今回は10月に株式分割を予定している高配当株2銘柄を個別に紹介していきます。
最近の業績や配当推移を踏まえたうえで株式分割を行う目的や効果を検証し、今からでも高配当株として投資可能か見ていきたいと思います。
株式分割とは
そもそも株式分割とは、1株をいくつかに分割し発行済みの株式数を増やす事です。1株が2株に分割されると保有株数は2倍になりますが、理論上株価は半分になりますので資産価値としては変わりません。
資産価値は変わらないのに企業が株式分割を行う理由は、株式分割により株価が下がる事で購入しやすくする事が主な目的です。
実際東証も望ましい投資単位としている5万円以上50万円未満の水準へ移行する為、投資単位の引下げに関する考え方及び方針等を開示するよう義務付けています。
資産価値は変わりませんが、やはり保有している株数が自動的に増える事は嬉しいので株式分割は好材料と捉えられる事が多いです。
ここで少し昔の話にはなりますが、私が証券会社で働いていた約20年前は新興市場を中心に株式分割が多発していました。
当時も株式分割と言えば2分割、3分割が主流でしたが、2003年にライブドアの前身「エッジ」が100分割を発表した時は衝撃を受けた思い出があります。
それでは以上の点を踏まえ10月から株式分割を予定している2銘柄を個別に検証していきます。
【8766】東京海上HD
最初の銘柄は東京海上HDです。東京海上HDは、東京海上日動火災保険や日新火災海上保険などを傘下にしている保険持株会社です。
社名に海上と入っていますが、現状は自動車関連の保険が売上の半数近くを占めており、また世界46の国や地域で事業を展開するなど海外への進出も注力しています。
そして、東京海上HDは10月から株式を3分割すると発表しています。
直近決算
東京海上HDは8月5日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は1245億円と前年同期比で352億円の減益ですが、通期最終利益、配当予測に変更はありません。
減益の要因としては、海外の主要拠点は好調な保険引受・資産運用となっていますが、国内は円安や自然災害の増加など⼀過性の影響によるものとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 東京海上 |
2019年3月期 | 2745 |
2020年3月期 | 2597 |
2021年3月期 | 1618 |
2022年3月期 | 4204 |
2023年3月期(会社予想) | 4300 |
2019年からの最終利益推移を見ていきますが、コロナショックの影響を受けた2021年にかけては減益傾向が続いていましたが、2022年以降はコロナ前を大きく上回る水準になっています。
大きく業績が伸びている要因としては、⾃然災害の減少やコロナの反動、北⽶のキャピタルゲインなどの一過性要因に加え、レートアップや引受拡大を背景とした保険引受利益の拡大、運用資産を背景としたインカム収益の拡大としています。
今期については前年度の一過性要因の反動を想定する一方で、これらを除いた国内外の保険引受利益の拡大や国内の準備⾦負担減少などにより増益見込みとしています。
配当推移
銘柄名 | 東京海上 |
2015年 | 95 |
2016年 | 110 |
2017年 | 140 |
2018年 | 160 |
2019年 | 250 |
2020年 | 225 |
2021年 | 235 |
2022年 | 255 |
2023年(会社予想) | 300 |
2015年からの配当推移について見ていきますが、順調に増配が続いています。
また、今期の配当見込みは年間300円としていますが、株式分割に伴い期末配当は3分の1の50円に変更されていますので、実際の年間配当額は200円となります。
東京海上HDの配当方針は、配当原資(5年平均利益)の移動平均的拡⼤と、配当性向の引上げ(2022年度48.5%、 2023年度50%)を背景に⾼く成⻑させていくとしており、原則減配はしないともしています。
つまり、相対的に利益⽔準が低位だった2018年度から2020年度が「5年平均」の対象期間から外れることに加え、2023年度は配当性向を50%まで引き上げる事で増配を継続していく方針です。
株価推移
株価はコロナショックで4167円まで下落した後は、順調に値を戻しています。
今年6月には8000円を超える水準まで買われましたが、直近は少し売られ7700円前後で推移しています。
株価指標(2022年9月9日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
東京海上 | 8766 | 7758 | 12.2 | 1.37 | 300 | 3.87 | 46.7 |
業績好調を背景に株価は上昇が続いていますが、増配も継続している為、配当利回りは4%付近の水準です。
しかし株価上昇に伴いPER、PBRに割安感はそれ程なく、配当性向は47%付近と方針通りです。
投資判断
今までの内容から東京海上HDの投資判断ですが、最近の業績、配当は順調に推移しており、日本を代表する企業規模も含め高配当株として購入を検討したい銘柄で、株式分割により最低購入金額が下がる点もメリットです。
しかし国内の保険市場は飽和状態であり、また現状大きな販売割合を占めている自動車関連の保険についても若者の車離れや自動運転の進化によって将来性には疑問が残っています。
そこで今後については現状の基盤を守りながら海外への進出を強化しつつ、新たな保険の販売を行っていく方針です。
特に海外事業の拡大については、今後もグローバルなリスク分散と適切なリスクコントロールにより成⻑を加速するとしていますので期待したいところです。
以上の点を踏まえ東京海上HDについては、個人的にはNISA枠との絡みもあり分割前の購入は厳しいですが、分割後についてはチャンスがあれば狙いたいところです。
【9436】沖縄セルラー電話
2つ目の銘柄は沖縄セルラー電話です。
沖縄セルラーはKDDI傘下の通信会社で、1991年に沖縄地域での携帯・自動車電話サービスを行う会社として設立しています。
現在は、沖縄県で約5割のシェアを持つモバイル事業と3割のシェアを持つFTTH事業を基盤とし、沖縄電力と協業してサービス提供しているauでんきなどの非通信事業を組み合わせた総合力でお客様のニーズに応えるとしています。
そして沖縄セルラーは、10月から株式を2分割すると発表しています。
直近決算
沖縄セルラーは7月27日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は30億円と前年同期比で微減益でしたが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
第1四半期の業績について通信料値下げの影響をauでんきが補い売上は増収でしたが、auでんき関連のコストが増えた為に最終利益はわずかに減益となっています。
しかし、通期業績予想に対しては順調に進捗しているとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 沖縄セルラー |
2019年3月期 | 93 |
2020年3月期 | 98 |
2021年3月期 | 105 |
2022年3月期 | 106 |
2023年3月期(会社予想) | 107 |
2019年からの最終利益を見ていきますが順調に増益傾向です。
しかし、ここ数年は通信料金値下げの影響をauでんきやFTTHで補う展開となっており、増益幅も小幅にとどまっています。
配当推移
銘柄名 | 沖縄セルラー |
2015年 | 88 |
2016年 | 96 |
2017年 | 105 |
2018年 | 117 |
2019年 | 130 |
2020年 | 145 |
2021年 | 162 |
2022年 | 168 |
2023年(会社予想) | 172 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、減配どころか据え置きの年すらなく、また増配は前期までで21期連続増配を継続中です。
また、今期の配当見込みは172円としていますが、株式分割に伴い期末配当を2分の1の43円へ変更している為、実際の年間配当額は129円になります。
そして沖縄セルラーは配当方針として、連続増配と配当性向40%超を掲げています。
株価推移
株価はコロナショックで3080円まで下落した後は、約1年をかけて5000円付近まで値を戻しています。
しかし、そこから1年半は5000円を挟んだ値動きとなっており、直近の株価は5200円前後で推移しています。
株価指標(2022年9月9日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
沖縄セルラー | 9436 | 5220 | 13.1 | 1.44 | 172 | 3.30 | 42.7 |
株価は停滞が続いていますが、配当は増配が継続している為、配当利回りは3%を超えています。
PER、PBRに割安感はそれ程なく、配当性向は43%付近と方針通りです。
株主優待
沖縄セルラーはKDDIと同様のカタログギフトがもらえる株主優待を設定していますので内容を表にまとめています。
沖縄セルラー | ||
保有株数/保有年数 | 5年未満 | 5年以上 |
100株~999株 | 3000円相当 | 5000円相当 |
1000株以上 | 5000円相当 | 1万円相当 |
また、沖縄セルラーは株式分割後の株主優待制度について、株式分割後も 100 株(1単元)以上の株式を保有する株主さまを対象とし、優待贈呈に係る基準株数に変更はありませんと発表しています。
しかし、あわせて株主優待制度は今後の業績動向や会社方針の変更などさまざまな要因により、制度の廃止を含む優待制度そのものの見直し、または内容変更を行う可能性がありますともしています。
何とも微妙な言い回しですので、株主優待制度の今後には注意が必要です。
投資判断
今までの点を踏まえ沖縄セルラーの投資判断ですが、通信会社という事で業績、配当は安定しておりポートフォリオの一部に入れておきたい銘柄だと思います。
しかし、KDDIと比較して沖縄セルラーを購入する明確な理由が正直無いかなというところです。
会社の特質上、沖縄以外にエリアを広げる事もできませんし、現状モバイル事業のシェアは約5割ですので、ここから大幅な飛躍は厳しいです。
敢えて沖縄セルラーを購入するメリットとして、分割後はKDDIよりも購入単価が下がる点や現在の配当利回りは沖縄セルラーの方が少し高い点に加え保有銘柄の分散といったところです。
少し前ならば株主優待目的でも良かったですが、途中で触れた様に株主優待の今後は不透明です。
という事で沖縄セルラーについては、既にNTTやKDDIを保有している人は通信会社の銘柄分散の目的で購入を検討しても良いかもしれません。
まとめ
今回は10月に株式分割を予定している高配当株2銘柄を個別に検証しました。
株式分割後の購入単価は、東京海上HDが70万円台から25万円付近、沖縄セルラーで50万台から25万円付近になる見込みですので、かなり買いやすくなります。
購入資金やNISA枠との絡みもあり購入単価が下がる事は有難いですので、個人的にも途中で触れた様に東京海上HDについては、分割後チャンスがあれば狙ってみようかなと思っています。
株式分割を予定している2銘柄は、YouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
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