今年も残り1ヶ月を切り、残りのNISA枠が少なくなっている人も多いかと思いますが、現行制度では使い切れなかったNISA枠は消滅してしまいますので、なるべくNISA枠の残りが少なくなる様に年末に向けて調整を考えている人もいるかと思います。
ちなみに来年から始まる新NISAでは1年間のNISA枠が余っていたとしても保有限度額内であれば翌年以降に投資可能ですので、無理にNISA枠を使い切る必要は無くなります。
という事で今回は、残りのNISA枠が少ない場合でも買いやすい10万円以下で購入できる高配当株を4銘柄検証します。
【8410】セブン銀行
最初の銘柄はセブン銀行でセブン&アイ・ホールディングス傘下の銀行となっており、コンビニのATM事業では最大手になります。
セブングループに設置しているATMビジネスを入り口として多層的に金融サービスを展開している点は、他の銀行と大きく異なる部分です。
また、アメリカやインドネシアを中心に海外進出も進めており、直近の海外売上比率は2割程度を占めています。
直近決算
セブン銀行は11月10日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は326億円と前年同期比229億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
業績好調の要因は、国内ATM事業が好調に推移している事や負ののれん発生による特別利益 215億円の影響としています。
ちなみに、「のれん」とは買収した企業の純資産額と買収価格との差の事で、実際に買収した企業の純資産額よりも低い金額で買収した場合は、その差額が「負ののれん」として利益に計上できます。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | セブン銀行 |
2019年3月期 | 132 |
2020年3月期 | 261 |
2021年3月期 | 259 |
2022年3月期 | 208 |
2023年3月期 | 188 |
2024年3月期(会社予想) | 383 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、前期までは減益傾向が続いていました。
減益が続いていた要因は、コロナ禍による人流減少やキャッシュレス化の流れなどに加え、第4世代ATMを活用した金融・非金融を問わないサービスの拡大を進めた費用が先行したためとの事です。
今期も事業基盤整備および成長投資による費用増を見込むとして、期初当初は減益見込みにしていましたが、負ののれん発生による特別利益を計上するとして第1四半期に上方修正を発表した事で大きく増益の見込みになっています。
特別利益の影響もあり第2四半期時点の通期進捗率は85%付近となっていますが、今後セブン・カードサービスにおいてマイナポイント事業関連のマイナスが生じる可能性があるとして、第2四半期での上方修正はありませんでした。
配当推移
銘柄名 | セブン銀行 |
2015年 | 8 |
2016年 | 8.5 |
2017年 | 9 |
2018年 | 10 |
2019年 | 11 |
2020年 | 11 |
2021年 | 11 |
2022年 | 11 |
2023年 | 11 |
2024年(会社予想) | 11 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、2019年以降は年間11円で横ばいです。
今期も業績は大きく増益見込みになりましたが、現状は据え置きの予測になっています。
セブン銀行の配当方針は、株主に対する利益の還元を経営上重要な施策の一つとして位置づけており、配当性向については年間40%を維持としています。
株価推移
株価は2015年に661円の高値を付けた後は、右肩下がりが続きました。
しかし、2020年12月に215円まで売られた後はじわじわ反発し、直近は300円前後で推移しています。
株価指標(2023年12月1日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
セブン銀行 | 8410 | 303.7 | 9.3 | 1.28 | 11 | 3.62 | 33.7 |
最近の株価はじわじわ上昇していますが、配当は横ばいの状況が続いていますので配当利回りは3%半ばの水準です。
今期業績は増益見込みですのでPERは市場平均より割安で、配当性向は34%付近となっています。
投資判断
今までの内容からセブン銀行の投資判断について、業績は減益が続いていましたが、今期は大きく増益の見込みとなっています。
ただ、増益の要因は負ののれん発生による一時的なもので、特別利益を除くと今期も減益の状況に変わりはありません。
海外を含め市場開拓を進めており、売上は増えているだけに先行投資が落ち着けば利益も伸びて行きそうに思いますが、来期は今期の反動で大きく減益となる可能性が高そうです。
以上の点を踏まえると、大きく購入する事は少し怖いですが、最低購入金額は3万円付近と格安ですので、NISA枠の残りで購入する銘柄としては適しているのかもしれません。
【4658】日本空調サービス
2番目の銘柄は日本空調サービスです。
日本空調サービスは、建物設備のメンテナンス・維持管理、設備・環境診断、ソリューション提案を行う建物設備のトータルサポート企業です。
顧客の中心は大型病院や製造工場などの特殊な環境を有する施設が占めており、維持管理に高度な技術が必要な事や参入障壁が高い点は強みとなっています。
また、技術系の従業員は2000人を超えており、海外にも6ヵ国、10の拠点があります。
直近決算
日本空調サービスは10月31日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は7億円と前年同期比3億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因は、資機材の調達価格や人件費上昇などの影響はありましたが、病院及び研究施設、製造工場などにおけるスポットメンテナンスの増加やリニューアル工事も同施設での案件消化が好調なためとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 日本空調サービス |
2020年3月期 | 18 |
2021年3月期 | 19 |
2022年3月期 | 28 |
2023年3月期 | 19 |
2024年3月期(会社予想) | 20 |
2020年からの通期最終利益を見ていきますが、業績が大きく伸びた2022年以外は20億円前後で安定しています。
2022年に業績が伸びた要因は、保有株式の売却益13億円を計上したためとの事で過去最高益になっており、前期は保有株式売却の反動もあり大きく減益となっています。
今期は増益の見込みとしているなか、第2四半期時点の通期進捗率は39%付近となっていますが、例年第1四半期が低調な水準になる傾向がありますので、過去5年間の平均水準で推移しています。
配当推移
銘柄名 | 日本空調サービス |
2015年 | 12.5 |
2016年 | 15 |
2017年 | 22 |
2018年 | 23 |
2019年 | 26 |
2020年 | 28 |
2021年 | 28.5 |
2022年 | 41.5 |
2023年 | 28 |
2024年(会社予想) | 30 |
2015年からの配当推移を見ていきますが順調に増配傾向が続いていたなか、2022年は業績好調を背景に大きく増配となっていますが、内訳は保有株式売却に絡む特別配当が15円となっています。
そして前期は特別配当の反動で減配となっていますが、今期は2円の増配見込みで年間配当は30円台に乗せる予測となっています。
日本空調サービスの配当方針は、純資産配当率を意識した株主還元の実施としており、具体的な目安は資本生産性(ROE)を高めた上で配当性向50%を維持としています。
株価推移
株価はコロナショックで530円まで売られる場面がありましたが、その後は700円付近まで急速に値を戻しています。
その後、2021年9月に保有株式売却による業績の上方修正と大幅増配を発表した事で887円まで上昇しましたが、今年1月には再度600円台まで売られ、直近は800円前後まで反発しています。
株価指標(2023年12月1日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
日本空調 | 4658 | 798 | 13.7 | 1.24 | 30 | 3.76 | 51.5 |
最近の株価はじわじわ上昇していますが、今期配当は増配見込みですので配当利回りは3%後半となっています。
今期業績は増益見込みですがPER、PBRに割安感はなく、配当性向は51%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容から日本空調サービスの投資判断について、保有株式の売却で一時的に利益が伸びた時期はありましたが、基本的に業績は安定傾向です。
業績が安定している要因は、病院や製造工場などの特殊な環境を有する施設と年間契約を結んでいる事が強みですので、今後も安定した業績や配当が期待できそうです
以上の点を踏まえると、最低購入金額も8万円前後と購入しやすいので、NISA枠の残りで狙いたくなる銘柄です。
【9432】NTT
3番目の銘柄はNTTです。
NTTは通信事業を主体とするNTTグループの持株会社で、2020年にはNTTドコモを完全子会社化しています。
今後の方針として次世代の情報ネットワークに関する構想であるIOWNによる新たな価値創造や金融サービス、ヘルスケア・メディカルサービスなどに注力する方針で、今後5年間で成長分野へ約8兆円を投資予定としています。
そんななか、今年株式の25分割を行い最低購入金額が大きく下がっています。
直近決算
NTTは11月7日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は6708億円と前年同期比258億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、グローバルソリューション事業は堅調に推移していますが、不動産、エネルギー事業が減益となったためとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | NTT |
2019年3月期 | 8545 |
2020年3月期 | 8553 |
2021年3月期 | 9161 |
2022年3月期 | 11810 |
2023年3月期 | 12131 |
2024年3月期(会社予想) | 12550 |
2019年からの通期最終利益について、コロナショックを受けた2020年でもぎりぎり増益を維持しているなか、ここ数年の増益幅は数年前と比較して勢いが付いています。
業績好調の要因は通信料金値下げの影響があるなか、企業のデジタル変革の取り組みが急速に広がり国内外でITサービスの需要が増えたことや、テレワークの拡大で家庭向けのインターネットサービスの契約が増えたためとしています。
そして、今期業績は電気代高騰の影響が不透明ではあるとはしているなか、更に増益の見込みとしていますが、第2四半期時点の通期進捗率は53%付近と例年の平均60%は下回っている水準です。
配当推移
銘柄名 | NTT |
2015年 | 1.8 |
2016年 | 2.2 |
2017年 | 2.4 |
2018年 | 3 |
2019年 | 3.6 |
2020年 | 3.8 |
2021年 | 4.2 |
2022年 | 4.6 |
2023年 | 4.8 |
2024年(会社予想) | 5 |
2015年からの配当推移をみていきますが、減配はもちろん据え置きの年すらなく順調に増配傾向です。
金額の単位が細かくなっているのは株式分割の影響ですが、今期見込みは2015年と比較すると2倍以上へ増えています。
NTTの配当方針は、株主還元の充実は当社にとって最も重要な経営課題の一つとし継続的な増配の実施を基本的な考え方としています。
株価推移
株価は2020年10月に85円まで売られましたが、その後は右肩上がりの状況です。
ただ、去年後半以降は反落する場面もあり、今年に入ると分割の権利落ち前に上昇する場面がありましたが、直近は170円前後で推移しています。
株価指標(2023年12月1日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
NTT | 9432 | 173.2 | 11.7 | 1.58 | 5 | 2.89 | 33.8 |
順調に増配が続いていますが、最近の株価は上昇していますので配当利回りは2%後半の水準です。
業績は過去最高益が続いていますのでPERは市場平均と比較して割安で、配当性向は34%付近となっています。
投資判断
今までの内容からNTTの投資判断について、日本を代表する企業で業績や配当が順調に推移しているなか、株式分割により最低購入金額も2万円以下と購入しやすくなりました。
実際、株式分割前(2023年3月)と比較して株主数は1.5倍超に増えているとの事でしたので、今後も継続した買い需要が期待できそうな印象です。
その分、最近の株価はじわじわ上昇している事で配当利回りも3%前後まで低下していますが、今までの配当推移や配当方針から今後の増配にも期待できますので、NISA枠の残りに限らず狙いたくなる銘柄です。
【2317】システナ
最後の銘柄はシステナです。
システナは独立系のシステム開発会社で、ITのソリューション提案やIT・クラウドサービス、IT商品の提供に加え、保守・運用までトータルなシステム支援を手掛けています。
自動運転や車載システム、社会インフラ、ネットビジネスに加え、公共系の基幹・周辺システム開発など幅広い分野に進出しています。
直近決算
システナは10月26日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は29億円と前年同期比1億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、ネットビジネス分野で不採算プロジェクトが発生した影響としています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | システナ |
2020年3月期 | 54 |
2021年3月期 | 49 |
2022年3月期 | 59 |
2023年3月期 | 73 |
2024年3月期(会社予想) | 72 |
2020年からの通期最終利益について、コロナ感染拡大の影響を受けた2021年は減益となっていますが、その後は順調に増益が続いています。
そして前期は、コロナからの経済回復が進むなか車載事業で大型案件を受注できた事やIT機器の導入、インフラ構築、クラウド活用、保守運用に至る高付加価値のワンストップサービス案件が増えた事で過去最高益を記録しています。
今期も引き続きDX関連の堅調な需要は続くと見込んでいますが、資源高や物価高など先行き不透明感があるとして微減益の予測にしているなか、第2四半期時点の通期進捗率は40%付近と少し心配な水準になっています。
配当推移
年 | システナ |
2015年 | 1.88 |
2016年 | 2 |
2017年 | 2.25 |
2018年 | 2.88 |
2019年 | 4 |
2020年 | 5 |
2021年 | 5 |
2022年 | 6 |
2023年 | 8 |
2024年(会社予想) | 10 |
2015年からの配当推移について、システナは何度か株式分割を行っているため金額を調整していますので、かなり細かい数字になっていますが減配はなく、順調に増配が続いています。
特に最近は好調な業績を背景に増配額も大きくなっていますので、今期見込みは2015年と比較すると5倍以上の水準です。
システナの配当方針は、各事業年度の業績および財務状況ならびに経営基盤の強化と今後の事業展開などを勘案し、連結配当性向40%以上を目標に積極的に実施としています。
株価推移
株価はコロナショックで259円まで売られましたが、2021年9月には622円まで上昇しました。
しかし、そこからは右肩下がりの状況で今年10月には235円まで値を下げましたが、直近は300円前後で反発しています。
株価指標(2023年12月1日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
システナ | 2317 | 297 | 15.9 | 3.22 | 10 | 3.37 | 53.5 |
直近の株価は反発していますが、配当は増配が続いていますので配当利回りは3%半ばの水準です。
業績は増益が続いていますがPERに割安感はなく、配当性向は53%付近となっています。
投資判断
今までの内容からシステナの投資判断ですが、DX関連の堅調な需要を背景に最近の業績は増益傾向となっているなか、配当も増配が続いており、最低購入金額も3万円前後と購入しやすい水準です。
そんななか、今期第2四半期までの進捗率は少し心配な水準で指標面に割安感もなく、配当性向も50%を超えていますが、さすがに最近の株価は低迷し過ぎの様に見えます。
今後の業績もDX市場の成長と共に伸びて行きそうな印象ですので、NISA枠の残りで狙いたくなります。
まとめ
今回は最低購入金額が10万円以下と格安で、NISA枠の残りで狙いたくなる4つの高配当株を検証しました。
10万円以下としていながら、日本空調サービス以外は最低購入金額が3万円台以下となっていますので、かなり狙いやすい水準だと思います。
実際、NTTの株主数が株式分割後に大きく増えている事を踏まえると、最低購入金額が低い事は投資基準の1つになっている印象です。
そんななか、今回の4銘柄の業績や配当は概ね順調に推移しており、NISA枠の残りでなくても気になる銘柄ですので、チェックしておきたいところです。
残りのNISA枠で狙える4つの高配当株についてはYouTubeで動画版も投稿していますので、あわせてご覧ください。
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