株式分割を行った銘柄は買いなのか検証

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銘柄検証

最近は最低の購入金額を下げる目的を中心として株式分割を行う企業が増えている様に感じます。

株式を分割しても資産価値は変わりませんが、やはり保有している株数が自動的に増える事は嬉しいので株式分割は好材料と捉えられる事が多く、株式分割を発表した銘柄の株価は上昇しているイメージがあります。

そこで今回は株式分割を行った企業が買いなのか、実際に最近株式分割を行った3銘柄の株式分割前後の値動きを含め個別に検証していきます。

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株式分割とは

そもそも株式分割とは、1株をいくつかに分割し発行済みの株式数を増やす事です。1株が2株に分割されると保有株数は2倍になりますが、理論上株価は半分になりますので資産価値としては変わりません。

資産価値は変わらないのに企業が株式分割を行う理由は、株式分割により株価が下がる事で購入しやすくする事が主な目的です。

実際東証も望ましい投資単位としている5万円以上50万円未満の水準へ移行する為、投資単位の引下げに関する考え方及び方針等を開示するよう義務付けています。

それでは以上の点を踏まえ株式分割をした銘柄は買いなのか個別に検証していきます。

【7974】任天堂

最初の銘柄は任天堂です。

任天堂については敢えて説明するまでもないかもしれませんが、世界を代表するゲームメーカーです。

私の世代では「スーパーファミコン」、現代ですと「スイッチ」を中心としたハード機の販売から様々なゲームソフトを世界中で販売しています。

世界中で商品を販売していることで最近の円安は業績の追い風となっており、また任天堂は今年10月に株式を10分割しています。

直近決算

任天堂は11月8日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は2304億円と前年同期比で586億円の増益となっています。

業績好調に伴い、通期最終利益を4000億円へ600億円上方修正しており、非開示だった年間配当は172円で発表しています。

通期最終利益(億円)

銘柄名任天堂
2019年3月期1940
2020年3月期2586
2021年3月期4803
2022年3月期4776
2023年3月期(会社予想)4000

2019年からの通期最終利益を見ていきますが、最近は数年前と比較して業績が大きく伸びています。

2021年に業績が大きく伸びている要因は、コロナ感染拡大を受けた自粛要請により「あつまれどうぶつの森」などのゲームソフト販売が好調だった為で、過去最高益を記録しています。

今期は、半導体不足などの影響でハードウェアの販売台数減少が見込まれるとして減益見込みとしていますが、円安が大幅に進んだ事で為替差益が764億円発生した事などにより通期見込みを上方修正しています。

配当推移

銘柄名任天堂
2015年18
2016年15
2017年43
2018年59
2019年81
2020年109
2021年222
2022年203
2023年(会社予想)172

2015年からの配当推移をみていきますが、任天堂は今年10月に株式を10分割していますので、金額は分割調整した額になっています。

最近の業績好調を受けてここ数年の配当額は大きく増えていますが、今期は減益見込みの業績と連動して減配見込みとしています。

任天堂の配当方針は、連結営業利益の33%を配当金総額の基準とし、期末時点で保有する自己株式数を差し引いた発行済株式数で除した金額の1円未満を切り上げた金額か、もしくは連結配当性向50%を基準として1円未満を切り上げた金額の、いずれか高い方を1株当たりの年間配当金として決定するとしています。

少しややこしい配当方針ですが、最低でも配当性向50%は約束されている様です。

株価推移

株価は2018年12月の2705円を底に上昇傾向です。2021年2月には業績好調を受けて6983円まで上昇しましたが、その後は少し下げて直近は6000円付近で推移しています。

また、任天堂は株価の下落が続いていた今年5月10日に株式分割を発表していますが、発表後の株価は上昇に転じています。

株価指標(2022年11月25日時点)

銘柄コード株価PERPBR配当配当利回り配当性向
任天堂7974595917.33.191722.8950.0

最近の株価はここ数年の中では高値圏ですが、配当も数年前と比較すると大きく増えていますので配当利回りは3%前後で推移しています。

業績の上方修正はありましたがPERに割安感はなく、配当性向は50%付近と方針通りの水準です。

投資判断

今までの内容をもとに任天堂の投資判断ですが、世界を代表するゲームメーカーで配当利回りも3%付近となっており、また株式分割により最低購入金額も下がっていますので買いやすくなっています。

今期業績は減益見込みで配当も業績に合わせて上下する配当方針ですので、今後の減配リスクもありますが、将来性は期待したくなる企業です。

しかし、直近の業績は円安のプラス要因が大きくなっており、個人的に今後為替は円高に振れる展開を予想していますので、今後為替が円高に振れたタイミングで株価が調整する場面があれば狙いたいかなというところです。

【1852】淺沼組

2番目の銘柄は淺沼組です。

淺沼組は関西系の中堅ゼネコンで官公庁の建物や集合住宅、レジャー施設に加え、上下水道や高速道路などのインフラ設備も手掛けています。

また、医療用機械器具の販売や賃貸、スポーツ施設の運用なども行っており、今年8月に株式を2分割しています。

直近決算

淺沼組は11月8日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は21億円と前年同期比で12億円の大幅増益ですが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありませんでした。

第2四半期が大幅増益になった要因は、経済活動の正常化に伴って先送りされていた設備投資の回復も見え始めた事や公共建設投資は国土強靭化政策推進の下、自然災害に対する防災・減災対策や復旧・復興対策、老朽化したインフラ対策などにより堅調に推移した為としています。

通期最終利益(億円)

銘柄名淺沼組
2019年3月期41
2020年3月期43
2021年3月期41
2022年3月期37
2023年3月期(会社予想)41

2019年からの通期最終利益を見ていきますが、ここ数年は40億円前後で安定した内容となっています。

第2四半期時点では前期比大幅増益でしたので今後の業績にも期待したいところですが、淺沼組は四半期単位の業績増減が激しく、また通期進捗率は52%付近で通期見込みに変更はありませんでしたので、今期も40億円付近の着地となりそうな感じです。

配当推移

銘柄名淺沼組
2015年10
2016年25
2017年50
2018年80
2019年76.5
2020年108
2021年128.5
2022年181.5
2023年(会社予想)191

2015年からの配当推移をまとめていますが、淺沼組は8月に株式を2分割していますので前期以前の数字は分割調整した金額になっています。

配当は順調に増配傾向が続いていますが、前期以降は特に大きく増配となっています。

前期から配当が大きく増えている要因は、去年11月に配当性向を引き上げた事によるものです。

淺沼組の配当方針は、2023年度までの中期3ヵ年計画中は連結配当性向70%以上としており、従来の50%以上から引き上げています。

また、淺沼組は期末のみの年1回配当を基本としています。

年1回配当が悪いわけではありませんが、年1回だと業績の連動による増減配幅が大きくなる可能性や権利落ち後の株価の低迷に加え、単純に配当をもらえるまでの期間が長すぎるなどの懸念点はあります。

株価推移

株価はコロナショックで1505円まで下げた後は概ね右肩上がりの状況です。去年11月に配当方針を引き上げたタイミングや今年3月に株式分割を発表したタイミングでも株価を大きく上げる場面がありましたが、直近は2900円前後で推移しています。

株価指標(2022年11月25日時点)

銘柄コード株価PERPBR配当配当利回り配当性向
淺沼組1852295811.61.131916.4674.7

最近の株価はここ数年では高値圏ですが、大幅増配を受けて配当利回りは6%半ばと高水準です。

業績は安定していますがPERに割安感はあまりなく、配当性向は75%付近と高水準ですが方針通りの水準です。

投資判断

今までの内容から淺沼組の投資判断ですが、業績は安定しているなか配当性向の引き上げによる大幅増配を受けて配当利回りは6%半ばとかなりの高水準です。

しかし、配当性向の引き上げは現状2023年度迄ですので、2024年度以降の配当方針は気になるところです。

現在の株主還元重視の流れから2025年度以降の急激な配当性向の引き下げは考えにくいかもしれませんが、こればかりは分かりませんので投資判断も難しいところです。

【8766】東京海上HD

最初の銘柄は東京海上HDです。

東京海上HDは、東京海上日動火災保険や日新火災海上などを傘下にしている保険持株会社です。

社名に海上と入っていますが、現状は自動車関連の保険が売上の半数近くを占めており、また世界46の国や地域で事業を展開するなど海外への進出も注力しています。

そして、東京海上HDは今年10月から株式を3分割しています。

直近決算

東京海上HDは11月18日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は865億円と前年同期比で1827億円の大幅減益となっています。

業績低迷に伴い、通期最終利益を3700億円へ600億円下方修正しましたが、年間配当予測に変更はありません。

大幅減益の要因として、海外事業における円安の追い風もあり売上は増収ですが、自然災害やコロナによる保険金の支払いが増えた為としています。

通期最終利益(億円)

銘柄名東京海上
2019年3月期2745
2020年3月期2597
2021年3月期1618
2022年3月期4204
2023年3月期(会社予想)3700

2019年からの通期最終利益を見ていきますが、コロナショックの影響を受けた2021年にかけては減益傾向が続いていましたが、2022年以降はコロナ前を大きく上回る水準になっています。

大きく業績が伸びている要因としては、⾃然災害の減少やコロナの反動、北⽶のキャピタルゲインなどの一過性要因に加え、レートアップや保険引受利益の拡大、運用資産を背景としたインカム収益の拡大としています。

今期については先程触れた様に第2四半期決算での業績下方修正により減益見込みとなりましたが、それでも数年前と比較すると最終利益は大きく伸びている状況です。

配当推移

銘柄名東京海上
2015年31.67
2016年36.67
2017年46.67
2018年53.33
2019年83.33
2020年75
2021年78.33
2022年85
2023年(会社予想)100

2015年からの配当推移を見ていきますが、コロナショックで減配となった2020年以外は順調に増配が続いています。

また、東京海上HDは今年10月に株式分割を行っていますので、今期の数字も含め分割調整した金額になっています。

東京海上HDの配当方針は、今期は100円を維持し、来期以降も配当原資の移動平均的拡 大と配当性向引上げ(48.5%→50%)を背景に、持続的に年間配当を引き上げていくとしており、また原則、減配はしないとの事です。

株価推移

株価はコロナショックで1388円まで下落した後は、順調に値を戻しています。

株式分割を発表した7月に株価が上昇する事はありませんでしたが、株式分割の権利が落ちた9月末以降は上昇に転じ、直近は2900円前後で推移しています。

株価指標(2022年11月25日時点)

銘柄コード株価PERPBR配当配当利回り配当性向
東京海上8766294416.01.601003.4054.2

株価は上昇が続いていますが増配も継続している為、配当利回りは3%半ばの水準です。

しかし株価上昇や下方修正に伴いPERに割安感はなく、配当性向は54%付近の水準です。

投資判断

今までの内容から東京海上HDの投資判断ですが、第2四半期で今期業績見込みは下方修正されましたが、数年前と比較すると大きく伸びており、日本を代表する企業規模も含め高配当株として購入を検討したい銘柄です。

今期減益となった大きな要因は自然災害とコロナの影響としており、自然災害については分かりませんがコロナの影響は今後小さくなっていく事が想定されます。

以上の点を踏まえ東京海上HDについては、NISA枠の関係で今年は購入できませんが、株価の調整局面があれば来年は狙ってみたいと考えています。

まとめ

今回は最近株式分割を行った銘柄の検証を行いました。

3銘柄とも業績は好調に推移しているなか株価も上昇が続いていましたので、株式分割により最低購入金額が下がった点はメリットになると思います。

今回のテーマである株式分割を行った企業は買いなのかという点においては、株式分割を発表した後の株価は、任天堂、浅沼組が上昇しており、権利落ち後は浅沼組、東京海上HDが上昇している感じでした。

もちろん株式分割だけが株価に影響しているわけではありませんし、基本的に株式分割を行う企業は業績や株価が伸びている企業が多い事も理由の1つかもしれませんが、単純に考えると株式分割を発表した銘柄は権利落ち後も含め上昇する傾向が多そうです。

しかし、権利落ち後は分割により株数が増える事で、特に株価の上昇が続いている銘柄は一部株式の利益を確定する事などにより売り需要が増える可能性はあります。

以上の点を踏まえると1番理想的な事は、やはり株式分割を発表する前に購入できる事ですので、業績や株価の上昇が続いており、最低購入金額が高い銘柄は株式分割を期待して購入を検討しても良いかもしれません。

ちなみに私は少し前に今後株式分割を行いそうな高配当株についてもでまとめていますので気になる方は下記のリンクからご覧ください。

株式分割銘柄についての検証は、YouTubeで動画版を投稿していますのであわせてご覧ください。

株式分割を発表した銘柄は買いか検証

40代元証券マンの高配当株投資(YouTube編)

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