コロナショック以降の日本株は強い動きが続いており、その要因は日本企業の株主還元力向上や海外投資家による日本株見直しの動きに加え、東証によるPBR1倍割れ銘柄への是正要請など様々あるかと思いますが、1番根本的な理由は日本企業の業績好調だと思います。
実際、最近の日本企業はコロナからの経済回復や商品市況上昇に加え、円安などの影響を受けて業績が好調に推移している銘柄が多いです。
そんななか、企業によってはコロナショックも関係なく過去数年間に渡り最高益が続いている銘柄もあります。
業績が毎年過去最高益を更新しているという事は、今後の増配や株価上昇に対する期待も高まりますので、今回は過去数年間の業績が最高益を更新し続けている4つの銘柄を検証していきます。
【1419】タマホーム
最初の銘柄はタマホームです。
タマホームは住宅事業に特化しているハウスメーカーで、現状売上の約8割を住宅関連事業が占めています。
そして住宅の中でも注文建築の木造住宅に特化しており、価格が他のメーカーと比較して安い事や宣伝にも力を入れている事で近年急速に成長している企業です。
直近決算
タマホームは5月決算のため、7月11日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は87億円と5億円の増益、配当は55円増配の年間180円としています。
今期予測は最終利益が92億円と5億円の増益見込みとしているなか、配当は5円増配の年間185円で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | タマホーム |
2019年5月期 | 39 |
2020年5月期 | 51 |
2021年5月期 | 71 |
2022年5月期 | 82 |
2023年5月期 | 87 |
2024年5月期(会社予想) | 92 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、コロナショックも関係なく増益が続いており、前期までで5期連続の過去最高益となっています。
コロナ禍でも業績が好調だった要因は、住宅取得支援策の実施やコロナ禍における生活様式の変化を背景に住宅取得への関心が高まり、新設住宅着工戸数が2020年夏頃より回復するなど、需要が堅調に推移したためとの事です。
前期も原材料価格の上昇は進みましたが価格転嫁が進んだ事や築年数10年以上の戸建てを中心に住宅設備の取り換えやメンテナンスの需要を取り込んだ事でリフォーム事業が堅調に推移し過去最高益となっています。
そして、今期も好調な流れは継続する見込みとして更に増益の予測にしています。
配当推移
銘柄名 | タマホーム |
2015年 | 10 |
2016年 | 10 |
2017年 | 15 |
2018年 | 30 |
2019年 | 53 |
2020年 | 70 |
2021年 | 100 |
2022年 | 125 |
2023年 | 180 |
2024年(会社予想) | 185 |
2015年からの配当推移を見ていきますが概ね順調に増配が続いているなか、最近の増配幅は業績好調を背景に大きくなっています。
特に前期配当は創業25周年の記念配当が35円含まれてはいましたが大きく増配となっており、今期は普通配当のみで更に増配の予測としています。
タマホームの配当方針は、株主の皆様への利益還元を重要な経営課題の一つと認識しており、経営成績に応じて株主の皆様への利益還元を継続的に行うとしています。
株主優待
タマホームには継続保有年数によってクオカードがもらえる株主優待がありますので、内容を表にまとめています。
タマホーム | 保有継続年数 | 金額 | 優待品 | |||
100株以上 | 3年未満 | 500円 | クオカード | |||
3年以上 | 1000円 | クオカード |
金額はそこまで大きくないですが、5月と11月の年2回もらえる株主優待は珍しいかと思います。
株価推移
株価はコロナショックで898円まで下げましたが、その後は上下を繰り返しながらも上昇しています。
そして今年に入ると上昇ペースが加速し、5月には4000円を超える場面もありましたが、その後は権利落ちもあり反落し、直近は3600円前後で推移しています。
株価指標(2023年9月8日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
タマホーム | 1419 | 3610 | 11.4 | 3.00 | 185 | 5.12 | 58.3 |
最近の株価は5月の高値からは下落しているなか、増配が継続している事で配当利回りは5%前後と高水準です。
業績は好調ですがPERにそれ程割安感はなく、配当性向は58%付近となっています。
投資判断
今までの内容からタマホームの投資判断ですが、業績や配当は順調に伸びており、5%台の配当利回りも魅力的です。
しかし、住宅市場は今後の金利引き上げや景気後退が懸念材料で、業績も過去最高益は続いていますが、以前程の勢いは無くなっている印象です。
以上の点を踏まえると、現在の株価は上場来の高値付近である事も考慮し、今後の業績推移や国内の経済動向をもう少し見守りたいかなというところです。
【9769】学究社
2番目の銘柄は学究社です。
学究社は東京を中心に関東圏で都立中高一貫校や都立難関高校向けの対策塾として進学塾「ena」を運営しています。
また、看護系や医療技術系の大学、専門学校の予備校、帰国子女の受験対策指導などに加え、インターネットによる受験・教育情報の配信サービスを行う「自宅ena」も提供しています。
直近決算
学究社は8月10日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は6000万円の赤字と前年の4000万円の赤字から約2000万円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
第1四半期が赤字の要因について、新学期がスタートする第1四半期は生徒数が最も少なく、受験期を迎える第3、第4四半期で生徒数が最も増加する傾向があるとして、例年第1四半期は赤字になっているためとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 学究社 |
2020年3月期 | 9 |
2021年3月期 | 11 |
2022年3月期 | 15 |
2023年3月期 | 18 |
2024年3月期(会社予想) | 20 |
2020年からの通期最終利益を見ていきますが、コロナ前の2019年は減益となっていますが、2020年以降は順調に増益が続いており、前期までで4期連続の過去最高益となっています。
コロナ渦でも増益が続いた要因は、都立中高一貫校や都立難関高校入試への対策を強化しブランドイメージを強化した事やオンラインサービスを拡充させたためとの事です。
そして、前期は小中学生部門の受験学年を中心に生徒数が堅調に推移した事やコロナ禍で中止したGW合宿や週末合宿を例年通りに実施した事で増益となっており、今期も積極的な新規開校や「自宅ena」関連設備の更なる拡充でDX事業を推進する事により更に増益の見込みにしています。
配当推移
年 | 学究社 |
2015年 | 50 |
2016年 | 60 |
2017年 | 60 |
2018年 | 60 |
2019年 | 60 |
2020年 | 60 |
2021年 | 65 |
2022年 | 75 |
2023年 | 87 |
2024年(会社予想) | 87 |
2015年からの配当推移について、数年前までは60円で据え置きの年が続いていましたが、最近の配当は過去最高益が続く業績と連動し、増配が続いています。
そんななか、今期も業績は増益見込みですが、配当は現状据え置きの予測になっています。
学究社の配当方針は、株主に対する利益還元を経営の重要課題として位置付けるとともに、今後の収益力向上のための内部留保による企業体質の強化を図りながら、業績に対応した成果の配分を行うとしています。
株価推移
株価はコロナショックで963円まで売られた後は、停滞する時期を挟みながらも上昇しています。
そして、今年に入ると上昇ペースが加速し5月には2257円まで上昇しましたが、直近は2000円付近で推移しています。
株価指標(2023年9月8日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
学究社 | 9769 | 2004 | 10.7 | 4.32 | 87 | 4.34 | 46.6 |
最近の株価はここ数年の高値圏で推移していますが、順調に増配が継続している事で配当利回りは4%前半と高水準です。
過去最高益が続いていますがPERにそれほど割安感はなく、配当性向は46%付近となっています。
投資判断
今までの内容から学究社の投資判断について、業績はコロナ渦でも過去最高益が続くなか、配当も増配が続いていますので、配当利回りは4%台と高水準です。
進学塾という事で今後の少子化は懸念材料ですが、今後も積極的な新規出店を進める事やオンライン授業の強化により更なる増益も期待できそうな雰囲気です。
以上の点を踏まえると、最近の株価はここ数年の高値圏ではありますが、高配当株として気になる銘柄です。
【9381】エーアイテイー
3番目の銘柄はエーアイテイーです。
エーアイテイーは、国際貨物輸送事業を手掛ける物流企業ですが、自社では輸送手段を所有せず需要に応じて運送業者のサービスを利用して貨物輸送を行っています。
アパレルや日用雑貨を主力に中国・東南アジア間の国際貨物輸送や付帯する輸出入通関サービスを手掛けています。
そして、直近業績の海外売上比率は中国を中心に20%程度の水準となっています。
直近決算
エーアイテイーは7月12日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は7億円とほぼ前年並みの業績になっており、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
業績が前期並みだった要因は、外出機会が増加した事でアパレル関連の取扱いは復調の動きが見られましたが、雑貨関連などのノンアパレル製品は顧客の在庫調整やコロナ禍での需要が一巡したことで荷動きが弱く、また国際貨物の取扱量が低調だった事に加えて海上輸送の運賃下落の影響などとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | エーアイテイー |
2020年2月期 | 13 |
2021年2月期 | 17 |
2022年2月期 | 23 |
2023年2月期 | 36 |
2024年2月期(会社予想) | 37 |
2020年からの通期最終利益を見ていきますが、順調に増益が続いているなか前期までで5期連続の過去最高益となっています。
コロナ渦でも増益が続いた要因は、外出自粛の影響などからアパレル関連製品の取扱いは低調でしたが、日用・生活雑貨などは在宅時間の増加から取扱いが堅調に推移した事や海上運賃高騰の影響などとしています。
前期は上海でのロックダウンによる物流の停滞と混乱などによる在庫調整で貨物の取扱量は減少しましたが、海上運賃は高い水準で推移した事や円安の影響で増益となっており、今期は主力である国際貨物輸送や通関、配送、輸出入の付帯業務の受注増加に注力する事に加え、三国間輸送の獲得も精力的に行う事で更に増益の見込みにしています。
配当推移
年 | エーアイテイー |
2015年 | 50 |
2016年 | 30 |
2017年 | 30 |
2018年 | 35 |
2019年 | 36 |
2020年 | 36 |
2021年 | 38 |
2022年 | 58 |
2023年 | 80 |
2024年(会社予想) | 80 |
2015年からの配当推移について、数年前までは30円台での推移でしたが、最近の増配幅は業績好調を背景に大きくなっています。
特に2022年は一気に20円の増配となっており、前期も22円の増配と大幅増配が続いています。
エーアイテイーの配当方針は、安定的かつ継続的に各期の連結業績、配当性向、将来の国内外での事業展開及び経営基盤の強化を図るための内部留保を総合的に勘案するとしており、具体的な目安は連結配当性向50%としています。
株価推移
株価はコロナショックで529円まで売られましたが、去年7月には1952円まで上昇しました。
その後は1300円台まで反落する場面がありましたが、直近は1800円付近まで値を戻しています。
株価指標(2023年9月8日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
エーアイテイ | 9381 | 1795 | 11.4 | 2.63 | 80 | 4.46 | 50.8 |
最近の株価はここ数年の高値圏で推移していますが、最近の大幅増配により配当利回りは4%半ばと高水準です。
業績は過去最高益が続いていますがPERにそれほど割安感はなく、配当性向は50%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容からエーアイテイーの投資判断について、業績は過去最高益が続いているなか最近の大幅増配により配当利回りも4%台と高水準です。
しかし、業績好調の要因は運賃高騰の影響が大きかった事や今後の中国経済に不安な点がある事は懸念材料です。
以上の点を踏まえると、株価がここ数年の高値圏で推移している事を含め、もう少し様子を見たい銘柄です。
【8424】芙蓉総合リース
最後の銘柄は芙蓉総合リースです。
芙蓉総合リースは、みずほ系の総合リース会社で情報関連、事務機器のほか不動産リースに強みを持っています。
また、「前例のない場所へ」をテーマにリースの枠組みを超え新たな領域へ果敢にチャレンジしていくとしており、医療福祉事業や再生可能エネルギー事業も手掛けています。
直近決算
芙蓉総合リースは7月28日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は93億円と前年同期比11億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
業績好調の要因は、リース及び割賦の売上高は前年同期比で3割以上減少しましたが、ファイナンス事業が好調に推移したためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 芙蓉総合リース |
2019年3月期 | 255 |
2020年3月期 | 261 |
2021年3月期 | 295 |
2022年3月期 | 338 |
2023年3月期 | 389 |
2024年3月期(会社予想) | 430 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、コロナショックでも減益には陥っておらず、前期までで8期連続の過去最高益となっています。
増益が続いている要因は、エネルギー環境や不動産などの戦略分野へ経営資源を集中的に投下した事により戦略分野の領域拡大が実現している事に加え、持分法投資利益など営業外収益も拡大したためとしています。
そして、今期も好調な流れは継続する見込みとして更に増益の予測にしているなか、第1四半期時点の通期進捗率は22%付近と前期比では増益でしたが、少し微妙なスタートになっています。
配当推移
銘柄名 | 芙蓉総合リース |
2015年 | 80 |
2016年 | 100 |
2017年 | 130 |
2018年 | 146 |
2019年 | 188 |
2020年 | 205 |
2021年 | 240 |
2022年 | 285 |
2023年 | 343 |
2024年(会社予想) | 390 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、好調な業績と連動して順調に増配が続いています。
特に最近の増配ペースには勢いが付いており、今期予測は2015年の配当と比較すると約5倍の水準となっています。
芙蓉総合リースの配当方針は、株主の皆様への長期的・安定的な利益還元に努めることを基本方針としており、具体的な数値としては2026年度までに配当性向30%を目指すとしています。
株主優待
芙蓉総合リースには、100株以上の株主に対してカタログギフトか図書カードがもらえる株主優待があります。
金額は2年未満の継続保有で3000円相当、2年以上の継続保有で5000円相当となっていますが、現在の株価だと100株で100万円を超えますので、なかなか手を出しにくい存在です。
株価推移
株価はコロナショックで4585円まで下落した後は、停滞する時期も挟みながら上昇しています。
そして去年春以降は上昇ペースが加速し、直近は1万2000円前後と上場来高値の水準で推移しています。
株価指標(2023年9月8日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
芙蓉総合リース | 8424 | 12540 | 8.8 | 1.00 | 390 | 3.11 | 27.3 |
最近の株価は上場来の高値付近まで上昇していますが、増配ペースも大きいため配当利回りは3%台を維持しています。
業績好調によりPERは市場平均と比較して割安で、配当性向は27%付近と余裕を感じる水準です。
投資判断
今までの内容から芙蓉総合リースの投資判断ですが、業績、配当は順調に推移しており、リース銘柄らしく株主還元力も抜群です。
今後についても戦略分野の更なる成長や現在の余裕ある配当性向を踏まえると、更なる増益や増配にも期待できそうです。
しかし、その分最近の株価は大きく上昇しており、最低購入金額も100万円を超えていますので、芙蓉総合リースについては狙うにしても新NISAが始まる来年以降かなというところです。
まとめ
今回は過去最高益が続いている4銘柄が高配当株として投資可能か検証しました。
日本は成熟市場である事やコロナショックがあった事を踏まえると、前期比増益にするだけでも大変な現代社会ですが、今回の4銘柄は過去数年に渡り最高益を更新し続けています。
その分、株価が大きく上昇している銘柄や今後の業績推移に懸念事項がある銘柄もありましたので単純に投資対象にできるかは難しいところですが、個人的に今回の4銘柄では学究社が良さそうに思えました。
過去最高益が続いている4つの高配当株はYouTubeで動画版も投稿していますので、あわせてご覧ください。
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