今回は飲料メーカー大手のキリンとコカ・コーラの2021年12月期第3四半期決算内容を中心に検証しキリンとコカ・コーラの投資判断を検証します。
キリン、コカ・コーラの2021年第2四半期決算迄の状況
まずキリンとコカ・コーラの第2四半期決算までの現状を簡単にまとめていきます。
キリンの現状
8月発表の中間決算で今期純利益を1030億円から865億円へ下方修正しています。
大きな要因はミャンマーにおける政情不安や新型コロナ感染急拡大によるミャンマー・ブルワリーの業績悪化としています。しかしミャンマー事業の落ち込みはグループ全体のポートフォリオで補完し、前期比では純利益約2割増見込みとなっています。
コカ・コーラの現状
コカ・コーラはここ数年赤字に転落しており業績低迷の要因はコロナ関連に加え顧客が安く購入出来るスーパーへ流れ定価で販売出来る自販機の売上減少、またスーパーへの販売単価も競争激化で低下している事等を挙げています。
「これまでのやり方は選択肢にない」という強い言葉で変革を進めていますが、先行きは不透明であり、実際今期の業績予想も新型コロナの影響を合理的に算定する事が困難として非開示にしています。
2021年第3四半期決算検証
それではここからはキリンとコカ・コーラが先日発表した決算を個別に検証していきます。
キリンの決算
- 第3四半期時点の純利益は516億円で対前年約28%の減益
- 通期純利益は865億円で変更なし
- 年間配当も65円で変更なし
業績低迷の要因はキリングループが事業を営む各国でコロナの感染が再拡大し業務用チャネルを中心に需要が大幅に低下した事としています。
主要国での感染はピークアウトしたとみられるものの、通期業績予想への影響は精査中としており公表すべき事実が生じれば速やかに開示するとしています。
キリンの配当方針は安定した配当を継続的に行うことが、株主の要請に応えるものと考えており連結配当性向40%以上を目安としています。
株価等データ
キリンの株価は2018年に3000円を超える場面がありましたが、それ以降は右肩下がりです。直近では決算発表を受けて株価は更に売られ2000円を割れている水準です。
業績に関係無く配当は安定していますので、株価下落により配当利回りは3%半ばまで上がってきています。
コカ・コーラの決算
- 第3四半期時点の純利益は15億円の赤字
- コカ・コーラは非開示だった通期純利益を46億円の赤字見込みと発表
- 配当予測に変更は無く年間配当50円のまま
業績低迷の要因はコロナの影響継続や8月の天候不順、厳しい競争環境の継続としています。
コカ・コーラの配当方針は積極的な利益還元を行うことを利益配分に関する基本方針としながら、安定的に配当を行うことを最優先とし配当性向30%以上を目安にするとしています。しかしここ数年の決算は赤字の為、配当性向の目安も関係ない事になっています。
株価等データ
コカ・コーラの株価も2018年に4000円台半ばの水準まで上がりましたが、その後は低迷する業績と共に右肩下がりです。今回の決算発表後も株価はじりじりと値を下げ1200円台まで下がってきています。
コカ・コーラは前期配当を25円減配しましたが、今年は減配前の50円に戻す予定にしており配当利回りは3%後半になっています。
キリンとコカ・コーラの第2四半期決算後の業績等比較
通期最終利益(億円)
銘柄名 | キリン | コカ・コーラ |
2018年12月期 | 1642 | 101 |
2019年12月期 | 596 | -579 |
2020年12月期 | 719 | -47 |
2021年12月期(会社予想) | 865 | -46 |
第3四半期決算(億円)
銘柄名 | キリン | コカ・コーラ |
2019年12月期第3四半期 | 331 | -556 |
2020年12月期第3四半期 | 717 | -46 |
2021年12月期第3四半期 | 516 | -15 |
2019年12月期通期進捗率(%) | 55.5 | ‐ |
2020年12月期通期進捗率(%) | 99.3 | ‐ |
2021年12月期通期進捗率(%) | 59.6 | ‐ |
通期業績については今年も赤字見込みを発表し3年連続赤字予定のコカ・コーラが深刻です。コロナが発生する前の2019年から赤字に陥っており、抜本的な変革は最重要の課題です。
キリンについては現時点の予測を見るとコロナ前の水準に戻りそうな感じですが、通期進捗率が第3四半期時点で約60%とこのままですと通期予測達成に不安があります。主要国でのコロナ感染はピークアウトしたとみられるが、通期業績予想への影響は精査中で公表すべき事実が生じれば速やかに開示するとしており、今後通期予測の下方修正が発表される可能性があるかもしれません。
配当推移
銘柄名 | キリン | コカ・コーラ |
2015年 | 38 | 41 |
2016年 | 39 | 46 |
2017年 | 46 | 44 |
2018年 | 51 | 50 |
2019年 | 64 | 50 |
2020年 | 65 | 25 |
2021年(会社予想) | 65 | 50 |
2社とも配当予測に変更はありません。業績に関係無く安定した配当を出してくれる事は有難いですが、ずっとこの状態を続けられる訳では当然ありませんので注意が必要です。
株価等指標比較
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
キリン | 2503 | 1834.5 | 17.68 | 1.77 | 65 | 3.54 | 62.6 |
コカ・コーラ | 2579 | 1312 | ‐ | 0.48 | 50 | 3.81 | ‐ |
最近は低迷する業績とともに株価も右肩下がりが続いており配当利回りは2銘柄とも高水準になっています。
キリンとコカ・コーラの今後の方針
キリンの今後
キリンは中期経営計画として2027年までの方針を下記のように業種ごとに掲げています。
食領域(酒類、飲料事業)については収益力の更なる強化として自国における強固なブランド力と収益基盤の確立やクラフトビール等の高付加価値カテゴリーを中心にした海外事業展開としています。
医領域(医薬事業)については飛躍的な成長を目指しグローバル戦略品の価値最大化や新たなグローバル品の開発によるパイプライン拡充を目指しています。
ヘルスサイエンス領域については立ち上げと育成としており、高機能素材事業の展開強化やキリン独自のビジネスモデル強化を掲げています。
コカ・コーラの今後
スーパーマーケット、ドラッグストア、量販店については競争環境激化や消費行動変化の影響を受けるも、市場シェアは拡大基調に回帰しているとしています。今後については的を絞ったプロモーション活動を実施し小PETやプレミアム製品強化によるミックスコントロールにも努めていく方針です。
ベンディング(自動販売機)については30ヵ月連続で金額シェアを拡大しており、Coke ONアプリのダウンロード 数が3,000万を超え強力な デジタルプラットフォームになっているとしています。
また成長回帰に向けた基盤確立のための重点分野として需要の急激な増減に対するアジリティ(対応力)や新製品イノベーションを掲げています。
まとめ
最後にまとめですが今回は飲料大手のキリン、コカ・コーラの決算内容を中心に投資判断を検証しました。
2銘柄とも業績は芳しくないですが、今期も赤字見込みのコカ・コーラがより深刻です。
しかし両銘柄とも業績低迷と連動するように株価も下がり配当利回りはかなり高水準となっています。
もちろん業績低迷により減配の恐れもありますが、2銘柄とも日本を代表する企業であり、今後の巻き返しに期待したいところです。個人的にもキリンについては来年の決算発表前後で株価が下がる場面があれば狙いたいかなとは思っています。
キリンHD、コカ・コーラの銘柄検証はYouTubeで動画版も投稿していますのでご覧ください。
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