今年の日本株は強い動きが続いており、高配当株も少し前と比較して大きく値を上げている銘柄も多いですが、なかには株価があまり動いていない銘柄もあります。
高配当株投資は値上がり益を求めるものではなく、中長期にわたり配当を受け取り続ける事が1番の目的ですが、少しでも株価が安い時に購入できた方が良い事に変わりはありませんので、日経平均が強いなか動きが止まっている銘柄は購入チャンスにも思えます。
ただ、全体がこれだけ強い状況で株価が停滞しているという事は何らかの問題を抱えている可能性もありますので、今回は今年の株価があまり動いていない4つの銘柄が高配当株として投資可能か検証していきます。
【2393】日本ケアサプライ
最初の銘柄は日本ケアサプライです。
日本ケアサプライは「社会基盤整備に貢献するプロジェクト」として三菱商事が設立した企業で電動ベッドや車椅子など福祉用具のレンタルや販売を手掛けています。
全国の営業所を拠点とし福祉用具貸与事業者や病院・介護施設などを通じて、福祉用具や生活支援物品、食事サービスなどを提供しており、介護関連の事業者だけでなく健康長寿社会を支える全ての事業者を支援する方針です。
直近決算
日本ケアサプライは5月10日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は15億円と1億円の減益、配当は10円増配の年間70円としています。
今期予測は最終利益が16億円と1億円の増益見込みとしているなか、配当は据え置きの年間70円で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 日本ケアサプライ |
2019年3月期 | 14 |
2020年3月期 | 14 |
2021年3月期 | 17 |
2022年3月期 | 16 |
2023年3月期 | 15 |
2024年3月期(会社予想) | 16 |
2019年からの通期最終利益について、2021年にピークを付けた後は減益傾向となっていますが、16億円前後の水準で安定はしています。
2022年以降減益が続く要因は、レンタルや販売が堅調に推移し売上は伸びていますが、レンタル資産購入による減価償却費や物流費の増加に加え、将来を見据えた人員の増加による人件費増や営業拠点の新設、移転などの費用が増加したためとしています。
今期業績は引き続き堅調な販売が継続する見込みとの事で増益予測にしています。
配当推移
銘柄名 | 日本ケアサプライ |
2015年 | 17 |
2016年 | 25 |
2017年 | 35 |
2018年 | 46 |
2019年 | 46 |
2020年 | 46 |
2021年 | 46 |
2022年 | 60 |
2023年 | 70 |
2024年(会社予想) | 70 |
2015年からの配当推移について、数年前までは46円で据え置きの期間が長かったですが、2022年以降は増配額が大きく増えています。
そして今期は現状据え置きの見込みにしていますが、2015年と比較すると配当は3倍以上の水準となっています。
日本ケアサプライの配当方針は、業績に対応した配当を行う事や業容拡大を図るため設備投資を積極的に行うなど事業基盤を強化する観点から、内部留保を充実させることも併せて勘案したうえで配当を決定する方針で、具体的な目安について2025年3月期までの中期経営計画期間は、利益水準にかかわらず70円の年間配当を維持する事を目標としています。
株価推移
株価はコロナショックで1111円まで売られた後、2021年1月には1900円に迫る水準まで上昇しました。
しかし、その後は反落し今年に入ってからは1600円前後で動きが止まっています。
株価指標(2023年7月7日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
日本ケアサプライ | 2393 | 1627 | 15.8 | 1.57 | 70 | 4.30 | 67.9 |
今年の株価は停滞していますが大幅増配を受けて、配当利回りは4%半ばの水準です。
今期業績は増益見込みですがPER、PBRに割安感はなく、配当性向は68%付近となっています。
投資判断
今までの内容から日本ケアサプライの投資判断ですが、福祉用具のレンタルや販売は今後も需要の高まりが想定され、実際直近の売上も増収が続いています。
ここ数年は先行投資の影響などで減益にはなっていますが、長期的に見た場合は将来性にも期待できそうです。
配当性向は60%後半と高水準ではありますが、今年の株価は停滞が続いていますので、長い目で見れば今の株価はお買い得だったと思える日がくるかもしれません。
【4658】日本空調サービス
2番目の銘柄は日本空調サービスです。
日本空調サービスは建物設備のメンテナンスや維持管理、ソリューション提案などを行うサービス部門を中核に、リニューアル工事を主体とする設備工事部門を併せ持つ、建物設備のトータルサポート企業です。
売上高の約4割が年間契約となっており、病院や製造工場などの特殊な環境を有する施設の割合は約7割と比率が高くなっています。
直近決算
日本空調サービスは5月12日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は19億円と9億円の減益、配当は13.5円減配の年間28円としています。
今期予測は最終利益が20億円と微増益の見込みとしているなか、配当は2円増配の年間30円で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 日本空調サービス |
2020年3月期 | 18 |
2021年3月期 | 19 |
2022年3月期 | 28 |
2023年3月期 | 19 |
2024年3月期(会社予想) | 20 |
2020年からの通期最終利益を見ていきますが、業績が大きく伸びた2022年以外は20億円前後で安定しています。
2022年に業績が大きく伸びた要因は、保有株式の売却益13億円を計上したためで過去最高益になっています。
前期業績は、保有株式売却の反動もあり大きく減益となっていますが売上は増えており、今期は少しですが増益の見込みとしています。
配当推移
銘柄名 | 日本空調サービス |
2015年 | 12.5 |
2016年 | 15 |
2017年 | 22 |
2018年 | 23 |
2019年 | 26 |
2020年 | 28 |
2021年 | 28.5 |
2022年 | 41.5 |
2023年 | 28 |
2024年(会社予想) | 30 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、順調に増配が続いていたなか2022年は業績好調を背景に大きく増配となっていますが、内訳は保有株式売却に絡む特別配当が15円となっています。
そして前期は特別配当の反動で減配となっていますが、今期は2円の増配見込みで年間配当は30円台に乗せる予測です。
日本空調サービスの配当方針は、純資産配当率を意識した株主還元の実施としており、具体的な目安は資本生産性(ROE)を高めた上で配当性向50%を維持としています。
株価推移
株価はコロナショックで530円まで売られる場面がありましたが、その後は700円付近まで急速に値を戻しています。
その後、2021年9月に保有株式売却による業績の上方修正と大幅増配を発表した事で株価は887円まで上昇しましたが、今年に入ってからは700円台で停滞しています。
株価指標(2023年7月7日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
日本空調 | 4658 | 742 | 12.7 | 1.19 | 30 | 4.04 | 51.4 |
今年の株価は700円台で停滞していますが、今期配当は増配見込みですので配当利回りは4%前後となっています。
今期業績は増益見込みですがPER、PBRに割安感はなく、配当性向は51%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容から日本空調サービスの投資判断ですが、保有株式の売却で一時的に利益が伸びた時期はありましたが、売上の約4割は年間契約と業績は基本的に安定傾向です。
業績が安定しているなか、現在の配当性向は50%付近とそこまで余裕がある訳ではありませんので、今後も配当が増えていくかは不透明ですが、現在の配当利回りは4%前後と高水準です。
そして特殊な環境を有する施設が売上の約7割を占めており、維持管理に高度な技術が必要な点や参入障壁が高い点は強みです。
以上の点を踏まえると、今後飛躍的な成長は期待しにくいかもしれませんが、現在の安定的な株価同様に、安定して今の配当水準を受け取り続ける事はできそうな印象です。
【1717】明豊ファシリティワークス
3番目の銘柄は明豊ファシリティワークスです。
明豊ファシリティワークスは、オフィス移転や複数オフィスの統廃合に加え、オフィス・ビル・公共施設・学校・医療施設などの新築・改修・設備更新における施設プロジェクトを発注者側で支援する建築発注者を支援するサービス会社です。
各種施設の新築・移転・改修時において、早期のプロジェクト立上げや工期短縮、早期コストの確定に繋がる提案が可能としており、最終的には建設コスト削減に繋がるとしています。
直近決算
明豊ファシリティワークスは5月12日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は6.5億円と約5000万円の増益、配当は3.5円増配の年間31.5円としています。
今期予測は最終利益を6.7億円と約2000万円の増益見込みとしているなか、配当は0.5円増配の年間32円で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 明豊ファシリティワークス |
2020年3月期 | 6.3 |
2021年3月期 | 6.2 |
2022年3月期 | 6.0 |
2023年3月期 | 6.5 |
2024年3月期(会社予想) | 6.7 |
2020年からの通期最終利益を見ていきますが、6億円台で安定しているなか、2022年にかけてはコロナショックの影響もあり減益が続いていましたが、前期は増益で過去最高益となっています。
前期業績好調の要因はコロナからの経済回復の動きに加え、発注者における課題解決に必要な専門性と対応力が益々高度化する中で、発注者からの期待が高まり需要が増えたためとしています。
今期業績は体制強化や社員の処遇向上に加え、DXの更なる推進に向けた費⽤増や発注者の建設投資が慎重になることも保守的に想定し、前年並みの予測にしているとの事です。
配当推移
銘柄名 | 明豊ファシリティワークス |
2015年 | 8.5 |
2016年 | 10 |
2017年 | 12.5 |
2018年 | 13 |
2019年 | 21 |
2020年 | 21.5 |
2021年 | 26 |
2022年 | 28 |
2023年 | 31.5 |
2024年(会社予想) | 32 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、据え置きの年すらなく増配が続いており、前期までで10期連続増配を継続中です。
特に2019年以降は増配ペースも加速し、2015年と比較すると今期の配当見込みは4倍近い水準へ増えています。
明豊ファシリティワークスの配当方針は、当社事業の発展をご⽀援くださる株主の皆様に対する適切な還元を⽬指しており、具体的な目安として下限配当を年間30円としてうえで、配当性向55%程度としています。
株価推移
株価はコロナショックで410円まで値を下げた後は、約1年をかけて1000円付近まで上昇しました。
しかし、その後は反落し今年に入ってからは700円台を中心に停滞しています。
株価指標(2023年7月7日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
明星 | 1717 | 777 | 13.4 | 1.94 | 32 | 4.12 | 55.1 |
今年の株価は停滞が続いていますが、配当は増配が続いている事で配当利回りは4%前半となっています。
業績も安定していますがPERにそれほど割安感はなく、配当性向は55%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容から明豊ファシリティワークスの投資判断ですが、発注者支援事業というあまり馴染みの無い事業が主力で、業績の規模感はそこまで大きくないですが、少しずつ増益傾向ではあります。
配当は10年以上増配が続いているなか現在の水準を下限としていますが、現在の配当性向は55%付近ですので、そこまで余裕がある訳ではありません。
以上の点を踏まえると、発注者支援事業の将来性に期待が持てると思えるのならば、今年の停滞している株価はチャンスの様な気がします。
【5020】ENEOS
最後の銘柄はENEOSです。
ENEOSは日本を代表するエネルギー・資源・素材企業グループで、石油や天然ガス開発、金属事業などを手掛けています。
そしてエネルギー事業では、原油の精製、販売を手掛けているため、業績は原油価格に大きく影響を受けます。
直近決算
ENEOSは5月11日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は1437億円と3934億円の減益、配当は据え置きの年間22円としています。
今期業績は最終利益が1800億円と363億円の増益見込みですが、配当は据え置きの年間22円で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | ENEOS |
2019年3月期 | 3223 |
2020年3月期 | -1879 |
2021年3月期 | 1139 |
2022年3月期 | 5371 |
2023年3月期 | 1400 |
2024年3月期(会社予想) | 1800 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、増減が激しくなっています。
2020年はコロナショックによるガソリン需要の減少に加え原油価格の下落で大きな赤字に転落していますが、2022年は資源価格の上昇などにより石油、天然ガスや金属セグメントが大幅増益となり過去最高益の水準へ大きく回復しています。
前期は原油価格の在庫影響益の反転や石化市況の悪化に加え、電力事業で減損のため大きく減益となっています。
そして今期業績は、製油所稼働の回復に伴う輸出数量増加や生産効率向上に加え、原油価格の前期マイナスタイムラグ解消などの影響で増益見込みとしています。
配当推移
銘柄名 | ENEOS |
2015年 | 16 |
2016年 | 16 |
2017年 | 16 |
2018年 | 19 |
2019年 | 21 |
2020年 | 22 |
2021年 | 22 |
2022年 | 22 |
2023年 | 22 |
2024年(会社予想) | 22 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、2020年からは22円で変わっていないです。
先ほど触れた様に最近の業績は大きく上下しており、2020年に至っては赤字に転落していますが、業績とは関係なく配当は安定しています。
ENEOSの配当方針は、安定的な配当継続に配慮し2025年度までの中期経営計画中は年間22円を下限としたうえ、3か年平均で在庫影響除き当期利益の50%以上を配当と自社株買いで還元するとしています。
株価推移
株価はコロナショックで320円まで値を下げましたが、約1年をかけて500円付近まで上昇しています。
その後も原油価格に連動して株価は上下しましたが、今年は低迷する原油価格と連動して400円台で停滞する期間が長くなっています。
株価指標(2023年7月7日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
ENEOS | 5020 | 496.9 | 8.3 | 0.52 | 22 | 4.43 | 36.9 |
今年の株価は動きが止まっていますが、配当は22円で安定しているため配当利回りは4%半ばと高水準です。
今期は増益見込みとしているなかPER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は37%付近と余裕を感じます。
投資判断
今までの内容からENEOSの投資判断について、業績は商品市況の影響で大きく上下していますが、配当や株価は安定しています。
ENEOSは脱炭素社会への流れなどを受け、石油に依存しない企業体質への変革を目指していますが、しばらくは今までの様に原油価格に影響を受ける事が想定されます。
従って、今後も業績は大きく乱高下しそうですが、配当は現在の水準が下限と示されていますので、停滞している今の株価はお買い得にも思えます。
まとめ
今回は堅調な相場が続くなか、今年の株価が停滞している4つの高配当株を検証しました。
4銘柄とも今期業績は増益見込みにしているなか、配当も据え置きか増配の見込みでしたので、今年の日経平均の強さを考えれば、もう少し株価は上がっていても良さそうな印象です。
それでも4銘柄の株価が上がっていない要因は、将来性への不安なのか需給面の問題なのか定かではないです。
しかし、現在株価が上昇している銘柄も過去を振り返れば株価が停滞している時期はありましたので、今回の4銘柄もあの時買っておけばと、いつか思う日が来るかもしれません。
今年の株価が停滞している4銘柄は、YouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
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