今回はハウスメーカー業界より積水ハウス、大和ハウス、タマホーム3社が高配当銘柄として投資可能か3社の現状と今後を見ながら比較検証していきます。
ハウスメーカーの現状
それではまずハウスメーカー業界の現状から簡単に見ていきますが、そもそもハウスメーカーとは戸建て住宅やマンションの建築、リフォームのほか商業施設や事業施設など幅広い建物を国内だけで無く海外も含め広範囲に手掛ける企業の事です。
戸建て住宅の場合は、全国各地の住宅展示場に自社製品をモデルハウスとして展示しているケースも多く、自前で生産設備を有し一部の建材を大量生産する場合もある為、工期が比較的短く、一定の品質が保たれる事が特徴です。
国内の住宅市場規模は少子高齢化の影響もあり縮小傾向でしたが、コロナショックからの在宅勤務や外出自粛の影響もあってか、住宅に対する関心が強まり近年の住宅市場は回復傾向にある様です。
そんなハウスメーカー業界より今回は大手の積水ハウスと大和ハウス、そして新興メーカーで勢いのあるタマホーム3社の投資判断を個別に検証し比較していきます。
ハウスメーカー3社の特徴
そこで今回検証するハウスメーカー3社の特徴を簡単にまとめていきますが、
ハウスメーカー大手の積水ハウスと大和ハウスですが、2社の1番の違いは売上に占める住宅割合の差です。積水ハウスは住宅関連の売上が半数以上ありますが、大和ハウスは住宅の他に商業施設や事業施設の割合も多く、積水ハウスよりも大きな建物を建設しているイメージです。
そして新興メーカーであるタマホームは、現状売上の約8割を住宅関連事業が占めています。タマホームの特徴としては木造住宅に特化しており、価格が他のメーカーと比較して安い事や近年は宣伝にも力を入れており急速に成長している企業です。
ハウスメーカー3社の直近決算等
簡単に3社の違いをまとめましたが、ここからはそんな3社の直近決算や株価の動きを検証していきたいと思います。
積水ハウス直近決算
積水ハウスは1月決算の為、昨年12月に第3四半期決算を発表しています。第3四半期迄の最終利益は1158億円で前期889億円から約269億円の増益になっています。
配当については第2四半期決算発表時に増額した年間88円で変更はありません。
業績好調の要因は、受注高が全セグメントで前年同期比プラスとの事。戸建・賃貸住宅事業ともに好調な受注に加え資材価格高騰の環境下でも利益率は改善しているとの事で、リフォーム事業も住宅に求められるニーズの変化と合致し、戸建・賃貸住宅向けともに好調で増収増益との事です。
積水ハウス配当推移
銘柄名 | 積水ハウス |
2015年 | 50 |
2016年 | 54 |
2017年 | 64 |
2018年 | 77 |
2019年 | 79 |
2020年 | 81 |
2021年 | 84 |
2022年(会社予想) | 88 |
積水ハウスの2015年からの配当推移をまとめていますが順調に増配傾向です。
配当方針は株主価値の最大化を経営における重要課題の一つと認識しており、持続的な事業成長による1株当たり利益の成長を図ることはもとより、各年度における利益又はキャッシュ・フローの状況や将来の事業展開等を総合的に勘案し、成長投資の推進と株主還元の充実を図っていくとしています。
具体的な数値については中期的な平均配当性向を40%以上とするとともに、機動的な自己株式取得を実施することで株主価値向上に努める方針としており、実際今期の配当性向は現状約40%です。
積水ハウス株価推移
積水ハウスの株価ですが、コロナショックで1500円台半ばまで売られた後は、上下を繰り返しながら戻ってきている感じです。
現在はコロナ前の水準である2400円付近まで戻ってきていますが、2400円を超えると跳ね返されているイメージですので、今後2400円を超えていけるか、再び跳ね返されてしまうのか注目です。
大和ハウス直近決算
大和ハウスの直近決算は昨年11月に2022年3月期第2四半期決算を発表していますが、第2四半期時点の最終利益は、1075億円で前期913億円から約162億円の増益となっています。配当については期初予測から変更無く、年間配当126円のままです。
業績好調の要因は、ニューノーマルに対応した提案や米国住宅需要拡大などにより順調に推移としています。
ニューノーマルとは、共働きによるライフスタイルの変化に加え、新型コロナウイルス対策としての外出自粛やテレワークの開始など、かつてないほど急速に人々の働き方、生き方が変わっている中で「夫婦が共に集中しやすいテレワークスペース」「共働き夫婦が家事の負担を軽減できる家」「心地よいつながりが感じられる家」などをキーワードにニューノーマルな暮らしを快適にするとしています。
大和ハウス配当推移
銘柄名 | 大和ハウス |
2015年 | 60 |
2016年 | 80 |
2017年 | 92 |
2018年 | 107 |
2019年 | 114 |
2020年 | 115 |
2021年 | 116 |
2022年(会社予想) | 126 |
大和ハウスの2015年からの配当推移をまとめていますが、こちらも順調に増配傾向です。
しかし今期配当126円のうち10円は創業者生誕100周年の記念配当の為、今期の配当は実質据え置きです。
配当方針は、事業活動を通じて創出した利益を株主の皆様へ還元することと併せ、中長期的な企業価値の最大化の為に不動産開発投資、海外事業展開、M&A、研究開発及び生産設備等の成長投資に資金を投下し、1株当たり利益(EPS)を増大させることをもって株主価値向上を図ることを株主還元に関する基本方針とするとしています。
具体的な数値としては配当性向30%以上として業績に連動した利益還元を行い、かつ安定的な配当の維持に努める方針としており、今期の配当性向は現状約38%です。
大和ハウス株価推移
大和ハウスの株価ですが、コロナショックで2200円台前半まで売られた後は、順調に株価を戻しています。昨年9月には4000円に迫る場面もありましたが、直近は3300円台での動きになっています。
タマホーム直近決算
タマホームは5月決算の為、今月第2四半期決算を発表しています。第2四半期迄の最終利益は41億円と前期31億円から約10億円の増益になっています。
配当は期初予測から5円増、前期比では15円増の年間配当115円へ増配です。
業績好調の要因は、新設住宅着工戸数が2020年夏頃より回復するなど、需要が堅調に推移した為としています。
外材を中心とした木材の調達が困難になるいわゆるウッドショックの影響も懸念されましたが、タマホームグループでは生産面において、従前より築いてきた高い国産材使用率と森林組合や林業者といった生産者と直接つながる当社独自の流通システム 「タマストラクチャー」を背景に、引き続き安定的に木材を仕入れるとともに中核事業である注文住宅事業の収益基盤をより一層強化方針としています。
タマホーム配当推移
銘柄名 | タマホーム |
2015年 | 10 |
2016年 | 10 |
2017年 | 15 |
2018年 | 30 |
2019年 | 53 |
2020年 | 70 |
2021年 | 100 |
2022年(会社予想) | 115 |
タマホームの2015年からの配当推移をまとめていますが、タマホームも順調に増配傾向です。
タマホームの配当方針は、株主の皆様への利益還元を重要な経営課題の一つと認識しており、経営成績に応じて株主の皆様への利益還元を継続的に行うことを基本方針としており、具体的な数値目標はありませんが、好調な業績と共に配当も増え続けている感じです。
タマホーム株価推移
タマホームの株価はコロナショックで900円を割れる場面がありましたが、その後は概ね好調です。去年7月には社長の社員に対するワクチン禁止令報道で株価が大きく下げる場面もありました。
直近では今回の決算を受けて株価は2900円に迫る場面がありましたが、その後は全体の軟調相場もあり2300円台まで売られています。
ハウスメーカー3社業績推移比較
銘柄名 | 積水ハウス(1月決算) | 大和ハウス(3月決算) | タマホーム(5月決算) |
2018年 | 1332 | 2363 | 20 |
2019年 | 1258 | 2374 | 39 |
2020年 | 1412 | 2336 | 51 |
2021年 | 1235 | 1950 | 71 |
2022年(会社予想) | 1480 | 2150 | 76 |
ハウスメーカー3社の2018年からの業績推移を比較していますが、積水ハウスと大和ハウスはコロナショックで業績を落とした2021年以外は概ね順調です。タマホームは企業規模の部分で他の2社と比較すると大分落ちますが、コロナショックも関係無く業績は順調に推移しています。
ハウスメーカー3社配当推移比較
銘柄名 | 積水ハウス | 大和ハウス | タマホーム |
2015年 | 50 | 60 | 10 |
2016年 | 54 | 80 | 10 |
2017年 | 64 | 92 | 15 |
2018年 | 77 | 107 | 30 |
2019年 | 79 | 114 | 53 |
2020年 | 81 | 115 | 70 |
2021年 | 84 | 116 | 100 |
2022年(会社予想) | 88 | 126 | 115 |
ハウスメーカー3社の2015年からの配当推移を比較していますが、3社とも右肩上がりです。特にタマホームのここ最近の増配ペースには勢いを感じます。
各社とも株主還元意識の高さを感じられる配当推移になっています。
ハウスメーカー3社指標比較
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
積水ハウス | 1928 | 2318.5 | 10.6 | 1.11 | 88 | 3.80 | 40.12 |
大和ハウス | 1925 | 3317 | 10.1 | 1.13 | 126 | 3.80 | 38.41 |
タマホーム | 1419 | 2370 | 9.1 | 2.59 | 115 | 4.85 | 44.33 |
ハウスメーカー3社の株価等指標データをまとめています。3銘柄とも株価は上昇傾向ですが、あわせて増配も行っている為、配当利回りは積水ハウス、大和ハウスで3%後半、タマホームは4%後半の水準です。しかし配当性向は3銘柄とも40%前後の為、そこまで無理をしている感じでもないです。
ハウスメーカー3社株主優待情報
ハウスメーカー3社は各社優待もありますので個別に紹介していきます。
積水ハウス株主優待
1,000株以上保有の条件は有りますが、魚沼産コシヒカリ5kgが貰えます。
大和ハウス株主優待
大和グループが運営するホテル、ゴルフ場、ホームセンター、スポーツクラブなどの施設のほか、株主優待専用グルメギフトで使用出来る優待券が保有株数によって貰えます。
保有株数 | 贈呈枚数 |
100株以上 | 1枚(1,000円) |
300株以上 | 3枚(3,000円) |
500株以上 | 5枚(5,000円) |
1000株以上 | 10枚(10,000円) |
3000株以上 | 30枚(30,000円) |
5000株以上 | 50枚(50,000円) |
タマホーム株主優待
保有年数3年未満で500円のクオカード、3年以上で1,000円のクオカードが年2回貰えます。
ハウスメーカーの今後
ハウスメーカー業界は、現在コロナショックの影響で住宅に対する見方が変わり需要も回復しているとの事でしたが、中長期で考えた場合、国内の住宅市場が縮小傾向な事に変わりはないと思います。その点を踏まえ各メーカーが今後注力している部分を見ていきます。
積水ハウスは戸建て住宅、リフォーム事業などの既存事業は拡張しつつ、新規事業への挑戦として、積水ハウステクノロジーの海外展開や先端技術を用いて住まい手のデータを活用し、幸せという無形資産を生み出し続ける家というコンセプトのプラットフォームハウスなどを通じて新規市場の開拓を目指す方針です。
大和ハウスは商業施設、物流施設の強化やアメリカ、中国など海外事業にも積極的に投資していく方針です。
タマホームは2026年5月期までの中期経営計画で新築住宅着工数No1を目指し注文住宅、戸建て分譲、リフォーム、不動産の4つの事業を中心に成長するとしています。
ハウスメーカー3社の投資判断
今までの点を基にハウスメーカー3社の投資判断を検証していきたいと思いますが、企業規模や安定の面ではやはり積水ハウス、大和ハウスに魅力を感じます。
しかし、積水ハウスは大和ハウスと比較して売上に占める住宅の割合が多い部分が気になるところです。大和ハウスは積水ハウスよりも商業施設や事業施設の売上が大きくセグメントのバランスは良いですが、今期配当の10円は記念配当であり来期以降の配当金額は気になるところです。
タマホームについては他の2社と比較して配当利回りも高く、配当、業績の伸びも勢いがありますが、住宅に特化し過ぎている部分や社長のワクチン接種に対する発言など今後も何か出てこないか少し気になる部分ではあります。
今まで検証してきた様に3銘柄とも高配当株として十分購入を検討出来る銘柄ではありますが、3銘柄とも少し気になる部分がある事も事実ですので、どの銘柄がおすすめかとなるとかなり難しい部分があります。
既存の住宅事業に加えて新規事業の拡充を目指す積水ハウス、商業施設、事業施設などの住宅以外に既に強みを持っている大和ハウス、住宅に特化するタマホーム、この様なまとめ方をするのは個人的にどうかとも思いますが、あとはもう好みではないでしょうか。
ハウスメーカー3社の比較検証はYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧下さい。
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