今回は大手精密機器メーカーであるキヤノンが高配当銘柄として投資可能かキヤノンの現状と今後を踏まえながら個別に検証していきます。
キヤノンの現状
まずキャノンの現状を簡単にまとめていきます。
キヤノンは世界一のカメラメーカーを目指して創業し、そこで「光学技術」という独自技術を核に「多角化」を進めてきました。現在の事業構成はプリンティング(複合機)、イメージング(カメラ)、メディカル(医療)、インダストリアル(半導体)の主要4事業で構成されており、海外への売上比率が約8割と国内よりも海外の売上比率が高い精密機器メーカーです。
2010年前後はデジタルカメラの普及もあり業績は好調でしたが、スマホへの置き換えが進む中、最近の業績は低迷傾向です。
キャノンの2021年12月期第3四半期決算内容
それではここからはキャノンの直近決算の内容を検証していきます。
キャノンの2021年12月期第3四半期決算ですが第3四半期時点の最終利益は1549億円と対前年(297億円)から大きく改善しています。
配当は第3四半期決算時点では期初予測から変更のない90円予測でしたが、全社一丸となって努力した結果、年間の業績が予想以上に好転する見込みとなったとして12月15日に10円増額の年間配当100円への増配を発表しています。
業績好調の要因はコロナ感染の再拡大はありましたが、ワクチンの普及も進み経済活動は多くの国で正常に戻り、企業の設備投資や個人投資に大きな変化は見られず、世界各地での実需は堅調な為としています。
キヤノン株価データ
キヤノンの株価ですが2018年頃は4000円を超える水準でしたが、業績の低迷と共に株価も低迷し、コロナショック後には2000円を割る水準まで売られました。
その後はコロナからの業績回復もあり、直近は株価も3000円付近まで戻してきています。
また配当を前期から増配した事もあり配当利回りは3%半ばの水準です。
業績推移
キヤノンの2017年からの通期業績と第3四半期時点の業績推移を検証していきます。
第3四半期時点業績(億円)
銘柄名 | キャノン |
2019年12月期第3四半期 | 923 |
2020年12月期第3四半期 | 297 |
2021年12月期第3四半期 | 1549 |
2019年12月期通期進捗率(%) | 73.89 |
2020年12月期通期進捗率(%) | 36.65 |
2021年12月期通期進捗率(%) | 77.06 |
最終利益(億円)
銘柄名 | キャノン |
2017年12月期 | 2419 |
2018年12月期 | 2527 |
2019年12月期 | 1249 |
2020年12月期 | 833 |
2021年12月期(会社予想) | 2010 |
キヤノンは2019年に米中貿易摩擦や中東情勢の先行き不透明感を背景に製造業を中心とした経済活動が停滞し、景気減速の影響を受けてカメラやレーザープリンターの市場縮小が加速したことや、産業機器における顧客の投資抑制などで大幅減益となり、そして2020年はコロナショックの影響で更なる減益となっています。
2021年はコロナからの回復もあり現状業績を戻してきているところです。
配当推移
銘柄名 | キャノン |
2015年 | 150 |
2016年 | 150 |
2017年 | 160 |
2018年 | 160 |
2019年 | 160 |
2020年 | 80 |
2021年(会社予想) | 100 |
キャノンの2015年からの配当推移を見ていきますが、2019年までは順調に増配傾向でしたが、コロナショックで大きく業績を落とした2020年に年間配当は半減の80円へ減配となっています。2021年の配当は先程触れたように期初予測から10円増、昨年からは20円増の100円へ増配を発表しています。
キヤノンの配当方針は「共生」の理念のもと永続的な企業価値向上を目指し株主の皆さまに貢献していくとしており、直接的な株主還元としては配当を中心に考えているとしています。
株価等指指標
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
キャノン | 7751 | 2801 | 14.57 | 1.07 | 100 | 3.57 | 52.02 |
キャノンの株価等指標を見ていきますが、キャノンは今期業績が回復している事もあり現状の配当性向は50%程度です。
キャノンは業績が低迷するなかでも2019年迄は減配をしていなかった為、配当性向も100%を超える水準まで上昇していましたが、現在の水準ならばそこまで無理をしている感じでもないです。
キャノンの今後
2021年よりキヤノンは5カ年経営計画、グローバル優良企業グループ構想Phase VIをスタートしました。Phase VIでは、Phase Vからの流れを引き継ぎ、「生産性向上と新事業創出によるポートフォリオの転換を促進する」を基本方針としています。
そして主要戦略として2つの柱を掲げています。
1.産業別グループへの全社的組織再編による事業競争力の強化
IT技術の急速な進展にともなって生まれた多様なニーズに対応するために、製品別事業部から産業別グループへと再編成。各グループ内で技術を組み合わせてシナジー効果を生み出し、新製品開発と製造部門の生産性と質の向上を図る方針とし、現在の主要4事業についてもそれぞれ方針を打ち出しています。
プリンティンググループ(複合機)
電子写真とインクジェットという2つの印刷方式をもつ強みを生かし、家庭用、オフィス、業務用までキヤノンならではの幅広いラインアップを充実させるとともに、商業印刷の拡大とラベル・パッケージ印刷など産業印刷事業の確立を目指すとし、オフィス向け市場においては、お客さまのデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援しクラウド連携などをさらに強化する方針。
イメージンググループ(カメラ)
長年培ってきた光学技術やセンサー・デバイス技術、映像解析技術、ネットワーク技術とクラウドを基盤としたイメージングAI技術を基軸に、従来のカメラ産業からデジタル社会を支える光学産業へと大きくフィールドを広げていくとしており、ネットワークカメラの事業領域の拡大、車載カメラへの参入などスマートモビリティ事業を確立する一方で、カメラ事業ではNo.1を堅守するとしています。
メディカルグループ(医療)
CT、MRI、超音波診断装置などの主力製品のさらなる性能の強化と生産におけるコストダウン、情報を統合・解析・加工して医療従事者の負担を軽減する診断ソリューションやAIを活用した画像解析アプリケーションの商品競争力の強化を図るとし、さらに欧米や新興国・地域の販売網を拡充するとともに、検査試薬など検査装置周辺領域へ本格的に参入し、事業拡大を加速する方針。
インダストリアルグループ(半導体)
半導体デバイスや高精細ディスプレイの用途が拡大するなか、有機ELディスプレイ製造装置ではコストダウンと設置の効率化、i線半導体露光装置では多様化するニーズへの対応を進め、圧倒的な地位を維持していきます。また、KrF半導体露光装置、FPD露光装置においても競争力の高い製品を開発してシェア拡大を図る一方、グループ内における新事業領域の確立を目指す方針。
またキヤノンがこれまで培ってきたあらゆる技術を活用して、ライフサイエンス事業や材料事業のほか、生産技術やコンポーネントの外販などのソリューションの事業化に取り組む全社横断的な組織を新設し、収益の拡大に貢献する新規事業を創出するともしています。
2.本社機能の徹底強化によるグループ生産性の向上
産業別グループの成長戦略を支えるために本社機能を強化し全体最適を図るとしており、キャッシュフロー経営の徹底やより競争原理の働く人事体制の構築を重点項目にしています。
グループを挙げた徹底的な生産性向上や原価低減の活動も同時に推し進め、2025年には2007年を上回る史上最高の売上を目指していく方針。
キヤノンの投資判断
今までの内容をもとにキヤノンの投資判断を検証していきますが、キヤノンは自社の強みとして「多角化」と「グローバル化」によって、製品・地域それぞれにバランスの取れた事業構造を実現している点を挙げています。「多角化」を進めてきたことが成長に繋がり、特定の事業に左右されないバランスの取れた事業構造を実現しているとしており、その言葉通り多種多様な商品を様々な地域に販売しています。
そして、これまで培ってきた技術を活用して更に新たな新規技術の創出も目指しており、その企業規模や会社方針からも日本を代表するメーカーだと思います。
数年前までは高い配当利回りと同様に高すぎる配当性向が気になる点でもありましたが、2020年の減配と2021年の業績回復により配当性向も大分落ち着いた水準になりました。
現状の注意点としては2021年の業績回復が一過性で終わらず継続していけるかというところかと思います。このまま2022年以降も業績が回復していけば、配当も以前の水準に戻る可能性もあると思いますので、とりあえずは今月末発表予定の本決算で今期の見込みをどの様に発表するか様子を見たいところです。
キヤノンの投資判断についてはYouTubeで動画版も投稿しています。
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