最近の日本企業は数年前と比較して株主還元力が向上しており、実際最近の決算でも大幅増配や自社株買いなどによって株主への還元を進めている企業がたくさんあります。
そこで数年前と比較して配当が2倍になっている銘柄を検証しようと思ったのですが、正直2倍程度の増配銘柄はかなりたくさんあり、簡単には選定できない状況です。
という事で今回は数年前と比較して配当が2倍以上になっている「優良株」というジャンルで3銘柄を選出し個別に検証していきます。
【9433】KDDI
最初の銘柄はKDDIでKDDIはNTTとソフトバンクと並ぶ大手通信会社です。
通信業界は2020年に菅総理による通信料金値下げ圧力を受けた為、KDDIも通信料金の値下げプランを発表しましたが、現状は通信料金の落ち込みをその他の成長領域部門でカバーしている状況です。
また、KDDIは7月2日に大規模な通信障害を引き起こし、加入者への賠償額として総額約75億円を支払いに充てると発表し話題にもなりました。
直近決算
KDDIは7月29日に第1四半期決算を発表していますが、最終利益は1918億円と前年同期比で20億円の増益となっており、通期最終利益、年間配当予測に変更はありませんでした。
前期比増益の要因は、通信料金値下げの影響をDX、金融、エネルギーを中心とした注力領域の推進で低減できた為としています。
そして、大規模な通信障害に対する賠償金として加入者3589万人に請求額から200円の減算を発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | KDDI |
2018年3月期 | 5725 |
2019年3月期 | 6176 |
2020年3月期 | 6397 |
2021年3月期 | 6514 |
2022年3月期 | 6724 |
2023年3月期(会社予想) | 6880 |
2018年からの通期最終利益を見ていきますが順調に増益が続いています。
前期は通信料金値下げの影響が懸念されていましたが、他の成長領域でカバーし増益となっています。
今期も現状は増益見込みとなっており、通信障害の賠償金約75億円もこの最終利益推移から考えると大きな影響は無さそうです。
配当推移
銘柄名 | KDDI |
2015年 | 56 |
2016年 | 70 |
2017年 | 85 |
2018年 | 90 |
2019年 | 105 |
2020年 | 115 |
2021年 | 120 |
2022年 | 125 |
2023年(会社予想) | 135 |
そして今回のテーマでもある配当推移ですが、2015年の56円と比較すると今期配当は8年で約2.4倍の135円予測となっています。
KDDIは現在20期連続の増配を継続中で、少しずつ増配している配当推移は高配当銘柄として理想的な展開です。
KDDIの配当方針は、配当性向40%超と利益成長に伴うEPS成長の相乗効果により、今後も持続的な増配を目指すとしています。
株価推移
株価は菅ショックで2604円まで売られ後は上下を繰り返しながら値を戻しています。通信料金値下げの影響が出始めた去年後半に売られるタイミングはありましたが、今年に入ると上昇ペースは加速しており、直近は通信障害の問題で下げる場面もありましたが4300円付近で推移しています
株価指標(2022年9月2日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
KDDI | 9433 | 4280 | 13.7 | 1.89 | 135 | 3.15 | 43.1 |
株価は上昇傾向が続いていますが増配も継続している為、配当利回りは3%前半の水準です。
しかし、最近の株価上昇でPER、PBRに割安感はなく、配当性向は約43%と方針通りです。
投資判断
今までの内容をもとにKDDIの投資判断ですが、業績、配当、企業規模の全てが高配当株として理想的な銘柄だと思います。
好調な業績を背景に増益が続いているなか、20年連続の増配を継続中で、今後の増配も期待できる配当方針です。
しかし、現在の株価は好調な業績やロシアウクライナ情勢を受けてディフェンシブ銘柄として買われた事を考慮しても、少し高い水準だと思います。
指標面に割安感はなくなってきており配当性向も40%を超えていますので、今後も同じ水準で増配が続いていくかは注意が必要です。
以上の点を踏まえKDDIについては高配当株として最適な銘柄ですが、購入はもう少し株価が下がるタイミングを待つくらいの気持ちが良さそうといったところです。
【1925】大和ハウス
2つ目の銘柄は大和ハウスです。
大和ハウスは大阪が本社の住宅総合メーカーですが、住宅の他に商業施設や事業施設も手掛けています。
国内の住宅市場規模は少子高齢化の影響もあり縮小傾向でしたが、コロナショックからの在宅勤務や外出自粛の影響で住宅に対する関心が強まり、近年の住宅市場は回復傾向との事です。
また、現在25の国と地域で地域密着型の事業を展開するなど海外への進出も注力しています。
直近決算
大和ハウスは8月9日に第1四半期決算を発表していますが、最終利益は365億円と前年同期比で20億円の減益となっており、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前年同期比減益の要因は、一般建設市場においては工場及び倉庫の使途が前年比プラスとなり全体でもプラスでしたが、原材料やエネルギー資源の価格上昇の影響としています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 大和ハウス |
2018年 | 2363 |
2019年 | 2374 |
2020年 | 2336 |
2021年 | 1950 |
2022年 | 2252 |
2023年(会社予想) | 2180 |
通期最終利益はコロナショックで業績を落とした2021年以外は概ね順調です
前期はコロナショックの影響が残るなか、⽶国での⼾建住宅事業や国内の賃貸住宅管理事業が堅調に推移したことに加え、物流施設を中⼼に開発物件の売却が順調に進捗した事で業績は回復しています。
今期については、原材料価格の上昇や供給面での制約による世界経済の下振れ懸念など、これまでにない不確実な情勢が続いている事も考慮して現状減益見込みとなっています。
配当推移
銘柄名 | 大和ハウス |
2015年 | 60 |
2016年 | 80 |
2017年 | 92 |
2018年 | 107 |
2019年 | 114 |
2020年 | 115 |
2021年 | 116 |
2022年 | 126 |
2023年(会社予想) | 130 |
2015年からの配当推移をまとめていますが、順調に増配傾向です。
コロナショックの影響を受けた2020年頃は増配幅が1円程度の年も続きましたが、直近の増配幅は勢いが出ています。
そして2015年の配当は60円でしたので、8年で年間配当は2倍以上に増えています。
大和ハウスの配当方針は連結当期純利益35%以上、かつ一株当たり配当金額の下限は130円として業績に連動した利益還元を行い、かつ安定的な配当の維持に努めるとしています。
株価推移
株価はコロナショックで2230円まで売られた後、2021年9月には4000円に迫る水準まで値を戻しました。しかし、そこからは右肩下がりの状況が続き、直近は3100円付近で推移しています。
株価指標(2022年9月2日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
大和ハウス | 1925 | 3091 | 9.3 | 1.00 | 130 | 4.21 | 39.1 |
配当は順調に増配が続くなか最近の株価は下落傾向ですので、配当利回りは4%を超えています。PERは市場平均と比較して割安で配当性向は40%付近と方針通りです。
投資判断
今までの内容をもとに大和ハウスの投資判断ですが、直近の業績は少し低迷していますが、配当は順調に増配が続いており、配当利回りも4%付近と高配当株として魅力を感じる水準です。
原材料費高騰などの影響は気になるところですが、商業施設、物流施設の強化やアメリカ、中国など海外事業にも積極的に投資しており将来性も楽しみな企業です。
最近の株価も低迷気味ですので、建設株を保有していない人はポートフォリオの一部として購入を検討できる銘柄だと思います。
【8031】三井物産
最後の銘柄は三井物産です。
三井物産は三菱商事や伊藤忠商事と並ぶ大手総合商社で従来資源部門に強みを持っていますが、現在非資源部門への収益構造改革も進めているところです。
直近の業績はコロナからの経済回復や商品市況上昇の影響で急回復していますが、ロシアのウクライナ侵攻に絡むロシア極東の石油・ガス開発プロジェクト「サハリン2」の動向などが懸念されている状況です。
直近決算
三井物産は8月2日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は2750億円と前年同期比で838億円の増益でしたが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比大幅増益の要因は、原油、ガス価格上昇によるエネルギー事業の順調な進捗に加え、不動産事業の売却益などの為としています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 三井物産 |
2018年3月期 | 4184 |
2019年3月期 | 4142 |
2020年3月期 | 3915 |
2021年3月期 | 3354 |
2022年3月期 | 9147 |
2023年3月期(会社予想) | 8000 |
2018年からの最終利益を見ていきますが、2021年はコロナショックの影響で大きく減益となっています。
前期はコロナからの経済回復や商品市況上昇の影響で、コロナ前を大きく上回る過去最高の最終利益へ急回復しました。今期は商品市況の落ち着きなどを想定し現状減益見込みとしていますが、第1四半期時点で通期進捗率は約34%の為、今後の上方修正にも期待できそうです。
配当推移
銘柄名 | 三井物産 |
2015年 | 64 |
2016年 | 64 |
2017年 | 55 |
2018年 | 70 |
2019年 | 80 |
2020年 | 80 |
2021年 | 85 |
2022年 | 105 |
2023年(会社予想) | 120 |
配当については、たまに減配や据え置きの年はありますが、ここ数年は好調な業績を背景に増配額にも勢いが出ています。
そして三井物産の今期配当予測120円は、2015年の64円と比較すると2倍弱、2017年の55円と比較すると約2.2倍の水準に上昇しています。
三井物産の配当方針は2023年3月期までの中期経営計画中は年間配当80円を下限とし、1株あたりの基礎営業キャッシュ・フローを引き上げる事で配当の安定的向上を目指す方針です。
株価推移
株価はコロナショックで1378円まで売られた後は、順調に右肩上がりです。特に去年夏頃からは上昇ペースも上がっており、今年に入ってからはロシアウクライナ問題の影響で売られる場面もありましたが、すぐに切り替えし直近は3200円付近で推移しています。
株価指標(2022年9月2日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
三井物産 | 8031 | 3146 | 6.3 | 0.86 | 120 | 3.81 | 23.6 |
株価は強い動きが続いていますが、増配額にも勢いが付いていますので配当利回りは3%後半の水準です。
業績好調によりPER、PBRは市場平均と比較して割安で配当性向は約24%と余裕を感じます。
投資判断
今までの点を踏まえ三井物産の投資判断ですが、今期業績は現状減益見込みとしていますが、数年前と比較すると最終利益は大きく伸びており、好調な業績を背景に配当も大幅増配と高配当株として魅力を感じます。
しかし、株価も数年前と比較して大きく上昇しており、また総合商社の株価は商品市況の影響などで値動きも激しくなりがちです。
商品市況も今後は今までの反動で下がる場面もあるかと思いますが、商品市況が下落すると三井物産の株価も大きく売られる可能性があります。
という事で三井物産については、今後商品市況が下落し株価が大きく下がる場面があれば狙いたいくらいの気持ちで待ち構える方が良さそうな気はします。
まとめ
今回は数年前と比較して配当が2倍以上になっている優良株というテーマで3銘柄を個別に検証しました。
3銘柄とも日本を代表する企業ですが、数年間保有するだけで配当が2倍になるという事はとても凄い事だと思います。
もちろん今後も同様のペースで増配が続くかは分かりませんが、今回の3銘柄の様に少しずつでも増配を継続してくれる銘柄は、高配当株投資家にとって有難い限りです。
冒頭でもお伝えしましたが最近の日本企業は株主還元力を高めており、今回の3銘柄の様に数年前と比較して配当額が2倍以上になっている銘柄は他にもたくさんあります。
今回は「優良株」というテーマでまとめましたが、次回はまた違うテーマで銘柄を絞り個別にまとめてみたいと考えていますので宜しくお願いします。
ここ数年は配当が2倍以上になっている優良高配当株3選はYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
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