連日報道されている通り現在の為替相場は約30年ぶりの円安水準となっています。
円安になっている要因や今後の為替展望については色々と言われていますが、投資家にとって1番大切な事は今後の展望を自分なりに予想しつつ、現在最適だと思う銘柄に投資する事です。
そこで今回は、今後考えられる為替相場の3つのパターンとそれぞれの場合におすすめだと思う高配当株を3銘柄紹介しながら、最後の部分では個人的な今後の為替展望までまとめていきたいと思いますので、是非最後までご覧ください。
円安とは
それでは本題ですが、まずは最近の為替状況について触れておきます。
現在円安が進んでいる大きな要因は様々なところで報じられている様に日米の金利差によるものです。
アメリカはインフレ対策を目的に急激な利上げを進めていますが、日本は景気後退を懸念して利上げを行っていませんので両国の金利差は拡大が進み、必然的に金利の低い円が売られ金利の高いドルが買われる展開が続いています。
この様な流れは今年春頃から顕著になっていますが、最近は普通のニュースなどでも連日報道されていますので、先日我が家の小学生の子供からも「円安は良い事なのか」と質問を受けました。
そこで小学生にも分かる様に円安を説明するにはどうすれば良いか考え、我ながら良い説明方法を思いつきましたので、少し話がずれますが紹介させて頂きます。
小学生でもわかる円安の説明
私が説明した方法は、円安というのは季節と一緒で「夏が好きな人もいれば冬が好きな人もいる」というものでした。
アイスクリーム屋やプール関係者は夏が好きだけど、おでん屋やスケート場は冬が好きという様に、どちらが良い悪いという事はなく立場によって変わるものだけど、季節が急に変わると困る様に為替も急に変化すると困るんだ、という風に話をすると理解したかは不明ですが、無言で去っていきました。
円安のメリット、デメリット
という事で少し話がずれましたが、現在の円安もメリットを受けている企業もあればデメリットを受けている企業もあります。
一般的に円安のメリットと言えば、海外へ商品を輸出している企業が挙げられ、輸出企業は海外の客先から購入代金をドルで受け取りますので、為替が円安になるほど利益は増えます。
逆に海外から商品を仕入れる場合は円をドルに変えて支払いますので、円安になるほどマイナスになります。
という事でここからは、今後考えられる為替相場のパターンごとに現在おすすめだと思う銘柄を分析していきます。
今後考えられる為替相場3つのパターン
まず今後考えられる為替相場ですが、1つ目は今が円安のピークで今後は円高に進んでいくパターンです。この場合、現在は円安によって業績、株価がマイナスの影響を受けている企業がおすすめです。
2つ目は今が円安のピークですが、しばらくは現在の円安水準が続くパターンです。この場合、最近は円安によって業績、株価がプラスに推移していますが、ここ数年でみると業績や株価が戻りきれていない銘柄がおすすめです。
3つ目は今後も円安が進んでいくパターンです。この場合は、現在の円安で業績、株価が好調に推移している銘柄がおすすめとなります。
それでは、この3パターンごとに適している銘柄を個別に検証していきます。
円安は今がピークで今後円高が進む場合
最初は今が円安のピークで今後は円高に進んでいく場合におすすめの銘柄です。
この場合は現在円安によって業績や株価にマイナスの影響を受けている銘柄になりますので、原料や商品を海外から輸入している銘柄が該当します。
もちろん該当する銘柄は複数ありますが、今回は直近の業績や配当利回りなどを考慮して飼料メーカーのフィード・ワンを選んでいます。
【2060】フィード・ワン
フィード・ワンは畜産や水産用の配合飼料を製造する飼料メーカーで主要株主は三井物産です。
国内のみに限らずベトナムやインドでも事業を展開しており、グローバルな飼料メーカーを目指す方針です。
そして直近の業績は、飼料の主原料であるとうもろこしの価格高騰や円安の影響を受けて落ち込んでいます。
直近決算
フィード・ワンは8月9日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は-9億円と赤字に転落していますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
第1四半期が赤字に転落した要因は、畜産飼料などの平均販売価格が前年同期を大幅に上回ったことで売上は増収ですが、主原料であるとうもろこしなどの原料価格がロシアのウクライナ侵攻や円安の影響で上昇した為としています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | フィード・ワン |
2019年3月期 | 46 |
2020年3月期 | 38 |
2021年3月期 | 44 |
2022年3月期 | 36 |
2023年3月期(会社予想) | 25 |
通期最終利益を見ていきますが、2019年に過去最高益を記録したあと2021年は大きく増益となっていますが、その後は前期、今期と減益傾向が続いています。
今期減益見込みの要因については、ロシアウクライナ情勢による穀物などの供給不安と急激な円安進行から多くの原料の価格が今年に入り歴史的な高騰を続けていることに加え、燃料の高騰、物流業界の人手不足など先行き不透明感が今後も続くことが想定される為との事です。
配当推移
銘柄名 | フィード・ワン |
2015年 | 15 |
2016年 | 20 |
2017年 | 22.5 |
2018年 | 22.5 |
2019年 | 22.5 |
2020年 | 25 |
2021年 | 25 |
2022年 | 25 |
2023年(会社予想) | 25 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、2020年以降は年間25円で横ばいです。
また、フィード・ワンは2020年に株式を5株から1株へ併合していますので、2020年より前の配当額は株式併合後の調整額になります。
フィード・ワンの配当方針は、株主への利益還元として配当を重視しており、安定した配当を基本とし、企業価値向上に向けた基盤強化の為の「設備投資」「研究開発」「人材育成」に積極的な投資を行いながら、連結配当性向25%以上を目標としています。
株価推移
株価は2017年10月に1765円の高値を付けた後は、右肩下がりの状況です。
今年に入ってからは600円台での動きが中心となっており、直近は600円台後半で推移しています。
株価指標(2022年11月4日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
フィード・ワン | 2060 | 670 | 10.2 | 0.59 | 25 | 3.73 | 38.2 |
配当は横ばいが続いていますが、株価は安値圏で停滞している事もあり配当利回りは3%後半の水準です。
今期業績は減益見込みですがPER、PBRは市場平均を下回っており、配当性向は38%付近と目安としている25%以上を上回っています。
投資判断
今までの内容からフィード・ワンの投資判断ですが、最近の業績は原材料費高騰や円安の影響を受けて低迷しており、株価もここ数年で大きく下落しています。
今後円高が進んでいくとすれば問題の1つは解決しますが、原材料の高騰についてはロシアウクライナ情勢の懸念もあり不透明です。
ただ、長らく株価は下落が続いている事で今の業績でも指標面に割高感はなく、配当性向は40%以下とそこまで無理をしている水準ではありません。
以上の事を踏まえると、円安は今がピークで今後円高が進むと予想するのならば、中長期の高配当銘柄としては今が購入チャンスの様な気もします。
今が円安のピークですが、しばらくは今の水準が続く場合
2つ目のパターンは今が円安のピークですが、しばらくは現在の円安水準が続く場合におすすめの銘柄ですので、現在円安のメリットは受けていますが数年単位でみるとまだまだ業績、株価が戻りきれていない銘柄が該当します。
という事で2番目の銘柄はJTを選んでいます。
【2914】JT
JTのメイン事業は時代に逆行するたばこ事業ですので近年の業績は低迷し、株価も下落が続いていたなか、2021年2月発表の本決算で大規模なリストラと共に上場後初の減配を発表しました。
その後の業績は海外たばこ事業の好調に加え円安のプラス要因もあり回復傾向ですが、ロシアやウクライナにも工場がある事でロシアウクライナ情勢の影響を大きく受けており、今後の状況は不透明です。
直近決算
JTは12月決算の為、10月31日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は4038億円と前年同期比で650億円の増益です。
業績好調に伴い通期最終利益予測を4450億円へ830億円上方修正しており、年間配当は188円へ従来予想から38円の増額が発表されています。
業績好調の要因は、引き続きたばこ事業の力強いプライシング効果(価格設定)が牽引した事に加え円安の影響も寄与したとの事です。
燃焼性たばこの販売本数自体は前期比マイナスでしたので、やはり値上げと何より円安の追い風が大きかった模様です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | JT |
2019年12月期 | 3481 |
2020年12月期 | 3102 |
2021年12月期 | 3384 |
2022年12月期(会社予想) | 4450 |
2019年からの通期最終利益をみていきますが、最終利益は2020年を底に回復傾向です。
直近の業績が回復している理由は海外たばこ事業の好調と円安の追い風が大きな要因で、先程もお伝えした様に先日の第3四半期決算で通期見込みを上方修正した為、今期は前期比で1000億円以上の大幅増益となっています。
そして気になるロシア市場の対応については、ロシアウクライナ情勢が長期化、複雑化する中、国内外におけるあらゆる制裁措置を順守した上で事業運営を継続としています。
しかし、今期通期業績においてグループ全体の売上収益及び調整後営業利益にロシア市場が占める割合はそれぞれ約11%、約21%と大きな割合を占めていますので、今後の懸念材料である事は変わっていないです。
配当推移
年 | 配当推移 |
2015年 | 118 |
2016年 | 130 |
2017年 | 140 |
2018年 | 150 |
2019年 | 154 |
2020年 | 154 |
2021年 | 140 |
2022年(会社予想) | 188 |
配当については、2019年までは順調に増配傾向でしたが2020年には配当性向が90%付近まで上昇し、2021年には上場後初の減配を発表しています。
しかし、2021年の途中から業績は海外たばこ事業の好調で回復基調となっており、2021年の配当額も減配ではありますが、当初の発表よりは増額されています。
そして先ほど触れた様に今期の配当見込みは通期最終利益の上方修正にあわせて年間188円へ増額されています。
JTの配当方針は強固な財務基盤を維持しつつ、中長期の利益成長を実現することにより株主還元の向上を目指すとし、具体的な数値としては配当性向75%を目安にしています。
JTが配当性向の目安を75%にしたのは2021年の減配発表時からですが、今回の配当増額も目安にしている配当性向75%に合わせた金額となっています。
とういう事で好調な時にあまり悲観的な事は考えたくないですが、今後円高に振れるなどして業績が落ち込んだ時は、容赦なく減配になる可能性は高いです。
株価推移
株価は2016年2月には4850円の高値を付けていますが、そこからは右肩下がりの状況でした。今年に入ってからは、ロシアのウクライナ侵攻を受けて3月上旬には2000円まで売られましたが、その後は円安が更に進んだ影響もあり反発しています。
そして今回の決算を受けて株価は急上昇し2800円台を回復していますが、2016年の高値からみるとまだ半値近い水準です。
株価指標(2022年11月4日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
JT | 2914 | 2795 | 11.1 | 1.31 | 188 | 6.73 | 74.9 |
決算を受けて直近の株価は上昇しましたが、配当増額により配当利回りは6%後半と高水準です。業績の上方修正によりPERは市場平均と比べて割安で、配当性向は75%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの点を踏まえJTの投資判断ですが、最近の業績は海外たばこ事業の好調に円安の追い風が加わり好調な状態が続いています。
円安は今の水準がピークですが暫くは現在の水準が続くとした場合は、2015年の過去最高益(4857億円)の更新も期待できます。
しかし、途中で触れた様に今後円高に振れるなどで減益となった時の減配リスクやロシアウクライナ情勢の今後、国内の喫煙者人口減少などの懸念点もありますので、個人的にJTは200株保有していますが、現状買い増しは考えていないです。
今後も更に円安が続いていく場合
3番目は今後も更に円安が進んでいくパターンですので、この場合は現在円安のメリットを受けて業績や株価が好調な銘柄が該当します。日本企業は海外進出を進めている銘柄も多いので該当する企業も多いですが、今回はホンダを選んでいます。
【7267】ホンダ
ホンダは、自動車の売上は世界7位ですが、オートバイの販売台数、売上高は世界首位で北米やアジアなど世界各国に販売しています。
現在の自動車業界はガソリン車の廃止や自動運転化などの流れを受けて急速に変化しており、ホンダも2030年に国内で販売する全ての自動車を電気自動車やハイブリット車、燃料電池車にする方針を掲げているほか、2021年に日本で初めてシステムが運転を行うレベル3自動運転システムを搭載した車を販売するなど開発に力を入れています。
直近決算
ホンダは8月10日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は1492億円と前年同期比733億円の減益ですが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、半導体の供給不⾜や上海ロックダウンの影響により四輪車の販売台数減少や原材料価格⾼騰の影響などはありましたが、インセンティブの削減や円安影響などで営業利益は前年同期比約8.6%程度の減益でした。
しかし、純利益は中国での持分法による投資利益の減少などで前年同期比約33%の大幅減益となっています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | ホンダ |
2019年3月期 | 6103 |
2020年3月期 | 4557 |
2021年3月期 | 6574 |
2022年3月期 | 7070 |
2023年3月期(会社予想) | 7100 |
2019年からの最終利益を見ていきますが、コロナショックで大きく減益となった2020年以外は順調に推移しています。
今後の見通しについては、半導体の供給不⾜やインフレの影響など先⾏きは依然不透明としていますが、円安による増益効果とインフレにより想定されるコストアップを反映し、第1四半期決算で通期売上高と営業利益の見込みは上方修正しています。
直近の業績は円安の追い風もあり好調な状況が続いていますが、ホンダは現在為替の想定レートを130円としていますので、今後も円安が進んでいくとすれば更なる上方修正も期待できそうです。
配当推移
銘柄名 | ホンダ |
2015年 | 88 |
2016年 | 88 |
2017年 | 92 |
2018年 | 100 |
2019年 | 111 |
2020年 | 112 |
2021年 | 110 |
2022年 | 120 |
2023年(会社予想) | 120 |
配当についてもコロナショックの影響を受けた2021年は減配になっていますが、概ね順調に増配傾向です。
増配幅は年によって差がありますが前期は10円と大きくなっており、今期は現状据え置きの見込みとしています。
ホンダの配当方針は、連結配当性向30%を目安に安定的・継続的に行うよう努めるとの事です。
株価推移
株価はコロナショック時に2120円まで売られましたが、その後は上下を繰り返しながら3000円を超える水準まで上昇しています。しかし、そこからは3000円台での動きが続き直近は3400円付近で推移しています。
株価指標(2022年11月4日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
ホンダ | 7267 | 3385 | 8.1 | 0.51 | 120 | 3.55 | 28.7 |
直近の株価は3000円台で停滞しており、配当は現状据え置き見込みですが、配当利回りは3%半ばの水準です。
業績好調を背景にPER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は29%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容からホンダの投資判断ですが、直近の業績や配当は円安の追い風もあり好調な状況です。
順調な業績と共に直近の株価もコロナ以降の高値圏で推移していますが、今後も更に円安が進んでいく場合は、業績、株価ともに更に伸びていく事が予想されます。
以上の事を踏まえるとホンダについては、今後更なる円安が進むと考えた場合は今が買い時ですし、今後円高になると考える場合は、もう少しチャンスを待ちたいかなというところです。
今後の為替相場について
最後に今後の為替相場についてですが、個人的には今が円安のピークで今後は円高に振れていく可能性が1番高いと思っています。
理由としては、現在円安の大きな要因である日米の金利差について、アメリカの利上げもかなりのハイペースで進んでいますので、そろそろ打ち止めになりそうな為です。
また、日本政府も約30年ぶりに為替介入を行っている点や日銀総裁の任期が来年4月に迫っており、交代のタイミングで現在の金融緩和策の方針が変更される可能性も考えられる事も今後の為替が円高になりそうだと考える要因です。
まとめ
今回は円安の時に購入したい高配当株を今後考えられる為替展望ごとに3銘柄検証しました。
もちろん今後の為替相場は誰にも分かりませんので、自分なりに予想をたてながら銘柄を選定する事が大切かと思いますが、株式投資で重要な事はどの様な展開になっても慌てずに対応できる様に準備を進めておく事です。
という事で個人的には今後円高に振れていくと予想していますが、予想が外れても良い様に様々なパターンを想定して今後も購入候補銘柄を選定していきたいと考えています。
円安の時に買いたい高配当株3選についてはYouTubeで動画版を投稿していますのであわせてご覧ください。
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