最近は老後の資金問題や政府による資産所得倍増計画のもと、資産運用に興味を持つ人が増えている様に感じます。
しかし、資産運用といっても株式投資や債券、FX、暗号通貨など様々な種類があり、またリスクの大きさも運用方法によって異なります。
もちろん資産運用に限らず人生にリスクはつきものですが、なるべくローリスクハイリターン、できればノーリスクでハイリターンを求めたいのが素直な心だと思います。
という事で今回は、色々な事情を抱えておりリスクも高めですが、ハイリターンも期待できる4つの高配当株を検証していきます。
【8304】あおぞら銀行
最初の銘柄はあおぞら銀行です。
あおぞら銀行は、1998年に経営破綻した日本債券信用銀行が前身の銀行で、不動産融資や金融商品の販売などが中心となっています。
傘下にGMOあおぞらネット銀行やあおぞら証券を抱えており、また日本の企業では珍しく年4回の配当があります。
直近決算
あおぞら銀行は5月17日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は87億円と263億円の減益、配当は5円増配の年間154円としています。
今期予測は最終利益を240億円と153億円の増益見込みとしているなか、配当は据え置きの年間154円で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | あおぞら銀行 |
2020年3月期 | 281 |
2021年3月期 | 289 |
2022年3月期 | 350 |
2023年3月期 | 87 |
2024年3月期(会社予想) | 240 |
2020年からの通期最終利益について、数年前までは300億円前後で安定していましたが、前期は大きく減益となっています。
前期減益の要因は有価証券のポートフォリオリスク削減を進めたためとしており、保有している外債や地方債を中心に損失処理を進めた事が大きな要因です。
今期は前期の反動を考慮し大きく増益の見込みとしていますが、まだ数年前の水準へは届かない予測になっています。
配当推移
銘柄名 | あおぞら銀行 |
2015年 | 149 |
2016年 | 186 |
2017年 | 187 |
2018年 | 184 |
2019年 | 154 |
2020年 | 156 |
2021年 | 124 |
2022年 | 149 |
2023年 | 154 |
2024年(会社予想) | 154 |
2015年からの配当推移について、2017年までは増配が続いていましたが、2018年以降は増配と減配を繰り返す展開となっており、またあおぞら銀行は先程も触れた様に日本企業では珍しい年4回配当がもらえる銘柄です。
そして、前期は大幅減益のなか増配を行っていますが、配当性向は200%を超えており、今期業績は増益の見込みですが、配当は据え置きの予測になっています。
あおぞら銀行の配当方針は、業績に応じた配当での還元を原則としており、健全性の維持を念頭に置きつつ、安定的な株主還元を方針に掲げています。
具体的な目安は、2025年度の中期経営計画最終年度の利益目標を達成することにより、 配当性向50%で1株当たり配当額158円への増配を目指すとしています。
株価推移
株価は2015年5月には4900円まで上昇しましたが、その後は下落が続き2020年7月には1687円まで下落しています。
その後は2000円台まで反発していますが、ここ2年くらいは2000円台半ば付近で停滞しています。
株価指標(2023年7月21日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
あおぞら銀行 | 8304 | 2776.5 | 13.5 | 0.74 | 154 | 5.55 | 74.90 |
ここ数年の株価は停滞が続いているなか、配当は高水準を維持している事で配当利回りは5%半ばとなっています。
今期業績は増益見込みですがPERに割安感はなく、配当性向は75%付近とこちらも高水準です。
投資判断
今までの内容からあおぞら銀行の投資判断について、前期業績は大きく減益となりましたが、今期業績は以前の水準へは届かないものの回復傾向です。
前期の減益要因はポートフォリオのリスク削減ですので、そこまで気にする必要はないかと思いますが配当性向は200%を超えており、今期も75%付近と高水準です。
また、最近の配当は大きく増減を繰り返している点も中長期保有の高配当株としてはリスクになります。
以上の点を踏まえると、個人的に銀行はメガバンクのみを投資対象にしており、あおぞら銀行の業績や配当推移に加え、配当性向の高さにはリスクを感じますが、5%台の配当利回りや年4回の配当は気になるところもあります。
【5334】日本特殊陶業
2番目の銘柄は日本特殊陶業です。
日本特殊陶業はスパークプラグやセラミック製品を製造するメーカーで、本社は愛知県です。
自動車用プラグや排気系センサーの売上は世界トップクラスとなっており、電子部品や医療機器、燃料電池なども取り扱っています。
そして、北米や欧州を中心に海外での売上比率は8割近くを占めるほど国際的な企業です。
直近決算
日本特殊陶業は4月28日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は662億円と60億円の増益、配当は64円増配の年間166円としています。
今期予測は最終利益が675億円と13億円の増益見込みにしていますが、配当は33円減配の年間133円で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 日本特殊陶業 |
2019年3月期 | 426 |
2020年3月期 | 336 |
2021年3月期 | 383 |
2022年3月期 | 602 |
2023年3月期 | 662 |
2024年3月期(会社予想) | 675 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、2022年以降の業績は600億円台へ大きく伸びています。
2022年以降の業績が大きく伸びている要因は、スパークプラグの補修⽤製品や半導体製造装置⽤部品を中⼼に売上が伸びた事に加え、円安の影響としており前期は過去最高益を記録しています。
今期はエネルギー価格などの上昇や成長領域の一時的な減速を想定していますが、半導体不足からの回復により新車組付け用製品を中心とした売上回復を想定しているとして、更に増益の見込みにしています。
配当推移
年 | 日本特殊陶業 |
2015年 | 36 |
2016年 | 42 |
2017年 | 42 |
2018年 | 60 |
2019年 | 70 |
2020年 | 70 |
2021年 | 60 |
2022年 | 102 |
2023年 | 166 |
2024年(会社予想) | 133 |
2015年からの配当推移について、数年前までは60円から70円の水準で安定していましたが、2022年、2023年は好調な業績と連動して大きく増配となっています。
今期は大きく減配の予測になっていますが、数年前と比較すると配当は大きく増えている状況です。
日本特殊陶業の配当方針は、株主の皆さまに対する利益還元重視の姿勢を明確にするため、業績連動型で配当性向40%を目安としています。
株価推移
株価はコロナショックで1249円まで売られましたが、その後は上下を繰り返しながら上昇しています。
そして2022年以降は業績好調により上昇ペースが加速し、直近は2900円前後で推移しています。
株価指標(2023年7月21日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
日本特殊陶業 | 5334 | 2920 | 8.8 | 1.05 | 133 | 4.55 | 40.1 |
最近の株価はここ数年の高値圏で推移しているなか、今期配当は大幅減配の見込みですが配当利回りは4%半ばと高水準です。
業績は好調ですのでPERは市場平均よりも割安で、配当性向は40%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容から日本特殊陶業の投資判断ですが、最近の業績や配当はコロナからの経済回復や円安の影響で大きく伸びています。
しかし、メイン商品であるスパークプラグはガソリン車での使用に限られるため、電気自動車などへの変革が進む自動車業界の今後はリスクではあります。
そして、配当も業績と連動させる方針ですので、現在の配当利回りは4%台と高水準ですが、将来の減配リスクには覚悟が必要です。
【1890】東洋建設
3番目の銘柄は東洋建設です。
東洋建設は海上土木を手掛ける大手建設会社で、国内土木や国内建築も手掛けています。
そして、洋上風力ケーブル事業にも参画しており、海外企業との連携も推進しているところです。
しかし、東洋建設は現在YFOという任天堂の御曹司が設立した企業から公開買付けの申し込みを受けており、今後の状況は不透明です。
直近決算
東洋建設は5月11日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は56億円と2億円の減益、配当は5円増配の年間25円としています。
今期予測は最終利益を60億円と4億円の増益見込みにしているなか、配当は38円増配の年間63円で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 東洋建設 |
2020年3月期 | 57 |
2021年3月期 | 91 |
2022年3月期 | 58 |
2023年3月期 | 56 |
2024年3月期(会社予想) | 60 |
2020年からの通期最終利益について、2021年に大きく伸びていますが、その2021年以外は50億円台で安定しています。
2021年に業績が大きく伸びた要因は、国内土木事業において繰越工事数件で大型の設計変更を獲得したことや手持工事の順調な進捗に加え、工事採算の改善などのためとしています。
2022年以降は再び50億円台に戻りましたが、今期予測について公共建設投資は防災・減災対策や加速化するインフラの老朽化への対応、国家防衛戦略などにより底堅く推移すると予想される事に加え、民間設備投資も増加基調を辿る見込みとして増益の予測にしています。
配当推移
銘柄名 | 東洋建設 |
2015年 | 9 |
2016年 | 12 |
2017年 | 12 |
2018年 | 15 |
2019年 | 12 |
2020年 | 15 |
2021年 | 25 |
2022年 | 20 |
2023年 | 25 |
2024年(会社予想) | 63 |
2015年からの配当推移について、前期までの数年間は20円前後の水準で推移していましたが、今期の配当見込みは一気に2倍以上の水準へ大幅増配となっています。
今期配当が大幅増配見込みとなった要因は、2027年度までの中期経営計画で配当性向の引き上げを発表したためです。
具体的な数値は中期経営計画中の下限配当は年間50円としたうえで、2025年度までは配当性向100%、2026年度、2027年度は⾃⼰資本比率40%前後の目標を前提に積極的な配当を継続するとして、還元性向40%~60%以上を予定としています。
配当性向の引き上げにより今期配当は大きく増配となっていますが、下限配当が示されている点は安心材料ではあります。
株価推移
株価はコロナショックで365円まで売られた後は、停滞する時期も挟みながら上昇傾向です。
特に去年3月以降は上昇ペースも加速し、直近は1000円前後で推移しています。
株価指標(2023年7月21日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
東洋建設 | 1890 | 1057 | 16.6 | 1.38 | 63 | 5.96 | 98.7 |
最近の株価は上昇が続いていますが、配当の大幅増額を受けて配当利回りは6%前後と高水準になっています。
業績は安定していますがPER、PBRに割安感はなく、配当性向は99%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容から東洋建設の投資判断ですが、業績は安定しているなか今期から配当性向を引き上げた事で配当利回りが大きく上昇しています。
通常配当性向100%は手を出しにくいですが、東洋建設は下限配当を示している点や配当性向100%の期限が切れた後の配当方針を示している点は安心材料で、最低購入金額も10万円前後と買いやすい水準です。
しかし、先程触れた様に東洋建設はYFOという任天堂の御曹司が設立した企業から公開買付けの申し込みを受けており、先月にはYFO側の人間が役員に選出されています。
東洋建設側は公開買い付けに反対する意向を示しており今後の状況は不透明ですが、役員が選出されているため、今後は配当方針などの見直しリスクもあります。
【9434】ソフトバンク
最後の銘柄は通信会社のソフトバンクです。
ソフトバンクはNTT、KDDIと並ぶ大手通信界会社で親会社はソフトバンクグループです。
近年は主力のモバイル事業に加え、ヤフーやLINE、PayPayなどの非通信事業にも注力しています。
直近決算
ソフトバンクは5月10日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は5313億円と143億円の増益、配当は据え置きの年間86円としています。
今期予測は最終利益を4200億円と1113億円の減益見込みとしていますが、配当は据え置きの年間86円で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | ソフトバンク |
2019年3月期 | 4307 |
2020年3月期 | 4731 |
2021年3月期 | 4912 |
2022年3月期 | 5175 |
2023年3月期 | 5313 |
2024年3月期(会社予想) | 4200 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、前期までは順調に増益が続いています。
しかし、ここ数年は通信料金値下げの影響を法人やヤフー・LINE事業でカバーしている展開で、前期はPayPay子会社化に伴う再測定益で何とか増益を維持できた印象です。
実際、今期業績は前期の反動を考慮して大きく減益見込みとしていますので、ソフトバンクは2025年度に最高益を目指すとしていますが、早期の業績回復が待たれます。
配当推移
銘柄名 | ソフトバンク |
2019年 | 37.5(期末のみ) |
2020年 | 85 |
2021年 | 86 |
2022年 | 86 |
2023年 | 86 |
2024年(会社予想) | 86 |
ソフトバンクは上場が2018年のため、2019年からの配当推移をまとめていますが、ここ数年はほぼ横ばいの動きです。
増益が続くなかでも据え置きを維持しており、また今期業績は大幅減益見込みですが配当は据え置きの予測になっています。
ソフトバンクの配当方針は、昨年度までに引き続き、業績動向、財政状態、キャッシュ・フローの状況などを総合的に勘案して安定性、継続性に配慮しながら高水準の還元を維持するとしています。
株価推移
株価は通信料金の値下げ圧力を受けた2020年9月に1158円まで売られましたが、その後は順調に値を戻し1年後の2021年9月には1600円を超える水準まで上昇しました。
しかし、その後は1500円を挟んだ値動きが中心となっており、直近も1550円付近で推移しています。
株価指標(2023年7月21日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
ソフトバンク | 9434 | 1542.5 | 17.4 | 3.78 | 86 | 5.58 | 96.9 |
最近の株価は動きが止まっていますが配当は高水準を維持していますので、配当利回りは5%半ばとなっています。
今期業績は減益見込みという事もありPER、PBRは市場平均よりも割高で、配当性向は97%付近とこちらもかなりの高水準です。
投資判断
今までの内容からソフトバンクの投資判断について、今期業績は減益見込みのなか配当を維持している事で配当利回りは高水準ですが、配当性向も97%付近とかなり高水準です。
ソフトバンクは2025年度には再び最高益を目指すとしており、通信料金値下げの影響も前期を底に回復見込みとしていますが、想定通りに業績が推移するかは、しばらく様子を見る必要がありそうです。
以上の点を踏まえると、配当利回り5%台は魅力的ですが、親会社ソフトバンクグループの絡みも含め、それなりにリスクも潜んでいそうな印象です。
まとめ
今回は怖いけれども買いたくなる銘柄として4つの高配当株を検証しました。
4銘柄とも今後の業績・配当推移や買収問題、高すぎる配当性向など何らかのリスクを抱えていますが、配当利回りは1番低い日本特殊陶業でも4%台、他の3銘柄は5%以上と高水準です。
冒頭でも触れた様に、本来はノーリスクでハイリターンな銘柄が1番ですが、現実にはそんな都合の良い銘柄はありませんので、多少のリスクは覚悟のうえでリターンを求める必要があります。
その様な意味で、今回の4銘柄は高配当株としてリターンは高いですので、あとはリスクをどの程度享受できるのか、その辺りは個人の判断になると思います。
怖いけど買いたい銘柄はYouTubeで動画版も投稿していますので、あわせてご覧ください。
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