今回は今週発表されたオリックスの本決算内容をみていきます。
株主還元姿勢が高く個人投資家からも人気がある銘柄ですが、今回の決算では増配と株主優待の廃止が同時に発表されましたので、オリックスは今後高配当銘柄として投資可能か検証していきます。
オリックスの現状
オリックスは現在リース業にとどまらず、不動産、金融、事業投資など様々な事業で海外を含む多くの企業と取引している為、コロナショックの影響を大きく受け2021年3月期の業績は低迷しました。
しかし、2022年3月期はコロナショックからの反動や会計ソフト弥生の売却益を第4四半期に計上する事に伴い、去年12月に通期最終利益を3100億円へ従来予想から600億円上方修正しています。
コンセンサス予想
銘柄 | コード | 会社予想(億円) | コンセンサス予想(億円) | |
オリックス | 8591 | 3100 | 3179 |
オリックスの決算発表前の最終利益について会社予想と四季報コンセンサスを表にしていますが、コンセンサス予想の方が79億円高い金額になっています。
また、オリックスは前期年間配当を配当性向33%もしくは年間配当78円のいずれか高い方としており、前期の配当額も本決算の注目点でした。
以上の事を踏まえ、オリックスが5月11日に発表した本決算をみていきます。
本決算
オリックスの2022年3月期最終利益は3121億円で1198億円の増益となっており、従来の会社予想を21億円上回っていますが、コンセンサス予想からは58億円低い着地でした。
そして2022年3月期の配当は7.6円増配の85.6円で発表しています。
前期配当は先程触れた様に配当性向33%もしくは年間配当78円の高い方としていましたが、最終的なEPSは259.4円だった為、33%の85.6円が年間配当となっています。
方針通りではあるのですが、正直85円でも文句を言う人はいなかったと思いますので、この0.6円にオリックスの株主還元姿勢を感じます。
今期の予測について最終利益は開示していませんが、年間配当は据え置きの85.6円予想としています。
業績好調の要因は、海外ビジネスを中心に堅調に推移した事や弥生の売却益が過去最大の案件になった為との事です。
最終利益推移(億円)
銘柄名 | オリックス |
2018年3月期 | 3131 |
2019年3月期 | 3237 |
2020年3月期 | 3027 |
2021年3月期 | 1923 |
2022年3月期 | 3121 |
2023年3月期(会社予想) | ‐ |
2018年からの最終利益をみていきますが、コロナショックの影響を受けた2021年3月期以外は3000億円前後で安定しています。
しかし、2022年の最終利益には弥生の売却益が1632億円含まれている点や今期の最終利益見込みを発表していない点は気になる部分ではあります。
株主優待廃止
そしてオリックスは今回の決算で株主優待制度の廃止を発表しています。
オリックスの株主優待は2010年より「株主カード」(オリックスグループが展開するサービスの割引優待)を開始し、2015年よりカタログギフト方式の「ふるさと優待」を実施していますが、特にふるさと優待は個人投資家からの人気を集めていました。
廃止の理由は、株主の皆様へのより公平な利益還元のあり方という観点としており、今後は配当等による利益還元に集約するとの事です。
最近は株主優待制度について個人投資家の受ける利益が機関投資家や海外の投資家と比較して大き過ぎるとの観点で廃止にする企業も増えています。
しかし、廃止時期は両方とも2024年3月末時点としており、まだ2年近く猶予は残っていますので、この辺りにもオリックスの株主還元姿勢を感じます。
配当推移
銘柄名 | オリックス |
2015年 | 36 |
2016年 | 45.75 |
2017年 | 52.25 |
2018年 | 66 |
2019年 | 76 |
2020年 | 76 |
2021年 | 78 |
2022年 | 85.6 |
2023年(会社予想) | 85.6 |
2015年からの配当推移をみていきますが概ね順調に増配傾向です。
コロナショックの影響が出始めた2020年は据え置きとなっていますが、2021年は配当性向を一時的に50%まで引き上げて増配を実施しています。
オリックスの配当方針は、事業活動で得られた利益を主に内部留保として確保し、事業基盤の強化や成長のための投資に活用することにより株主価値の増大に努めるとしており、業績を反映した安定的かつ継続的な配当を実施する方針です。
また、今期については配当性向33%または前期配当金額(85.6円)の高い方を年間配当にするとしています。
株価推移
株価はコロナショックで1100円まで売られた後は上下を繰り返しながら上昇しています。
特に2021年以降は右肩上がりの状態が続いており、今年1月には2600円を超える場面もありました。
その後はロシアのウクライナ侵攻もあり値を下げ、また今回の決算を受けて翌営業日は50円近く株価を下げましたが、直近は2300円付近で推移しています。
株価指標(2022年5月13日)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
オリックス | 8591 | 2300 | ‐ | 0.84 | 85.6 | 3.72 | ‐ |
オリックスの配当利回りは今回の増配を受けて3.7%前後の水準となっています。
今期は現状終利益予想が開示されていない為、PERや配当性向が算出できませんが、前期最終利益でみるとPER、PBRは市場平均と比較して割安で配当性向は32.9%です。
株主優待
オリックス | 保有継続年数 | 金額 | 優待品 | |||
100株以上 | 3年未満 | Bコース(5000円相当) | カタログギフト | |||
3年以上 | Aコース(1万円相当) | カタログギフト |
廃止にはなりますが、まだ2年の猶予がありますので株主優待制度についても表にまとめています。
100株以上保有で5000円相当のカタログギフトが貰えるのですが、3年以上の継続保有で1万円相当にグレードがアップする「ふるさと優待」とオリックスグループが提供する各種サービスを割引価格で利用できる株主カードがもらえます。
個人的にもまだ1回しかカタログギフトは貰っていませんが、非常に商品も多く内容も豪華でしたので廃止は残念ですが、2年後のカタログまで楽しみにしたいと思います。
オリックスの投資判断
今回の決算を受けてオリックスの投資判断ですが、決算発表後は株主優待制度廃止が1番の話題になっていたかと思います。
オリックスの優待は個人投資家の人気もかなり高く、最近は個人株主数も大きく伸びていましたので仕方がない部分ではありますが、株主への公平な利益還元は最近の流れですので今後も優待制度が廃止になる企業は増えるかもしれません。
業績の部分ではほぼ予想通りの着地でしたが、前期大きな利益をあげた弥生の売却益は一過性のものですので、今期業績の行方は気になるところです。
そして今回の決算を受けて改めて感じた事はオリックスの株主還元姿勢の高さです。
途中で触れた様に年間配当を小数点の単位まで33%に近づけた点や株主優待は廃止としましたが2年間の猶予を設けた事も株主還元姿勢の高さだと思います。
そういった点では優待廃止以降、配当などによる利益還元に集約するとの事ですので、その言葉を信じて購入も検討したいところです。
個人的に現在オリックスは2つの口座で100株ずつ保有しており、カタログ優待目当てでまだ保有していない別の口座での購入を検討していましたが、今回の優待廃止を受けてその必要はなくなりました。
株価については直近の高値からは下がっていますが、ここ1年半くらいは上がり続けていたイメージですので、今後株価が下がる場面があれば買い増しを検討したいかなというところです。
オリックスの本決算検証はYouTubeで動画版を投稿していますのであわせてご覧ください。
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