今回は今週2022年3月期の第3四半期決算が発表されたメガバンクの三菱UFJと三井住友FGの決算内容を中心に2銘柄の現状と今後を比較検証していきます。
銀行業界の現状
それではまず銀行業界の現状ですが、コロナショックで2020年以降メガバンクも大きく業績を落としましたが、今期は前期からの反動やコロナショックでの倒産に備えていた貸倒引当金を想定程使用しなくて良かった事もあり、業績は急回復しています。
株価はアメリカの金融緩和策終了に向けて長期金利が上昇している事もあり、年明け以降特に強い動きが続いています。
米国10年債利回り推移
こちらは米国10年債の利回りを示したグラフです。
銀行の場合、金利の上下によって貸し出し金利や運用商品の金利収入が増減しますので、金利の値動きによって株価は大きく影響を受けます。
アメリカでは金融緩和策終了により、今後利上げの動きが加速していきそうですので、銀行株の値動きを見る場合は、金利の値動きにも注意を払う必要があります。
三菱UFJ直近決算等
それではここからはメガバンク2銘柄の直近決算をみていきます。
まずは三菱UFJの直近決算ですが、三菱UFJは2月2日に2022年3月期第3四半期決算を発表しています。
第3四半期時点の最終利益は、1兆703億円と前年同期比4633億円の大幅増益となっていますが、通期業績予測、配当予測に変更はないです。
業績好調の要因は、コロナショックによる倒産に備えていた与信関連費用の大幅な改善や株式関係利益の増加としています。
配当推移
銘柄名 | 三菱UFJ |
2015年 | 18 |
2016年 | 18 |
2017年 | 18 |
2018年 | 19 |
2019年 | 22 |
2020年 | 25 |
2021年 | 25 |
2022年(会社予想) | 28 |
三菱UFJの2015年からの配当推移をまとめていますが、2018年頃からは順調に増配傾向です。
コロナショックで業績が落ち込んだ2021年の配当は据え置きでしたが、今期は現状3円増配の年間28円予定です。
三菱UFJの配当方針は、資本の健全性や成長のための投資との最適バランスを検討した上で、 配当を基本として株主還元の充実に努める方針で、利益成長を通じた1株当たり配当金の安定的・持続的な増加を基本方針とし2023年度までに配当性向40%への累進的な引き上げを目指すとしています。
株価推移
株価はコロナショックで400円を割れる水準まで売られましたが、その後は値を戻しています。今年に入ってからはアメリカの長期金利上昇もあり、株価は700円を超える水準まで買われています。
三井住友FG直近決算等
続いては三井住友FGの直近決算ですが、三井住友も2月2日に第3四半期決算を発表しています。
第3四半期時点の最終利益は6247億円と前年同期比1908億円の大幅増益ですが、こちらも通期業績予測、配当予測に変更はないです。
業績好調の要因は、三井住友も与信関連費用の大幅な改善や株式関係利益の増加としています。
配当推移
銘柄名 | 三井住友FG |
2015年 | 140 |
2016年 | 150 |
2017年 | 150 |
2018年 | 170 |
2019年 | 180 |
2020年 | 190 |
2021年 | 190 |
2022年(会社予想) | 210 |
三井住友の2015年からの配当推移をまとめていますが、順調に増配傾向です。
三井住友の配当方針は、株主還元は配当を基本に機動的な自己株取得も実施していくとしており、配当は累進的とし配当性向は2022年度までに40%を目指すとしています。
また三井住友は減配せず配当水準を維持または増配し続ける累進配当を採用しています。
株価推移
株価はコロナショックで2500円付近まで売られた後、順調に値を戻しています。今年に入ってからは三菱UFJ同様、長期金利上昇の影響で4300円を超える水準まで買われ、直近では4200円前後での動きになっています。
三菱UFJ、三井住友FG業績推移等比較検証
ここからは、三菱UFJと三井住友FGの業績推移等を比較検証していきます。
業績推移比較
第3四半期時点最終利益(億円)
銘柄名 | 三菱UFJ | 三井住友FG |
2020年3月期第3四半期 | 5874 | 6108 |
2021年3月期第3四半期 | 6070 | 4339 |
2022年3月期第3四半期 | 10703 | 6247 |
2020年3月期通期進捗率(%) | 111.2 | 86.7 |
2021年3月期通期進捗率(%) | 78.1 | 84.6 |
2022年3月期通期進捗率(%) | 101.9 | 93.2 |
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 三菱UFJ | 三井住友FG |
2018年3月期 | 9896 | 7343 |
2019年3月期 | 8726 | 7266 |
2020年3月期 | 5281 | 7038 |
2021年3月期 | 7770 | 5128 |
2022年3月期(会社予想) | 10500 | 6700 |
三菱UFJと三井住友の2018年からの最終利益推移と2020年からの第3四半期時点の最終利益を比較検証していきます。
2銘柄ともコロナショックの影響を受けた2020年以降は大きく業績を落とす場面もありましたが、今期は三菱UFJでコロナ前の水準を超える予測、三井住友はコロナ前の水準へ迫る予測になっています。
また銀行は第3四半期時点の通期進捗率が例年高めではありますが、今期は三菱UFJで100%を超える約101%、三井住友で約93%と非常に高い数値になっています。
三菱UFJに至っては第3四半期時点で通期見込みをクリアしていますが、通期業績予測を上方修正しなかった事はご愛嬌といったところでしょうか。
いずれにしても5月予定の本決算発表で更なる上方修正が期待できる数字になっています。
配当推移比較
銘柄名 | 三菱UFJ | 三井住友FG |
2015年 | 18 | 140 |
2016年 | 18 | 150 |
2017年 | 18 | 150 |
2018年 | 19 | 170 |
2019年 | 22 | 180 |
2020年 | 25 | 190 |
2021年 | 25 | 190 |
2022年(会社予想) | 28 | 210 |
三菱UFJと三井住友の2015年からの配当推移を比較検証していきますが、2銘柄とも順調に増配傾向です。コロナショックで業績が大きく落ち込んだ2021年など配当が据え置きになっている年もありますが、基本的には増配傾向で2銘柄とも株主還元姿勢の強さを感じます。
指標比較(2022年2月4日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
三菱UFJ | 8306 | 725.7 | 8.8 | 0.52 | 28 | 3.86 | 33.7 |
三井住友FG | 8316 | 4216 | 8.6 | 0.47 | 210 | 4.98 | 43.0 |
2銘柄の株価等指標データを比較していきますが、両銘柄とも最近株価は急上昇していますが、配当利回りは三菱UFJで3%後半、三井住友は5%前後と高水準です。
ただ現時点の配当性向を比較すると三菱UFJの配当性向は30%前半なのに対し、三井住友は目標にしている40%を上回っている点が少し気になるところです。
三菱UFJと三井住友FGの今後
三菱UFJ、三井住友FGの今後ですが、直近では長期金利は上昇傾向ですが、以前と比較すると長期金利は低迷している事に変わりはなく、また国内市場は少子高齢化や人口減少の問題もあります。
そこで、各銀行は海外への市場開拓を進めていますので、ここからは三菱UFJと三井住友FGの海外展開についての方針をまとめていきます。
三菱UFJの海外展開
三菱UFJは成長戦略の1つにアジアビジネスを掲げており、成長するASEANを面で捉えた戦略・施策を展開としています。
具体的にはMUFG協働による地場の顧客基盤拡大やプロ集団による支援強化で地場顧客へ知見やノウハウのアドバイスを目的とし、アジアの商業銀行への出資を行っています。
また米国市場の重要性は不変としており、銀信証連携・ モルガンスタンレー協働強化等で法人取引に集中するとしています。
三井住友FGの海外展開
三井住友FGの海外展開ですが、第2、第3のSMBCグループを創るとしてマルチフランチャイズ戦略に基づき、成長ポテンシャルの高いインドネシア、インド、ベトナム、フィリピンへの出資を行い各国の成長を取り込むプラットフォームの構築を目指すとしています。
また、質を伴った成長を目指すとして当面は既存出資先のPMIや提携強化に注力しつつ、投資基準を遵守して質の高い成長機会を目指す方針です。
PMIとは企業がM&Aを行う場合に統合の問題点などを事前に検証し、M&Aを行った後に企業や事業の統合を最大限に効率化するために行うものです。
三井住友はアジアを中心にM&Aや提携強化で企業規模の拡大を目指すようです。
三菱UFJと三井住友FGの投資判断
以上の内容を基に三菱UFJと三井住友FGの投資判断を検証していきますが、2銘柄とも日本を代表する企業であり、業績や配当方針、今後の海外展開なども期待が持てる内容だと思います。
銀行の場合は地方銀行でも配当利回りが高く、海外へ進出している銘柄もありますが、企業規模や今後の展開を考えた場合、銀行株に投資するのならばメガバンク2社への投資が1番良いような気はします。
しかし、メガバンク2社の優劣は難しいところです。
三菱UFJは日本で1番の銀行であり、企業規模や業績も素晴らしいです。
三井住友FGは、三菱UFJに次ぐ2番手の存在ですが、配当利回りは三菱UFJよりも1%程高い点は高配当株銘柄として大きなメリットです。
しかし、三井住友は最低購入単価が現状40万円を超えるのに対し、三菱UFJは7万円くらいから購入可能です。
株価は余程の個別材料が無い限り同じように動きますので、今までの点を踏まえ自分にあった方の銘柄を購入するか、資金に余裕があるのならば2銘柄の購入も十分検討出来ると思います。
実際私も現在三井住友を300株、三菱UFJを700株保有していますのでタイミングをみて更なる買い増しを検討中です。
ただ直近の株価ということになると少しハイペースで上がり過ぎの様な気はします。冒頭で触れました様に今後は長期金利の上昇により銀行株の先行きにも期待が持てそうですが、そんなに単純にいかないのが株式相場です。
特にメガバンクは投資家からの注目度も高い銘柄で値動きも激しいですので、今後調整局面が来た時に狙える位の心構えが現状良いような気はします。
三菱UFJと三井住友FGの比較検証動画はYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧下さい
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