今回は配当方針に今後の増配が期待できる高配当銘柄を2銘柄選出しています。
配当方針は企業の特色が大きく出る部分で、具体的に配当性向などの目安を設定している銘柄もあれば、具体的な目安などは設定せずに銘柄独自の基準を設定している銘柄、業績と完全に連動して配当が増減する銘柄もあれば、業績とは関係なく配当を出している銘柄など多種多様です。
そこで今回は、配当方針が独特で今後の増配にも期待が持てそうな高配当株を2銘柄個別に検証していますので是非最後までご覧ください。
【8591】オリックス
最初の銘柄は、オリックスです。
オリックスは国内最大手のリース会社ですが、現在の業態はリース業にとどまらず、不動産、金融、事業投資など様々な事業を手掛けており、海外を含む多くの企業と取引しています。
リース会社が取り扱う商品はパソコン、工作機械、不動産、航空機など様々ありますが、企業の設備投資に連動してしまいますので、景気の動向に業績が大きく左右してしまいます。
また、オリックスは株主優待で2015年よりカタログギフト方式の「ふるさと優待」を実施していますが、株主への公平な利益還元のあり方から、2024年3月末での廃止を発表し話題になりました。
直近決算
オリックスは8月3日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は618億円と前年同期比で34億円の減益でしたが、通期最終利益予想は非開示のままで、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、輸送機器の需要回復とアジア・豪州における経済活動の再開などで10セグメントのうち5セグメントが増益でしたが、前年同期に米国PE(未公開株)投資で複数の利益があった反動としています。
通期最終利益(億円)推移
銘柄名 | オリックス |
2018年3月期 | 3131 |
2019年3月期 | 3237 |
2020年3月期 | 3027 |
2021年3月期 | 1923 |
2022年3月期 | 3121 |
2023年3月期(会社予想) | ‐ |
通期最終利益は、コロナショックの影響を受けた2021年に大きく減益となっています。
前期はコロナからの経済回復や弥生の売却益が加わりコロナ前の水準に戻していますが、今期は今後の見通しが不透明として年間配当以外の開示をしていない点は気になる部分です。
配当推移
銘柄名 | オリックス |
2015年 | 36 |
2016年 | 45.75 |
2017年 | 52.25 |
2018年 | 66 |
2019年 | 76 |
2020年 | 76 |
2021年 | 78 |
2022年 | 85.6 |
2023年(会社予想) | 85.6 |
2015年からの配当推移をみていきますが、概ね順調に増配傾向です。コロナショックの影響が出始めた2020年は据え置きとなっていますが、2021年は配当性向を一時的に50%まで引き上げて増配を実施しています。前期は好調な業績を背景に大幅増配となっており、今期は現状据え置きの予測としています。
配当方針
今回のテーマでもあるオリックスの配当方針についてまとめていきます。
オリックスの配当方針は、事業活動で得られた利益を主に内部留保として確保し、事業基盤の強化や成長のための投資に活用することにより株主価値の増大に努めるとしています。具体的な目安について、今期は配当性向33%または前期配当金額(85.6円)の高い方を年間配当にする方針です。
オリックスは最近この様な配当方針のケースが多く、前期配当も配当性向33%もしくは年間配当78円の高い方としていましたが、最終的なEPSは259.4円だった為、33%の85.6円が年間配当となっています。
またコロナショックで大きく減益となった2021年は、先程触れた様に配当性向を一時的に50%まで引き上げて増配を実施しています。
この様にオリックスの配当方針は状況によって柔軟に変化しており、また目安も最低金額を設定したうえで、業績が上振れした時には増配幅を増やせる様にしている点も今後の配当推移が期待できる銘柄だと感じます。
株価推移
株価はコロナショックで1100円まで売られた後は順調に上昇していますが、今年に入ってからは横ばいの状態が続いています。
今年1月には2600円を超える場面もありましたが、その後はロシアのウクライナ侵攻もあり値を下げ、直近は2200円台で推移しています。
株価指標(2022年8月19日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
オリックス | 8591 | 2279 | ‐ | 0.82 | 85.6 | 3.76 | ‐ |
株価は今年に入り停滞していますが継続して増配している事もあり、配当利回りは3%後半の水準です。
オリックスは今期業績予測を開示していない為、PERや配当性向などは算出できない状況です。
投資判断
今までの点を踏まえオリックスの投資判断ですが、業績、配当は順調に推移しており、株主還元姿勢の強さも含め十分高配当株として購入を検討できる銘柄だと思います。
今期最終利益見込みが開示されていない点は気になりますが、配当については今後に期待がもてる配当方針だと思います。
しかし、最近の株価は停滞していますがここ数年でみると高値圏ですので、今後2000円を割れる水準があれば狙ってみたいというところです。
【8098】稲畑産業
稲畑産業は自動車向けの高機能樹脂や生活用品などへの合成樹脂、また水産、農産物を取り扱う食品なども、海外を含め多くの取引先へ販売している専門商社です。
現在海外18カ国に約60拠点を展開しており、市場開発、製造加工、物流、ファイナンスなどの機能商品やマーケットの専門知識、ノウハウに基づく企画、提案などを行っています。
直近決算
稲畑産業は8月5日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は45億円と前年同期比で34億円の減益となりましたが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前年同期比減益の要因は、原材料の販売価格上昇や円安が寄与した事で売上は増収でしたが、物流費など販売費及び一般管理費の増加に加え、投資有価証券売却益の減少などとしています。
第1四半期は大幅減益となっていますが、大きな要因は前期の保有株式売却益の反動ですので、そこまで気にする必要はないかと思います。
通期最終利益(億円)推移
銘柄名 | 稲畑産業 |
2018年3月期 | 67 |
2019年3月期 | 128 |
2020年3月期 | 114 |
2021年3月期 | 137 |
2022年3月期 | 223 |
2023年3月期(会社予想) | 205 |
通期最終利益は、2020年にコロナ感染拡大や樹脂価格の下落により減益となった年以外は順調に増益傾向で、特にここ数年の増益幅は大きくなっています。
前期業績好調の要因は、コロナショックからの回復や円安が寄与した事に加え、保有していた投資有価証券売却の為としています。
今期業績は、商品市況の落ち着きなどを考慮して現状減益見込みとしており、また保有株式の売却について2023年3月期は62億円を計上見込みと大きな割合を占めています。
配当推移
銘柄名 | 稲畑産業 |
2015年 | 33 |
2016年 | 36 |
2017年 | 40 |
2018年 | 40 |
2019年 | 48 |
2020年 | 53 |
2021年 | 63 |
2022年 | 110 |
2023年(会社予想) | 115 |
配当については、たまに据え置きの年はありますが減配はなく順調に増配傾向です。そして2022年は一気に2倍近い増配幅となっており、今期は現状更に5円増の予測になっています。
配当方針
稲畑産業の配当方針は、中期経営計画中(2024年3月期まで)の総還元性向は目安として概ね50%程度としていますが、政策保有株式を売却し相当程度のキャッシュインが発生した事業年度においては、今後の資金需要や会社の財務状況、株価、マーケットの状況などを総合的に勘案し、総還元性向の目安には必ずしも囚われずに、株主還元を実施するとしています。
また、中期経営計画中は一株あたりの配当額については、前年度実績を下限として減配は行わず継続的に増加させていくことを基本とする「累進配当」の継続も発表しています。
配当方針に出てきた保有株式の売却について、稲畑産業は2021年3月末残高に対し今後5年間(2027年3月末まで)で概ね80%を削減する方針で、売却で得られた資金は基本的に株主還元と成長投資へ充てるとしています。
配当方針において最強の「累進配当」を宣言していながら、保有株式の売却状況によっては更なる増配の可能性も残していますので、今後に期待が持てる配当方針だと思います。
株価推移
株価は最終利益の上方修正を発表した今年2月に2525円まで買われた後は底堅い動きとなっています。
第1四半期決算が大幅減益だった事で決算発表後は2231円まで大きく売られる場面もありましたが、その後はすぐに戻し直近は2400円台で推移しています。
株価指標(2022年8月19日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
稲畑産業 | 8098 | 2424 | 6.8 | 0.77 | 115 | 4.74 | 32.0 |
株価は底堅い動きが続いていますが、大幅増配を受けて配当利回りは4%後半と高水準です。
業績好調を受けてPER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は32%付近と余裕を感じます。
投資判断
今までの内容をもとに稲畑産業の投資判断ですが、好調な業績に加え今後の配当推移にも期待がもてる銘柄だと思います。
しかし、現在の業績は商品市況の上昇や円安に加え保有株式の売却益まで加わり、かなり絶好調な状態です。
これらの好材料は永遠に続くものではなく、10年単位で考える長期投資においては不安な部分もありますが、2024年3月期までは累進配当が継続される点や保有株式の売却が2027年まで続く点、そして今後に期待が持てる配当方針である事を考慮してポートフォリオの一部として保有しても良い銘柄の様に感じます。
まとめ
今回は、配当方針が独特で今後に期待が持てる高配当株を2銘柄個別に検証しました。
2銘柄とも株主還元姿勢の強さを感じる配当方針で、今後の増配にも期待が持てる内容だと思います。
ただ2銘柄とも第1四半期決算は前期比減益だった事に加え、直近の株価は高値圏にありますので購入のタイミングには注意が必要ですが、今後株価が下がる場面があれば購入候補にしておきたい銘柄です。
配当方針に今後の増配が期待できる高配当株については、YouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
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