今回は最近の原油高で業績、株価ともに好調な石油元売り大手3社のエネオス、出光興産、コスモエネルギーについて高配当株としての比較検証を行います。
大手3社の現状や今週発表された第2四半期決算の内容を比較検証し高配当株としておすすめの銘柄を選定していきます。
石油元売り会社とは
そもそも石油元売り会社とは石油の輸入、精製、販売を一貫して行っている会社の事です。
日本は石油原料のほぼ全てを輸入に頼っている為、原油を輸入し精製してガソリンスタンド等で販売する事が一般的です。
しかし、ガソリンの国内需要は人口減少やハイブリット車の普及で年に数%ずつ減少しており、また世界的な脱炭素の流れもあり石油元売り会社は厳しい経営環境が続いています。
その様な状況もあり石油元売り業界は再編が進んでおり、1980年代初めに15社あった石油元売り会社は現在5社のみとなっています。
今回はその5社のうち代表的なENEOS、出光興産、コスモエネルギーの3社について個別で比較検証を行います。
石油元売り会社の現状
石油関連株の業績はその時の原油価格によって在庫で持っている石油の価格も上下し、ガソリン等の石油製品の利益も変わってくる為、 石油関連会社の業績は原油の価格に大きく左右されます。
2020年3月期から2021年3月期にかけてはコロナ禍によるガソリン需要の減少に加え原油価格の下落が加わり各社とも厳しい業績になっています。
業績推移(2022年3月期第1四半期迄)
銘柄名 | ENEOS | 出光 | コスモHD |
2018年3月期 | 3619 | 1623 | 728 |
2019年3月期 | 3223 | 814 | 531 |
2020年3月期 | -1879 | -229 | -281 |
2021年3月期 | 1139 | 349 | 859 |
2022年3月期(会社予想) | 1400 | 850 | 400 |
こちらに2018年から2022年3月期第1四半期決算迄の石油元売り3社の業績推移をまとめています。
2020年3月期はコロナ禍からの原油安で3社とも大きく赤字に転落してます。
しかし今期についてはコロナからの経済回復と原油高によりコロナからの復活を目指す会社予想となっています。
配当推移 (2022年3月期第1四半期迄)
銘柄名 | ENEOS | 出光 | コスモHD |
2015年 | 16 | 50 | 0 |
2016年 | 16 | 50 | 40 |
2017年 | 16 | 50 | 50 |
2018年 | 19 | 80 | 50 |
2019年 | 21 | 100 | 80 |
2020年 | 22 | 160 | 80 |
2021年 | 22 | 120 | 80 |
2022年(会社予想) | 22 | 120 | 80 |
続いて2015年からの配当推移をまとめています。
激しい業績と比較すると各社とも配当は安定しています。
石油元売り会社3社を個別で検証
ここからは石油元売り会社3社を個別で検証していきます。
また先程ご説明した様に石油元売り会社の業績は原油価格の影響を大きく受けますので原油価格の株価グラフを参考に載せておきますので各銘柄の値動きと比較してみて下さい。
ENEOS
- ENEOSは石油製品の精製および販売等を行う企業で日本の石油元売として最大手で世界でも第6位の規模
- 2020年3月期はコロナの影響で1879億円と大幅赤字に転落
- 配当については中期経営計画中(2020年度~2022年度)は現状を下回らない配当水準とする方針
出光興産
- 出光は石油元売り会社として国内でENEOSに次ぐ規模
- 2020年3月期はコロナの影響で229億円の赤字
- 配当方針は既存事業の強化と将来の事業展開に向けた戦略投資、財務体質の改善及び業績のバランスを勘案し、年間120円の安定的な配当を実施
コスモエネルギー
- コスモエネルギーHDは石油元売り会社で国内3位の規模
- 2020年3月期はコロナの影響で281億円の大幅赤字
- 配当については財務体質の健全化を考慮しながら、株主還元の比重を高めていく方針
石油元売り3社の2022年3月期第2四半期決算内容
ここからは今週発表された石油元売り3社の2022年3月期第2四半期決算の内容を個別にまとめています。
ENEOS
- 通期最終利益を1400億円増の2800億円へ上方修正
- 主な要因は資源価格の上昇や先端素材の増販などにより、 石油・天然ガス開発、金属セグメントの大幅改善
- 株主還元の考え方に変更はなく、年間配当は22円のまま
出光興産
- 通期最終利益を1350億円増の2000億円へ上方修正
- 主な要因は原油価格による資源セグメントの回復
- 配当については据え置きの年間配当120円
コスモエネルギー
- 通期最終利益を530億円増の930億円へ上方修正
- 業績好調の要因は原油価格の上昇、各種市況の改善、石油製品の販売数量増など
- 業績の上方修正により配当は20円増の年間配当100円へ増配
2022年3月期第2四半期決算後の業績、配当、株価等推移
決算発表後の業績、配当、株価等のデータを表にまとめています。
業績推移
銘柄名 | ENEOS | 出光 | コスモHD |
2018年3月期 | 3619 | 1623 | 728 |
2019年3月期 | 3223 | 814 | 531 |
2020年3月期 | -1879 | -229 | -281 |
2021年3月期 | 1139 | 349 | 859 |
2022年3月期(会社予想) | 2800 | 2200 | 930 |
今回の決算で3社とも通期最終利益を上方修正しています。
配当推移
銘柄名 | ENEOS | 出光 | コスモHD |
2015年 | 16 | 50 | 0 |
2016年 | 16 | 50 | 40 |
2017年 | 16 | 50 | 50 |
2018年 | 19 | 80 | 50 |
2019年 | 21 | 100 | 80 |
2020年 | 22 | 160 | 80 |
2021年 | 22 | 120 | 80 |
2022年(会社予想) | 22 | 120 | 100 |
配当についてはENEOS、出光は据え置き、コスモは20円増配です。
株価等データ
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
ENEOS | 5020 | 450.1 | 5.2 | 0.57 | 22 | 4.89 | 25.22 |
出光 | 5019 | 3070 | 4.1 | 0.70 | 120 | 3.91 | 16.21 |
コスモHD | 5021 | 2357 | 2.1 | 0.53 | 100 | 4.24 | 9.00 |
最近の原油高で株価は上昇傾向です。
そして3社とも配当利回りは高めですが業績の上方修正で配当性向は低めです。
石油元売り会社の投資判断
石油元売り会社の投資判断ですが、どの会社も石油に依存した利益構造に変革が必要な事は明らかです。
世界的な脱炭素の流れもあり、日本でも2035年までに新車発売で電動車100%を実現すると表明しています。
この目標が期限通りに達成出来るかは不透明ですが、世界的に同様の流れですので将来的にガソリン車はこの世から無くなる可能性が高いです。
当然ガソリンの需要は減りますのでガソリンスタンドの存在も気になるところです。
しかし、この様な事は石油元売り会社が1番理解していると思いますし、ガソリンは使用しなくなったとしても代替エネルギーは必要になると思います。
そこで石油元売り会社は水素や再生可能エネルギー、天然ガスを使用したエネルギー開発に力を入れています。
という事でここからは石油元売り3社が現在石油以外に力を入れているエネルギー分野についてまとめています。
ENEOS
- 炭素・循環型社会への貢献、成長事業の育成・強化および 事業ポートフォリオの最適化を目的に中期経営計画を着実に実行
- ジャパン・リニューアブル・エナジーの株式を取得し日本を代表する再生可能エネルギー事業者への飛躍を目指す
- グリーンイノベーション(GI)基金を活用した水素サプライチェーン構築を推進
- 脱炭素社会に向けた事業環境変化を踏まえ石炭事業から撤退
出光興産
- カーボンニュートラル社会に向けて、エネルギー・マテリアルトランジション、先進マテリアル、 次世代モビリティ&コミュニティにつながる各種取り組みに着手強化中
- リチウム固体電解質の事業化・先進マテリアルの開発を加速させるとして、 固体電解質の商業生産に向けた実証設備の稼働
- 太陽光・風力・バイオマスの再エネ電源開発を拡大するとして、国内、海外のメガソーラーの運転を開始
- 国内外での地熱事業を拡大
コスモエネルギー
- 風力発電事業を行うコスモエコパワー、太陽光発電事業を行うCSDソーラー等で再生可能エネルギー部門の収益拡大を目指す
- 陸上サイトの拡大に加え、洋上サイトプロジェクトへの参画など、長期的な事業拡大を目指す方針
石油元売り会社の投資判断
以上のように各社とも様々な方法で石油に頼らない利益構築体制を目指している事がわかるかと思います。
以上のような点を考慮すると石油元売り会社という定義は将来的に無くなってしまうかもしれませんが、エネルギー元売り会社として石油元売り会社が今後発展していく可能性は十分あるかと思います。
まとめ
今回は石油元売り会社についてまとめました。
同じ業種の場合、業績や会社方針が同じ傾向に偏る事は多いかと思いますが、石油元売り会社の場合はその傾向が特に強い様に感じました。
その1番の要因は原油価格が業績に与える影響が大きい事のような気がします。
原油価格については会社単位ではどうしようも無い部分ですので、致し方ない点だと思います。
その様な状況ですので石油元売り会社についてはどの銘柄を購入しても大差はないような気がしました。
もちろん個別にマイナス要因が発生する可能性はありますので、同じ業界でも投資銘柄は分けた方が良いと思うのですが、石油元売り会社への投資を考える場合は企業規模や配当利回りの部分でも、とりあえずENEOSを持っていれば大丈夫な気はします。
個人的にも石油元売り銘柄はENEOSを400株保有しているだけですので、今後の動向次第では買い増しを検討したいと思っています。
石油元売り銘柄3社の検証についてはYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧下さい。
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