2022年以降の物価はコロナからの経済回復やロシアウクライナ情勢の影響などもありインフレが続いている事で、アメリカを中心に世界的な金利引き上げの動きが続いています。そんななか日本もインフレが進んではいますが、金利の引き上げは景気後退のリスクもあるため日銀はまだ利上げを行っていません。
しかし、日銀は去年年末に長期金利の上限幅を引き上げるなど従来の金融緩和策を修正する動きを見せつつあるなか、先週には日銀の総裁も交代しました。
日銀総裁の交代により日本でもすぐに金利引き上げの動きになるかは分かりませんが、今後日本の景気が上向いてく過程のどこかで利上げが行われる可能性は高いため、今回は金利上昇時に狙いたい高配当株を4銘柄検証していきます。
金利上昇がメリットになる銘柄
まずは金利上昇がメリットになる銘柄をまとめていきますが、1番メリットを受ける業種は銀行業界です。銀行は法人や個人などへの貸出金利上昇により利ザヤ拡大が見込める事や国債などで資金を運用しているため、金利上昇により運用収益の改善が期待できます。
また、保険会社も預かり資産を債権などで運用していますので、銀行同様に金利上昇はメリットとされています。
金利上昇がデメリットになる銘柄
続いて金利上昇がデメリットになる銘柄についてもまとめていきますが、先程とは逆に銀行などから資金をたくさん借りている企業は支払い利息の増加がデメリットになります。また、住宅ローン金利が上昇する事で住宅市場が低迷する懸念もありますので、不動産銘柄や住宅関連銘柄は金利上昇がデメリットとされています。
金利上昇時に買いたい銘柄
ここまでは金利上昇がメリットになる銘柄とデメリットになる銘柄をまとめてきましたが、今回のテーマは金利上昇時に買いたい銘柄です。普通に考えると金利上昇がメリットになる銘柄を買えば良いと思うのですが、株式市場はそんなに単純ではないのでやっかいです。
何故なら株式市場は数か月先の景気を先取りして動く先行指数とされており、今後の金利上昇による影響についてもある程度織り込んでいる可能性があります。
実際最近の株価は銀行株を中心に金融株は強い動きが続いており、不動産や住宅関連の銘柄は弱い動きとなっているケースが多いです。従って実際に利上げがスタートした時は既に織り込み済みとされ、金利上昇にメリットのある銘柄の株価が素直に上昇するとも限りませんし、逆に金利上昇がデメリットとされている銘柄でも実際に利上げがスタートすると悪材料出尽くしで株価は下げない可能性もあります。
以上の様に株式市場は株価がどの様に反応しても織り込み済みや材料出尽くしなどの表現で何とでも説明はつきます。現在の株価が今後の金利上昇をどの程度織り込んでいるのかは分かりませんが、株式投資を行う場合は株価がどの様に反応しても良い様に準備をしておく事が大切です。
という事でここからは、金利上昇がメリットになる銘柄とデメリットになる銘柄を2銘柄ずつ検証していきます。
金利上昇メリット銘柄
最初は金利上昇によりメリットを受ける2銘柄を検証していきますが、先程も触れた様に銀行や保険銘柄となりますので、金利上昇によるメリットを織り込み株価がどの様に反応しているかを含め見ていきます。
【8630】SOMPOホールディングス
金利上昇メリット最初の銘柄は保険株のSOMPOホールディングスです。
SOMPOホールディングスは、損保ジャパンやひまわり生命保険を傘下に持つ保険持株会社で東京海上HD、MS&ADと並ぶ三大メガ損保です。
国内損保事業や海外保険事業、国内生保事業、介護・シニア事業というコア事業に加え、新たにデジタルなどの領域においても事業戦略を展開しています。
直近決算
SOMPOホールディングスは2月14日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は376億円と前年同期比で1461億円の減益ですが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、損保ジャパンにおいて台風14号などによる国内自然災害の影響やコロナに起因する発生保険金影響に加え、2022年にあった有価証券売却益の剥落などのためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | SOMPO |
2019年3月期 | 1466 |
2020年3月期 | 1225 |
2021年3月期 | 1424 |
2022年3月期 | 2248 |
2023年3月期(会社予想) | 800 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが増減が激しくなっています。コロナの影響があった2020年は減益となっていますが、2022年は資産運用の粗利益増加や海外保険コマーシャルの大幅レートアップなどの影響で過去最高益の水準へ業績を大きく伸ばしています。そして前期は国内の自然災害やコロナなどによる一時的な要因により第2四半期で最終利益の下方修正を発表していますが、第3四半期時点の通期進捗率は47%付近と心配な水準になっています。
配当推移
銘柄名 | SOMPO |
2015年 | 70 |
2016年 | 80 |
2017年 | 90 |
2018年 | 110 |
2019年 | 130 |
2020年 | 150 |
2021年 | 170 |
2022年 | 210 |
2023年(会社予想) | 260 |
2015年からの配当推移を見ていきますが順調に増配が続いているなか、特に最近は好調な業績を背景に増配幅も大きくなっており、前期も業績は大きく減益ですが増配の見込みとなっています。
SOMPOホールディングスの配当方針は利益成長に合わせた増配を基本方針とし、株主還元に占める配当の割合を高めていくとしており、具体的な数値としては修正連結利益の50%を基礎的な還元とし、業績動向や市場環境、資本の状況などを踏まえて追加還元を行うとしています。
株価推移
株価はコロナショックで2405円まで下げた後は順調に上昇しており、去年11月には6370円まで上昇しています。そこからは業績低迷などを要因に売られており、直近は5300円前後で推移しています。
株価指標(2023年4月14日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
SOMPO | 8630 | 5372 | 22.4 | 1.02 | 260 | 4.84 | 108.2 |
最近の株価は高値から下落していますが、大幅増配の影響で配当利回りは5%前後と高水準です。
業績の下方修正もありPERは市場平均よりも割高で、配当性向は108%付近と利益以上の配当を出す水準になっています。
投資判断
今までの内容からSOMPOホールディングスの投資判断ですが、前期業績は大幅減益見込みのなか配当性向は100%超とかなり心配な内容です。減要因としている自然災害やコロナの影響は下期には落ち着く見込みとしていますが、第3四半期時点の進捗率は47%付近ですので見込みを更に下回る最終着地もありえます。
しかし、米国金利上昇の影響で資産運用による利配収入は着実に増えています。
以上の点を踏まえると、直近の業績は少し心配な状況ですが、今後国内の金利が上昇すれば業績の回復は期待できますので、長い目で見れば今の水準はチャンスかもしれません。
【8354】ふくおかFG
金利上昇メリット2番目の銘柄は銀行株のふくおかFGです。銀行株といえば三菱UFJFGや三井住友FGのメガバンクが主流ですが、その辺りの銘柄は普段検証していますので、今回は地銀のふくおかFGで見ていきます。
ふくおかFGは福岡銀行を中核にした金融持株会社で、熊本銀行や十八親和銀行など福岡県以外の地銀も子会社化した事で九州全体を地盤にしています。
直近決算
ふくおかFGは1月31日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は326億円と115億円の減益となっています。業績低迷により通期最終利益の予測を305億円へ265億円下方修正していますが、配当は従来の予想通り年間105円で変わりありません。
業績下方修正の要因は、外国債券を中心にポートフォリオの再構築を進めた事で現時点の損失見込みを考慮したためとしています。
金利上昇は銀行にとって貸出金利上昇などの部分でメリットにもなりますが、保有している債券価格は下落してしまいますので、今回の様にマイナスの部分もあります。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | ふくおかFG |
2019年3月期 | 516 |
2020年3月期 | 1106 |
2021年3月期 | 446 |
2022年3月期 | 541 |
2023年3月期(会社予想) | 305 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが増減が激しくなっており、2020年に業績が大きく伸びている要因は、十八銀行経営統合に絡み「負ののれん」が発生したためとしています。ちなみに「のれん」とは買収した企業の純資産額と買収価格との差の事で、実際に買収した企業の純資産額よりも低い金額で買収した場合は、その差額が「負ののれん」として利益になります。
そして2021年以降は500億円前後の水準となっていますが、前期は先ほどお伝えした様に業績の下方修正により大きく減益見込みとなっています。
配当推移
銘柄名 | ふくおかFG |
2015年 | 60 |
2016年 | 65 |
2017年 | 65 |
2018年 | 75 |
2019年 | 85 |
2020年 | 85 |
2021年 | 85 |
2022年 | 95 |
2023年(会社予想) | 105 |
2015年からの配当推移についてたまに据え置きの年はありますが減配はなく、概ね増配傾向となっています。
ふくおかFGの配当方針は、利益成長を通じた安定的な配当(維持・増配)を基本としており、具体的な目安は配当性向35%程度としています。
株価推移
株価はコロナショックで1223円まで下げた後は順調に上昇傾向です。そして去年年末の日銀による長期金利の上限幅見直し以降は上昇ペースが加速し1月には3250円まで上昇しましたが、その後はシリコンバレー銀行の経営破綻をきっかけに急落し、直近は2500円前後で推移しています。
株価指標(2023年4月14日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
ふくおかFG | 8354 | 2504 | 15.4 | 0.56 | 105 | 4.19 | 64.6 |
最近の株価は値動きが激しくなっているなか、増配を継続している事で配当利回りは4%を超えています。業績の下方修正もありPERに割安感はなく、配当性向は65%付近と目安の35%を大きく上回っています。
投資判断
今までの内容からふくおかFGの投資判断ですが、前期は大きく減益見込みとなっており現状は金利上昇の影響がマイナスに働いている状況です。そして今後国内の金利が上昇すれば業績が伸びていく事も期待できますが、株価はある程度織り込んでいる可能性もあります。
以上の点を踏まえると、銀行株については企業規模や海外展開などの将来性も考慮してメガバンクへ投資する方が良いのかなというところです。
金利上昇デメリット銘柄
続いては金利上昇がデメリットになる銘柄を見ていきますが、不動産や住宅関連銘柄となります。この辺りの銘柄については、金利上昇への懸念が株価にどの様な影響を与えているかを含め見ていきたいと思います。
【3231】野村不動産HD
金利上昇デメリット最初の銘柄は野村不動産HDです。
野村不動産HDは野村不動産を中核に持つ持株会社で、「プラウド」ブランドなどのマンション開発や分譲が主力事業です。また、自社ブランドの賃貸ビルやホテルも運営しているほか、東南アジアを中心に海外事業も拡大しています。
直近決算
野村不動産HDは1月26日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は409億円と前年同期比で141億円の増益となっています。
業績好調により通期最終利益見込みを600億円へ30億円上方修正し、配当は従来見込みから5円増額の年間115円としています。
業績好調の要因は、住宅分譲事業において計上戸数が増加したことや収益不動産事業において物件売却収入が増加したためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 野村不動産 |
2019年3月期 | 458 |
2020年3月期 | 488 |
2021年3月期 | 421 |
2022年3月期 | 553 |
2023年3月期(会社予想) | 600 |
2019年からの通期最終利益について数年前までは400億円台での動きでしたが、2022年以降は大きく増益傾向となっています。2022年以降の業績が好調な要因は、顧客ニーズの多様化・低金利環境の継続などの下支えにより、供給戸数がコロナ前の水準まで回復した事や空室率が都心エリアを中心に直近数年間の中では高い水準で推移した事に加え、良好な資金調達環境及び国内不動産に対する国内外投資家の旺盛な投資意欲によって、物流施設・賃貸住宅を中心に物件取引が活発化し、市場規模の拡大が継続した事などが要因としています。
そして前期も引き続き堅調な流れが継続しているとの事で更に増益見込みとなっています。
配当推移
銘柄名 | 野村不動産 |
2015年 | 45 |
2016年 | 57.5 |
2017年 | 65 |
2018年 | 70 |
2019年 | 75 |
2020年 | 80 |
2021年 | 82.5 |
2022年 | 97.5 |
2023年(会社予想) | 115 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、据え置きの年すらなく順調に増配が続いていますが、特に2022年以降は業績好調を背景に増配幅も大きくなっています。
野村不動産HDの配当方針は、2025年3月期までの中長期経営計画フェーズⅠにおいては総還元性向40~50%との方針を掲げており、2026年3月期から始まるフェーズⅡに向け配当性向を40%へ段階的に引き上げる方針です。
株価推移
株価はコロナショックで1465円まで売られましたが、2022年9月には3625円まで上昇しました。しかし、そこからは下落が続き直近は3000円前後で推移しています。
株価指標(2023年4月14日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
野村不動産HD | 3231 | 3085 | 8.9 | 0.84 | 115 | 3.73 | 33.4 |
最近の株価は高値から下落しているなか、大幅増配が続いている事で配当利回りは3%後半の水準です。業績好調によりPER、PBRは市場平均よりも割安で、配当性向は33%付近となっています。
投資判断
今までの内容から野村不動産HDの投資判断ですが、直近の業績や配当は順調に推移しており、配当利回りも3%後半と高配当株として気になる水準です。しかし、最近の株価は今後の金利引き上げや景気後退を懸念して値を下げている印象です。
先程触れた様に不動産業界は金利引き上げがマイナス材料にはなりますが、直近の業績は順調に推移していますので、過度に下げる場面は狙いたくなる銘柄です。
【2971】エスコンジャパンリート
金利上昇デメリット2銘柄目はREITのエスコンジャパンリートです。
REITとは投資家から集めた資金を不動産などに投資し、賃料などで得られた利益を投資家に分配する仕組みのファンドです。REITも物件購入の資金を金融機関などから借り入れる事も多いため、金利上昇はマイナス要因となります。
そんななかエスコンジャパンリートの保有物件数は現在38件で、投資先は商業施設が中心となっており、エリアは取得価格ベースで近畿圏が5割近くを占めています。
東証REIT指数
一旦REIT全体の動きが分かる東証RIET指数を見ていきますが、2021年後半からは弱い動きが続いています。下落している要因は今後の金利上昇や景気後退懸念など様々ですが、この間も他の高配当株はしっかりとした動きの銘柄も多かったですので、REIT全般はかなり下げている印象です。
分配金推移
銘柄名 | エスコンジャパンリート |
2019年 | 8257 |
2020年 | 7158 |
2021年 | 7137 |
2022年 | 7197 |
2023年(会社予想) | 8360 |
2024年(会社予想) | 3082(半期) |
エスコンジャパンリートは上場が2019年のため、2019年からの分配金推移を見ていきますが、去年までの3年間は7100円付近で安定しているなか、今年の分配金見込みは業績好調を背景に1月期の分配金が5283円と大きく増配となっている事で年間の予測も8000円を超えています。
しかし、今年7月期と来年1月期の分配金見込みは現状3000円付近となっていますので、今後分配金が減配する可能性には注意が必要です。
基準価格推移
基準価格はコロナショックで7万900円まで下落した後、2021年7月にはコロナ前を大きく上回る15万7900円まで上昇しました。しかしそこからは右肩下がりとなり、直近は10万円台で推移しています。
株価指標(2023年4月14日時点)
銘柄 | コード | 決算月 | 投資口価格 | 予想分配金 | 配当利回り |
エスコンジャパンリート | 2971 | 1、7 | 109400 | 8360 | 7.64 |
最近の基準価格は下落が続いているなか、今年の分配金は大きく増配となっていますので利回りは7%台と高水準です。しかし、先ほどもお伝えした様に今後2回の分配金予測は合計6000円位となっていますので、その水準で利回りを計算すると5%台半ばとなります。
投資判断
今までの内容からエスコンジャパンリートの投資判断ですが、最近の基準価格は金利上昇の懸念などを要因に大きく下げています。そして途中で触れた様に今後の分配金は減配の可能性もありますが、それでも利回りは5%台を維持できそうなほど高水準です。
東証REIT指数を見ても分かる様にREIT全体は最近かなり基準価格を下げている銘柄も多く、今後の金利上昇についてもある程度は織り込んでいる部分もあるかと思いますので、チャンスがあれば狙いたい銘柄です。
まとめ
今回は金利上昇局面で買いたい高配当株を4銘柄検証しました。金利上昇は銘柄によってプラスの点もマイナスの点もあり、また今後の金利上昇懸念は現在の株価にある程度織り込まれている部分もあるかと思います。
もちろん実際に利上げがスタートした時に株価がどの様に反応するかは分かりませんし、相場全体が下げてしまう可能性もありますが、株価がどちらに動いても良い様に普段から準備しておく事が大切かと思います。
金利上昇時に買いたい4銘柄については、YouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
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