いよいよ来年からは現行制度より大きく改革された新NISAがスタートしますが、既に金融機関の新NISAに対するCMが流れていたり、個人投資家の間でも新NISAへの対応を巡り盛り上がりを見せているかと思います。
そこで今回は新NISAのメリットを活かしたうえで、新NISAで買いたいと思う高配当株を4銘柄検証していきます。
新NISAとは
そもそもNISAとは売却益や配当に対する税金が発生しない「少額投資非課税制度」の事です。
そして来年から始まる新NISAでは年間投資枠や非課税期間が従来の制度から大きく改善されたため、投資家からも注目を集めました。
しかし、現行のNISA口座で購入している株式は新NISAへ移管できないなど、投資家によっては対応が複雑になる部分もあるため、今回は新NISAのメリットのみを考慮したうえで個人的に買いたいと思う4銘柄を個別に検証していきます。
年間投資枠拡大
新NISA1つ目のメリットは年間投資枠が拡大される事です。
新NISAでの年間投資枠は現行のつみたてNISAが年間40万円から120万円へ、現行の一般NISAにあたる成長投資枠が年間120万円から240万円へ大きく拡大されます。
しかも、現行の制度ではできなかった2つの制度を併用する事も可能になりますので、合計の年間投資枠は360万円となります。
年間投資枠が拡大した事で最低購入金額が高い銘柄も購入対象とする事ができますので、まずは最低購入金額が高い2銘柄を検証していきます。
【9147】NIPPON EXPRESS HD
最初の銘柄はNIPPON EXPRESS HDです。
NIPPON EXPRESS HDは日本通運を中核とする持株会社で、2022年に会社を設立し株式を上場しています。
国内最大の総合物流会社で、鉄道・トラック・航空・海運輸送など様々な方法で国内国際輸送を手掛けています。
そんななか、現在の最低購入金額は80万円付近と高額ですので、新NISAの購入候補として検証していきます。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | NIPPON |
2022年12月期 | 1083 |
2023年12月期(会社予想) | 550 |
業績についてですが、先程触れた様にNIPPON EXPRESS HD は2022年に会社を設立していますので、前期と今期の最終利益を見ていきます。
前期業績は中核の日本通運の2021年業績と比較しても大きく伸びており、業績好調の要因は運賃上昇などにより国際貨物事業が堅調に推移したためとしています。
しかし、今期は前期の反動や世界経済の停滞が見込まれるとして大きく減益の見込みとしていましたが、先日発表した第1四半期決算で当初の想定以上に国際貨物の輸送需要が低迷していることなどを要因に更に170億円の下方修正を発表しています。
配当推移
銘柄名 | NIPPON |
2023年 | 400 |
2024年(会社予想) | 300 |
配当についても前期実績と今期予測を見ていきますが、前期は業績好調を背景に年間400円の配当となっており、こちらも日本通運の2021年実績と比較すると大きく増えています。
そして今期は減益予測となっている業績と連動して、100円の減配見込みで発表しています。
NIPPON EXPRESS HDの配当方針は、株主の皆様への利益還元を重要事項の一つと認識し、具体的な目安を配当性向 30%以上としています。
株価推移
株価も2022年の上場から見ていきますが、去年9月に8840円まで上昇した後は7000円台で停滞しました。
そして、今年に入ると株価はじわじわ上昇し8000円の大台を回復していましたが、今回の決算を受けて株価は7000円台まで下落しています。
株価指標(2023年8月10日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
NIPPON EXPRESS | 9147 | 7911 | 12.7 | 0.88 | 300 | 3.79 | 48.1 |
直近の株価は決算を受けて急落しましたので、今期配当は減配見込みですが配当利回りは3%後半の水準です。
今期業績は減益見込みという事もありPERに割安感はなく、配当性向は48%付近となっています。
投資判断
今までの内容からNIPPON EXPRESS HDの投資判断ですが、上場から間もない事もあり業績や配当推移は大きく遡れませんが、中核の日本通運の業績、配当推移は安定傾向です。
しかし、直近の株価は急落していますが、最低購入金額は80万付近と高額です。
以上の点を踏まえると、今回の決算は良くありませんでしたが、今後の物流需要の増加には期待できる部分も大きく将来性も期待できますので、最低購入金額は高いですが新NISAでならば購入を検討できそうな印象です。
【3391】ツルハHD
2つ目の銘柄はツルハHDです。
ツルハHDは、ツルハドラックなどのドラッグストアを運営する企業を傘下に持つ持株会社で本社は北海道です。
北海道を中心に全国でドラッグストア「ツルハドラッグ」などを展開しており、グループの店舗数は2500店舗を超えています。
そして、業務提携やM&Aにより更に企業規模の拡大を進めているところです。
直近決算
ツルハHDは5月決算のため、6月23日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は252億円と39億円の増益、配当は93円増配の年間260円としています。
今期予測は通期最終利益が258億円と6億円の増益としているなか、配当は7円増配の年間267円で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | ツルハ |
2019年5月期 | 248 |
2020年5月期 | 278 |
2021年5月期 | 262 |
2022年5月期 | 213 |
2023年5月期 | 252 |
2024年5月期(会社予想) | 258 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、2020年に過去最高益を記録した後は2022年にかけて減益が続きました。
2020年に業績が伸びた要因としてインバウンド関連の売上は消滅しましたが、マスクや消毒液、ハンドソープなどの予防関連商材に加え、巣ごもり需要に対応したためとしています。
その後はコロナ特需の反動や人件費高騰などの影響で減益が続きましたが、前期は既存店舗の売上回復や医薬品の販売増加などにより増益となっています。
そして今期は引き続き既存店の売上が伸びる事に加え、インバウンド需要の戻りも期待できるとして増益の見込みにしています。
配当推移
銘柄名 | ツルハ |
2015年 | 88 |
2016年 | 108 |
2017年 | 140 |
2018年 | 146 |
2019年 | 148 |
2020年 | 167 |
2021年 | 167 |
2022年 | 167 |
2023年 | 260 |
2024年(会社予想) | 267 |
2015年からの配当推移について、ここ数年は据え置きが続いていましたが、前期は久しぶりに大きく増配となっています。
前期の配当が大きく増配となっている要因は、業績の回復に加え、目安としている配当性向を引き上げたためで、今期も更に増配の見込みとなっています。
ツルハHDの配当方針は安定した配当を行うことを基本し、具体的な数値として2025年5月期までは配当性向50%~70%を目途に実施としています。
株主優待
ツルハHDには株主優待があり、株数に応じて商品券(株主ギフト券)がもらえますので内容を下記にまとめています。
- 100株以上1000株未満 2,500円
- 1000株以上2000株未満 5,000円
- 2000株以上 10,000円
また、株主ギフト券を返送する事で自社PB商品、北海道グルメカタログギフト、花田養蜂場の純粋蜂蜜と交換する事が可能です。
そして100株以上保有の場合は、ツルハグループ各店のお買い上げ金額が5%引きになる株主優待カードや3年以上の継続保有で1000円の株主ギフト券ももらえます。
株価推移
株価は2020年12月に1万6490円まで上昇しましたが、その後は右肩下がりの状況が続きました。
しかし去年6月に6230円まで値を下げた後は反発し、直近の株価は1万円を超えています。
株価指標(2023年8月10日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
ツルハ | 3391 | 10910 | 20.5 | 1.92 | 267 | 2.45 | 50.1 |
最近の株価は上昇が続いていますので、大幅増配を受けても配当利回りは2%台となっています。
業績は増益が続いていますがPER、PBRは市場平均と比較して割高で、配当性向は50%付近と目安としている数値の下限になっています。
投資判断
今までの内容からツルハHDの投資判断ですが、最近の株価はじわじわ上昇が続いており、直近の大幅増配を受けても配当利回りは2%台となっています。
高配当株としてはもう少し利回りが欲しいところですが、現状の配当性向は目安の下限ですので、今後業績の上方修正も含め配当増額にも期待したいところです。
そして株価も数年前の高値は超えられていませんが、最低購入金額は100万円超えと高額ですので、ドラッグストア業界の今後にも期待して新NISAで狙いたい銘柄です。
非課税期間恒久化
新NISAにおける2つ目のメリットは非課税期間が恒久化される事です。
従来制度での非課税期間は5年間、ロールオーバーしても合計10年間が非課税期間でしたが、新NISAでは永遠に非課税で運用できます。
高配当株投資は10年、20年という中長期投資が前提となっていますので、永遠に配当を非課税で運用できる制度は夢の様な話です。
とういう事でここからは永久に保有しておきたい2つの銘柄を個別に見ていきます。
【8566】リコーリース
永久に保有しておきたい最初の銘柄はリコーリースです。
リコーリースは複合機やパソコンなどのオフィス関連機器に加え、医療機器や産業工作機械、計測器などのファイナンス・リースや法人向けに融資を行っているリコー系のリース会社です。
リース銘柄らしい抜群の株主還元力に加え、順調に推移している業績や配当など、永遠に保有したい銘柄となっています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | リコーリース |
2019年3月期 | 119 |
2020年3月期 | 118 |
2021年3月期 | 120 |
2022年3月期 | 134 |
2023年3月期 | 148 |
2024年3月期(会社予想) | 144 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、コロナショックの影響も関係なく順調に増益が続いています。
業績好調の要因は、資産利回り改善の継続やリース&レンタル事業の伸長によるものとしており、前期は過去最高益を記録しています。
今期はコロナ関連レンタル特需による反動減や販管費の増加を想定し減益見込みとしているなか、先日発表した第1四半期決算は前年同期比で8割減、通期進捗率は6%付近と衝撃的に悪い内容でした。
前期比大幅減益の要因は投資有価証券の評価損を39億円計上するためとの事で、本業は順調に推移しているとの事でしたので、個人的にはそんなに心配していませんが、今後に懸念が残る今期のスタートとなりました。
配当推移
銘柄名 | リコーリース |
2015年 | 50 |
2016年 | 55 |
2017年 | 60 |
2018年 | 70 |
2019年 | 80 |
2020年 | 90 |
2021年 | 100 |
2022年 | 120 |
2023年 | 145 |
2024年(会社予想) | 150 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、減配はもちろん据え置きの年すらなく順調に増配が継続しており、前期までで28期連続増配を継続中です。
そして最近の増配幅は好調な業績を背景に大きくなっています。
リコーリースの配当方針は中長期的に安定した株主還元を基本方針としており、具体的な目安として2026年3月期までに配当性向35%を目指すとしています。
株主優待
リコーリースには株主優待があり、保有株数や保有継続年数によってQUOカードかカタログギフトがもらえますので、詳細を表にまとめています。
保有株数 | 保有継続年数 | 金額 | 優待品 | |||
100株~299株 | 1年未満 | 2000円相当 | QUOカード | |||
1年以上3年未満 | 4000円相当 | |||||
3年以上 | 5000円相当 | |||||
300株以上 | 1年未満 | 5000円相当 | カタログギフト | |||
1年以上3年未満 | 8000円相当 | |||||
3年以上 | 1万円相当 |
特に継続保有年数が3年を超えると金額もかなり大きくなりますので、中長期投資家には有難い株主優待です。
株価推移
株価はコロナショックで2423円まで売られた後は、停滞する時期を挟みながら上昇しています。
そして、ここ2年位は3000円台での動きが中心でしたが、直近はじわじわ値を上げ久しぶりに4000円台を回復しています。
株価指標(2023年8月10日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
リコーリース | 8566 | 4270 | 9.1 | 0.62 | 150 | 3.51 | 32.1 |
最近の株価はじわじわ上昇していますが安定して増配している事で、配当利回りは3%半ばとなっています。
業績好調によりPER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は32%付近と方針通りの水準です。
永久に保有しておきたい理由
今までの内容からリコーリースを永久保有したい理由ですが、業績、配当が順調に推移しているなか、株主優待を含めリース銘柄らしく株主還元力も抜群です。
そんな株主優待は先ほどお伝えした様に保有継続年数が伸びるほど金額も上がります。
そして現在の余裕のある配当性向や今までの配当推移を考慮すると、今後の増配にも期待できますので、新NISAで永久に保有したい銘柄です。
【9433】KDDI
新NISAで永久に保有しておきたい2番目の銘柄はKDDIでNTT、ソフトバンクと並ぶ大手通信会社です。
モバイル通信サービスはauやUQ mobile、povoのマルチブランド戦略に取り組んでいますので、実際にKDDIの携帯を使用している人も多いかと思います。
そして、通信業界の直近業績は通信料金値下げの影響を受けていますが、金融やDX、決済事業などの通信部門以外の成長領域でカバーしている状況です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | KDDI |
2019年3月期 | 6176 |
2020年3月期 | 6397 |
2021年3月期 | 6514 |
2022年3月期 | 6724 |
2023年3月期 | 6774 |
2024年3月期(会社予想) | 6800 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、コロナショックも関係なく増益が続いています。
通信会社は景気の動向に業績が左右されにくいディフェンシブ銘柄とされていますが、この間も通信料金値下げや大規模通信障害の問題はありましたので、よく増益を維持できている印象です。
そして前期は値下げや燃料高騰の影響などに対し、DXや金融事業などの注力領域の成長やコスト効率化などにより過去最高益を記録しています。
今期も同様な流れは継続する見込みとして更に増益の予測にしているなか、第1四半期の決算は前年同期比で約8%の減益と厳しいスタートになっています。
配当推移
銘柄名 | KDDI |
2015年 | 56 |
2016年 | 70 |
2017年 | 85 |
2018年 | 90 |
2019年 | 105 |
2020年 | 115 |
2021年 | 120 |
2022年 | 125 |
2023年 | 135 |
2024年(会社予想) | 140 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、減配はもちろん据え置きの年すらなく順調に増配が継続しており、前期までで21期連続増配を継続中です。
そして増配額も10円以上と大きい年が多く、2015年と比較すると2倍以上の水準に増えています。
KDDIの配当方針は配当性向40%超と利益成長に伴うEPS成長の相乗効果により、今後も持続的な増配を目指すとしています。
株主優待
KDDIには保有株数や保有継続年数によってカタログギフトがもらえる株主優待がありますので、内容を表にまとめています。
KDDI | カタログギフト | カタログギフト |
保有株数/保有年数 | 5年未満 | 5年以上 |
100株~999株 | 3000円相当 | 5000円相当 |
1000株以上 | 5000円相当 | 1万円相当 |
ランクアップのためには、保有株数で1000株以上、保有継続年数は5年以上とハードルは高めですが、狙いたくなる株主優待です。
株価推移
株価は2020年9月に2604円まで売られ後は上下を繰り返しながら値を戻し、去年5月には4636円まで上昇しています。
その後は通信障害の問題や通信株全体が弱含んだ事で4000円を割れる場面もありましたが、直近は4000円台で推移しています。
株価指標(2023年8月10日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
KDDI | 9433 | 4177 | 13.3 | 1.73 | 140 | 3.35 | 44.4 |
直近の株価はじわじわ上昇していますが増配を継続しているため、配当利回りは3%台となっています。
業績も増益が続いていますがPER、PBRに割安感はなく、配当性向は44%付近と方針通りの水準です。
永久に保有しておきたい理由
今までの内容からKDDIを永久に保有しておきたい理由ですが、業績は順調に増益が続いているなか、配当も20年以上増配を継続しています。
そんななか、最近の業績に通信料金値下げの影響は出ていますが、現状は通信部門以外へも注力しており、将来性も期待できそうです。
以上の点を踏まえると、景気の動向に業績が左右されにくいディフェンシブ株である事や5年以上の継続保有でランクが上がる株主優待があることも含め、新NISAで永久に保有したい銘柄です。
まとめ
今回は2024年からスタートする新NISAのメリットを考慮したうえで、購入したいと思う4つの高配当を検証しました。
現行NISAで保有している銘柄を新NISAへ移管できないなど悩ましい問題もありますが、年間投資枠が拡大する事や非課税期間が無期限となる新NISAは、投資家にとって間違いなくメリットとなります。
個人的にも現在保有している銘柄の取り扱いについてはもう少し検討しますが、いずれにしても1番大切な事は少しでも多くの投資資金を確保する事ですので、来年に向けて投資資金の準備も意識したいと思っています。
新NISAのメリットを活かして買いたい4銘柄はYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
コメント