10月下旬からは国内企業でも決算発表が本格化していますが、高騰する原材料費や引き続き150円付近で推移している円安を背景に明暗が分かれている銘柄が多い印象でした。
しかし、業績が順調に推移している銘柄でも先行きの不透明感が強い事もあってか、通期見通しを上方修正した銘柄は少なかったです。
という事で今回は、10月末から先週末までに発表された決算の中から、保有銘柄を中心に気になった9銘柄の内容をまとめていきます。
10月31日(月)
まずは本格的な決算シーズンがスタートした10月31日に決算を発表した銘柄の中から12月決算のJTと3月期銘柄の三井物産、伊藤忠エネクス、イエローハット、リコーリースの5銘柄を見ていきます。
【2914】JT
10月31日決算発表最初の銘柄はJTです。
JTの直近業績は海外たばこ事業の好調や円安の追い風もあり堅調に推移しており、第2四半期決算では通期見通しを170億円上方修正していました。
上方修正後でも通期進捗率は63%付近と高水準を維持していましたが、配当の増額はありませんでしたので、今回の決算で更なる上方修正や配当の増額があるのか注目でした。
直近決算
JTは10月31日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は4420億円と前年同期比382億円の増益となっています。
業績好調に伴い通期最終利益を4640億円へ70億円上方修正していますが、年間配当は188円で変更ありません。
業績好調の要因は、フィリピン・ロシア・英国をはじめとした海外市場が引き続きプライシング効果(価格設定)などの影響で順調に推移しているためとしています。
直近決算の感想
決算の感想について、第2四半期までの好調な流れが継続した内容でしたが、上方修正幅はそこまで大きくなく、期待していた配当の増額もありませんでした。
しかし、第3四半期時点で既に前期並みの最終利益は稼げており、第4四半期は例年調整が入るためここからの大きな上積みは期待しにくいかもしれませんが、現在のEPSで目安の配当性向75%を計算すると196円付近になりますので、来年の本決算での配当増額を期待したいです。
【8031】三井物産
10月31日決算発表2番目の銘柄は三井物産です。
三井物産は総合商社の中でも早めに決算発表を行う事が多いですが、今回も5大総合商社の先陣を切って発表しています。
総合商社は商品市況の反落を想定して今期の通期見込みを減益で予測している銘柄が多く、三井物産も通期最終利益は2割以上の減益見込みとしていました。
しかし、商品市況は底堅く、また円安も続いている事で第1四半期決算は前期比8%程度の減益、通期進捗率も29%付近と順調なスタートでしたので、今回の決算で通期見通しの上方修正があるのか注目でした。
直近決算
三井物産は10月31日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は4562億円と前年同期比829億円の減益となっています。
第2四半期決算は前期比減益でしたが、通期最終利益を9400億円へ600億円上方修正しており、配当も年間170円へ20円の増額を発表しています。
業績上方修正の要因は、機関車リース事業のリサイクルや堅調な自動車事業に加え、エームサービスの既存持分再評価益などのためとしています。
直近決算の感想
決算の感想について、通期見通しは上方修正後でも前期比減益の状況に変わりはありませんが、数年前と比較して業績は大きく伸びています。
また、前期比減益の状況ですが、今回の決算で年間配当を20円増額したのは予想外でした。
三井物産は中期経営計画で2026年3月期までの累進配当を宣言しており、今後は年間170円が下限になりますので、引き続き今後が楽しみな銘柄です。
【8133】伊藤忠エネクス
10月31日3番目の銘柄は伊藤忠エネクスです。
伊藤忠エネクスは伊藤忠グループ中核のエネルギー商社で、ガスや石油関連商品を全国のガソリンスタンドや工場、病院、一般家庭へ販売しています。
今期は商品市況の下落などを想定し通期見通しを2%程度の減益予測にしていましたが、第1四半期時点の通期進捗率は38%付近と好調なスタートでした。
しかし、大きな要因はメガソーラー売却による一過性要因で、本業は減益のセグメントも多かったですので、本業に持ち直しの動きが見られるのか注目でした。
直近決算
伊藤忠エネクスは10月31日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は89億円と前年同期比20億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
業績好調の要因は、前年同期好調だった産業ビジネス事業における反動などがありましたが、電力小売事業・自動車ディーラー事業の貢献及び固定資産売却益などのためとしています。
直近決算の感想
決算の感想について、LPガスの輸入価格下落に伴う影響でホームライフ事業は苦戦が続いていますが、その他の事業には持ち直しの動きも見られました。
そんななか、第2四半期時点の通期進捗率は66%付近と順調に推移していますが、減益見込みにしている通期業績予測の上方修正はありませんでした。
しかし、下期もこのまま順調に推移すれば今期も増益での着地となる可能性は高そうですので、今後の上方修正や配当増額に期待したいです。
【9882】イエローハット
10月31日決算発表4番目の銘柄はイエローハットです。
イエローハットはカー用品を専門に取り扱う量販店で、現在全国に700店舗以上展開しています。
業績は順調に増益が続いているなか、今期も過去最高益を更新する予測になっていますが、第1四半期時点の通期進捗率は22%付近と少し微妙な水準でしたので、第2四半期決算で持ち直しの動きが見られるのか注目でした
直近決算
イエローハットは10月31日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は40億円と前年同期比2億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、タイヤやオイル、バッテリーなどの消耗品販売や車検工賃収入は堅調に推移しましたが、コロナ禍で高まっていたバイク関連需要に陰りがみられ、バイク用品の販売が低調だったためとしています。
直近決算の感想
決算の感想について、第2四半期時点の最終利益は前期比では3%程度の減益ですが、通期進捗率は37%付近にとどまりました。
また、前年の第3四半期はタイヤの値上げに伴う駆け込み需要の影響などで四半期決算としては過去最高益を記録していますので、今後が不安な状況ではあります。
しかし、仮に今後業績の下方修正があったとしても現在の余裕ある配当性向や今までの配当推移から減配リスクは高くないと思いますので、業績の巻き返しを期待しながら第3四半期以降の決算を待ちたいと思います。
【8566】リコーリース
10月31日決算発表最後の銘柄はリコーリースです。
リコーリースの直近業績は増益が続いており、前期はリース&ファイナンス事業が伸長した事などで過去最高益を記録しています。
しかし、今期はコロナ関連のレンタル特需による反動減や販管費の増加を見込むため3%程度の減益予測としてるなか、第1四半期決算は投資有価証券の評価損を37億円計上した事で通期進捗率は6%付近と悲惨なスタートになっていましたので、今回の決算がどの様な内容になっているのか注目でした。
直近決算
リコーリースは10月31日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は53億円と前年同期比31億円の減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因について、営業利益の通期進捗率は55.6%と順調に推移していますが、投資有価証券の評価損37億円の計上が響いている状況です。
また、今回の決算で株主還元方針を見直しており、配当の累進性と業界トップクラスの還元水準を意識し、配当性向は 26年3月期に40%以上、30年3月期に50%を目安と従来の目安35%から引き上げています。
直近決算の感想
決算の感想について、第2四半期決算も投資有価証券評価損の影響で前期比大幅減益となっており、通期進捗率も37%付近にとどまりました。
しかし、本業は順調に推移しており、また配当方針を見直し「累進」という文言を入れた事や配当性向の引き上げにより今後の増配も十分期待できそうな状況です。
以上の点を踏まえると、今期業績は減益になるかもしれませんが、減配の可能性は低いですので、引き続き安心して保有できます。
11月1日(水)
続いては11月1日に決算を発表した銘柄の中からオリックス、スカパーJSATの2銘柄を見ていきます。
【8591】オリックス
11月1日決算発表最初の銘柄はオリックスです。
オリックスはリース業界の代表的な銘柄ですが、現在はリース業にとどまらず、不動産、金融、事業投資など様々な事業で海外を含む多くの企業と取引しています。
その分、コロナショックの影響も大きく、最近の業績は増減を繰り返しているなか今期は増益の見込みにしていましたが、第1四半期時点の通期進捗率は19%付近と低調なスタートでしたので、持ち直しの動きが見られるのか注目でした。
直近決算
オリックスは11月1日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は1281億円と前年同期比58億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因は、インバウンドの増加で不動産や空港コンセッション事業が好調に推移している事に加え、保険も運用収益を伸ばしているためとしています。
直近決算の感想
決算の感想について、最終利益はコロナからの経済回復や運用収益の拡大により前期比増益ではありましたが、通期進捗率は39%付近と少し心配な水準です。
しかし、通期見通しは2割程度の増益予測にしており、第2四半期決算もそこまで悪い水準ではなく、また一部資産の売却によるキャピタルゲインは下期が中心としています。
以上の点を踏まえると、進捗率の部分では今後の下方修正が懸念される水準ですが、オリックスを信じて、第3四半期以降の決算を待ちたいところです。
【9412】スカパーJSAT
11月1日決算発表2番目の銘柄はスカパーJSATです。
スカパーJSATの事業は「スカパー!」などを運営しているメディア事業と航空機の機内インターネット無料サービスなどを手掛ける宇宙事業がメイン事業です。
メディア事業は乱立する動画配信サービスの影響で苦戦が続いていますが、宇宙事業は着実に利益を伸ばしており、第1四半期時点の通期進捗率も33%付近と順調でしたので、引き続き好調な流れが続いているのか注目でした。
直近決算
スカパーJSATは11月1日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は85億円と前年同期比8億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比増益の要因は、宇宙事業のグローバル・モバイル分野や国内衛星ビジネス分野が引き続き堅調に推移しているためとの事です。
直近決算の感想
決算の感想について、宇宙事業を中心に好調な流れが続いており、通期見通しは5%程度の減益見込みとなっていますが、第2四半期時点の進捗率は57%付近で推移しています。
今後も堅調な展開は続きそうですので通期見通しの上方修正があってもおかしく無い水準ですが、その辺りは次回以降の決算に期待したいです。
11月2日(木)
続いては、11月2日に決算を発表した銘柄の中からKDDIと丸紅の2銘柄を見ていきます。
【9433】KDDI
11月2日決算発表最初の銘柄はKDDIで、NTT、ソフトバンクと並ぶ大手通信会社です。
最近の業績は通信料金値下げの影響を受けつつも増益が続いており、今期も過去最高益を更新する見込みにしています。
しかし、第1四半期時点の通勤進捗率は26%付近でしたが、前期比では8%程度の減益となっていましたので、持ち直しの動きが見られるのか注目でした。
直近決算
KDDIは11月2日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は3686億円と前年同期比135億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当見込みに変更はありません。
前期比増益の要因は楽天ローミング収入の減影響はありましたが、通信料収入と注力領域の成長によるものとしています。
直近決算の感想
決算の感想について、第2四半期決算では前期比増益となっており、通期進捗率も54%付近と例年並みの水準まで持って来れています。
要因としては、引き続き金融やDXなどの注力領域が成長している事に加え、ここ最近の減要因だった通信料収入の落ち込みにも反転の兆しが見えていますので、今後に期待できそうな決算です。
【8002】丸紅
最後も11月2日に決算を発表した丸紅で三菱商事や伊藤忠と並ぶ5大総合商社の1角ですが、穀物事業や電力事業などの非資源部門にも強みを持っています。
最近の業績は資源価格上昇の影響などで大きく伸びていますが、今期は資源価格の反落を想定して2割程度の減益予測にしているなか、第1四半期決算は前期比では減益でしたが、通期進捗率は34%付近と順調なスタートを切っていましたので、今回の決算で通期見通しの上方修正はあるのか注目でした。
直近決算
丸紅は11月2日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は2513億円と前年同期比633億円の減益となっています。
第2四半期決算は減益でしたが、通期最終利益を4500億円へ300億円上方修正し、年間配当は83円へ5円増額しています。
業績上方修正の要因は、銅価格などの資源価格下落の影響はありましたが、電⼒、建機・産機・モビリティなどの非資源分野が順調に推移しているためとの事です。
直近決算の感想
決算の感想について、前期比減益の状況に変わりはありませんでしたが、想定よりは順調に推移している印象です。
また、上方修正後でも通期進捗率は56%付近となっていますので、今後の更なる上方修正や累進配当政策のもと配当増額にも期待したいです。
まとめ
今回は保有銘柄を中心に10月末から先週までに発表された9銘柄の決算を検証しました。
通期見通しの上方修正を発表した銘柄は12月決算のJTと総合商社の三井物産、丸紅のみでしたが、前期比増益で推移している伊藤忠エネクスやスカパー、KDDIなども今後の上方修正が期待できそうな印象です。
また、通期進捗率で見るとオリックスやリコーリースは心配な水準ですが、いずれも高配当株として代表的なリース銘柄ですので、今後の巻き返しに期待したいところです。
直近決算が気になった9つの高配当株はYouTubeで動画版も投稿していますので、あわせてご覧ください。
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