは不透明ですが、総理大臣の後押しがある状況だけに投資家の1人として期待せずにはいられません。
それではここからは、もしNISA枠が240万円に拡大されたら購入したいと思う高配当株を3銘柄検証していきたいと思います。
現行のNISA枠120万円の場合は、最低購入金額が60万円を超える様な銘柄は1銘柄でNISA枠の半分以上を使用してしまうので購入しにくい為、今回は購入金額が60万円以上の高配当株を選定しています。
【3391】ツルハHD
最初の銘柄はツルハHDです。
ツルハHDは、ツルハドラックなどのドラッグストアを運営する企業を傘下に持つ持株会社で本社は北海道です。
地域集中出店によるシェア拡大を早期に図るドミナント戦略を推進し、グループ体制の確立によるローコストオペレーション効果を商品価格へ反映させるほか、地域や特性に合わせた多彩なタイプの店作りを進めています。
また、店舗網を活かした調剤事業や介護事業に加え通信販売事業も手掛けています。
直近決算
ツルハHDは5月決算の為、9月20日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は75億円とほぼ前年並みの数字となっており、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
第1四半期決算について既存店の売り上げは前年比で回復傾向ですが、水道光熱費の高騰により販管費も上昇しているとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | ツルハ |
2019年3月期 | 248 |
2020年3月期 | 278 |
2021年3月期 | 262 |
2022年3月期 | 213 |
2023年3月期(会社予想) | 226 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、2020年に過去最高益を記録した後は減益傾向が続いています。
2020年に売上が伸びた要因としてインバウンド関連の売上は消滅しましたが、マスクや消毒液、ハンドソープなどの予防関連商材に加え、巣ごもり需要に対応した為としています。
その後はコロナ特需の反動や人件費高騰などの影響で減益が続いていますが、今期はPB商品の強化や精肉・青果や100円均一の導入によるワンストップショッピングの実現に加え、ドラッグストア併設型を中心とした調剤薬局の積極的な新規開局を進める事などにより増益見込みとしています。
配当推移
銘柄名 | ツルハ |
2015年 | 88 |
2016年 | 108 |
2017年 | 140 |
2018年 | 146 |
2019年 | 148 |
2020年 | 167 |
2021年 | 167 |
2022年 | 167 |
2023年(会社予想) | 233 |
配当については、最近の業績は低迷していますが概ね順調に増配傾向が続いています。
そしてここ数年は据え置きが続いていましたが、今期の配当は前期から66円増の年間233円と大きく増配見込みとなっています。
今期から大幅増配となっている要因は、今年6月に発表した新中期経営計画で目安としている配当性向を引き上げた為です。
ツルハHDの配当方針は経営基盤の強化および将来の事業展開を勘案しながら、株主利益重視の見地から安定した配当を行うことを基本方針としており、具体的な数値として2025年5月期までは配当性向50%~70%を目途に実施としています。
前期までの配当性向は30%付近で推移していましたので、配当性向の引き上げにより大幅増配となっています。
株主優待
ツルハHDには株主優待があり、株数に応じて商品券(株主ギフト券)がもらえますので内容を下記にまとめています。
- 100株以上1000株未満 2,500円
- 1000株以上2000株未満 5,000円
- 2000株以上 10,000円
また、株主ギフト券を返送する事で自社PB商品、北海道グルメカタログギフト、花田養蜂場の純粋蜂蜜と交換する事が可能です。
そして100株以上保有の場合は、ツルハグループ各店のお買い上げ金額が5%引きになる株主優待カードや3年以上の継続保有で1000円の株主ギフト券ももらえます。
株価推移
株価は2020年12月に1万6490円まで上昇しましたが、その後は右肩下がりの状況が続きました。
今年6月に6230円まで値を下げた後は反発し、直近は8000円台半ばまで戻していますが、最近の株価は業績低迷を背景に2年弱で半値近くまで下げています。
株価指標(2022年11月11日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
ツルハ | 3391 | 8700 | 18.7 | 1.60 | 233 | 2.68 | 50.0 |
ここ数年でみると株価は安値圏で推移しており、大幅増配を受けて配当利回りは2%半ばから後半といった水準です。
PER、PBRは市場平均と比較して割高で、配当性向はちょうど50%と目安としている数値の下限になっています。
投資判断
今までの内容からツルハHDの投資判断ですが、最近の業績や株価は低迷が続いていますが、大幅増配を受けて配当利回りは2%後半まで上昇しています。
高配当株としてはもう少し利回りが欲しいところですが、現状の配当性向は目安の下限ですので今後の配当増額にも期待したいところです。
肝心の業績についてはコロナ特需の反動で苦戦が続いていますが、ドラッグストアは業界全体で好調な状況が続いており、ツルハも今後の出店戦略やPB戦略、DX戦略など将来性は期待できそうです。
ここ数年でみると株価は安いところですが最低購入金額は80万円台と高額ですので、NISA枠が拡大されれば、より狙いやすくなる銘柄だと思います。
【6590】芝浦メカトロニクス
2番目の銘柄は芝浦メカトロニクスです。
芝浦メカトロニクスは、半導体製造装置やFPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置などを製造する精密機械メーカーです。
半導体とは金属などの電気を通しやすい導体とゴムなどの電気を通しにくい絶縁体の中間の抵抗率を持つ物質でテレビやパソコンなど様々な商品で使用されていますが、芝浦メカトロニクスはそんな半導体を製造する装置を作っています。
そして半導体製造装置の受注高は全体の65%と半数を超えており、また販売先は全体の40%を占める中国を中心に海外の比率が約65%と日本よりも海外の売上比率の方が高くなっています。
直近決算
芝浦メカトロニクスは11月9日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は34億円と前年同期比で27億円の大幅増益となっています。
業績好調に伴い通期最終利益を58億円へ7億円上方修正し、年間配当は390円に従来予想から40円増額しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 芝浦メカトロニクス |
2019年3月期 | 24 |
2020年3月期 | 19 |
2021年3月期 | 19 |
2022年3月期 | 29 |
2023年3月期(会社予想) | 58 |
2019年からの通期最終利益について、2020年頃はコロナショックで大きく減益となっていますが、前期以降は大きく増益となっています。
前期以降大きく業績が伸びている要因としては、半導体製造装置分野の売上増加と利益率改善により営業利益が大きく伸びた為としています。
そして今期は引き続き部品や部材の供給面における不安定な状況が懸念されるものの、半導体業界においては、今後も引き続きIoT、5G、AIなどの強い需要を受けて堅調な設備投資が期待できるとして大幅増益見込みとしており、実際今回の上方修正後でも第2四半期時点の通期進捗率は約58.6%と今後が期待できる数字になっています。
配当推移
銘柄名 | 芝浦メカトロニクス |
2015年 | 30 |
2016年 | 40 |
2017年 | 40 |
2018年 | 80 |
2019年 | 140 |
2020年 | 110 |
2021年 | 110 |
2022年 | 230 |
2023年(会社予想) | 390 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、好調な業績と連動してここ数年の配当は大幅増配となっています。
芝浦メカトロニクスの配当方針は、業績に裏付けられた配当を維持していくことを基本方針としており、具体的な目安として連結配当性向25%~30%を目途としています。
また、2023年3月期からの連結配当性向は、おおむね30%を目途とする方針です。
株価推移
株価はコロナショックで2050円まで下落しましたが、その後は右肩上がりの状況です。今年8月には1万2290円まで上昇した後に反落し1万円を割る場面もありましたが、直近は1万1000円台を回復しています。
株価指標(2022年11月11日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
芝浦メカトロニクス | 6590 | 11460 | 8.7 | 1.86 | 390 | 3.40 | 29.7 |
ここ数年で見ると株価は高値圏ですが、大幅増配を受けて配当利回りは3%半ばの水準です。業績好調を背景にPERは市場平均と比較して割安で、配当性向は30%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容から芝浦メカトロニクスの投資判断ですが、直近の業績、配当は大きく伸びており、配当利回りも3%半ばと高配当株として気になる銘柄です。
しかし、業績の伸びが急な事や半導体需要は景気に左右される部分が多く、今後の世界経済に景気後退リスクがある事は懸念材料です。
実際に最近の株価は高値から下落する場面がありましたが、それでも最低購入金額は100万円付近と高水準です。
以上の事から芝浦メカトロニクスについては今後の景気や業績動向を見守りつつ、NISA枠の拡大を待ちたいかなというところです。
【8424】芙蓉総合リース
最後の銘柄は芙蓉総合リースです。
芙蓉総合リースは、みずほ系の総合リース会社で情報関連、事務機器のほか不動産リースに強みを持っています。
また、「前例のない場所へ」をテーマにリースの枠組みを超え新たな領域へ果敢にチャレンジしていくとしており、医療福祉事業や再生可能エネルギー事業も手掛けています。
直近決算
芙蓉総合リースは11月8日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は203億円と前年同期比で約23億円の増益でしたが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因として、リース部門が航空機や不動産の伸長で増益基調が継続している事に加え、エネルギー環境やモビリティなどの成長ドライバーに位置付ける事業領域でもバランスの取れた利益成長を実現した為としており、第2四半期としては過去最高益を更新しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 芙蓉総合リース |
2019年3月期 | 255 |
2020年3月期 | 261 |
2021年3月期 | 295 |
2022年3月期 | 338 |
2023年3月期(会社予想) | 360 |
2019年からの最終利益を見ていきますが順調に増益傾向です。
コロナショックでも減益には陥っておらず、最近の増益幅は大きくなっています。
増益が続いている要因として、「エネルギー・環境」や「不動産」などの戦略分野へ経営資源を集中的に投下した事により戦略分野の領域拡大が実現している事に加え、持分法投資利益など営業外収益も拡大した為としています。
また、芙蓉総合リースは2026年までの新中期経営計画で車両領域と物流領域を中心にパートナー連携を軸としたモビリティ領域の拡大やグローバルベースでの再生可能エネルギー事業の拡大を方針として掲げています。
配当推移
銘柄名 | 芙蓉総合リース |
2015年 | 80 |
2016年 | 100 |
2017年 | 130 |
2018年 | 146 |
2019年 | 188 |
2020年 | 205 |
2021年 | 240 |
2022年 | 285 |
2023年(会社予想) | 316 |
2015年からの配当推移を見ていきますが順調に増配が続いており、現在17期連続増配を継続中です。
芙蓉総合リースの配当方針は、業績および経営目標などを勘案し、経営基盤・財務体質の強化をめざして株主資本の充実に努めるとともに、株主の皆様への長期的・安定的な利益還元に努めることを基本方針としており、具体的な数値としては2026年度までに配当性向30%を目指すとしています。
株主優待
芙蓉総合リースには、1単元(100株)以上の株主に対してカタログギフトか図書カードがもらえる株主優待があります。
また、金額は2年未満の継続保有で3000円相当、2年以上の継続保有で5000円相当となっています。
株価推移
株価はコロナショックで4585円まで下落した後は、約1年をかけて8000円を超える水準まで上昇しました。
そこからは7000円台での動きが中心でしたが、直近の株価は再び8000円台に乗せてきています。
株価指標(2022年11月11日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
芙蓉総合リース | 8424 | 8540 | 7.1 | 0.72 | 316 | 3.70 | 26.3 |
最近の株価は上昇していますが、安定して増配している事もあり配当利回りは3%半ばの水準です。
業績好調によりPER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は約26%と余裕を感じます。
投資判断
今までの内容から芙蓉総合リースの投資判断ですが、業績、配当は順調に推移しており株主還元力の高さは他のリース銘柄にも引けをとりません。
そして現在の配当利回りは、3%半ばと高配当株として魅力を感じる水準です。
最低購入金額は80万円台と現行のNISAだと1銘柄で7割近くを占めてしまいますので買いにくいですが、NISA枠が240万円に拡大されると今よりも買いやすくなると思います。
まとめ
今回はNISA枠が拡大したら買いたいと思う高配当株を3銘柄検証しました。
現状の一般NISA枠は120万円ですので、最低購入金額が60万円を超える銘柄は少し買いにくい部分もあります。
その点NISA枠が240万円に拡大されれば、今回紹介した3銘柄の様に購入金額の高い銘柄も投資対象として検討しやすくなります。
NISA制度の改革については今から本格的な議論が始まる為、どんなに早くても2024年からの変更が現実的です。
というか冒頭でもお伝えした様に元々NISA制度は2024年から大きく内容が変わる予定でしたので、今回の改革案をスタートするのならば2024年スタートを逃すと厳しくなる様な気がします。
という事で今後のNISA制度改革の行方については期待を込めて見守りつつ、個人投資家としてはNISA枠が拡大された時の為に、少しでも多くの購入資金を準備しておきたいと考えています。
NISA枠が拡大されたら買いたい高配当株3選については、YouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
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